日本以上に不況感が感じられそうなフランスのアパレル市場
2026年3月4日 決算 0
国内の衣料品市場環境についてSNSで不満を漏らす業者は少なからずいるが、じゃあ他の国はどうなのだろうと考えてみると、高額な衣料品が売れて売れて仕方がないという国は現時点では無いのではないかと思う。中国も景気悪化している。
もちろん、どの国にも我が国にも金持ち層は何%かいて、その層には高額な衣料品は売れているのだろうけど一般庶民までが背伸びをして高額な衣料品を買い争っているような国は無い。
今回、繊研新聞にフランスのアパレル市場統計が掲載されて、なかなか興味深かった。短い記事で詳細が不明な部分も多いが、伝えられている内容だけで見れば我が国のアパレル市場よりも厳しいと感じられる。
フランスのアパレル市場規模 コロナ禍前を下回る | 繊研新聞
短い記事なので全文を引用する。
フランスモード研究所が発表した25年の仏アパレル消費調査によると、市場規模は約350億ユーロと19年比で7%超下回り、コロナ禍前に届かなかった。前年比では1.6%減。経済観測部門は市場の「貧困化」に言及した。
消費の変化が常態化した。ウルトラファストファッションが数量ベースで6%、二次流通が19%と、両者で市場の4分の1を占める。価格下落圧力が強まる一方、数量増では補えず、市場は縮小傾向。価格は購買動機の首位(78%)で、「シーイン」などの平均単価は9ユーロ、フリマアプリ「ヴィンテッド」は13ユーロにとどまる。
EC拡大も構造変化を加速する。仏EC市場は約2000億ユーロ規模に達し、非食品分野の約30%を占める。25年は実店舗売上高が前年比2.7%減、オンラインは1.2%増だった。
購買行動の変化は小売りを直撃する。16年以降6000~7000店が閉鎖し、19年以降アパレル企業の約2割が市場から撤退した。婦人服は8.9%減と2年連続マイナスだった。
とのことである。
20年春のコロナ自粛で大打撃を被ったのは各国共通している。しかし、フランス市場が厳しいのはコロナ禍前の19年比でまだ7%強低下している点である。
さらにいえば、我が国もそうだが22年のウクライナ戦争で物価は上がっている。物価が上がっているのに売上高は7%強下がっているのだから、実際に売れている数量は10%以上低下しているはずである。フランスの22年以降の物価上昇率(我が国の物価上昇率よりも高い)を考えると20%くらい低下していてもおかしくないだろう。
現地に行っていないので想像でしかないが、今回弾き出された統計データ以上に現地での衣料品の不況感は強いのではないかと思える。数量が全然伸びないという体感ではないだろうか。
350億ユーロを180円で計算すると6兆3000億円くらいになる。19年比だと7%強減ということになるので、19年は6兆7000億~6兆8000億円の間だったと考えられ、ざっくりと4000数百億円の売上高が減ったということになる。物価高なのに4000数百億円も減るのだから、数量ベースの売れ行きは恐ろしく低下していることが推測できる。
さて、実際に売れているジャンルはシーインに代表されるウルトラファストファッションが「数量ベース」で6%、二次流通が19%で合計25%を占めている。売上金額は巨大ではないのだろうが、数量ベースはかなりの量に到達している。ここでいう二次流通は古着やフリマアプリでの売買だと考えられるが、我が国で見られるような高値のビンテージ古着やアンティーク古着ではなく、セカンドストリートで売られているような500円、700円、900円といった低価格古着がほとんどではないかと思われる。
ちなみにフランスにおけるシーインの平均単価が9ユーロと報じられているが、180円で計算すると1672円になるから意外と高くて驚いてしまった。フランスの物価高からすると1672円は破格値なのだろうと思われるが、日本国内のジーユーの最終処分値990円はフランス人にとっては驚愕の価格だろう。そりゃ、白人インバウンド旅行者が店頭でジーユーの値下げ品を爆買いするはずである。
国内業者からは、日本人は高い服を買わなくなった(嘆かわしい)という声を聞くことが多々あるが、生活防衛のための衣料品の低価格志向はフランスの方が強いと感じられる。何なら、シーインの最大の購入国はアメリカなのだから、いかに欧米の大衆が低価格衣料品を望んでいるのかということがわかる。
最後にざっくりと環境がまとめられているが、この19年からの6年間で約2割の企業がアパレル市場から撤退し、25年の婦人服売上高は前年比8・9%減で2年連続の減少となっている。
アパレル企業の撤退は20年春からのコロナ自粛によるところが大きかったと思われるが、ネット通販ではその穴埋めを完全に補填することはできなかったと思われる。さらにいえば、22年以降の顕著な物価高もアパレル企業の撤退を後押ししたのだろう。販売価格が高くなって売れにくくなったのだろう。
フランスというと婦人服は花形部門だと日本人は認識しているが、コロナ自粛が完全に終わった24年、25年と2年連続で、物価高にもかかわらず婦人服が前年割れを続けているということはいかに売れていないかである。2年連続前年割れということは、コロナ自粛がまだ一部に残っていた23年よりも売れていないということだから、現地の体感でいうと異次元レベルで売れていないと感じられていることだろう。
これらの数字を見ていると、今の国内衣料品市場はフランスよりは随分マシだと感じられてならない。
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