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南充浩 オフィシャルブログ

大手有名セレクトショップの接客より、はるやまの接客の方が喜ばれたという話

2024年6月17日 トレンド 0

昨年か一昨年くらいからガンプラに限らず玩具類の新発売日が土曜日に固定された。

そのため、ほとんどの土曜日早朝には田舎の国道沿いのジョーシンには開店前に20~50人くらいの行列ができる。10人台の行列なら「今日は少ないな」と思ってしまうようになった。

以前にも書いたが、5月18日は次男の結婚式のため、地元のジョーシンに並んでいる時間がなく、梅田のヨドバシカメラに並んだ。このとき、先客がすでに100人以上並んでいた。その後、レジの行列の最後尾に並んだのだが、その後も来店客は止まることがなく、自分の後ろにはざっと200人くらいまた並んだという有様だった。

当方は並行同位体を持っていないから、他の家電量販店店舗の行列を認知することはできなかったが、恐らく地元のジョーシンも20~30人くらいは並んでいただろう。

この規模の行列が全国各地の家電量販店各店舗でできていたかと思うと、転売ヤーも含めたその需要の多さに驚いてしまう。

 

 

 

翻って、衣料品業界で考えてみると、この規模の全国各地の行列というのは、2020年秋の+J復活と、しまむらの一部店舗でアニメ・漫画・ゲームコラボ衣料が発売された日くらいではないかと思う。

夏のバーゲンはもちろんのこと、冬のバーゲンすら特定の店舗しか開店前に行列はできない。

それが今のマス層の衣料品への関心の度合いだといえる。

これが80年代だと全く違っていて、Tシャツ・ポロシャツくらいしかないつまらない夏物のバーゲンでも開店前に行列ができていた。特に夏のバーゲンはそのころは7月半ばとか20日過ぎに始まっていたから、夏休みやテスト休みに突入した高校生がいわゆるDCブランドの店の前で行列を作っていた。

当時はそこまで衣料品に関心が高かったというわけである。驚くほかない。

 

 

販売員にもさまざまな人がいて良心的な人から阿漕な人まで各種存在するのだが、当時のDCブランド系、当時から今に至る大手セレクトショップの販売員は例外もあるが概して「イキった」人が多い。

特に「センス(扇子じゃないよ)」をひけらかして、「それがイケてるんです」みたいな接客をする人は珍しくないと当方は見ている。

この接客スタイルというのは、バブル期にはマス層が憧れを持って見ていたスタイルだが、今では一部のイキリ仲間とかコアなファンにしか受け入れられておらず、むしろマス層には「めんどくせえ」と言われて敬遠されている傾向にある。

 

 

 

30年前の20代のころにDCブランドを買いまくったという業界の先輩ももう60歳手前になっておられる。当方は少し下で54歳である。

この先輩ももうさすがにDCブランドを買っておられないわけだが、その手のブランドの昔話をさせたら、結構な長時間しゃべることができるほどである。

そんな先輩の息子さんが先日成人して、スーツを買いに一緒に行ったらしい。

さすがに今はDCブランドはほとんど残っていないから、最初は某有名大手上場セレクトショップへ行った。ところが、そのセレクトショップの販売員の接客は「センスが」みたいな感じで、初めてスーツを買う息子さんにとっては到底納得も共感もできるはずもなく、買わずに出てきた。

二軒目は、はるやまに行ったらしい。青山でもAOKIでもなく、はるやまだったのだが、そこの若い販売員の接客は非常に満足が行くものだったそうで、はるやまでスーツを買ったとのことだった。

 

 

衣料品にもさまざまな種類があるが、メンズのスーツというのは、基本的に初めて買うときにはあまり知識がない人が普通である。にもかかわらず、スーツというのは知識・蘊蓄・お約束が必要な衣料品である。

そういう意味においては、はるやまに限らず、青山、AOKI、コナカなどの大手紳士服チェーン店では初めのお約束をキッチリと教えてくれる確率が高い。

大手有名セレクトショップだと、ベーシックなお約束を教えてくれるというよりも、スーツマニアの人なら、応用編を教えたがるし、スーツに興味の無い人なら、センスがみたいな接客に終始してしまうことが多い。

そうなると、「普通の人」には結局選ばれず、逆に紳士服量販店が選ばれてしまうことになる。

 

 

これが、バブル期のDCブームとかバブル崩壊以降のビンテージブーム、裏原宿ブームのころなら、マス層も「センスが」という接客を憧れのまなざしで見ていて、それで何万円もするトレーナーとかジーンズ、スラックスなんかを買っていたのだが、今はそういう時代ではない。

マス層の消費者心理もだいぶと異なっている。わけのわからないセンスのスーツより、はるやまの普通のスーツを買いたいという人の方が多い。

 

 

紳士服量販店に限らず、他の低価格チェーン店との差別化を目指して「付加価値向上」とか「接客重視」とかを打ち出している中価格帯以上のブランド店が多い。

しかし、一般に理解されにくい「センス」とか、「マニアックなこだわり」とかを前面に打ち出しすぎると、却ってマス層は離れがちになるのではないかと思う。

コンビニ服でも書いたが、過剰な接客を嫌う消費者というのは業界人が思うよりも多い。最も接客が無いのがコンビニ、必要最小限の声かけにとどまるのがユニクロ、ジーユ―、無印良品、しまむらなどの大手低価格チェーンである。

それらがある程度好調・堅調に売れているという事実を真摯に受け止めるべきではないかと思う。

多分、ファッションを語り過ぎたり、センスで押し通したり、そういうことは今、求めている消費者は少ないのではないかと思う。それらを喜ぶのは同じくファン層・コア層であるからますますエコチェンバー化してしまうのではないかと思う。

逆にかつては「オタク」とさげすまれていたが、ライト層が大量に流入したことで隆盛を誇っているのがアニメ・漫画であり、当方はファッションはその逆の動きをしていると感じてしまう。

 

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