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南充浩 オフィシャルブログ

地域ファッション誌の存続は今後ますます困難に

2015年6月9日 未分類 0

 関西発ファッション誌「カジカジ」が月刊誌を廃止 隔月誌とWEBで展開
http://www.fashionsnap.com/news/2015-06-08/cazicazi-web/

というニュースが昨日報道された。

関西発ファッションカルチャー誌「カジカジ」が、6月12日発売の7月号をもって月刊誌を廃止し隔月誌に移行することがわかった。7月号を発行後、2ヶ月の休止期間を経て9月10日にリニューアルした隔月号を発売する予定。また今後はWEBにも注力していくという。

とある。

正直、このニュースを見て当然の流れだと感じた。

高校生くらいのときに「カジカジ」が創刊されたと記憶していたが、記事によると94年創刊なので筆者は大学を卒業して働き始めている。
創刊は21年前ということになる。

雑誌も含めたメディアのほとんどは現在、東京に一極集中しているが、バブル期ごろには「大阪にも雑誌文化を」という取り組みがあったと聞く。90年代前半にはまだそのころの余韻があった。

雑誌も含めた紙媒体というのは、ウェブよりも製作費がかかる。
それはライターやカメラマンへの報酬ではなく、印刷や製本に費用がかかる。
それを吸収するために広告掲載というシステムがある。

企業がメディアに広告を掲載する本来の目的は売上高を増やすためである。
稀にブランドイメージや企業イメージの向上という目的があるが、第一義は売上高を増やすためである。

売上高を増やせないなら広告を掲載する意味はない。

今回の件は、廃刊ではない。
カジカジは今後も継続する。2か月に1度の発行とウェブ媒体で。
言い換えると、月刊誌を発行することが維持できなくなったということである。

筆者の個人的な推論だが、広告掲載料の減少が原因ではないかと考えている。

筆者も10年ほど前に、編集プロダクションの一員として某関西エリア情報誌のファッションページの広告営業をしたことがある。
当たり前だが広告掲載を集めるのはなかなか難しかった。

2004年~2005年ごろの話である。

もちろん雑誌の知名度が著しく低かったこともある。
それに加えて、アパレル各社からは「関西エリア誌に広告を掲載したところで、当社直営店の売上高増にはあまり寄与しない」という判断を下されたからである。

ターゲット層や誌面構成もその雑誌とはまるでちがうが、カジカジにも同じ部分があったのではないかと推測してしまう。

カジカジが創刊された94年ごろというのは、関西本社のアパレルもまだそれなりに多かったし、当然ながら関西地方のみで展開している有力店や地域チェーン店というのも存在していた。

それから20年の間に関西本社の有力アパレルのほとんどは東京に本社移転、または本社機能を移転してしまっている。
関西本社には経理とか総務のみが残っているという企業は珍しくない。
また関西のみの有力店とか地域チェーン店もずいぶんと減ってしまった。

そうなると地域誌に広告を掲載するメリットはほとんどなくなる。
かろうじて残るメリットは関西地区の読者に自社なり自店の知名度を高めるということだけだが、メールマガジンやブログ、SNSが発達した昨今においては、雑誌に広告を掲載せずとも自店からのアプローチでそれが可能になる。

となると、広告出稿量は減らざるを得ない。
広告出稿量が減ると、掲載料が減少するから毎月誌面を発行する資金がなくなる。

また広告営業も関西からわざわざ東京まで出向かざるを得なくなる。
交通費・宿泊費の出費も増えざるを得ないし、移動も含めた時間的ロスも大きくなる。

すでに2004年ごろですら、その傾向が顕著だったのだから、そこから10年が経過した現在はさらにその状況は厳しさを増していることだろう。

ここまでアパレルや大手チェーン店の本社が東京に一極集中してしまえば、今後、ファッションにおいて地域雑誌を発行するのはかなり難しいだろう。
カジカジはまだネームバリューがそれなりにあるし、記事によると6万部の発行がある。
それに最早関西には競合ファッション誌は存在しないので残存者メリットもある。

新雑誌を創刊することは至難の業だろう。
1号だけなら創刊できるかもしれないが、これの定期発行を維持することは事実上不可能ではないか。

理由は上に挙げた通りである。

さらに言うなら、現在の関西にそこまでの独特のファッション文化は残っていない。
店だって全国チェーン店の大阪店ばかりだし、着こなしも東京とそれほど大きくは変わらない。
80年代までのような大阪独特の奇抜なファッションは存在していない。

200ページほどある雑誌ですべてを関西情報だけで埋め尽くすことはかなり難しい。

逆に東京の雑誌が「関西版」として誌面の何割かだけを関西情報に差し替えた物を発行した方が、広告も集めやすいかもしれない。

ファッション分野においては、今後、関西に限らず全国各地とも地域誌というのは生き残りがますます難しくなるのではないか。
その理由は関西と同じである。地域独特のファッション性はどこも薄まっており、地域限定の有力店も姿を次々に消している。

カジカジ 2015年 07 月号 [雑誌]
交通タイムス社
2015-06-12


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