
豪華付録つきファッション雑誌ブームの終焉が顕在化
2024年7月11日 メディア 2
2000年代半ば以降、影響力の低下が取りざたされ続けているファッション雑誌だが、唯一の勝ち組だった宝島社も経営基盤が揺らぎ始めているようだ。
宝島社「身売り説」新潮社「危機説」迎える正念場 附録ブームが一服も、大量配本止められず | 特集 | 東洋経済オンライン (toyokeizai.net)
バッグなどの雑貨に薄い冊子のついた「付録付きムック本」でヒットを飛ばし、出版不況の中でも勝ち組だった宝島社。
だが近年は減収が続き、2023年8月期の売上高は約221億円と、前期比で3割近く落ち込んだ。営業損益も、2022年度に21億円、2023年度は19億円と2期連続での赤字に沈む。
とある。
ここで、宝島社のこれまでの業績はどんなものだったのかということだが、当方とて出版社の業績に詳しいわけではないから、とりあえず検索するとWikiには2020年8月期売上高が324億円と書かれてある。この数字はマイナビ2022に掲載されていたのを転載しているらしい。念のためにマイナビ2022をクリックしたがすでに削除済だったので、仮に本当だとして話を進める。
2020年8月期売上高が324億円で、23年8月期は221億円となっているから、3年間で100億円強が減収したということになる。ちょうど毎年平均で33%ずつ減収しているという計算になる。本文にある「前期比3割近く落ち込んだ」という一節と完全に符号する。
300億円の会社が毎年30億円ペースで減収し続けて200億円台になるというのは、経営からすると相当にきつい。バブル期の出版社はわけのわからないどんぶり勘定で散財しまくっていたと言われているが、バブル崩壊後は出版社も経費にはシビアになっているから、恐らく、毎年30億円ずつ減収したからといって、経費を大幅に削減するということはかなり難しいだろう。出版の場合、製本コスト以外だとほとんどが人件費や交通費になるので、これはなかなか削れない。むしろ昇給や時給増によって増える傾向が強い。
営業損失21億円、19億円という2期連続赤字になるのも仕方がない。減収していなければ吸収できていたのではないかと考えられる。
原因はなにかというと、
「付録ブームの沈静化 牽引役だったムック本の低迷だ」
と説明されている。これ以降は有料記事になるので、掻い摘んで要約する。
雑誌というのは基本的に〇万部という部数を発行する。発行部数が少なければ少ないほど製本コストが吸収できないから店頭販売価格は高くなる。発行部数が多ければ多いほど製本コストが吸収できるので原理的には店頭販売価格は安くできる。これは洋服も雑誌も工業製品も機械も同じ理屈である。
あと、ついでに言うと、雑誌や新聞の場合はページ数を増やすごとに製造コストはアップする。だから、広告がたくさん集まれば、ページ数が増えるし、広告が集まらなければ薄くなってペラペラになる。
近年、一般紙も業界紙もページ数が減ってペラペラになってきているのは広告が集まらないので、ページ数を増やせないのである。雑誌も同様で、広告が集まらない雑誌はペラペラになる。
当然、宝島社もここ10年間くらいの付録付き雑誌の好調によってそれぞれ〇万部という部数を発行していた。しかし、洋服も同様だがすべてが売り切れるとは限らない。特に本は買い取りではないから返品自由なのである。売れ残った本は出版社に必ず返品される。ただし、洋服や雑貨と違って返品された本や新聞は資産価値が無いとして廃棄処分される。
本文によると、2020年頃から売れ残った部数が増え始めているとされていて、それを裁断廃棄する際、付録を取り外さないといけないのでそのためのコストが増大しているという。何事に対してもそうだが工程が1つ増えるごとにコストは発生する。
ただ、SNS上では付録と本を分けて返品しているコンビニもあるという指摘もいただいたので、その割合がどれほどあるのかは不明だが、取り外し工程はゼロではないのだろうと推測される。
