埋没してしまって存在感が薄れ店舗数が減少している「Nプラス」の現状
2025年11月6日 企業研究 0
タレントや俳優で、一時期すごくメディアへの露出が高かったのに気が付けば最近ほとんど見かけないという人がいる。そんなタレントや俳優の近況を知らせる「あの人は今?」というようなテレビ番組が昔はあった。
多くの場合は、活躍の場をテレビではなく舞台に移したとか、タレント業よりも他の業種に進んだとかである。
衣料品でもそんなブランドは少なからずある。
一時期は頻繁に報道されていたが、いきなりピタっと報道されなくなる。衣料品ブランドの場合は
1、業績が悪い
2、秘かに内部改革を進めている
という2つが多い。
ニトリの衣料品ブランド「Nプラス」なんかは「あの人は今?」状態にあると感じられる。
Nプラスはコロナ禍前の2019年にスタートした。業界内では当方も含めて懐疑的な見方もあったが、賞賛する人も多く、体感的には賛否拮抗していたという印象があった。
特にメディアは「話題性」という要素からか、積極的にNプラスを取り上げていた。
とはいえ、業界内ではヒットしたという噂を聞かないままに月日は流れ続けてきたわけだが、2020年春にコロナ禍によって実店舗の長期営業停止が起き、多くの商業施設からテナントが多数撤退することになった。テナントの穴埋めとして、Nプラスの出店は増え、店舗数は増加した。
しかし、傍から見ていると、擁護派やニトリの声明の見られるような肯定的な要素が見当たらなかったというのが個人的な意見である。
2年後の2021年2月には懐疑的な記事も多数掲載されるようになった。例えばこの記事。
ニトリがこっそり始めたアパレルブランド「N+」 その後どうなった?:新連載・磯部孝のアパレル最前線(1/3 ページ) – ITmedia ビジネスオンライン
21年に最大20店舗、22年以降は年間で20~30店舗を出店。早い段階で100店舗体制を目指し、「数は力」として最終的に200店舗体制を目標と掲げた。
このコメントを聞いて少し違和感を覚えた。その違和感とは、成功モデルの多店舗化は王道と思えるのだが、現時点で「Nプラス」でどのくらい採算が取れているのか疑問符が付くからだ。数字に関して公表されていないので推測の域を出ないのだが、この店舗の繁盛店をいまだ見つけたことがない。
とのことだが、当方も全く同感で、売れているという評判を聞いたことがない。何度も書いているが、衣料品業界というのは噂話の好きな業界で、売れていれば必ずその噂は業界内では流れる。それが流れてこないということは売れていないと判断できてしまう。
で、この当時の出店計画が実現されていれば、2025年現在では少なくとも60店舗以上、下手をすると100店舗強の店舗網が完成していることになる。
何せ、21年と22年だけで最大50店舗を出店している計画なのだから。
ところが、現実では2025年11月現在では35店舗しかない。
N+店舗一覧 | ニトリ|店舗・営業時間を見る|住まいのトータルコーディネートをサポートする 家具&インテリアショップのニトリ
店舗数は43件と表示されるが、今秋にすでに8店舗が閉店している。閉店日時を明記しているという透明性は大いに評価したいが、売れ行きの不振さを物語っている。
もちろん、商業施設との契約年数が終了したというケースもあるだろうが、売れ行きが好調ならよほどの事情がない限りは契約は延長になる。延長されないということは施設からしても別に無くても構わないという意思表示ということになる。
30代~50代向けの中年女性向けのコモディティブランドが「Nプラス」の立ち位置だったが、30~40店舗しかないなら、低価格の実現はかなり難しい。生産ロット数が足りないからだ。
今でもある程度の低価格商品を実現できているとすると、利益を相当に削っていると考えられ、仮に売上高が確保できていたとしても採算はかなり悪いだろう。ひょっとしたら営業赤字かもしれない。
低価格ブランドを実現するには最低でも100店舗前後の店舗数は必要になるが、現在のNプラスはその目標値の半分未満しか店舗数がないから苦境は明らかだろう。
ついでにいうと本体のニトリも成長が止まっている。個人的には国内市場での限界点が来てしまったのではないかと思っている。
〈株価は1年半で半値に〉王者に異変?ニトリ「商品改革」に映る危機感 停滞続く国内店舗、中国でも軌道修正…似鳥氏自ら開発を指揮する体制に | ダイジェスト版 | 東洋経済オンライン
2025年3月期は増収だったものの、減益に終わっている。さらに4月以降の月次売上高報告を見てみると、既存店で前年売上高を上回ったのは4月と8月しかない。その伸び率も0・9%増と0・5%増という微増に終わっており、残りは全て前年割れである。さらに客数は既存店、全店ともに4月から10月はすべて前年割れに終わっている。

客単価だけは毎月3~7%増で推移しているから、4月と8月で前年実績達成ができたのは値上げによるものでしかなく、客離れは深刻な状態になりつつあるといえる。
株式会社ニトリ月次国内売上高前年比推移|IR情報|ニトリホールディングス
決算内容でいうとニトリ本体の商況もさることながら、Nプラスも営業減益の一端を担ったと考えるのが適切ではないかと思う。
さて「中年女性の買い場が少ない」という理由でNプラスはコモディティ市場に新規参入したが、果たしてその分析は正しかったのだろうか?女心はまるっきりわからない当方からすると決して少なくはないと感じる。
例えば、Nプラスが狙っていた30~50代女性の多くはユニクロでそれなりに満足をしているだろう。またジーユーにもその年代の客は増えている。さらにいうと、ハニーズやその他のブランドも30代客はある程度取り込んでいるから「買い場が少ない」とは全く思えない。
その上、今の50代くらいまではよほど体型が大幅に変化していなければ、自分が若い頃に愛用していたブランドをそのまま愛用し続ける傾向も強い。わざわざ「中年になったからNプラスを買おうか」と思い立つ女性はそんなに多くないだろう。
商品デザイン的にもコーディネイト提案的にも、実店舗の内装や店作りにしても特徴らしい特徴を感じられないNプラスが埋没してしまっても当然の結果ではないかと思う。
ニトリの巨大資本があれば、今後もブランドは存続し続けられるだろうが、今のままでは業績が縮小することはあっても拡大することは無いと考えられる。あと何年ブランドとして存続できるのかを外野から観察していたい。