トップバリュコレクション衣料品を1年間で売上高7倍増にする計画の危うさ
2024年3月12日 企業研究 1
先日、イトーヨーカドーが肌着・靴下などの実用衣料以外の自社企画衣料品からの撤退し、その穴埋めとしてアダストリアへの丸投げが発表されたことは記憶に新しく、繊維・衣料品業界に大きな衝撃を与えた。
衝撃の理由は主に2つあると当方は感じている。
1、アダストリアの政治力の強さ
2、企画・MDはアダストリアで在庫買い取りはイトーヨーカドーという「不平等条約」さ
である。
先にも書いたように現在の取引条件は圧倒的にアダストリアに有利なのである。イトーヨーカドーの首脳陣がどのような考えでこの取引内容を飲んだのかは外野たる当方は想像することしかできない。
それほどに衣料品事業が重荷になっていて投げ出したい一心だったのだろうか、衣料品事業を運営することへの自信を喪失していたのだろうか、などなどである。
ただ、イトーヨーカドー以外の大手総合スーパー(GMS)各社も衣料品については苦戦傾向が長らく続いているが、その打開策は見えていない。
一消費者としての立場で言うなら、年々歳々GMSの衣料品の存在感は薄れていると感じられる。ユニクロ、しまむら、ジーユーはもとよりワークマン、ハニーズ、アダストリア、センスオブプレイスあたりがあれば低価格衣料品は事足りてしまう。
そんな中、イオンは恐らくは長年のライバルでもあったイトーヨーカドーの凋落ぶりと差別化を図るべく衣料品強化を打ち出した。
このタイミングで打ち出すということは少なくとも1年くらい前からは準備を重ねていたと推測される。イトーヨーカドーのニュースを聞いてから計画を作ったのでは短時間の泥縄に過ぎないからだ。
「イオン」を運営するイオンリテールは、衣料品のカジュアルウエア部門を、子会社で自社ブランド「トップバリュコレクション」を手掛けるトップバリュコレクション(小田嶋淳子社長)に移管・統合した。
イオンリテールからカジュアル衣料をトップバリュコレクションに移管するに伴い、PBの「トップバリュコレクション」は「TVC」に刷新。展開店舗数は従来の全国82店から289店に拡大する。「企画はトップバリュコレクションが行い、生産や物流はイオンリテールの背景を活用する。従来はイオンリテールの背景を生かしきれていなかった」。2024年度(25年2月期)の「TVC」の売上目標は、「23年度比で7倍、28年度は同10倍」という。
とのことである。
イオンの衣料品はこれまで、イオンを運営するイオンリテール内に衣料品部門がありながらも、子会社のトップバリュコレクションでも自社企画衣料品ブランド「トップバリュコレクション」を企画・販売していた。いわば単純化すると衣料品部門が2つ並行存在していたわけである。
当然、重なる商品も出てくるから非効率的なことこの上ない。さらにいえばGMSの衣料品は伸び悩んでいるわけだから売れ残り品番も増えやすい。
ただ、この目標の掲げ方と発表内容には疑問しかない。
まず、展開店舗数を既存の82店舗から289店へ拡大するわけだが、約3・5倍に売り場数が増えることになる。しかし、売上高目標は25年2月期は23年度(24年2月期)と比べて7倍と大幅拡大を掲げている。
店舗数が3・5倍しか増えていないのにたった1年で売上高7倍というのは大風呂敷を広げすぎだろう。ただ、数値理論上は達成可能な方法がある。投入数量を2倍にすることである。3・5×2=7倍という数式が成り立つ。
恐らくは店舗数を3・5倍に増やして、商品の投入数量を2倍にする計画だろうと推測される。
問題は投入した数量がすべて売れるとは限らないという点にある。
これまで、GMSは衣料品の販売に苦戦し続けてきた。売上高が稼げることはあっても衣料品の営業利益率は低下し続けてきた。これが何を意味するかというと定価では売れずに大幅な値引き販売を繰り返してやっと売れてきたということである。
となると、大幅な値引き販売無しで売り切れる商品を企画・調達するノウハウをイオンも含めたGMS各社は持っていないということになり、イトーヨーカドーのアダストリアへの丸投げもそこが根底にあると考えられる。
いささか自信過剰に感じる爆上げ計画をぶち上げたトップバリュコレクションだが、直近の2023年2月期決算では、当期純損失11億7368万円を計上している。前期よりも赤字幅は縮小されているとはいえ、当期損失を連続計上している状態にあり、とてもではないがたったの1年間で衣料品売上高を7倍に増やせるほどの力量は無いと考えられる。
トップバリュコレクション株式会社 第13期決算公告 | 官報決算データベース (catr.jp)
それにしてもトップバリュコレクションの売上高の金額はいくらなのだろうか?恐らく非公表なのだろうが、元の金額がわからなければ「1年間で7倍増、5年後に10倍増」という計画が無茶な大風呂敷なのかどうかも検証しづらい。例えば、極端な言い方をすれば売上高1億円程度ならイオンの店舗数量を持ってすれば7倍の7億円に増やすことは全く難しくない。しかし、100億円だったら、今のイオンで一気に700億円に拡大することはほぼ不可能である。
とはいえ、これまで散々雑な衣料品計画と無謀な目標を掲げてきたGMSなのだから、売上高7倍増の根拠は店舗数を3・5倍にして商品投入量を2倍に増やすということではないかと当方は推測する。この理論なら5年後の売上高10倍増も店舗数が3・5倍増のまま据え置きでも商品投入量を2・9倍に増やせば10・15倍となって数値理論上は達成可能である。繰り返すがただし全品売れるとは限らないという点を除けば、である。
当方の興味はすでに、イオンがいつ計画の下方修正見直しを発表するのか?ということにしかない。
「アパレル特にアウターだけはスーパーの名前を冠してはダメ」
こんな初歩的な知識すら今の業界人は知らないのか・・・
マァ正確にいうと、安アパレル・実用アパレルにおける多店舗展開
ノウハウを知ってる人間がGMSにはもういないという事でしょうなぁ
そのいっぽうで、セブンだトップバリュだと名乗った下着類が
ポテンヒットしたから、カン違いをしたに違いありません
安セレクトとコラボして、安ネームを借りて
売場を全て安セレクトネームとGMSネームで埋めるべきです
そう考えると、フードも一緒くたのフロアで
岐阜物のディズニー服をドンキ状態の売場で売ってる
ライフはとても賢いのではないでしょうか
「売るのがむつかしいセクタだが、売らない訳にはいかない」
それがGMSにとってのアパレルですから
アリバイ的に手を抜きまくってやるのが正しいのでは?