「先端層」と「マス層」の間には深くて長い溝があるという話
2024年7月9日 未分類 6
先日、興味深い記事をまた見つけた。
クラファン大手のマクアケの業績が悪化しているという内容だ。
2024年4月23日に発表された2024年9月期第2四半期の決算報告で、マクアケは売上高、売上総利益ともに前年同四半期比で大幅なマイナスとなった。売上高は-5.7%、売上総利益は-9.6%。21年9月期のコロナ禍での「巣ごもり需要」以後は、低調な業績が続いている。
とのことだが、今回はマクアケの業績なんかよりもなかなか考えさせられる一節がこの記事にはあった。
まあ、クラファン企業という点でいえば、大手としてはキャンプファイヤーがあるし、中小規模ならそれこそ有象無象が涌いている。たしか大手新聞社も売れてるのか売れてないのかわからないようなクラファンをやっていたはずである。軒数でいえばクラファン案件というのは多いが、販売する物にもよるが個々の売上高はさほど大きくない。さらに近年は失敗に終わるクラファンも増えているから、競合相手が増えれば増えるほどマクアケは埋没してしまう。
記事中にあるが、業績悪化を受けてマクアケは広告費を削減している。
今回の決算では広告宣伝費を前年同期比-43.2%まで削っている。これは業績低下への一時的な歯止めにはなるかもしれないが、当然ながら認知度の低下が危惧される。今後の成長につながる対策とは言えないだろう。
まあ、当然の対応といえるが、マクアケに限らずネット上での認知度の高さがほとんどすべてといえるのがクラファン企業であるから、広告費を削ることはネット上での露出減と認知度低下を招く。まさに自殺行為といえる。
すでに中途半端に知名度の高いマクアケが、今後さらに知名度を高められる伸びしろは少ないため、起死回生の一発は期待できないだろう。このままマクアケは衰退してゆく可能性が高い。
それよりも考えさせられる部分は以下である。
BtoBでは、テストマーケティングとして投入される「0次市場の新たな商品」と、それに対する「販売支援」がマクアケの強みだろう。戦略コンサルティング会社などでは支援できないような小規模のテストマーケティングを丁寧に支援してくれて、なおかつ販売サイトも持っている。
BtoCでは、どこにもないような「目新しい商品」を、「誰よりも早く」「ここだけ」で買えることが強みと言える。マクアケはBtoC市場では「目新しさ」「独自性」「インパクト」で勝負し、消費者に支持されてきた。それゆえにマクアケはアマゾンなど他のECサイトのように、既存商品を低価格で大量に売るような売上の伸ばし方はできない。
いわゆる「キャズム(裂け目、溝の意味)」を、マクアケは超えられていないのだ。
とある。
マクアケに出品される商品のほとんどはまだ市場に出回っていない物である。プロトタイプとかテストマーケティングとかそんな商品が多い。(まあ、企画内容が疑問な商材も多いが)
そして、販売金額は決して安くはない。一口300円とか1000円程度の物はほぼ存在しない。
ダイソーやジーユー、スリーコインズで買うよりもはるかに高い。
新商品や新サービスのローンチ後、初期市場では、「イノベーター」や「アーリーアダプター」と呼ばれる新しいモノが好きで流行に敏感な消費者が飛びつけば、売上は伸び、急激に成長できる。こうした初期市場の消費者は情報収集やリサーチが得意で、自ら情報を探しに行き、「新しい」「面白い」と感じたものであれば価格はあまり気にせずに購入する。彼らに響く商品・サービスを提供するには、徹底した差別化が必要だ。
そうして注目されるようになった新商品・新サービスが、その後にメインストリーム市場で普及して定番化していくためには、「アーリーマジョリティ」「レイトマジョリティ」といった、いわゆる一般の「多数派」消費者に受け入れられなければならない。これらの消費者は情報収集に手間と時間をかけず、商品選択でそれほど悩みたくない。わかりやすく実利がある商品・サービスを、リーズナブルに購入したい。彼らに響く商品・サービスを提供するには、類似化・標準化が必要となる。
