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南充浩 オフィシャルブログ

従来型ビジネスシューズの需要が減り続けているので製造工場が減るのは当たり前という話

2026年2月10日 企業研究 0

需要が少なくなったモノやサービスは売れにくくなる。

完全消滅してしまう物もあれば、極小需要で細々と生き続ける物もある。どちらにせよ、製造側は大幅に淘汰されざるを得なくて、極小需要で細々と生き続ける物なら少数の製造者が細々と生き続ける構図にならざるを得ない。

 

そういう商材の一つに、革製ドレスシューズがあるだろう。平たくいうと「ビジネス革靴」である。

プレーントゥ、ストレートチップなどの革製ドレスシューズは、たしかにカッコイイことは間違いないが、スニーカーに比べると脚は疲れやすい。

昔は、会社や業界のドレスコードが厳しかったので、スーツ+ネクタイ+革製ドレスシューズというのは、ユニフォーム的に着用が義務付けられていた。

しかし、2005年のクールビズ開始をきっかけとして、メンズのビジネススタイルのドレスコードは緩くなっていって、2020年代になってからは、ジャケスラ+ノータイ+スニーカースタイルは当たり前になった。

もちろん、いまだにドレスコードの厳しい職種もあるが、20年前に比べると激減している。

 

 

テイラードっぽいジャケットに綿パン、ノータイでスニーカー履きの人が「〇〇株式会社の営業担当です」と名乗ったところで驚く人は現在では皆無だろう。

そうなると、誰がわざわざ好き好んで、冠婚葬祭や式典以外で革製ドレスシューズを履きたいと思うのだろうか。とがめられないならスニーカーを履くというビジネスマンがほとんどではないだろうか。

 

 

さて、日本人には革製ドレスシューズの老舗ブランドとして「リーガル」がある。当然、このリーガルも経営が悪化せざるを得ない。

革靴が苦戦 「リーガル」が希望退職者を募集、製造子会社を清算へ

靴のリーガルコーポレーション(千葉県浦安市、青野元一社長)は9日、業績不振を受けて構造改革を実施すると発表した。希望退職者を50人程度募るとともに、生産子会社チヨダシューズの操業を停止する。主力である革製のビジネスシューズの市場縮小に歯止めがかからないため、抜本的なリストラが必要と判断した。

希望退職者の募集は、退職日の4月30日時点で満50歳以上の社員および63歳以下の再雇用社員で、グループ会社の出向者も含む。2月12日から3月11日まで募集する。

100%子会社のチヨダシューズは1924年に設立された老舗靴工場で新潟県加茂市に拠点を構える。主に「リーガル(REGAL)」ブランドをグッドイヤーウエルト式製法で製造しており、高度な職人技に定評があった。全従業員63人。2月28日で操業停止し、清算に向けた手続きに入る。

 

 

とのことである。

で、実際にどれくらい経営が悪化しているのかというと、

2026年3月期第3四半期連結では

売上高 158億2800万円(対前年同期比4・3%減)

営業損失 6億6200万円

経常損失 4億8000万円

当期損失 5400万円

となっていて、たしかに赤字まみれで経営状態は悪い。

 

ちなみに、2026年3月期連結の通期見通しは

売上高 229億円 (同2・8%減)

営業利益 5000万円 (同87・4%減)

経常利益 2億1000万円(同57・8%減)

当期利益 3億6000万円(同48・6%減)

 

と黒字化を目指しているようだが、第3四半期の状態から推測すると黒字化達成は難しいのではないかと思える。

 

経営悪化の理由として「主力商品のビジネスシューズの市場縮小に歯止めがかからないため」と説明されているが、冒頭にも述べたような状況を考えると当然といえる。

強制されなければ、誰もわざわざ革製ビジネスシューズを選ぶことは無い。今後もビジネスシューズ市場は縮小し続けて、底打ちしてから低位で推移する市場として落ち着くだろう。

 

 

需要が減っているのだから、当然、供給も減らさざるを得ないので、工場を一つ閉鎖するのは極めて当たり前の措置である。

ただ、モノづくり視点から言えば、グッドイヤーウエルト製法の工場が1つ無くなるのは後退だし無念なことだろう。また、若い技術者育成の場を1つ失うことでもある。

 

 

記事によると、国内工場は3つあるとのことなので2つは残ることになり、2つを当面は維持するという判断はさすがに老舗メーカーだと感服する。

チヨダシューズを含めて国内生産子会社3社を有している。同社によると「(近年は)生産能力が販売予想量を上回っており、抜本的な生産拠点の再編・生産能力の削減が緊急の課題」になっていたという。

 

とはいえ、市場は今後も縮小し続けると考えられるので、最終的に工場をいつまで維持できるのかが焦点になるだろう。

 

今回のニュースに対して、ファッションファンからは「残念」というコメントが聞こえてくる。その気持ちはもちろんわかるが、その「残念」とコメントをしている人たちが、近年はスニーカー履き一辺倒になっていたり、昔のビンテージみたいな革製ドレスシューズを愛用していたりするので、自身の感想と生活様式が噛み合っておらず、リーガルの苦戦は当然の帰結だったという感想しか当方には持てない。

 

 

リーガルは23年から25年までの中期経営計画で5つの取り組みを報告書で説明しているが、その中の一つに「女性・Z世代・アクティブシニアの獲得と関係性強化」というものがある。

これで成果を出そうと思うと、従来の革製ドレスシューズではない商材を開発し、それの販売を成功させざるを得ない。例えばクッション性の高いスニーカーとか、革製ドレスシューズのデザインだがソールやインソールのクッション性を高めたスニーカードレスシューズとか、女性用の高機能パンプスとか、そういう商材の開発に成功しなくてはならない。

あと、アクティブシニアは多分、幻想にすぎず、彼らはABCマートで5900円くらいに値下がりしたナイキ、ニューバランス、アディダスあたりの機能性スニーカーで満足するだろう。

 

言ってしまえば、めっちゃ不得意なアイテムを開発しなくてはならないので、リーガルの中期経営計画達成はかなり至難であると言わざるを得ない。

従来型革製ドレスシューズの供給を極少でも続けるのかどうか、リーガルも含めた各メーカーやブランドのチキンレースはまだまだ続くことになる。

当方は楽が一番なのでテクシーリュクスを冠婚葬祭の時に履き続けるが。

 

 

 

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