MENU

南充浩 オフィシャルブログ

効率化を追求しすぎても・・・

2015年1月21日 未分類 0

 ファッションと効率化の両立はつくづく難しいと感じる。
以前から何度も「ある程度の効率化を考慮しないとビジネスとして成り立たない」と書いてきた。
しかし、効率化を過度に追求してしまうと、ブランド価値が無くなってしまう。

ここ数年、傍目から断続的に眺めてきたジーンズチェーン店がある。

以前は地方有力店として必ず名前が挙がっていた。
NBばかりでなく、高額なインポートブランドや希少価値のあるブランドを売りこなしていると業界でもそれなりに定評があった。

ところが、代替わりをし始めた10年くらい前から極端な低価格品へとシフトしてしまった。
また、出店場所も一時期は「ユニクロの路面店が撤退した後、居ぬきで入店する」ことを堂々と政策として公言していた。
2005年か2006年ごろのことだ。実際に筆者が取材に伺った際にインタビューでそう答えている。

その店舗の外観はユニクロの路面店のほぼそのままで、多少外壁などの色を変えた程度だ。
内装は白っぽい床や壁を木目調に変更した程度だった。

取扱い商品は量販店向け卸売りメーカーから仕入れたと見られる1900円商品が主力であり、当時のユニクロ商品と比べてもバリューは低いと言わざるを得なかった。
店作り、陳列、ディスプレイどれをとっても当時のユニクロよりも劣っていると言わざるを得なかった。

こう言ってはなんだが、そこらへんに溢れているような「ちょっとダサい投げ売りバッタ店」にしか見えなかった。

その後、その路線で全国規模での出店を増やしているからビジネスの方向性としては間違っていなかったのだろうと考える。
しかし、ユニクロやしまむら、ハニーズ、ジーユー、ウィゴーあたりの低価格カジュアル店と比べると、スケールで劣っている。スケールで劣っているということは当然、商品でも劣っているということになる。
今でもときどき、地方のショッピングセンターで同社の店舗を見かけることがあるが、幾分改善されているものの、やはり大手の低価格SPAブランドに比べると商品のバリューは低い。

今のところ、80店舗前後にまで増えているが、低価格SPAは少なくとも100店舗規模がないと成り立たないし、商品のクオリティも上がらない。
そういう意味では同じ轍を踏んだのがイーブスだといえるだろう。

最近は、PBもいくつか開発しているようだが、PBのブランド名もどこかで聞いたことがあるようなブランド名ばかりなので笑ってしまう。これも効率化を追求した結果だろうか?

アーバンリサーチ、ジャーナルスタンダード、アクアガール、トゥモローランドなどのブランド名に酷似した名前ばかりである。
そのネーミングセンスは中韓の現地業者並みだと感じられる。

傍目から見ていると果たしてこの路線が正しいのかと疑問を抱いてしまう。
経営的にはどうだかわからないが、少なくともブランド価値というのはこの10年でほぼなくなってしまったといえるのではないか。

さらに昨年3月には、量販店向け卸売りメーカーに子会社化されている。
このメーカーにすれば自社商品の卸売り先の一つだろうから、子会社化は願ったり叶ったりだっただろう。
元有力店側も資本が強化されたというメリットがあったのだろうと考えられるが、逆に言えば、資金繰りが楽ではなかったから子会社化を受け入れたのではないかとも推測できる。

洋服という「物」を売る形態としてはそこそこに成功しつつあると言えるだろうが、「ファッション」を売る店としての価値は根本的に喪失したと言えるだろう。
何度も繰り返して恐縮だが、同じ低価格ゾーンでもユニクロ、しまむら、ハニーズ、ジーユー、ウィゴーあたりとはブランド価値や商品のクオリティ、店作りすべてで劣っている。
ここで生き残るのも相当に厳しい競争が待っている。

果たして「パクリ」のようなブランド名ばかり開発していては、それらに伍することは到底不可能だと感じられる。
畢竟、「低価格パロディカジュアル店」として落ち着くほかないのではないか。

それにしてもファッション性を効率の両立は難しいと改めて感じさせられる。

この記事をSNSでシェア

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