という解説があるが、これは何もマクアケに限ったことではない。恐らくどの分野にもほとんど通用する。記事ではマクアケ(に限らずクラファンすべて)はイノベーター、アーリーアダプターに支持されやすいが、それは販売数量にはつながりにくい。「高くても珍しい物が欲しい」という人は世界的に多数派ではない。
つまり、新商品や新サービスが初期市場からメインストリーム市場に移行して人口に膾炙し、成長していくには、性格の違う消費者に受け入れられる必要がある。初期市場とメインストリーム市場の間にはキャズムがあるのだ。
とあるが、これはまさにその通りで、ほとんどすべての商材・サービスに通じるだろう。
例えば、もう完全に消えてしまったがテレビ番組を録画再生できるビデオデッキという家電があった。これが出るまでテレビ番組を録画できるという機能を持った商品がなかったから、その当時の生活は今の若い人たちが想像できないほど不便だった。何せその番組が見たかったら、放送開始時間までに帰宅するか知人や親せきの家にお邪魔するほか手段がない。しかし、必ずそれができる状況にあるとは限らない。
そんなときに登場したのがビデオデッキである。当時としては画期的だった。
40年前、当方が中学生だったときに親に頼み込んでビデオデッキを買ってもらった。部活や塾でアニメを見られないときに録画するためだ。
うろ覚えだが、40年前で価格は10万円を越えていたのではないかと思う。改めて両親に感謝するほかない。死んでしまったが。(笑)
ところが、ビデオデッキが普及し始めると値段はどんどん安くなる。当方が大学生くらいの時には3万円くらいに値下がりしたし、ビデオデッキが消え去る直前は1万円台くらいになっていた。
しかし、さして番組録画にこだわりのないマジョリティーからすれば発売当初に10万円台で買う必要性はさらさらなく、普及し始めて5万円台に値下がりしてから買えば済むのである。
一例としてビデオデッキを挙げたが、他の商材でもほぼ同様で、こだわりの無い商材なら当初の高額なうちに買う必要なんて全くなくて、普及し始めて値段が下がってからか、普及しきって値段も下がり切ってから買えば良いのである。当方の現在の買い物はほとんどそうだ。一早く物を手に入れたいという気持ちが全く理解できない。
衣料品でも同様で、マクアケに限らず様々なブランドが様々な商品を発売するが、アーリーアダプターやイノベーターが喜びそうな珍しくて高額な商品をそのままマジョリティーに大量に売ることは難しい。何しろ、買う側が想定している価格が違いすぎる。マジョリティーからすれば、もう少し安くなってから買った方がお得だし、今すぐに手に入れなければならない理由もない。
マクアケ以外でも普通に様々な衣料品が新発売されているが、高額デザイナーズブランドや物作り系高額ブランドなんかは珍しい物好きなイノベーター、アーリーアダプターが主要顧客層だといえる。ならその主要顧客層にだけ売っていればいいじゃないかと思うのだが、業績拡大を目指すにはマジョリティーに販売する必要がある。しかし、価格的に釣り合わない場合が多いし、何ならコンセプトそのものが響かない場合もあるから「そのまま」ではマジョリティーには売れにくい。
普通の企業活動ならマジョリティー向けにダウングレードして価格を引き下げて対応するのだが、一部のブランドはそうではなくて「そのままで買わない消費者の意識が低下している」というような内容の主張をしてしまう。
DCブランドブーム、ビンテージブーム、裏原宿ブームのころまではその主張についてきてくれるマジョリティーも相当数いたが、今ではその主張についてきてくれるマジョリティーは激減した。にもかかわらず、一部のブランドの売り方は変わっていない。そりゃ売れないわけである。
