
衣料品の供給量が減少し続けて在庫処分店も商品不足傾向に
2025年3月24日 トレンド 1
風が吹けば桶屋が儲かるという言葉がある。
意外なつながりによって意外な結果が出るという意味だということはご存知の方も多いだろう。一つの事象が上手く行ったからと言って全体が上手く行くとは限らないのが世の常だが、当方も含めた多くの人がそれを忘れがちである。
直近でこんな記事が掲載された。
「チョコザップ」の大量出店を阻む“2つの誤算”、トレーニングマシンの故障率上げたビジネスモデルの盲点、赤字脱却へ”肉体改造”できるか | 消費・マーケティング | 東洋経済オンライン
店舗数だけを見れば、どんどん増殖しているチョコザップは上手く行っているように外野からは見える。当方の近所にもチョコザップが出来て、驚いたものである。
しかし、経営は上手く行っていない。通常のスポーツジムよりもランニングコストが大幅にかかって低利益体質だという内容である。
チョコザップは服装自由で靴の履き替えが不要など、気軽に利用できる。ジム初心者に受け入れられたのは狙い通りだったが、ここで1つ目の誤算が生じた。
普段着のような服から出る繊維くずの量は、スポーツウェアより多い。繊維くずは静電気でランニングマシンの走行ベルトに付着し内部で詰まって、マシンの故障や不具合の一因になった。
靴底が削れて出るちりの量も一般的なジムより多い。チョコザップではビジネスシューズで利用する会員もいる。トレーニングシューズより靴底が硬く摩擦で削れやすい。
とのことである。
正直、当方もこの点についての危険は認識していなかった。この世に完全無欠なシステムなどあり得ないということになる。当方は運動を通常の服装のままで行おうとは全く思っていないが、チョコザップが今更「服装自由」を廃止することは極めて難しいだろう。それこそ、「売り」が無くなってしまう。
もちろん、今後何らかの改善案は取られるだろうから、どのような改善案が提出されるのか専門外の当方は外野から期待しつつ眺めてみたいと思う。
さて、そんなこの世の理ではあるが、先日久しぶりに在庫処分店の社長とお会いすることができた。
2020年夏に腰を痛めて以来、長時間の立ち仕事がつらくなり、結局2021年以降は在庫処分店の店頭販売の業務から遠ざかっていたのだが、在庫処分店の近況を伺った。
衣料・アパレル業界で「在庫削減」が強く叫ばれてきて、その結果、各社の過剰在庫はかなり解消されている。その結果として2020年以降、衣料品の輸入量は減り続けている。
24年の衣類輸入量がコロナ下の20年を下回った。2月13日付の記事は数量(重量)の減少に焦点を当てたが、引用したデータは色々な見方ができる。
まず、金額は増えている。円安だから輸入する場合、仕入れ金額は上がるし、原燃料高で原価自体も上がっている。数量減の背景には、1点当たりの金額の高騰が発注者の仕入れ意欲を削いだという側面もあるのではないだろうか。
〝点数〟にも注目したい。とりわけ重量を大きく左右する重衣料が減り続けている。「布帛製コート・アノラック」に分類される品目の輸入点数は20年に8765万点だったが、23年は5%減の8329万点。残暑、暖冬が大きく影響したはずだ。19年は1億1657万点。大幅に需要が減っている。多少の変動はあってもこの水準が続くのではないだろうか。
とある。
元の統計記事はこちらである。
24年の衣類輸入量 2年連続で100万トン割れ コロナ下の20年下回る水準 | 繊研新聞
日本繊維輸入組合が財務省貿易統計を基にまとめた衣類輸入状況(速報値)によると、24年(1~12月)の輸入量は前年比2.2%減の94万2282トンだった。前年に続いて100万トンを割り、コロナ下真っただ中だった20年の実績(速報値ベース=94万7340トン)を下回り、過去20年ほどで最低水準となった。
金額ベースは円安基調で増えているが、重量ベースでは減少しており、その大きな要因はアウター類の減少ということになっている。ただ、全体的にも輸入数量は減少傾向にある。
国内の衣類需要が大きく増えるとは考えにくいが、20年の輸入点数を上回る品目もある。一概には言い切れない。自戒を込めて、データを偏った見方で決めつけるのは危ない。広く、深く探らなければ物事の本質を見誤ることもあると心がけておきたい。
以前にも書いたが、これは各社が過剰在庫を嫌ってMD精度の向上に努めた結果、多めに作る・仕入れるということをほとんどしなくなったためだと考えられる。もちろん、需要自体も減っているだろう。
そうすると不良在庫があまり生じない。その結果、どうなったかというと、在庫処分店への商品供給が激減しているという。恐らく、在庫処分業界全体でも供給量は減っているのではないかと考えられる。
件の社長によると
「コロナ前までは数千枚とか1万枚の不良在庫が流れてくることが普通にあったが、今では1社あたり200~300枚程度。数千枚以上の規模はかなり珍しくなった」
という。
今後もこの傾向は変わらないどころか、ますます強まるだろうと個人的には見ている。
在庫処分店がゼロになることはないが、淘汰されて有力業者だけが残る未来が実現することになるだろう。淘汰されそうな在庫処分業者は生き残るためには在庫処分以外の新しい施策を模索するほかない。
今のアパレル各社・アパレル小売各社は概して「不良在庫を生むくらいなら足りないくらいの方が良い」と考えているところも少なくないようで、今年1月の記事にはこんな一節がある。
12月のファッション小売り商況 防寒アウターがようやく動く | 繊研新聞
専門店も既存店売り上げを伸ばした店が多かったが、値上げや在庫不足などによって伸び悩んだところもあった。
とのことで、今後も在庫不足傾向はますます各社ともに強めると考えられる。
何かが動くとその作用はどこかの分野に必ずその反作用が出る。在庫処分業者各社は今後、難しい経営の舵取りを迫られることは間違いないだろう。
ビジネスはあらゆるトラブル起きるようですが、さすがに衣服の繊維でトレーニング器具が故障というのは誰も予測できなかったでしょうねw
あと、記事中には【エアコンやトイレなどの設備メンテナンス頻度が想定をはるかに超えた。エアコン故障などは緊急を要するため、割り増し費用を払って修理した。猛暑となった昨年夏はエアコン修理に月1億円を投じたという。】とかあって、エアコン業者さんは大儲けなんすね~。
エアコンはこの先、相当な期間は今の型式のままだろうから、エアコン業者になるのは良さそうw