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南充浩 オフィシャルブログ

欧米の大衆こそ「安さ」を好む ファストファッションは欧米が生んだビジネスモデル

2025年11月12日 トレンド 0

当方は、ファッション業界内部の精神的ムーブメントにさっぱり興味も関心もないから、シーインがフランスの百貨店「BHV」マレ店に常設店へ出店することに対する業界人の抗議コメントについて何の感慨も無く、ただ流し見していた。

 

実際に抗議が受け入れられるのか無視されるのかもわからないし、SHEINに対して元から全然好意も持っていない。とはいえ、フランスの百貨店BHVに対しても何の思い入れもないから、結果がどうなるのかを時々チラ見していたわけである。何ならBHVという名称すらピンと来なくて、最初は新手の電気自動車かと思ったほどである。

当方は海外に行く用事もないし、旅行もしないから現地の空気感はさっぱりわからないが、各種報道を見ると、相変わらず抗議は続いているものの、抗議を上回る来店者数で文字通り長蛇の列ができているようだ。各種報道が伝えているのでまぎれもない事実だろう。

 

 

「SHEIN」、世界初のパリ常設店に賛否 市民が抗議も行列絶えず 「アニエスベー」「アーペーセー」は撤退

 

通りの角まで続く長蛇の列が、「シーイン(SHEIN)の世界初となる常設店舗のオープンを象徴していた。中国発のウルトラ・ファストファッション企業による出店が、期待と同時に激しい物議を呼んでいる。

仏百貨店「BHV」マレ店の最上階、約1000㎡の売場には、黒とピンクのジャンプスーツを着た「SHEIN Squad」スタッフが並び、開店を前に午前中から入場整理券を求める客が列を作った。

20代から80代まで幅広い年代の来店客が口をそろえるのは「価格の安さ」。60代の女性客は、「まずは価格。BHVにこんなに安い商品が並ぶなんて思わなかった。これなら来てみようと思えるわ」と語った。

 

とのことである。

 

対して

一方、店舗の外では数百人規模の抗議デモが発生した。手作りのプラカードや、「シーイン」に反対する署名サイトへ誘導するQRコード付きのビラを手にした市民や政治家が集結した。

 

とあり、引き続き抗議も行われている。しかしながら、来店の行列に比べると抗議者数は圧倒的に少ないようだ。

 

多数決で言うなら、来店者数の圧倒的勝利となる。

 

 

 

各国の国民性や習俗、歴史的な背景から必ずしもすべての感情や行動規範がお互いに理解し合えるわけではない。しかしながら、一応、ホモサピエンスという同一種族なので普遍的共通部分もある。ちょうど、同じ犬でもジャーマンシェパードとチワワが全く見た目も大きさも異なるのに共通部分があるのと同様である。その共通部分で言うと、日本人であろうがフランス人であろうが、ついでにアメリカ人であろうが中国人であろうが、基本的に「物をできるだけ安く買いたい」という心理は普遍的に共通している。

そうでなければフランス人がSHEINの常設店に殺到するはずがない。そして、各種報道から見ると、抗議者よりも来店者の方がマジョリティーであるといえる。

90年代後半のユニクロブーム以降、国内では常に「安い服を買うのはけしからん」という論調があった。特に衣料品業界関係者、一部メディア関係者にその論が強かったように感じるし、今もその傾向は続いている。だが、ユニクロは国内売上高1兆円を突破してしまったし、ジーユーも3000億円を越えている。しまむらも6000億円台を超えたし、ワークマンも1500億円まで成長した。低価格の服を買う方がマジョリティーなのである。

 

 

当時も今も国内市場に対して「日本人の低価格志向が嘆かわしい」という論調があるが、そもそもファストファッションブランドを築いたのは欧米諸国なのである。ZARAはスペインだし、H&Mはスウェーデンなのである。ついでにGAPとオールドネイビーはアメリカである。ユニクロは、アメリカかぶれの柳井正氏がGAPと香港のジョルダーノをモデルにして、何なら「ユニーククロージング」という店名の由来までアメリカからパクって完成させたいわば「欧米後追いモデル」に過ぎない。

 

先行していた欧米低価格ブランドとの違いは、「値段の割に高品質」「ある程度の機能性」に着目した点にあり、その根幹の考え方は柳井氏が嫌う日本人的発想そのものだといえる。この2点はダイソーやサイゼリヤなどの日本の低価格ブランド全般にほぼ共通しているからだ。

 

 

話を戻すと、今回のフランスの騒ぎとそれに反する来店者数を見てみると、いかにフランスの大衆が「安さ」を求めているかが伺える。抗議しているのは衣料品業界関係者や意識高い系の人たちでしかないのだろう。そもそもファストファッションという仕組みを考え、それを大企業に発展させた欧米社会がいつの時代も常に「安さ」を求めてきたのかということである。お高く止まっているおフランスだが、SHEINの売上高はこの常設店が開設される前から大きい。

 

フランスのファッション研究機関「フランス・ファッション学院(IFM)」による調査では、同社はすでに“フランスで5番目に人気のブランド”であり、販売数量ベースでも第5位に位置するという。圧倒的な低価格がその人気を支えている。

 

とのことで、そもそもSHEINがここまで急速に巨大化したのは、アメリカ市場で圧倒的に売れたからである。これを見ても、以下に欧米人が安さを好むのかが伺える。恐らく日本人以上に欧米の大衆は安さに敏感に反応すると思われる。

 

日本ではSHEINはそれなりに売上高を拡大しているよう(非公開なので)だが、欧米ほどではない。その理由はユニクロ、ジーユー、しまむら、ワークマンなどの国内低価格ブランド勢にあると当方は考えている。ユニクロは欧米にも出店しているが、日本よりも高価格になっている。ジーユーはアジア圏の一部以外出店していない。しまむらも同様にアジア圏の一部しか出店していない。ワークマンは国内のみである。

当方が価格を比較した結果、メンズカジュアル衣料品でいうと、SHEINはだいたいワークマン、ジーユーあたりと同等である。しかし、使用素材や機能性、縫製仕様についてはワークマン、ジーユーの方が上である。そうなると、日本人からすれば「わざわざ怪しげなSHEINとやらで買う必要が無い」ということになる。何ならユニクロの最終値下げ品も同等レベルの価格になる。

 

 

恐らく、ユニクロの店頭販売価格を日本と同等にするなら、欧米やアジア圏でのユニクロの売上高、買い上げ客数は激増するだろう。また国内と同等価格でジーユーやしまむらが出店すれば相当な売れ行きになるだろう。その証拠に国内のユニクロ、ジーユーの都心店舗には観光目的の欧米人と思しき外国人が押し寄せている。まあ、システム上とか為替とか関税とかの問題で実現は難しいのだろうけども。

 

百貨店へのユニクロ、ジーユーの出店に嘆いておられた国内業界人の方々は、崇拝するおフランスの百貨店にSHEINが常設出店したことを直視すべきなのではないか。

 

 

 

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