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南充浩 オフィシャルブログ

マーチャンダイズに立脚した自主企画製品を

2015年1月30日 未分類 0

 本来下請け業務である製造・加工場が自社オリジナルの製品を開発するケースが近年増えている。
そういう相談に乗ることもあるのだが、まず手っ取り早く販売先を探すなら合同展示会への出展がある。

国内だと東京ギフト・ショー、IFF、ルームス、プラグイン、マグ、ゴールドラッシュなどなど。

そういうところに出展すれば来場者は何千人、何万人とあるからかなり多数の卸売り先と成約に至るのではないかと期待する業者も多いが、一部の例外を除いて、このご時世ではそうそう多数の先と成約することは難しい。

なぜなら、各店・各流通業者とも例外はあるものの全般的には苦戦傾向にあり、あまり多くの数を発注しない。
よほど「イケる」という手ごたえを感じても、初回受注分はかなり少なめに発注する。

また、百貨店だけはSPA化に慎重な姿勢を見せているが、他の流通業者は自主企画製品の比率を高めている。
量販店・GMS、大手チェーン店、大手セレクトショップはいうに及ばず、地域有力店や個店でも自主企画製品の製造販売は珍しいことではなくなっている。
そうした場合、彼らが欲しいのは「仕入れる先」ではなく「自主企画製品を企画生産してもらえる先」なのである。
要するにOEM/ODM業者を探したいという気持ちの方が強い。

そういう来場者が多くなっているのに「うちの商品を仕入れませんか?」というスタンスのメーカーが出展しても思うほどの受注に至らないのは当然といえる。
展示した商品の受注をきっかけに、OEM/ODM案件を獲得するというのが現実的な成功例ということになるだろう。

一方、出展者側にも問題はある。

最大の問題は、合同展示会に多大な期待をかけすぎていることである。
失敗する出展者の多くは合同展示会に出展しさえすれば大丈夫だと考えている。

例えば、会期中に延べ〇万人来場する合同展示会があったとする。
それを見込んでの出展者も数百社以上あったとする。

この〇万人は等しく数百社のブースに立ち寄ることはない。
それぞれに目当てのブースが数社あるだけで、あとのブースに興味はない。
何の方策も立てていないと、この〇万人はその業者のブースを素通りするのみである。
客は〇万人いるけれどもブースには一人も立ち寄らなかったという状況にも十分になりうる。

失敗する業者の多くは、「合同展示会へお越しください」という案内状を送付しておらず、集客は展示会任せなのである。

取り引きしたい店があるなら、今のご時世ならインターネットで住所くらいは検索できる。
そして「合同展示会に出展するからぜひご来場ください」という旨の案内状を自社から送付すべきなのである。

東京ギフト・ショーの出展者説明会では必ずそういう趣旨の動画が流される。

そして、一度の展示会出展ではなかなか成果が出にくいということも頭の片隅にとめておく必要がある。

昔のように各店・各流通業ともに積極的に新商品を試したいとは思わなくなっている。
そこに参入するわけだから、初めて出展して多数の受注が入ることはありえない。
また自主企画製品の比率が増えているのは先に述べた通りである。

1度きりの出展ではなく、3回・4回と出展を継続する必要がある。

そして何社かの製造・加工業者の出展物を見続けて来て思うことがある。

果たして誰に向けてこの製品を作ったのか?と。
マーチャンダイズということを考えたことがあるのか?と。

製造・加工業者の自主企画製品の多くは、実に主観的で独りよがりである。

「ワシが作りたいから作った」「とりあえずこれが流行っているからそれに乗っかった」「一先ずうちの技術力を見てもらいたかった」

という製造動機が多い。

まあ、それは必要な動機ではあるが、それだけでは売れる商品にはならない。
それだけで売れる商品が企画できるならだれも苦労はしない。

アパレルやSPAにはMD(マーチャンダイザー)という役職がある。
本来その役職はマーチャンダイズする人のことを指す。
今では、パクリ商品のディレクションしかできないマルデダメ男(Marude・Dameo)みたいな人も増殖していると耳にはするが。

マーチャンダイズとは、

どんな商品をどれだけ作るか、価格はいくらにするか、どの店にどれだけ置くかなどを決めていくこと

である。

これがない商品は単に作ってお終いである。
サンプルを作っただけのことである。
いくら産地の技術を結集した高級生地であろうと、知名度もなく、商品としての感度も良くないものが10万円の価格では到底売れない。
例えばストールとして販売するなら相場はどれくらいが上限なのかということを考えねばならない。

もし本当にストールを10万円で売りたいならそのためにはどういう販促・広報活動をせねばならないかを考える必要がある。

そのあたりまで考えないと製造・加工業の自主企画製品は成功しない。

成功例の一つは阿江ハンカチーフのゴスロリ日傘ブランド「ルミエーブル」ではないかと思う。
開発当初に取材した際には、ゴスロリ日傘なんてどれほど売れるのかと正直疑問を感じたが、ゴスロリ日傘ブランドの少なさ、ゴスロリ愛好者・コスプレ愛好者の多さを考えると、ニッチながらも十分に市場として成り立つ。
また中心価格は1本あたり数千円であり、日傘としては安くはないが、愛好者から見ると高すぎるわけではない。
これが1万円を越える平均価格設定なら売れ行きは変わったがだろうが、数千円という設定は絶妙である。

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(ルミエーブルの商品一例)

そういう意味ではキチンとマーチャンダイズされた自主企画製品だといえる。

阿江社長によるとマーケティング専門の会社に依頼してブランドを組み立てたそうだが、大枚をはたいただけの成果はあった。

自主企画製品に参入しようとしている製造・加工業者はこの視点を持ち得ているだろうか?
もう一度、自社の取り組みを見つめ直してもらいたい。

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