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南充浩 オフィシャルブログ

小型店はライフスタイル提案型を目指さずに得意商品に特化すべき

2015年5月8日 未分類 0

 今日、5月8日にルクアイーレ9階に「梅田 蔦屋書店」がオープンする。
先だって開かれた内覧会に参加したのでその感想でもまとめてみる。

「ライフスタイル提案型書店」と銘打ち、広さ1205坪の売り場の中にカフェ2つ(スターバックスコーヒーとル・ガラージュ)、ネイル&ヘッドスパサロン、靴磨き店、オーディオ売り場、Apple商品修理受付店、旅行代理店などが店内テナントとして入店する。
PC&スマホ売り場や文具・雑貨売り場もある。

カフェに店内の本を持ち込んで飲食しながら本を閲覧できるし、店内に置かれた座席にカフェから飲み物をテイクアウトすることもできる。

20万冊の本を置くが、通常の書店のようにジャンル別に置かれるのではなく、4つのコンセプト別に置かれる。
例えば、ビジネス書というジャンルにしても、コンセプトごとに分けられて置かれることになる。
通常の書店だと、新書コーナー、文庫コーナー、ビジネス書コーナーと分けられている。

CCCは2011年12月、代官山にこれと同じタイプの新型書店をオープンさせたが、その代官山店がすっぽりと入るくらいの面積である。

内観2

(店内の様子)

IMG_4039

(ネイル&ヘッドスパサロン Cu by Ukaの店内)

近頃は各分野で「ライフスタイル提案型店」が増えているが、多くの場合は、主力商品のほかに異分野の商品を少しだけ加えた「なんちゃってライフスタイル提案型店」である。

さまざまな懸念を無視すれば、この蔦屋書店こそ、真の意味での「ライフスタイル提案型店」だといえる。
店内の内装やディスプレイ技術も見事であり、目の保養にもなるから一度は見ておいて損はない。

では、実際に自分がここの愛好者になるかと問われればその答えはNOである。

なぜかというと、機能的ではなく、本が探しにくいと感じるからだ。

1、面積が広すぎて移動するのに時間がかかる
2、ジャンルごとに本が置かれていないので探すのに時間がかかる

というのが理由だ。

急いでいるときに利用しやすい書店ではないように思う。
もっとも蔦屋側も「滞在型」を謳っているのでそんなお客はターゲットとしていないのだろうけれども。

個人的には従来の分類で置かれている書店が好きである。
その方が機能的だと思うし、書店に何時間も滞在する趣味もない。

そのほかにも懸念がある。
書店ビジネスは詳しくないので実際のところどうなのかわからないが、コーヒーや紅茶で売り物の書籍が汚されるのではないか。
ル・ガラージュでは飲み物のほかに食事も販売している。
スープパスタが看板メニューなのだそうだが、これも書籍を汚しそうだ。
自分なら怖くて売り物の本を読みながら飲食なんてできない。

IMG_4028

(ル・ガラージュのスープパスタ)

1冊も汚されないということはないだろうから、汚された本はどのように処理するのだろうか。
もし、ご存じの方がおられたら教えていただきたい。

それにしても、「ライフスタイル提案型店」というのは完全に大企業のものになってしまったと感じる。
売れるかどうかは別にしてこれと同じタイプの洋服店というのは作ろうと思えば大企業なら可能であろう。
飲食とかPC&スマホとか小型家具とかを店内テナントとした1000坪の洋服店なんて、そのうちに登場しそうである。

書店でいえば、小規模書店が品ぞろえの豊富さとか「ライフスタイル提案」とかで蔦屋書店を筆頭とする大手と競争しても負けることは目に見えている。
それこそ、ランチェスターの法則を持ち出すまでもない。

洋服店だって同じだ。
小型店・中型店が洋服以外にちょこっと雑貨とか飲食物を取り入れたところで、各ジャンルに豊富なスペースを割ける大型店や超大型店に敵うはずもない。

そして零細や小企業が金銭的にそういう大型店や超大型店を出店できないことは、書店も洋服店も同様である。

となると、以前も繊研プラスのコラムに掲載されたように、小型店・中型店は自分の得意分野に注力した方がよほど効率的ではないか。
トータル店やライフスタイル提案型を目指したところで、大手企業の物量と売り場面積には歯が立たないのだから。

それとあとは、顧客との関係性の強化だろう。

「同じ商品ならあの店で買う」と顧客に思わせるような関係性を築くべきである。

逆に大型のライフスタイル提案型店が増えれば増えるほど、特定の商品や分野に特化した小型店への需要も反動として起きるのではないか。
蔦屋書店を例にとれば、消費者全員が書店に長時間滞在したいと思っているわけでもないし、そういうことを好む消費者だって、状況によってはサっと目的の本が探せる機能的な書店を求める場合もある。
例えば、仕事や何かで急いでいる場合だ。

従来型の機能的な小型書店・中型書店への需要というのも一定数は維持されるのではないか。

ならば、顧客との関係性の強化と、あとは自店の機能や役割を自己発信し広く知らしめることである。
やりようによっては小型店・中型店で生き残ることも可能ではないか。

蔦屋書店の売り場を見ながらそんなことをツラツラと考えていた。

あと、どうでも良いことだが、ルクアイーレはスターバックスコーヒーが多すぎると感じる。
2階にすでに2店舗がオープンしており、蔦屋書店内ので3店目である。
となりのルクアの9階にもあるから、ルクアとルクアイーレで計4店舗もあることになる。
そんなにスタバばかり集められてもな~。

TSUTAYAの謎
川島 蓉子
日経BP社
2015-04-29


TSUTAYAの謎
川島 蓉子
日経BP社
2015-04-29


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