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南充浩 オフィシャルブログ

POSとQRへの盲信が同質化を招いた

2015年5月25日 未分類 0

 先日、ワールドが10~15ブランドの廃止を発表した。
これに伴い、店舗も400~500閉鎖する。

これについての感想は先日も書いた。似たようなブランドばかり100もあるならある程度の廃止は当然だと考える。それでもまだ85も残るのだからさらなるブランド廃止も必要だろう。
しかし、400~500店の廃止で雇用がどうなるのかは気がかりである。全員雇用というわけには行かないだろうから・・・・。

さて、現在100もブランドがあるワールドだが、存在感のあるブランドはその中でどれくらいあるだろう。
個人的な体感でいうな20くらいだろうか。30を大きく越えることはないと感じる。

筆者が業界紙記者になった97年当時、ワールドのブランドは存在感を発揮していた。
当時はオゾックが絶好調だった。今は見る影もないが。

ワールドが各ブランドの売上高を大きく拡大させた手法としてPOSレジデータによるQRシステムが挙げられるだろう。
レジでバーコードを読み取ってそのデータを集積するのがPOSレジである。

そのデータを基に、売れ筋商品の補充追加を素早く行うのがQRシステムである。
QRには諸説あるが、クイックレスポンスの意味だとされている説が有力である。

しかしこれが各ブランドの同質化の遠因であるともいえる。
ワールドだけではなく、POSレジとQRを組み合わせたシステムは大手各社が取り入れた。
これによってワールドのブランド間が同質化しただけではなく、アパレル各社のブランドがすべて同質化することにつながったといえる。

同質化のもう一つの理由はOEM/ODMを多用しすぎたことである。
もちろんワールドもその例外ではない。

OEM/ODMの多用による同質化は前回に書いたので繰り返さない。

今回はPOSとQRについて考えてみたい。

値札のバーコードにはさまざまなデータが書き込まれている。
色柄・サイズ・デザイン・商品区分などだ。

例えば「黒無地のMサイズの半袖クルーネックカットソー」なんてデータが書き込まれてあり、それをレジが読み取ってデータを蓄積する。
蓄積されたデータは売れ筋情報となっている。

「黒無地のMサイズの半袖クルーネックカットソー」が100枚くらい売れていれば、それが売れ筋ということになる。

衣料品は毎シーズン、トレンドカラーがある。
また商品の中にはアクセントになるカラーがある。

そういうカラーは注目を集めるが、実はあまりたくさん売れるわけではない。
多くの場合、もっとも売れるのはベーシックカラーである。
黒、グレー、紺、白、ベージュあたりである。

そうなると、売れ筋はベーシックカラー商品のみということになり、それらだけが追加生産されることになる。
データを素直に読み解くと、ベーシックカラーの商品のみあれば良いということになる。

そして、そういう商品のみが常に追加補充されて店頭はどんどんと面白みを失う。
売れていなくてもアクセントカラーやトレンドカラー商品は必要なのである。

しかし、そういうデータをPOSは読み取れない。
読み取れるのは実際に販売された商品のみで、これから売れる商品のデータは読み取れない。

また在庫を持たずになるべく早くというやり方で追加品を生産するQRシステムだが、やはり限界はある。
アパレル側が製品在庫を持たなくても、生地在庫はどこかが持たねばならないのである。
アパレルが生地在庫を持てば良いが、そうでない場合は生地メーカーや縫製工場がその生地在庫を持たされるのである。
それが生地メーカーや縫製工場の財務を圧迫する。
アパレル側がリスク回避をすればするほど、そのリスクはどこかに回されているということになる。

QRで売れ筋商品を再生産することでベーシックな店へと変わってしまう。
しかし、ベーシックな店ならユニクロや無印良品で十分であり、そこと勝負をして価格面でも品質でも勝てるアパレルブランドはほとんどない。

POSデータによる自社の売れ筋商品の再生産に終始しているなら、ベーシック店に成り果てようとまだマシである。

QRによって他社の売れ筋商品を手早く生産するようになり、業界全体の同質化も極まったといえる。
他社の売れ筋商品情報をつかむのはそれほど難しいことではない。
商業施設のテナント同士ならその情報はある程度回ってくる。また製造を手掛ける商社やOEM/ODM屋に尋ねてもわかる。

それを似たような生地(組成や品質は別として)で似たようなデザインで製造すれば良い。
納期はQRシステムを活用して2週間前後。

かくして同じような見た目の商品が各社の店頭に並ぶことになる。
同じような見た目の商品なら、よほどのブランドステイタスがない限りは価格競争に陥るだけである。

POSとQRの多用によってワールド内のブランド同士が同質化してしまったし、ひいては業界内のブランドが同質化してしまった。

POSでデータを吸い上げるということは科学的経営を目指すなら必要なことである。
しかし、それを分析する側に見識が求められる。
見識のない人が分析をし、それを承認すれば、ベーシック商品しか店頭になくなることになる。
現に各社ともそういう危機に何度も陥っているから、各社とも、分析をしそれを承認する責任ある立場の人の見識が低いといえる。

QRシステムも同じである。
それが有効なシステムであることは今でも変わらないが、あまりに盲信してしまうと業界内がすべて同質化してしまう。なんといっても他社の売れ筋商品のパクリが短期間で製造できてしまうのだから。

ワールドの社内ブランドの同質化、業界全体の同質化の一因はPOSとQRへの盲信にあるといえる。




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