宝島社が豪華付録付き雑誌という新しい売り方を開始したのは、記憶が定かではないが2010年前後のことだったのではないかと思っている。
もし、正式な時期を記憶しておられたらご教授いただきたい。
当初こそ、宝島社の独壇場だったが、次第に同様の売り方を他社ファッション雑誌も追随するようになった。当たり前である。効果があるなら真似をする。
そうなると、誌面作りも大事だが、付録の企画内容にも頭をより一層悩ませることになる。誌面作りの良し悪しだけで売れるなら、当初から付録付きなんていう売り方はしない。誌面作りだけでは売れないから付録という売り方が発案されたのだから、付録の企画内容をよりキャッチ―にする必要性に迫られる。
月刊雑誌だと年に12個のキャッチ―な付録が必要となるが、12個すべての企画を当てることができるだろうか?しかも何年間も続けて。
これはアパレルや雑貨のMD経験者ならその苦労が分かるのではないかと思う。
12個全てヒットさせることができたとして、それを何年間も続けられるだろうか。恐らくそんなことができるMDはいないだろう。
さらにいうと、このノウハウはアパレルや雑貨の企画担当者やMDのノウハウであり、出版社や広告代理店スタッフが持っているノウハウではない。
おまけに他社も類似商法をしているわけだから、必ずヒットさせなくてはならないという状況となる。
プレッシャーもすごかっただろうし、やはりヒットせずに終わることも増えたことだろう。他社雑誌も追随していて豪華付録は特別な物ではなくなったから、次第に売れ行きも沈静化するのは極めて当たり前ということになる。
沈静化したとき、〇万部という大量発行が却って宝島を圧迫する。売れ残った場合、大量返品になってしまうからである。
今回は宝島社の記事だが、豪華付録という商法が沈静化して、陳腐化してしまった今、宝島社を含めた全ファッション雑誌は新しい売り方を模索しなくてはならなくなった。
誌面作り云々は効果が薄いというのは先にも述べた通りで、もしかするとまだ試していない誌面作りはあるかもしれないが散々各社ともにやり尽くしてきた結果が出版不況からの豪華付録という新しい売り方だったわけである。恐らく誌面作り云々だけで打破できる状況では到底ないだろう。
宝島社も含めた全ファッション雑誌は2024年以降、一層厳しい舵取りが迫られることになるだろう。
そんな宝島社の豪華付録つきムック本をどうぞ~
comment
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ミナミさん的けちんぼ生活者 より: 2024/07/11(木) 1:50 PM
当初はネーム貸しを上まわるお手頃企画で
もてはやされまくってましたよねブランドサイドはネームを貸すだけ企画にノータッチ
そして版元側は採用したての
契約社員wに丸投げしておしまいですからところが10年弱しか商売にはならなかった・・・
定期刊行物からmook形態がメインになって
書店泣かせだったそうです場所とる割に単価が安い商品の典型なので
ストリート系などの非定型ファッション誌で儲けて
次はおまけ雑誌にシフトして、
でも結局のところ、左前市場のおこぼれ商売から
脱する事が出来なかったのでしょう・・・左前市場のエンドユーザーカテゴリは、大連合を組んで
ライターその他を使いまわす路線にいくかもです音羽と一ツ橋のどっちがとるか、でしょうな
宝島社も非上場だからあんまり情報落ちてなかったですが、2019年8月期は官報の公告あって、
純利益:2億4,756万5,000円
利益剰余金:155億4,064万1,000円
総資産:341億7,869万6,000円
とかだったようですね。
毎年20億円赤字でも、利益剰余金は積み上がってるからあと4~5年は余裕ありそうw
とはいえ、なんか今は新卒の募集もしていないっぽいので、ヤバいのは確実っぽい。
ちなみに、昔、雑誌が調子良い時代は、雑誌をいっぱい刷ると広告費は増えないのに出版費用だけ増えて利益減るから、発行部数多くしないってのもあったらしいですねw