マクアケの苦戦を他山の石とすべきではないか。
comment
-
-
あわあわ より: 2024/07/09(火) 6:28 PM
>ひげおやじさん
ほんとそうですよね。やれGUが素晴らしいとか、ワークマンがどうとかファッション繊維関連スポンサーからお金をもらってるとは思えない記事のかずかずですよねそれと周りにむらがる元生産管理っぽいただの無知なやつだったり、昔は良かっただのどうのしか言えない典型的なおっさんコメントしか出来ないやつしかいないんですよね。悲しいブログなんですよ
嫌味を言ってる風でただの僻みってのもまた哀愁を感じさせてくれるんですよね
(ただ単にリストラされたのを逆恨みしてるだけでしょうけどね)しかもデニムが得意といいながら現在のデニム界隈の再流行や盛り上がりも知らなさそうだし、こんな老人達にはなってはいけないと反面教師にするのが一番のこのブログの活用法ですよ
-
ミナミさん的けちんぼ生活者 より: 2024/07/10(水) 9:13 AM
ミナミさんも大変だろうな・・・
まともな大人で稼ぎ頭世代の層は
よそ様のブログにコメントするほどヒマではないのがねぇ・・・私の知る限り、このブログの固定的「読者」は
そこそこの層が少なくないですから
眼に見えるゴミ反応wにめげず
今後もいろんなネタを提供してくださいね -
とおりすがりのオッサン より: 2024/07/10(水) 11:31 AM
マクアケって二期連続で結構な赤字だったんすね。
2023年9月期:4億8900万円の営業赤字
2022年9月期:3億2400万円の営業赤字23年9月期の利益剰余金もマイナス12億とかみたいで、今期も赤字だと結構ヤバそうっすね。
まぁ、私なんかは興味引くもの見つけたとしても、わざわざクラファンで先行してお金払おうとは思わないですしね。ま、日々の生活に余裕が無いからですがw対して、キャンプファイアー社は業績どうなのかとググったら、上場してないから詳しくは分かりませんが、落ちてた情報だと2016年12月期から2023年12月期まで、ずっと純利益は億単位でマイナスですね(23年だけ7,700万のマイナスでちょっと良い)。利益剰余金もマイナス57億5900万まで積み上がっちゃってるみたいっす。
クラファンは商売にならなそう・・・w
-
服好きのブルース より: 2024/07/10(水) 12:00 PM
アパレルだとナノ・ユニバースやJOURNAL STANDARDが新商品をクラファンで募集してたのを見かけました。ジャケTとか実際に商品化したものもあるのでマーケティングツールの価値はありそうですね。
-
あわあわ より: 2024/07/10(水) 12:52 PM
けちんぼさん改め僻みやさんこんにちは。暑い中クーラーもつけずにイライラしてらっしゃるみたいですが、お身体だけはご自愛ください笑
あなたのそこそこと世間のそこそこに乖離があるのですね。余計にかわいそうに感じちゃいます
それにある程度稼ぐ人は時間がないとか、足りないとか言い訳しないものなんですよミナミさんがタイヘンなのはあなたみたいな読者しかいないことじゃないでしょうか
ヒゲオヤジさんみたいな読者が増えること、真っ当な指摘を受け入れることが繊維ファッションビジネスに繋がるブログになるのではないかと思いました。あなたももう少し前向きに頑張れば、クーラーぐらいつけられる生活が待っていますよ。
頑張れ
よほどクラウドファンディングが嫌いと見受けられるが、
マスに売れなければ意味がないし売上拡大出来ないという考え方のもと、
大量に発注し工賃下げて薄利で大量に売りさばくといった
旧態然としたアパレル各社のビジネスがとっくに通用しなくなっている世の中において
なぜ、こんな記事を書いているのか不思議でしかたない。
川下の最下流に陣取って底値で買う事が楽しみだというのは個人的な価値観、生き方であって
それとビジネスを論じるのは違うのでは??