素材クオリティまで低下してしまった百貨店向けアパレル
2015年2月2日 未分類 0
先日、予定が流れたので久しぶりにショップめぐりをしてみた。
今回はメンズ商品についての感想をまとめてみる。
毎年、この時期は冬物の投げ売り品を買う。
だいたい店頭の冬バーゲンのサイクルとしては、年始に30~50%オフとなり、2週間後くらいから70%オフや投げ売りセールが始まる。
そのため、筆者は年始には数点しか買わず、1月下旬から2月上旬にかけて投げ売り品を買い足すようにしている。
投げ売り品の多くは不人気な色柄・デザインの商品である。
色柄やデザインにクセがありすぎるとか、個性的すぎる商品である場合が多いが、中には「どう考えても売れないだろう」という奇抜でヘンテコリンな商品もある。
クセの強い色柄・デザインの商品は上手く使えば着こなしのアクセントになる。
また、普段自分が買わない色柄に挑戦するのも安値ならしやすい。
この数年は、ユニクロ、無印良品、ライトオン、ジーンズメイト、GAPあたりのセール商品のみを買っており、そこにレイジブルーやチャオパニックティピー、センスオブプレイスの投げ売り品をときどき挿し込む程度である。
めっきりと総合アパレルの百貨店内テナントやファッションビルのテナントで買うことが減ったし、買うどころかそれらの店内を見ることも減った。
筆者が愛用しているブランドやショップの商品、とくに自主企画商品に関していえば、10年前はそれほど品質が良いとは思ったことがない。
デザインもすごく良いと思ったことがない。
それなりにトレンドは捕まえているし価格が安いから買うが、やっぱり総合アパレルの百貨店内テナントブランドに比べると、品質面でもデザイン面でも一歩も二歩も劣っていた。
だから2000年代半ばごろまではこの時期に百貨店内テナントブランドで買うこともときどきあった。
投げ売りの時期だからだ。
しかし、2000年代後半になると、そこで買うことがめっきりと減った。
理由を一つにまとめるとこうだ。
筆者が愛用するような低価格ブランドと百貨店内テナントブランドの商品の差がなくなったからである。
デザイン面でいうとそれらの低価格自主企画製品の感度が向上し、百貨店内テナントブランドとそん色がなくなった。
また、素材面・品質面でいうと、百貨店内テナントブランドが下落し、低価格自主企画製品との差がなくなった。
そして、価格差は開いたままである。
こうなると、百貨店内テナントブランドで買う理由がない。
また同じブランド名でファッションビル内で展開しているテナントでも買う理由がない。
かくして、足が遠ざかったというわけである。
そんなこんなで、まともに百貨店内テナントブランドの投げ売り品を3年ぶりくらいにハシゴした。
感想は「低価格自主企画製品に品質面でも負けている」である。
なぜなら、使用素材が著しくチープになっているからだ。
明らかに素材面に関しても逆転されている。
例えば、某売上高3000億円規模アパレルのメンズカジュアルブランドは、ミドルゲージのセーターをポリエステル100%で編みたてている。
しかも定価は7500円だ。
これが半額になっているが3750円である。
デザインは極めてベーシックで、工夫した点というのは、スエットシャツ(トレーナー)のようなディテールを加えたことくらいだろう。丸首の下にあの謎のV字のステッチが入っている。
率直に言って、ポリエステル100%のセーターで定価7500円は高すぎると感じる。
合繊の価格にもピンキリがあるから一概に合繊100%だから必ず安くなるとは言えないが、機能素材でもなんでもないポリエステル100%のセーターは、これまでだとだいたい低価格品の象徴であった。
市場の相場は定価3000~5000円くらいだろう。
ユニクロのラムウール70%混のベーシックなセーターは1990円である。
無印良品なら3000円内外である。
SPA化したころのレイジブルーは使用素材がチープだと感じられたが、今では百貨店内テナントブランドとあまり変わらない。下手をするとレイジブルーのセーターの方が使用素材が良い。
これはレイジブルーの使用素材が幾分クオリティアップしたことと、百貨店内テナントブランドの使用素材がクオリティダウンしたことによるものだろう。
少しだけ総合アパレルの弁護をすると、2008年か2009年ごろから天然素材の原料価格が高騰し始めた。
綿、羊毛、カシミヤ、ダウン、レザーすべてである。
要因はいくつかあるが、中国の需要増大による部分もあった。
このため、低価格ブランドも含めて原料をクオリティダウンさせる必要があった。
ユニクロでもTシャツやスエットにポリエステルが20~30%混入していた時期があったが、これは綿花高騰のころに合致する。
幸い、昨年前後から中国の景気減速による需要減で、各原料とも値下がりしている。
今年後半、来年前半に投入される商品にはそれが反映され始めることだろう。
それにしても百貨店内テナントブランドの素材クオリティの低下はすさまじいと感じる。
ユニクロ、無印良品はおろかレイジブルーあたりでもアイテムによっては負けている。
百貨店・ファッションビルを拠点とするアパレルはこれでは低価格ブランドに勝ち目はない。
それらアパレルが凋落するのは当然のことだろう。
価格は高くて、品質は良くない、デザイン性にも秀でていない、では売れるはずがない。
売れるとするなら歴史ある会社の看板でのみということになる。
なぜこんなことになったのかと個人的に理由をいくつか考えてみた。
1、百貨店が徴収する歩率が高すぎること
2、OEM/ODMへ製造を丸投げしているうえに、製造工程に幾重にも中間業者が介入していること
3、セールでの投げ売りを見込んであらかじめ定価を高めに設定していること
などがあるのではないか。
百貨店が売上高から徴収する歩率は高い。
催事だと普通に売上高の4割を徴収される。
そのため、定価を高めに設定する必要が出てくる。
またOEM/ODMへの丸投げだけで済むならコストは下がるが、製造工程に怪しげなコーディネイターやらエージェントやらブローカー、アドバイザーやらが幾重にも介在している。
その都度彼らのマージンが加算されていき、最終的には割高な粗悪品が出来上がることになる。
跳梁跋扈する彼らの多くは上層部と太くて強いパイプを持っており、現場では切り捨てることができない。
日本のアパレル業界の現時点での問題点は流通の複雑構造ではなく、製造工程の複雑化によるコストアップである。
そして、投げ売りでの損失を加味してあらかじめ高めに定価が設定される。
現に百貨店向けアパレルの中には原価率が25%を下回っているところもあるし、ある企業は18%にまで低下したことがあるとも耳にした。
平均原価率38~40%を維持しているユニクロとは雲泥の差がある。
まあ、さまざまなしがらみがあってこれらを一気に改善することは難しいだろうが、放置したままで業績の回復は不可能である。
相当の痛みは伴うだろうが、少しずつでも実行していかないと、百貨店・ファッションビルを拠点とするアパレル各社はさらに凋落するだろう。