
ワークマンが発表した「ワーク強靭化」リリースへの個人的な感想
2025年2月6日 企業研究 1
ワークマンがワークマン女子の店名を廃止してワークマンカラーズへ統合するという発表をした後、すぐに今度は「ワーク強靭化宣言」という発表をした。
もういろいろな報道でご存知の方も多いとは思うが改めて紹介する。
例えば、以下の記事にも書かれていることがひどくザックリとした骨子になる。
ワークマン「一般ウケ路線」を反省? 上下3400円の高機能作業服など、プロ向けに集中(1/2 ページ) – ITmedia ビジネスオンライン
同社は製品開発リソースを新業態の#ワークマン女子店の一般客向け製品に集中した反動から、既存店で作業服中心のワークマンとWORKMAN Plusの作業服開発が手薄になり、売り上げが伸び悩んでいたという。
そこで、2024年後半から本業の作業服強靭化に開発の重点を移し、社内の製品開発リソースは売上構成比をほぼ反映して、8割を作業服を扱う既存店製品の専任にした。
ワークマンカラーズの出店を加速すると言いながら、開発要員は本体系を8割に戻して、残り2割をカラーズなどのカジュアル業態に充てるという方針である。
多くの記事はだいたいほぼ同様のまとめ方だが、リリースを読むと随分と興味深い部分が多々ある。
・女子店は大ブームになったため開発要員の注目が女子店に過度に集まり、結果的に本業が軽視された
子供サッカーのように、ほぼ全員が女子店のボールを追いかけた
・開発リソースの集中投入で知見がなかった女性製品主体の女子店は立ち上がったが、過剰投入であった
とある。
これはぶっちゃけよくある話だが、消費動向がコロコロと変わりやすいカジュアルや、特にレディースカジュアルは難しいが面白い。その結果、そちらにばかり注意が向いてしまう。ワークマンならずともファッション化に舞い上がった企業で掃いて捨てるほど見かけるつまらない光景である。
このほか、本体の売上高が伸び悩んだことについて「これまで強かった防寒アウターを過信して多く作りすぎて過剰在庫となった」「また、24年は在庫品の売り抜きのため猛暑が続く9月から重防寒品を店頭に出したが、反応は薄かった」ともある。
特に面白いのが2つ目の理由で、このリリースには長引いた猛暑に対して十分な認識を示しているにもかかわらず、過剰在庫を処分したいがために9月から店頭に並べたというのである。しかし、反応は薄かったとあるが当たり前の話である。
当方もそうだが人間はとかく自分のことになると見えないものである。いくら過剰在庫に苦しんでいるからと言って猛暑の9月に店頭に並べても反応が薄いのは当たり前である。というか、上層部の人たちは自分の服を買う際に猛暑の9月に防寒アウターが並んでいて「季節先取りで買ってやるぜ」なんて考えて買うのだろうか?恐らく買っていないはずである。自分が買わないなら世の中のマス層も買わない。なぜ、それがわからないのか理由がわからない。
このリリースには、猛暑対応で季節区分を変えたことや製造体制にも触れられていた興味深い。
変更した季節区分は以下の通りである。
・1年を夏物(3月〜9月)、夏秋物+秋物(9月〜11月)、冬物(10月中旬~2月)の3シーズン化する
一番の特徴は夏物の販売期間が7ヶ月と長くなり、冬物の販売期間が縮小したこと
冬から夏までの移行期間は短いので春物は省略する(3月から夏物)
とあり、どこぞのセレクトショップのように季節区分をやたらめったら増やすのではなく、3つにまとめなおし、夏物を7か月取っているのは猛暑対応としては完璧だろうと思われる。
また製造に関しては
当社は計画生産で1年前に大量発注をかけて低価格を実現しているため、1年サイクルの製品開発で小回りが利かない欠点があります。
・海外工場の製造ラインを借りきって生地と副資材を当社が供給して加工賃だけを支払う「加工貿易品」
◇当社の加工貿易では、製造ラインのアイドルを発生させない素材供給計画と生産計画立案/中国素材メーカーへの発注と買取り・検品・保管/素材の海外工場への3国間輸送と工場所在国での保税輸入手続き/製造指導と検品の立ち合い/日本への輸出手続き/中国と工場所在国、工場所在国と日本間の船腹確保と海上運賃と横持ちの費用の支払/輸出入諸チャージの支払/全工程(フルにはカバーできない)の保険付など膨大な手間と長期の資金負担が発生する代わりにダントツの最安値を実現
◇当社供給素材が1点でも遅れると生産ができない、製造ラインの稼働保証をしているので未稼働でも工賃
を支払う、逆に安全在庫を持ちすぎると資金負担が重くなるのでオペレーション難易度は極めて高い
と説明しているので、ここも興味深い。
ただ、このリリースを読めば読むほど、一般向けカジュアル店「カラーズ」(廃止された女子も)はワークマン本体とは全く別のサイクル速度で動く必要性があることがわかる。
特に「1年前に大量発注」というやり方では小回りが必要な一般カジュアルではかなり難しい。ユニクロだって同じくらいの期間だが、ユニクロの場合、作る商品をかなり精度高く絞り込んで企画している。ザックリと女子の売り場を定点観測した当方の個人的意見では、ワークマンにそこまでの企画精度も無いし、MD精度も無い。商品の機能性は評価できるが、それ以外は凡百の低価格カジュアルブランドと変わらないと感じる。
ここにメスを入れない限りは一般カジュアル向けカラーズの大量出店は却ってワークマンの経営を悪化させる可能性の方が高いと当方は見ている。
ワークマンはここが正念場だろう。大幅拡大が望めない規模にまで成長しきってしまった上に、カジュアル化についてもひずみが生まれ始めている。ここを乗り切れば一段階変わった姿になって生き延びることができるだろうが、迷走を続けて行くと、強かったはずの本体まで悪化して一気に苦境に立たされることにもなり得る。
ワーク系に再度注力することは、以前からのワークマンFCオーナーはホッとしているのでは?
カラーズの方は一度出店ペースを抑えて、その間にどこかカジュアルメーカーを子会社したり、元ユニクロ社員とかの採用を増やしてカジュアルのノウハウを地道に積み重ねていった方が良いんじゃないですか?
ゆるキャンとのコラボアイテムも、少し何かが足りない商品だった気がします。
(今だとジークアクスとのコラボアパレルとか出せば売れる可能性高いですよね)
この先カラーズのFCオーナーは大変になると思いますので、ワークマンには頑張って欲しいです。