アダストリアとの取り組みからイトーヨーカドーの「衣料品への自信喪失」が感じられる
2024年2月27日 企業研究 1
イトーヨーカドーがアダストリアに衣料品平場の企画・MDを丸投げするという発表には多くの人が驚いた。当方も驚いた。
以前にもその発表をまとめたが、今回はそれを踏まえて進めたい。
この取り組みでどちらが得をするのかというと、当方は圧倒的にアダストリアだと考える。ウィンウィンには程遠い一方的なアダストリアの得になるだろう。
企画・MD(MD教育も含めて)はアダストリアだが、新聞などでも発表されているように商品の在庫リスクはイトーヨーカドーである。ということは、売れ残り在庫がいくら出てもアダストリアにはノーリスクになる。
当方のツイッターには
「企画とMDをアダストリアに任せて、商品を全品買い取るイトーヨーカドーの姿勢が信じられない」
という内容の意見が来たが本当にその通りだと思う。
アダストリアは企画・MDが外れても何の痛手も無く、イトーヨーカドーだけがダメージを食らうというシステムになっている。そんなことはしないと思うが、アダストリアは他人のカネを使って商品企画の実験すらやろうと思えばできるわけである。
「売れるかどうかわからんけど、こんな商品を企画してみたいんだよなあ」という商品をアダストリアはノーリスクで実験として企画することができるわけである。
イトーヨーカドーは他人に生殺与奪権を与えすぎである。冨岡義勇がいたらさぞ激怒することだろう。
なぜ、イトーヨーカドーはこんな決断をしたのだろうか。
生地雅之さんのお言葉を借りるとするなら「自信の喪失」だろう。
イトーヨーカド―とアダストリアとのコラボ | コンサルタント | 生地 雅之 | アパログ | ファッション、アパレル業界のブログポータルサイト (apparel-web.com)
もう一つはアダストリアの政治力の強さである。
かつて「衣料品のヨーカドー」と評されていたが、各大手総合スーパーの衣料品売上高が落ち込みを続け、ヨーカドーも「プライド」を賭けて何度かの衣料品改革にこれまで断続的に取り組んできたが、今に至るまで成果が出ていない。そうなると、プライドもへし折れ自信を喪失しても無理からぬことだと思う。
それでも自前で改革・再建を目指すべきだという意見もあるが、2020年代では、恐らく内部にはもうその力量を持った人が残っていないのだろうと推測される。
かつて、衣料品が絶好調だった時代に活躍していた人たちのほとんどはもう2020年代には定年退職を迎えていることだろう。衣料品が傾き出してからの人ではもうノウハウや勝負勘を持っておらず、ヨーカドー以外のGMSでもそうだが、通り一遍のゼネラリスト(食品、その他部門を定期的に異動)しか残っていない。
そうなると外部の有識者と思われる人を招聘するのが通例だが、故・某元カリスマバイヤーも含めそれ以降の招聘の人選も全失敗している。
となると、もう企画・MDを実績のある企業へ丸投げしようと考えても不思議ではない。そしてそこへアダストリアの強力な政治力が発揮されたのではないだろうか。
で、この取り組みはすでに2月下旬から一部店舗から開始されているわけだが、スタート当初としては不足が目立っていると伝えられている。
先の生地さんの記事でも指摘されている。また、
という指摘もある。
「ファウンドグッド」だけで衣料品平場を代替できるとは思えない。
「子育て世代向けSPA平場」と言っても「ファウンドグッド」は多様なテイストのバラエティーをカバーする性格ではなく、「ゆる抜けて着回せる軽快で機能的なナチュラルモードカジュアル」に統一されているから、エレガンスカジュアルに着こなすミッシー系やスタイリッシュモードに着こなすバリキャリ系(「プラステ」をイメージして下さい)の客層はカバーできないし、トラディショナルなノンエイジ「ライフウエア」の「ユニクロ」とも客層はそれほど重ならないだろう。「ユニクロ」は不可欠なテナントとして並列するとして、「ファウンドグッド」がカバーできないミッシー系やバリキャリ系はブランドコンセで対応するのだろうか。
とある。カタカナが多すぎて意味が分かりにくいが、要約すると「これまでのヨーカドーの衣料品売り場にはいくつかのテイストの商品群がそれぞれあったが、例えばミセス向けエレガンスなんかはアダストリアの不得意部分であり、そのあたりの品揃えはどうするのか?」という意味になると思う。
たしかにアダストリアはカジュアルと一部モードっぽい物は得意だが例えばメンズスーツやレディースフォーマルは全く苦手である。その辺りはどうするのか?という指摘は当然だろう。平場全てをアダストリアテイストのカジュアルに変えるというのは一つの手だが、そうなるとヨーカドーの年配客層やトラッド志向の客層は間違いなく離れてしまう。
先の生地さんの記事にもほぼ同様の意味が書かれてある。もちろん生地さんが指摘なさっているように「小さく生んで大きく育てる」という方法を採っているとも考えられる。最初は得意分野から始めて徐々に商品を拡大する可能性もあるが、現状のアダストリアにミセストラッドやメンズトラッドを育成できるノウハウは無いだろう。そこを得意とする他のアパレル企業とまた別途組むという手も考えられるが、それでは取り組み先がやたらと増えることになってヨーカドーのリスクが大き過ぎるので実現性は乏しいだろう。
この取り組みの結果を見守るほかないが、合否が明確化するまでには最低でも数年くらいの期間が必要になるだろう。
1つだけハッキリしていることは、数年後に失敗していようが成功していようが、その時にはもうヨーカドーに衣料品売り場を運営するノウハウは完全に残っていないということである。
オッサンおぢいさん業界かんけー者があれこれいってますが
実態としては「ただの合理化」「上手く負ける方法を考えた」
というだけです
IY自社開発時代でも、自社に実用衣料品の開発能力なぞ
おおむかしに無くなっていて、著名コンサルw起用以外でも
振り屋を使ったモノづくりがふつうになっていました
ご本尊、福助、美濃屋とメジャーどこ全てを使っています
ところがこれだと帳合がめんどくさいから
なんなら一本化・ついでにオール・リニューリアルと
名乗って、ひっそり取扱い店舗数を大幅に絞っちゃえww
という訳です
そのまたついでに店舗閉鎖も進展中
IY時代の実店舗数と比べると、FOUND GOODの
取扱店舗数は半分以下になっていると思います
IR向けの資料には「弊社の祖業である実用衣料セクタでは
コストを大幅に削減し、規模も大幅縮小し~」
という文言が並ぶでしょう
衣料品を売るノウハウが残ろうが残るまいが
どうでもいいんです彼らの本音としては
本音は今すぐにでも止めたいわけですから