
カジュアルファッションチェーン店でフランチャイズ店体制が主流にならない理由
2024年8月9日 企業研究 1
先日、ちょっと試しにジーユーで他店からのお取り寄せというのを活用してみた。
その店舗とオンライン通販に在庫が無い場合、近隣の店舗から取り寄せてもらうというもので、代金だけその店で先に支払うことができる。
これは店舗の販売員さんに直接声をかけて処理してもらわねばならないが、「受け付けました」というメールは自分のアドレスに届く。
ジーユーもユニクロも他店の在庫状況が消費者からも見られるシステムとなっている。ただ、少しのタイムラグはあるから、依頼した時点の画面では在庫在りになっていても実際にはその店舗で売り切れていたりすることもある。
取り寄せが出来なかった場合、その旨がメールで通知されて代金は返金できるそうだが、当方の場合は1週間くらいしてから「依頼した店舗に在庫が到着しました」というメール通知がきた。
ユニクロも、同様の仕組みで近隣他店からの取り寄せというのが、店舗に赴いて販売員さんに依頼すればやってもらえる。
ただし、電話での受付はジーユー、ユニクロともにやっていないので、必ず店舗に行って依頼する必要がある。
近年、ウェブやアプリの活用でこうした実店舗での買い方はさらに利便性は高まった。まあ、ただ、実店舗に行って販売員さんを捕まえて直接依頼しないといけないのは、見ず知らずの他人と話すことが苦痛である当方にとってはハードルは高いが(笑)。
しかし、この「お取り寄せサービス」というのはウェブやアプリが登場するはるか前にも企業やブランドによっては行われていた。
当方は大学を卒業してすぐにイズミヤの子会社だった衣料品販売チェーン店に入社したが、その会社でも来店したお客から依頼があれば、近隣の他店舗に確認した上でお取り寄せを行っていた。
この「近隣他店からのお取り寄せ」というのは、店舗の作業としては「店舗間移動」「店舗間振替」の派生版だといえる。
衣料品小売チェーン店にとって、結構この「店舗間移動」「店舗間振替」(企業やブランドによって少しずつ呼び方が異なる)のは意外と重要で、やはり立地によって売れる物が異なる傾向がある。
A店では残っているが、B店では早々に完売している。
なんてことは普通にある。ユニクロとジーユーの店舗在庫状況をアプリで見てみてもそういう店舗間での売れ行き格差があることは一目瞭然である。
売れてないアイテムを売れている店に移動させて売り切るというのは、衣料品のチェーン店オペレーションとしては基本中の基本で、逆にこれこそがチェーン店のメリットともいえる。
ちなみに「店舗間移動」「店舗間振替」のことを各社それぞれ略称で呼ぶが、当方が入社した企業は「テンブリ」と呼んでいた。「店舗間振替」の略だろう。「テンカン」と呼ぶ企業もある。こちらは「店舗間」の略だろう。
さて、しつこくて申し訳ないが、ワークマンがカジュアルファッション衣料を拡販するにあたって、当方は常々から95%弱もの高すぎるフランチャイズ店比率が足かせになって上手く拡販できないだろうと書いている。
前回もそのことに触れたが、フランチャイズ店比率が高すぎるデメリットは「店舗間移動」が原則としてはできなくなることも大きいといえる。
理由は何度も書いているが、フランチャイズ店の商品はそれぞれのオーナーが自腹で仕入れるため、商品を他店に移動させるということは基本的にできない。
なぜなら、A店オーナーが自腹で仕入れた物をいくら売れ行きが不振だったからといって、別のオーナーが経営するB店に送ることは難しい。他企業への資本の移動ということになってしまう。
これが作業服なら店舗間移動はほぼ必要ない。
ワークマンの「これまでのビジネスモデル」は、3年に1度くらいしかモデルチェンジの無い作業服というアイテムを3年くらいかけて値引きなしでフランチャイズ店が売り切る。
というものだったからだ。
作業服なら嗜好やファッション性は二の次で、まず機能性が重視される。次にデザインである。これが気に入れば、作業員は廃版になるまで定期的にこれを買い替えてくれる。今年売り切れなかったとしても来年か再来年には確実に売り切れる。
一方、ワークマンが拡販しようとしているカジュアルファッションは、嗜好性が最重要になるから、売れる商品が予想以上に売れる可能性もある反面、不振商品は全く売れないという可能性もある。そして、春夏秋冬の年4回のシーズンで必ずモデルチェンジが必要になるし、同じ季節でも来年物は一部商品は変更なしで継続できても、モデルチェンジしなければならない商品も多々出てくる。
そうなると、不振で売れない商品を来年、再来年まで定価で引っ張り続けるということはかなり難しい。今年売れなかった物が来年、再来年で売れるはずもない。畢竟、値下げして投げ売るしかないが、値下げしたところで必ず売り切れる保証が無いというのは、カジュアルファッションでは常識である。
通常のチェーン店なら店舗間移動で売れ残り品を処分することができやすいが、フランチャイズ同士の店舗間移動はかなり難しい。
そして、さらに言えば、ユニクロ、ジーユ―のように売れ筋商品をお客からの依頼によって近隣他店舗から取り寄せるというサービスも難しい。
ユニクロ、ジーユ―に限らず低価格であろうが高価格であろうが、チェーン店は直営店運営がほとんどである。なぜ、フランチャイズ比率がゼロまたは相当数低いのかというと、店舗間移動ができにくいということも大きな理由だろう。
フランチャイズで店舗網を広げるメリットはたしかにあるが、飲食店やコンビニに比べると、特にカジュアルファッション衣料品においてはデメリットの方が大きいといえる。
「こんな商品作りました」というだけではチェーン店ビジネスは成功しにくい。「こんな商品作りました。だから買ってね」というのは、卸売りメーカーや工場の発想に属するといえる。不振品番の後始末のことまで考えないと大規模なカジュアルファッション販売チェーンは成り立たない。なぜ、錚々たるファッション大手チェーンがいずれもフランチャイズ主流の体制をとっていないのかということをワークマンは考えてみてはどうか。
「アパレル店員 声かけ ウザい」
あるあるですがこれっていったい何故なのでしょうか?
探したのですがこれを理屈で説明できてるサイトって無いんですよね。
新旧の顧客購買プロセス(AIDMA・AISCEAS)のどこかで摩擦が起きているとか?
(例えば販売員の積極的な声かけはネットが普及する前のAIDMA時代だから通用した接客モデルで、今のAISCEASには合ってない、とか)
個人的には販売員の「売りたい!」「買わせたい!」「即決させたい!」というエゴが見えてしまうことが嫌です。売りたい為に嘘付いてるのも分かってしまうし。声かけはその場で丁重に断ればいい、とは言っても例えばショッピングモールで一日10テナント分10回NOを言わなければいけないのもめんどくさいです。