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南充浩 オフィシャルブログ

ワークマンの伸び率が鈍化している理由を考えてみた

2024年12月11日 決算 0

11月18日から急激に気温が下がり(大阪基準)めっきりと秋冬らしくなって、各社ともに冬物衣料が好調に動き出したと報道されている。

実際に、上場企業各社が発表している11月月次売上高は既存店実績が軒並み前年をクリアしていた。

12月に入ってからも時折暖かい日があるものの、全般的には順調に気温が下がり続けており、防寒アウターの売れ行きが好調だと伝えられている。

レディス専門店 冬アウター動く トップはいまだ薄手重視 | 繊研新聞

 

最新の3ヶ月予報では12月後半、1月、2月すべてが平年並みの気温推移なので、久ぶりに暖冬ではなさそうなので、12月、1月の冬物衣料の消化も期待できるのではないだろうか。

 

 

気温低下の恩恵を各社とも平等に受けている中において、ワークマンの伸び率が鈍化している。これは月次売上高だけではなく、11月に発表された2025年3月期中間決算にも顕著に表れている。

25年3月期は

売上高 657億9500万円(対前期比0・3%増)

営業利益 119億2700万円(同0・5%減)

経常利益 121億7900万円(同0・7%減)

登記利益 75億3000万円(同1・0%減)

微増収微減益に終わっている。ちなみに中間決算は前年度も減益である。

 

ちなみに決算短信によると「新規出店13店舗、閉店3店舗」とあるので、店舗数は10店舗増えていることになる。

10店舗増えているのに売上高がわずか0・3%増というのはワークマン全体の売れ行きの伸びがかなり鈍化していることがわかる。

 

24年の11月月次の既存店実績を見てみると、

売上高 1・9%増

客数 プラスマイナス0

客単価 1・9%増

となっていて、たしかに前年実績はクリアしているものの、他社の大幅な伸びに比べて微増にとどまっている。

 

ただ、今年の月次だけを見てもあまり意味は無いので、過去の11月度実績もさかのぼって見てみる。

23年11月の既存店実績は

売上高 11・6%増

客数 7・8%増

客単価 3・5%増

と大きく伸びている。

 

だから、今年11月の既存店実績が微増にとどまったのは、昨年11月が大幅に伸びたためだということになる。

 

さらにさかのぼって22年11月の既存店実績も見てみよう。

売上高 8・8%減

客数 8・6%減

客単価 0・3%減

となっており、23年11月の大幅な伸びは22年11月に大きく落ち込んだ反動ではないかと考えられる。

 

 

アパレルやアパレル小売は2020年春からのコロナ禍によって、軒並み売上高を落としている。

ところが、ワークマンは2020年春から月次で見ると、ずっと既存店売上高を大幅に伸ばし続けている。

ちなみに21年11月の既存店実績は

売上高 4・5%増

客数 3・0%増

客単価 1・5%増

となっており、20年11月の既存店実績は

売上高 0・8%増

客数 2・3%増

客単価 1・4%減

となっており、コロナ禍真っ最中だったことを考えると驚異的な好調だったといえる。

 

さらに横道にそれるが、20年10月の既存店実績は

売上高 34・5%増

客数 26・9%増

客単価 5・9%増

と爆発的な伸び率を示しており、コロナ禍真っ最中の覇者はワークマンだったのではないかと今更ながらに思う次第である。

 

 

コロナ禍真っ最中のワークマン既存店の異常な好調ぶりの要因は何だったのだろうか。様々な要因はあるだろうが、

1、メディアへの露出増加による宣伝効果

2,三密回避レジャーとしてアウトドア、キャンプ用途への需要増加

あたりではないだろうか。全社的には「新店の積極的出店による売れ行き増加」も加わるだろう。

 

 

では、決算も含めて伸び率が鈍化傾向にある理由も考えてみよう。

最も大きいのは、

アウトドア・キャンプ需要の伸びが鈍化または減少した

ということが大きいのではないか。

23年5月にコロナ自粛が全面解禁となり、コロナ禍での数少ないレジャーとして需要を集めていたアウトドア、ゴルフ需要の増加が止まった。以前からも書いているように「仕方なく」アウトドアかゴルフをやっていた人も相当数いただろうが、解禁になると、以前からのレジャーに戻って行った人も相当数多いのではないかと思う。

アウトドア・キャンプ用品は低価格衣料品が多いワークマンにとっては高価格帯に位置するため、この需要が伸び悩むと売上高も伸び悩む。

 

次に「客数が伸びていない可能性」である。

メディアへの露出が増え、時代の寵児として扱われていた時期の勢いそのままにコロナ禍に入って、当初はコロナ自粛下にありながらも順調に客数(買い上げ客数)を伸ばしていた。当然来店客数も増加の一途をたどっていただろう。

しかし、その客数が鈍化・または減少しているのではないかと考えられる。

理由は、各店舗の商品の奥行が少ないことが多いためだ。

例えば、ユーチューバーやウェブ記事で採りあげられて話題になった商品があるとする。これを買いに行っても品切れになっている場合が多い。そして追加補充されないということがほとんどである。

実際に当方も何度かそういう目にあっている。もちろん、近隣店舗の在庫検索システムはあるが、それとてほとんどの場合が品切れである。

そうなると、わざわざ店には行かない。何せ品切れが分かっているのに足を運ぶ人は相当に変わっている。

 

では、なぜそのような品切れラッシュが起きるかというと、何度も書いているように

ワークマンの店舗数の約95%がフランチャイズ店だから

である。

フランチャイズ店は個々の店が全て違うオーナーによって経営されている。そして商品を仕入れるのはオーナーの自腹資金によるものになる。

そうなると、オーナーは売れ残りを恐れて当初の仕入れ枚数を少なめに抑える。また完売してもめったに追加発注しない。できれば売り逃げしたい。

そして、ネット通販は本社の直営だからフランチャイズ店との関係を悪化させないために、大幅に在庫を抱えることがしにくい。

さらに言うなら、他のユニクロやジーユーでは、他店からの取り寄せというのも可能だが、各フランチャイズ店の経営が別なので隣町の店から商品を取り寄せるということはワークマンはできない。

かくして、ワークマンはいつも目当ての商品が無い店という評価になってしまう。

 

 

実は先日、当方よりも少し年長の60歳手前の業界の先輩から

「ワークマンにいつ行っても目当ての商品が無いし、他店からの取り寄せもしてもらえない。ネットでも品切れが多いのはなぜ?」

という質問をされたのだが、以上の説明をしたところ「それは知らんかったわ」と驚かれた次第だ。

この先輩に限らず、同じように訝し気に思っている消費者は多いのではないかと想像される。

 

先日、ワークマンの出店計画が発表されたが、フランチャイズ店体制を強化する方向のようなので、今後もこのような消費者の不満はくすぶり続けることなるだろう。

#ワークマン女子が新たな出店計画発表、地方FC路面店を増やし2031年までに400店舗体制へ

いずれ、その不満が一気に爆発して大規模な客離れの危険性もあるのではないかと、思えてならない。

 

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