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南充浩 オフィシャルブログ

24年度百貨店店舗別売上高ランキングから読み取れること

2025年5月21日 百貨店 1

WWDが恒例の2024年度百貨店店舗の売上高ランキングを発表した。

百貨店ビジネスに関する報道は今も数多くあるが、上位店舗の売上高を実数で把握しておくことは極めて重要なので、毎年のこの企画は極めて意義があると思っている。

百貨店の店舗別売上高ランキング 2024年度、過去最高相次ぐ

 

特に上位の伊勢丹新宿本店、阪急本店、JR名古屋高島屋の快進撃が続く。一方、富裕層や訪日客の恩恵が少ない地方や郊外の店舗の苦戦は変わらずで、24年には島根県と岐阜県でそれぞれ唯一残っていた百貨店が閉店した。

とあるが、まさにこの通りで、都心大型旗艦店のほとんど(全てではない)が好調な一方、中小型の地方・郊外店は苦戦が続いており、減少傾向は止まらない。

スポーツチームでいえば、中心選手の成績は絶好調だが、それ以外の選手の成績は低迷しているという状態に近い。業界全体の売上高は都心好調店に引っ張られてコロナ前よりは回復したが、それでも6兆円台には届かないから、スポーツチームでいうとチーム成績は最下位ではないが、首位でもなく、4位あたりをうろうろしているという状態に近いだろう。

 

 

 

続いて

主要店舗の24年度売上高ランキングは下記の図表の通り。1000億円の大台に乗せた店舗をピップアップした。そごう・西武は23年度から店舗売上高の公表をしていない。22年度は西武池袋本店(現在大規模改装工事中)が1768億円、そごう横浜店が1063億円だった。日本百貨店協会によると24年の全国百貨店売上高は既存店ベースで23年比6.8%増の5兆7722億円だった。19年と比べても3.6%増で、初めてコロナ前の実績を上回った。日本百貨店協会に加盟する店舗は168店舗あるが、上位10店舗で約3分の1のシェアを占める。

とある。

重要な箇所が二つある。

まず、そごう・西武は23年度から店舗売上高の発表を中止しているという点である。買収問題ですったもんだした西武池袋は22年度で1768億円、そごう横浜は1063億円でこの2店舗はいつもこのランキングの上位常連だった。今回は上位15位までが表画像として公表されているが、この2店舗が公表されていればランキングは変わっていた。

 

次に百貨店協会に加盟する全国百貨店店舗数が168店舗となっており、ついに170店舗を下回った点である。

これはとりもなおさず、大手百貨店の好決算が続いているが、地方・郊外店は閉店や倒産による店舗減少が止まらないということを意味している。

大手百貨店以外は決して好調ではないということである。恐らく、中期的には160店舗も割り込んで150店舗台に突入することになるだろう。

 

 

そんなわけで表画像をお借りして転載させていただく。

 

これが24年度のそごう・西武を除いた売上高上位15店舗のランキングとなっている。

この表を見ると、過去の状況からだいぶと変動している点がいくつもある。今回は思いつくままにそれらを挙げてみる。

 

 

 

〇大丸・松坂屋の弱さ

上位15店舗内に、大丸・松坂屋が2店舗しかランクインしていない。8位の松坂屋名古屋店と12位の大丸心斎橋店である。それ以外の「過去に優良店」と評された店舗は消えている。以前にもご紹介したように大丸梅田店はコロナ禍前の20年2月期よりも売上高が下がっていて600億円くらいしかないし、大丸東京店、大丸神戸店も売上高1000億円には相変わらず届いていない。

他社の都心旗艦店の売上高が1000億円を越えるほどの伸びを見せている今の時代に取り残されつつある。伸び悩んでいると言った方が適切だろう。

 

〇髙島屋の強さ

ランクイン最多は相変わらず髙島屋である。髙島屋の強さが伺いしれる。15店舗内に、JRとの合弁のJR名古屋高島屋を含めると6店舗もランクインしている。JR名古屋高島屋を除いても5店舗である。

売上高1000億円を越える店がこれだけあるとなるとやはり髙島屋は強い。

そして髙島屋でいうと、京都高島屋の強さである。京都の百貨店ナンバーワンは引き続き不動の髙島屋である。一時期、JR京都伊勢丹が猛烈に追い上げていたが今では完全に水を開けられ、JR京都伊勢丹は上位にランクインすることもなくなった。

次に、新宿高島屋の伸びである。長らく新宿高島屋は「失敗」と言われ続けてきたが、ついに売上高1000億円を越えて15位にランクインした。もちろん、インバウンド需要の追い風もあったのだろうが、ある意味で残存者メリットと継続することの重要性が証明されたと言える。

 

 

 

〇東京・日本橋地区の強さ

東京23区内では古い地域の日本橋だが、地域的に強く、三越日本橋店と髙島屋日本橋店が5位と6位に同時にランクインしている。しかも売上高はたったの9億円しか変わらず、ほぼ均等に顧客を分け合っていると考えられる。三越日本橋なんて狭い上に建物も古いが、売上高が1616億円もある。どれだけ根強い支持を受けているのかがわかる。髙島屋も1605億円もの売上高があるから、地域特性によっては、なまじ最新ファッションを導入することだけが百貨店の強化策ではないということがわかる。

 

 

〇三越銀座店の大幅な伸び

これまで三越銀座店は「旗艦店の一つ」と位置付けられながら、売上高が低かった。当方が某社の依頼で三越伊勢丹を短期集中的に取材していた2016年当時は売上高が660億円程度しかなく、当時の社長から「銀座という立地でこれだけしか売れないのは大いに課題がある」と説明されていた。

それがついに売上高1241億円にまで成長した。コロナ前の19年度売上高は828億円だから、その当時と比較しても400億円以上の増収となっている。

インバウンドの再強化も手伝ったのだろうが、伸び率としては凄まじい。ようやく「旗艦店の一つ」にふさわしい売上高になったのではないか。

 

 

都心旗艦店はこのようにほぼ好調だが、地方・郊外店は閉店・倒産が止まらないから、百貨店の最終形態は、都心旗艦店と地方中心都市旗艦店だけが残るということで落ち着くのだろうと思う。何せ上位10店舗で百貨店全体の売上高の3分の1を占めるほどに寡占化が進んでいるのだから。

 

 

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2025/05/21(水) 11:40 AM

    ビンボーの地方住まいなので長らくデパートで買い物とかしてませんが、上位は軒並みコロナ前より大幅に売上アップしてるとはビックリっすね。やっぱり円安でインバウンドの影響が大きいんですかね?東京の繁華街に行くと外国人だらけになってて驚きますが、2019年は1ドル109円だったのが2024年は151円なので、外国人なら1.4倍買い物できる計算w

    新宿高島屋なんかは、高島屋側に高速バスのターミナルが出来て人の流れが変わったりしたのが影響あったりするのかも?日本橋の2店舗は、昔からのお金持ちの外商とかが凄いのかも?(全く根拠ない思い付きですがw)

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