
テレビCMの凋落とウェブ広告が必ずしも安泰ではないという話
2025年3月26日 トレンド 0
フジテレビ問題は第三者委員会の調査報告が発表されるまでしばし小休止といった感じである。
どのような結果が発表されようと、フジテレビも含めた全テレビ局への企業広告は今後減ることはあっても大幅に増える見込みはないだろう。よくて現状維持である。
フジテレビへの広告出稿をやめても企業業績はあまり変わらないという声が出ているからだ。
ご存知のようにテレビ局へのコマーシャル広告出稿料はべらぼうに高い。出稿の効果が無ければ企業としてはそんなバカ高い広告料を支払う理由はない。カネの無駄である。
それを追認する記事が掲載された。
投じたお金がどれだけの利益を生み出すかをシビアに問われる環境で、悩みの種となったのがテレビCMだった。1980年代当時のネスレ日本は「ネスカフェゴールドブレンド」の“違いがわかる男”などのCMに年間400億円ほど使っていたが、それは大きな工場を丸ごと一つ作れる金額だったという。高岡氏がマーケティングを担当することになったキットカットも宮沢りえや一色紗英ら華やかな女性タレントをCMに起用し、毎年20億円以上の広告費を使っていた。
「それだけの巨額をつぎ込みながら、キットカットの利益率はわずか2〜3%ほどでした。これではどうしようもない。利益を重んじる本社から『何とかしろ』との指令があり、“20億円の広告費を一気にゼロにしたら利益が上がるだろうか……”と漠然と考えていました」
とある。
ただ、現在のネスレ日本はテレビコマーシャルを出稿しているという指摘もある。
それは置いておいて、アパレル小売系でも2020年ごろから大手企業がテレビCMをやめた事例は複数ある。
しまむら「脱テレビCM」でも業績好調 デジタル広告へシフト「低コストで売上効果も十分」 : J-CAST ニュース【全文表示】
ワークマンが2年近くテレビCMをしていない理由 コストのかかるCMをやめて検証していること | ログミーBusiness
しまむらの記事は2021年1月、ワークマンの記事は2023年1月に掲載されたものだが、CMをやめた時期は2021年ごろでほぼ同一である。
恐らく、コロナ禍による巣籠需要がその背景にあると思われるが、テレビCMをやめた両社は、しまむら絶好調、ワークマン足踏み状態となっているが、足踏み状態と言われるワークマンでさえ、テレビCMをやめても売上高は減少していないのだからやめて正解だったといえる。
さて、ネスレ日本の記事ではテレビCMよりもウェブ広告・SNS活用の優位性を説いている。
「今の消費者は広告ではなくSNSの口コミを見て商品を選びます。だからこそ、人が人に伝えたいようなニュース性のある商品をクリエイティビティで作る必要があり、同時にネットの声をいかに拾うかが問われます。逆に言えば、本当にみんなが欲しいと思う商品やサービスであれば、あえて広告はしなくていい。それがインターネットの時代だと思います」
そんな時代だからこそ、「テレビCMをやめる」が企業にとっての選択肢となり得る。
とのことで、当方も基本的にはこの意見に賛成である。反対する理由はどこにもない。
しかし、ウェブ広告・SNS活用とて決して未来永劫に渡って有効であり続けはしない。ウェブ広告・SNS活用をまるで完全無欠の手法かのように捉えることは間違いである。
フジテレビ問題が始まる前からテレビへの広告出稿は減っており、ウェブ広告が増加し続けている。そのため、ウェブ広告の出稿料は高騰し続けている。
インターネット普及期に言われていた「ウェブは格安」という構図は最早当てはまらなくなっている。ウェブは高いし、それ専用の人員を配置しないといけないので、まともなウェブ施策をするにはもうすでに莫大な費用が必要となっている。
またSNSでの拡散を担うインフルエンサーもすでに飽和状態となっているとともに、フォロワーやいいねを買っている疑惑のある場合も多数見受けられる。一概にフォロワー数の多さだけで起用するインフルエンサー選ぶと痛い目に合うというのはまともなウェブ業界人ならすでに常識となっている。
このような現状を鑑みるに、ウェブという媒体はすでに「第二のテレビ業界」化しつつあると当方には感じられる。バカ高い出稿料はテレビもウェブも同様。選民思想丸出しの勘違いしたアナウンサー、プロデューサー、ディレクターと勘違いしたインフルエンサー、イキリ業界人はすでに同類の輩である。
現状として、広告効果や広告効果の測定という点においてウェブ広告が最も優れていると「目されている」ため、企業側は出稿しているに過ぎない。ウェブ広告が好きで好きでたまらなくて無償の愛を捧げているなんて人はいない。
今後、ウェブ広告に代わる優れた広告手法が見つかれば(編み出されれば)、テレビ同様の凋落の憂き目にあうだろう。そうならないようにウェブ業界は気を引き締める必要があるだろう。