MENU

南充浩 オフィシャルブログ

大規模リストラが始まったライトオンのその後の再建策を考えてみた

2025年1月9日 企業研究 1

何度も繰り返して恐縮だが、昨年11月18日から急激に気温が低下して秋冬物衣料品が活発に動いた。

上場各社の月次発表は11月から好転しており、12月実績も好調を維持している。そんな中にあって11月、12月ともに既存店実績を大幅に下回っているのがライトオンである。

ちなみにライトオンの11月既存店実績は

売上高 16・3%減

客数 27・0%減

客単価 14・6%増

と客単価は値上げによって伸びているが、客数は3割近く減少している。ハッキリ言って壊滅的な状況といえる。異常高気温が続いた10月、そして11月前半ならば、上場各社ともに売れ行きが鈍く前年割れが当たり前だったからまだしも、各社がそろって好転している11月度でこの数字はかなり絶望的である。

 

続いて12月既存店実績は

売上高 15・4%減

客数 28・7%減

客単価 18・8%増

となっており、気温低下によって各社が好調だった12月度も一人負けの様相である。特に買い上げ客数が11月、12月ともに30%近くも低下していることが客離れの激しさを如実に示している。

 

 

そんな中、かねてよりの発表通りにワールドによるTOBが成立して、晴れてライトオンはワールド傘下となった。

そして、不採算店の大規模撤退と大幅な人員削減による経営立て直しが始まった。

ワールドの持分会社によるTOBが成立したライトオンが大量24店舗を閉店

ライトオンは昨年も不採算店舗35店舗を閉鎖したが、今年に入っても退店を急ぐ。

とあり、今年1月・2月に閉店する店舗のリストを羅列してくれている。そのうえで、

ライトオンは2024年12月末の時点で338店舗を展開していたが、2月末までに24店舗を閉鎖する。2025年8月末までに本部の人員を削減するなど、業績の立て直しに向けて大幅なコスト削減を目指す。

とのことで、具体的な人数は示していないものの、本部の人員削減が始まることにも言及している。

 

不採算店舗の撤退と本部人員の削減によって、赤字を減らそうという経営再建の基本的な施策だといえる。削減される人員にとっては気の毒なことではあるが。

 

 

なぜ、ここまでワールドは「止血」を急ぐのかというと、ライトオンの決算が赤字続きだからである。

ライトオンの2024年8月期の通期決算は、売上高は388億800万円(前年比17.3%減)、営業利益は50億円の赤字(前年は9億2200万円の赤字)、当期純利益は121億4200万円の赤字(同25億4500万円の赤字)と6期連続で最終赤字を計上している。

という惨憺たる状態にある。

ちなみに、早くも1月7日にライトオンの2025年8月期第1四半期決算が発表されたが、相変わらずの赤字である。

2025年8月期第1四半期決算は

売上高 77億5500万円(対前年同期比24・7%減)

営業損失 4億7200万円

経常損失 6億800万円

当期損失 5億600万円

となっており、黒字化が容易ではないことが簡単に想像できる。

 

そして8月期通期決算の見通しは

売上高 281億円 (同27・6%減)

営業損失 15億円

経常損失 20億円

当期損失 18億円

となっており、ライトオンの黒字化は何年か先のことになるだろうということが想像できる。

 

今年2月末までで24店舗を閉鎖するから、閉鎖が完了した時点でライトオンの展開店舗数は314店舗に減少することになる。

そして、8月期の売上高見通しが281億円であることから、ライトオンの各店舗の平均売上高は年間1億円に満たないということがわかる。

もちろん、年間売上高1億円を越える店舗もあれば、1億円未満の店舗もあるだろう。だが、平均で年間売上高1億円未満というのは相当に低い数字だといえる。

要は、ライトオンというジーンズカジュアルチェーン店の販売力はここまで低下しているというわけである。

 

 

ワールドは基本的な施策として不採算店舗の撤退と人件費の削減を打ち出してきたのだが、果たしてそれ以降にどのような再建策を描いているのだろうか?

この辺りはまだ全く明かされていない。

店舗数を削減して、利益率を高めるという方向ならば、今よりも販売価格を上げた高感度専門店に転身させるというやり方がある。しかし、これの難点は「ライトオン」という屋号のステイタス性がすでに低下している点にある。

中の人は別として、一般的に「ライトオン」と聞いて「うおー、めちゃカッコイイ店ですやんか!」なんて反応を示す人は99%存在しない。

そのような店が「高感度・高価格セレクトショップ」へと変貌したところで、消費者の支持を取り付けることは難しいだろう。

 

次に考えられる施策は、ライトオンという店は縮小均衡させて、新屋号の店を設立してそちらを育てるというやり方である。いわゆる多ブランド戦略である。

この場合、モデルとなるのはアダストリアの多ブランド戦略ではないかと思う。グローバルワーク、ローリーズファーム、ニコアンドなどの有力な複数ブランド店を展開している。

ユニクロ、ジーユ―のように1ブランドだけで何千億円もの売上高を稼ぎ出すことは現在の国内情勢では難しい。もうそんなパイは残っていない。またライトオン単独で1000億円規模に回復することはもっと難しい。

ならば、ライトオンを100億円台で黒字化して維持しつつ、他の屋号店を複数設立してそちらを育てて、合計して300億~500億円規模の企業になることを目指した方がまだ難易度が低いのではないかと思ってしまう。ただ、新ブランドを立ち上げたとしても確実に育つという保証は一切ない。

 

企業規模は縮小しきっているため、スケールメリットが必要とされる低価格路線への変更が無理なことは端からわかっている。

「従来型のジーンズカジュアル専門店チェーン」という業態の需要自体が激減していると考えられる今、何かを大幅に変えなくてはライトオンを縮小均衡させることさえ難しい。ワールドの再建策に注目したい。

 

この記事をSNSでシェア
 comment
  • キムゴンウ より: 2025/01/09(木) 11:22 AM

    今から15.6年前 商談のため秋葉原からつくばエクスプレスに乗って終着駅に向かいその会社に向かいました。約束の時間に訪問すると、出てきた担当は理由もいわず「1時間たってからまた来て」といいどこかに消えて行きました。なにも無い終着駅周辺でなんとか時間を潰し再訪問しました。当時はその会社の扱う商品は、結構支持を得ていましたから担当も随分居丈高な態度でした。平たくいうと生意気な態度でした。ムッとしましたが人気のある商品を扱っていましたから、下手に出るしかありません。こらえて後日返事すると言質を取り戻りましたが、結局まとまらずに終わりました。ライトオンという会社を聞くと、その会社のことを思い出します。

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