総合スーパーが「総合」ではなくなりつつあるという話
2025年9月9日 売り場探訪 0
イトーヨーカドーがアダストリアとの協業ブランド「ファウンドグッド」の廃止を決定したことはすでに報道されている。
これによってイトーヨーカドーという大型総合スーパーから自前の衣料品売り場が大きく削減されることになるのは確定的で、肌着・靴下類以外の衣料品売り場はテナント誘致で埋めることもすでに発表されている。
こうなると、イトーヨーカドーは食品を主力とするほかなくなるが、それを裏付ける報道がなされた。まあ、普通に論理的に考えると、食品と日常雑貨品が主力とならざるを得ないのは自明の理なのだが。
イトーヨーカドーは「総合スーパー」から「食品スーパー」に転換…専門店事業などグループ会社に移管(読売新聞オンライン) – Yahoo!ニュース
イトーヨーカ堂などを束ねるヨーク・ホールディングス(HD)は3日、米投資ファンドの傘下となってから初となる戦略説明会を東京都内で開いた。中核企業であるヨーカ堂は、衣料品などの専門店事業をグループ会社に移管し、総合スーパーから食品スーパーに転換して再建を図る。
戦略では、ヨーカ堂について、2027年度以降に衣料品や文具、玩具などの専門店事業とテナント管理事業を、商業施設の運営を行うグループ会社「クリエイトリンク」に移管するとした。食料品や医薬品の販売に注力するほか、商品開発などでは引き続き、セブン&アイHDと連携し、プライベートブランドの販売も継続するとしている。
とのことである。
バブル崩壊後、ダイエー、マイカルの経営破綻を経て総合スーパーの2強となったイオンとイトーヨーカドーだが、ついにイトーヨーカドーは総合スーパーの座から降りることとなってしまった。
イトーヨーカドーは元来、東京の会社で関西圏には弱いから、関西生まれ関西育ち関西在住の当方にとってはさしたる思い入れも親近感もないが、衣料品業界には相当思い入れのある方も多くおられるのではないかと思う。
全国規模の総合スーパーはイオンただ一つになってしまった。
このYahoo!の記事の有識者コメントで「イオンはモールとセットで生き残ったが、ヨーカドーは単体としてやっていた」という指摘がある。これは全くその通りだが、モールやショッピングセンターとしての出店を全くやらなかったわけではない。イオンがイオンモール(前身はダイヤモンドシティ)を積極的に出店していく中、ヨーカドーはショッピングモール「アリオ」を対抗して出店して行った。
ところが、この「アリオ」は早い時期に出店がストップしてしまった。関西圏だと八尾と鳳に残っているくらいだろう。
ヨーカドーの内部事情は分からないが、外部から眺めていると、アリオの出店が終了したことで単体での売り場立て直しをせざるを得なくなった。
食品は今もスーパーマーケット各社の強いところで、ついで買いが期待できる日用雑貨も堅調を維持しやすい。しかし、衣料品、特に自前の衣料品平場にお客を呼び戻すことは至難の業となっている。これは何もヨーカドーに限ったことではなく、総合スーパー各社共通である。
イオンは「トップバリュコレクション」に自社PB衣料を集約して攻勢をかけているが、トップバリュコレクションの決算公告では最終赤字となっているから、決して順調ではない。
当方が小学生の頃、当時は地元には食品スーパーがほとんどなかったので、近隣のジャスコやイズミヤといった総合スーパーで母はよく食料品を買っていた。
ついでに衣料品も買っていて、よく売り場に連れて行かれたものだが、その頃の売り場の記憶としては書籍、玩具売り場があったのは今も変わらないが、家電売り場や自転車売り場なんかもあったと記憶している。母はイズミヤの家電売り場で扇風機を買ったこともあったはずだ。
ところが、今、イオンでもヨーカドーでも家電売り場も自転車売り場もほとんど無い。設置しているイオン、ヨーカドーは少ないだろう。食品と日用雑貨品がメインで、あとは自前の衣料品平場がある程度だ。
家電は家電量販店、自転車は自転車屋で買う人がほとんどではないかと思う。
そのように考えると、総合スーパー各社は「総合」と名乗りながら採算性が低くなっていた家電と自転車を廃止して、専門店チェーンに任せたといえる。
今回のヨーカドーに見られる衣料品売り場の廃止も感傷はあるとはいえ、家電・自転車などの捨ててきた分野に衣料品の番がまわってきただけと考えられなくもない。かつて、総合スーパーは家電・自転車を放棄してきたが、それが衣料品の番になっただけといえる。
ここで、ヨークとイトーヨーカドー、セブンHDの関係を整理しておくと以下の記事内容となる。
ヨークHDはセブンの完全子会社として昨年設立され、ヨーカ堂のほか、ヨークベニマルやロフト、赤ちゃん本舗など29社を束ねる。このうち、売上高の約4割を占めるヨーカ堂は、2025年2月期まで5期連続で最終赤字となるなど、業績が低迷している。セブンは今月1日、米投資ファンド「ベインキャピタル」へのヨークHDの株式の売却を完了した。ヨークHDの株式は、ベインが60%、セブンと創業家が計40%を保有している。
とのことで、セブンHDのすぐ下にヨークが昨年設立され、このヨークが赤ちゃん本舗やロフト、ヨーカドーを束ねていたという図式となる。このヨークが米投資ファンドのベインに買収されたというわけで、セブンHDは外資に買収されなかったが、ヨークが買収されたことでヨーカドーのみならず、ロフトや赤ちゃん本舗もベインの影響力を強く受けることとなってしまったわけである。
すでにヨーカドーを含めた総合スーパーで嗜好性のある衣料品を買うという意識を持った人が少なくなっており、特に老人層よりも下の年代の多くはそういう意識になってしまっている。それはちょうど、家電は家電量販店で買う物と、多くの人が想定しているのと同じだといえる。
自前の衣料品編集平場でも協業ブランド「ファウンドグッド」でも構わないが、そのような内容で30~40代の顧客を再び集めようとすると、大衆の意識を変えなくてはならないから相当に長い時間が必要となる。最低でも3~5年はかかるだろう。(3~5年で意識を変えさせられれば大成功の部類)
短期的に利益体質を求める米国投資ファンドとしては、到底承認できるプランではなかったと考えられる。米投資ファンドとすれば、堅調な食品に特化して経営リソースを集中させた方が効率的だということになる。
さらにいえば、これまで不採算売り場を捨ててきた総合スーパーが、衣料品を捨てるフェイズに突入していたこともその判断を促した一面はあるだろう。
セブンHDがヨークを米投資ファンドに売却した時点で、ヨーカドーが食品スーパーに転換せざるを得ないことは当たり前の結論となっていたといえる。