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南充浩 オフィシャルブログ

「トレンド任せ」と「別注商法」は限界に達している

2015年1月27日 未分類 0

 大手セレクトショップや著名SPAブランドのショップを覗くと、全般的にシーズンごとにすべての商品が入れ替わっていることがわかる。
昨今はベーシックなアイテムでさえ、シーズンごとに作り変えてしまっている。
ベーシックとはどういうことかというと、白やグレー無地のTシャツだったり、無地のオックスフォードボタンダウンシャツだったり、レギュラーストレートのジーンズだったりというアイテムである。

一昔前ならこれらの商品は「定番」として長期間販売されていたし、作り変えるとしても数年に一度マイナーチェンジする程度にとどまっていた。

ジーンズショップだと必ず、リーバイスの501が置かれていた。
トラッド系のお店だとブルックスブラザーズのオックスフォードボタンダウンシャツやラコステの無地ポロシャツは必ず置かれていた。
「定番」を置かずにガラっと商材全てを変えることが果たして売上高につながっているのだろうか?
つながっていないのではないか。
つながっているなら今頃アパレル業界は増収増益の会社であふれかえっているだろう。

ところが現実はそうではない。
減収減益は当たり前、前年維持でも「すごくがんばっている」と評価される状況である。

商品をすべて作り変えると、理論上、買い替え需要が見込まれる。
しかし、その仮説通りに消費者は行動してくれていない。

またオーナー、店長、バイヤー、に考える力、物を見極める力が失われているのではないか。
何を「定番」にしたら良いのかわからない。
「定番」と新商品の構成比率がどれくらいが適正なのか考えられない。

そういうことなのではないかと感じられる。

欧米の名だたるラグジュアリーブランドほとんどにデニム生地を納品しているクロキを取材したことがある。
クロキによると「ラグジュアリーブランドは新商品も投入するが、定番品も継続している。ある品番のデニム生地なんて数年以上に渡って使われ続けており、それを使った品番もほとんど変化しておらず、したとしてもマイナーチェンジにとどめている。ラグジュアリーブランドの定番と新商品の構成比率は考え抜かれている」という。

定番なくして何がブランドなのだろうか。
何がセレクトショップなのだろうか。

店頭を見ていると、定番作りにもっとも熱心なのがユニクロに見える。
なるほど今年の店頭にも昨年物が並んでいたり、定期的にマイナーチェンジは繰り返されたりしている。
けれども、無地のオックスフォードボタンダウンシャツも無地のスエットシャツ(トレーナー)も年間を通じて置かれている。
冬場なら無地ラムウールセーターは必ずある。

たしかにユニクロはシーズン物の投入にも積極的だし、時々、企画意図がわからない突飛な新商品の投入もある。

しかし、定番は必ず作り続けている。

ユニクロをバカにするファッション業界人は多いが、彼らがバカにするユニクロの方が、欧米の有名ブランドに近い姿勢を採っているのではないか。
定番と新商品の構成比率を考えられるだけの能力があるのではないか。

「ユニクロみたいな大資本だからできるんだよ」という言い訳が聴こえてきそうだが、そんなことはない。
小資本だってやろうと思えばやれる。
その実例は苦楽園のセレクトショップ「パーマネントエイジ」だろう。

http://www.permanent-age.co.jp/

ここは1店舗しかない個人オーナーの店だが、定番商品をオリジナルで企画し続けている。
無地カットソーは定番品で、ほとんど変わらない。変わったとしてもマイナーチェンジのみである。

IMG_3794

(パーマネントエイジの定番カットソー)

1店舗だけなら、当然、ロットがまとまらない。
だからここは、自社オンラインショップのほか、卸売りもするし、百貨店内の催事にも定期的に出店する。

また、何年間か売り続ける計画があるから、ある程度のロットとしてまとまり、オリジナルの定番品を作ることができる。

セレクトだろうがSPAだろうが何店舗かのチェーン店なら個店のパーマネントエイジより資本力は大きいはずだ。
個店にできてチェーン店にできないはずがない。要は考える力とやりきる覚悟があるかないかだろう。

ファッション業界人の「定番忌避」は商品だけのことではない。
素材面にも及んでいる。

カイハラやクロキといったデニム生地メーカーはブルーデニムでも何百種類という色を持っている。
そんな多数の色があるのに、別注色なるものが必要だろうか?
ユニクロやエドウインのように年間何十万本も製造するならともかく、1シーズンにせいぜい100本ほどしか製造できないようなブランドに別注色が必要だろうか。到底必要とは思えない。
何百色もあるブルーから選べば良いのではないか。顧客もそれだけの数のブルーは見分けられないし、何よりもブランド担当者自身が見分けられないだろう。

一口に「デニムの別注色」と言うが、ロープ染色するには最低でも5000メートルのロットが必要になる。
5000メートルでも少ないくらいだ。
1反=50メートルだから100反のオリジナル生地を作る覚悟があるなら別注色をオーダーすればいいが、それが無いなら安易に別注色などと口にするのはやめた方が良い。
知識の無さがバレるだけである。

逆にクロキの定番デニム生地を欧米ラグジュアリーブランドは使用しているのである。

どちらが理にかなった姿勢かは言うまでもない。
「別注」という言葉に頼らないと売れないブランド、売れない店がそれだけ増えたということだろう。
「別注」という言葉を使ってすら売れなくなってきているのだから、そろそろ「別注」商法も限界に達しているということだろう。

話を戻すと、定番を作れない・売れないままでは、結局そのブランドの顔はいつまで経ってもできないわけで、毎シーズン、ガラっと商品が変わるのは目先は大きく変化するが、そのブランドやショップの本質は見えにくい。
トレンドの風任せの浮動票だけを当てにした商売は、これ以上伸びる要素は少ない。
ブランド、ショップともに「定番」を作るだけの企画力、物を見極める力を養うべきではないか。

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