まずはデザイン。ウンチクを語るのはその次
2015年9月9日 未分類 0
昨日、阪神百貨店梅田本店8階で開催されていた催事「デニム博」を覗いた。
今回のイベントはもともと「全国各地のジーンズ、デニム製品を集めよう」というコンセプトであり、実はNバイヤーから少しだけ相談を受けた。
相談を受けたと言っても、友人のI氏と3人で雑談した程度である。
「あそこの地域にこんなブランドありますよ~」という程度の雑談である。
当初話していた感じだと、全国各地のジーンズブランドを集めるのかな?という感じで、正直なところ3人とも完成図はイメージできていなかったように思う。
それと、ジーンズブランドばかり集めても危険じゃないかという心配もあった。
結果は7社の出店となった。
エドウイン、グランママドーター(京都)、デニムクローゼット(岡山)、デニムマッドネス(大阪)、5インチ(愛媛)、ジェットスピード(宮城)、オールマイラビング(福岡)である。
最終日の夕方伺うと、「売り場全体の予算を達成した」という話だったので良かったなと感じた。
今回のラインナップだが、デニム博と銘打った割には7社という出店はちょっと少ないかなと感じたものの、ナショナルブランド最大手のエドウインとその他の新興メーカーが混在しているというバランスが良いと感じた。
それと洋服一辺倒にならず雑貨も混じっていたのが良かった。
新興メーカーだけなら、よくあるデニムイベントみたいな感じだし、エドウインのみなら別にそこでやらなくてもライトオンとかマックハウスへ行けば十分じゃないかと思う。
ナショナルブランドと新興メーカーが一緒に催事をやることは実はジーンズ業界としては珍しいことなのである。
で、独立前から懇意にしてもらっている5インチを表敬訪問した。
5インチは正岡さんというご夫婦がやっているデニム雑貨ブランドなのだが、いわゆる「本物志向」のデニム雑貨ではない。
縫製糸も30番手(業界でいえば細い部類の糸)を使っており、いわゆる「ジーンズブランド」的な縫製仕様ではない。
それでも1週間売り場に立った正岡さんによると「購入してくれたお客さんは、そんな仕様なんてほとんど気にしなかった」という。
「『デザインかわいいね』と『「形が使いやすそう』とか『値ごろ感がある』とかそういう理由で興味を持ってくれた。その上でセルビッジデニムを使っているとか、素材のウンチクを説明すると納得してもらえた」という。
さらに某ナショナルブランド出身の正岡さんは「以前の僕らは、まず素材や加工、縫製のウンチクを語っていた。デザインとかシルエットとかはその次の説明だった」と振り返る。
この正岡さんの言葉に、ジーンズ業界が苦戦したこれまでの原因が集約されているのではないかと思う。
また同時に、多くの製造加工業者が自社製品開発で苦戦している原因も集約されているのではないかと思う。
消費者が製品を買う一番の動機は、デザインやシルエット、色柄なのである。
「バーバリー」ほどの著名なブランドになればブランドネーム自体が購買動機になるが、そこまでに至らないブランドの製品を買うのは、デザインやシルエット、色柄、それから着心地や機能性である。
生地のクオリティや染色・洗い加工の技法ではない。
デザインが気に入って、それに対して、生地のクオリティや染色・洗い加工の技法について説明するのは、これは消費者へのサービスであり付加価値の提供である。
非常に喜ばれる。
この順番が反対だと、消費者からすると「は?」ということになる。
「生地とか染色とか縫製のことを語られても意味わからんし」である。
これは家電でも自動車でもなんでもそうではないか?
こういう使い方ができます。こういう便利な機能があります。こういうデザインが優れています。
まずそこではないか。
ナンタラエンジンを使用したとか、ナンタラという金属を使用したとか、そういうことはその次に説明すべきではないか。
一番最初にエンジンやらCPUやら金属やらの説明をしたところでそんなことに興味を示すのはよほどのマニアか同業者くらいだろう。
「金属とかエンジンシステムとか回路の説明されても意味わからんわ」というのが消費者の本音である。
正岡さんが今回体感されたのは、まさにその部分である。
これまでのジーンズ業界、一部今のジーンズ業界に足りていないのはその部分への認識ではないか。
それにしてもデニムという生地を使ったアイテムは広がりを見せている。
ナショナルブランド、こだわりブランド、こだわってないブランド、雑貨・家具ブランドを集めて展示会兼即売会みたいなことがやれればデニム生地、ジーンズはもっと盛り上がるのではないかと思う。
そのコンセプトで東京でだれかやってみません?(笑)
そんな妄想を今抱えている。(笑)
でもデニム業界の人は曲者ぞろいだから集めるのは難しいかもな~。