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南充浩 オフィシャルブログ

ワコールのV字回復は見込めないだろうという話

2024年2月28日 決算 3

ワコールが150人の希望退職者を募ったところ、想定していたよりも多い215人が応募した。

ワコールの希望退職者募集に215名が応募、想定の4割多い 国内リストラ – 不景気.com (fukeiki.com)

個人的には辞めずに残っていた方が良いのではないかと思う。

 

この発表の少し前に24年3月期の第三四半期連結決算が発表されたが、対前年同期比で改善される気配はなかった。

ワコールの24年3月期第三四半期連結は

売上収益 1414億700万円(対前年同期比1・7%減)

営業損失 19億8100万円

当期損失 39億5000万円

となっており、営業損失は前年同期比で1億円ほど拡大している。

ちなみに通期見通しでは営業損失が120億円となっているから、まあ想定内なのだろうが本業がまるで儲かっていない。

ワコールの凋落の原因については以前にも書いた。

「安さと快適性」に勝てなくなってきたワコールの苦境

女性肌着のシェア率首位の座を21年にはユニクロに奪われてしまった。

ユニクロの女性肌着の売りはブラトップの低価格と快適(楽さ)にある。ブラジャーを着けたことも無い当方なので着用感なんてわからないのだが、業界の女性陣からすると「ワコールのブラは胸の形が綺麗に整えられる」そうである。恐らくこのことは一般消費者の女性の多くも認知していると思われるが、それでも「楽さ」を優先している人が増えているのだろう。

また価格面でも百貨店・専門店向けブランド「ワコール」では価格が高すぎるという意見も多い。それに比べてユニクロブラトップは安価だ。

ワコールには量販店向けブランド「ウイング」もあるのでこちらである程度の低価格対応も可能なのではないかと思うがこちらもあまり好調ではない。

そういえば、最近、低価格女性肌着ではソックコウベの売れ行きが復調していると聞く。

 

2000年代半ばまでは女性肌着の絶対的王者はワコールだった。

ワコールが高くて買えない人はウイングを買っていた。当時の元妻もたしかワコールだかウイングだかを買っていたと記憶している。

最近は女性の着用肌着など知り得る状況ではないのでわからない。多分今後もわからないままだろう。

ただ、2010年頃になると世間的評価に陰りが見え始めてきた。ワコールもウイングも若年層からの支持が減り始め、認知度が低下してきた。

ワコールも無策だったわけではない。若年層向けとしてピーチジョンを子会社化し、2008年には買収してしまった。

ただ、残念なことにピーチジョンのピーク時は2005年か2006年に終わっており、それ以降は右肩下がりの業績が続いている。

24年3月期第三四半期連結でもピーチジョンは売上収益80億6600万円(対前年同期比10・9%減)、営業損失5000万円という不振に終わっている。

 

ピーチジョンは90年代後半に若い女性に支持を受け急成長したが、成長期は約10年間で終わってしまった。女性ではない当方からすると2024年現在はブランドとしての存在感は限りなく薄いと感じる。恐らく今後も売上高が上向くことは難しいだろう。あとはいかに利益率を上げるしか選択肢が残されていない。

 

ワコールの経営陣にはピーチジョンの株式を買収した2006年には、恐らく「ワコールは若年女性層に支持されていない」と気が付き始めたと想像できる。でなければわざわざ株式を買収しない。

ここでワコールが目利きを誤ったのは、当時の経営陣が年配男性だけで占められていたということが大きな要因ではなかったかと推測している。

97年に女性肌着分野を記者として担当することになって驚いたことがあった。それは中堅から大手各社の男性比率が想像以上に高いことだった。特に管理職から上はほぼ男性で占められており、役員は100%年配男性陣だった。

 

男性が女性服を扱うことが間違っているとは思わないのだが、下着類・肌着類は男性では到底理解できないことが多いのではないかと思う。ちなみに当方は女性肌着のことは全く理解できない。

だから女性肌着メーカーの経営陣が各社とも100%年配男性というところにひどく驚いたわけである。

話を戻すと50代オーバーの年配男性経営陣は2006年時点でピーチジョンに対する若い女性の支持率の動向を見誤っていた、若い女性の購買動向を感じ取ることができなかった、という状況だったのではないかと思う。

完全子会社化した2008年時点ではもう完全に「消費者の気分」を感じ取れていなかったのではないだろうか。

 

ワコールは海外での売上高が35%くらいあるが、24年3月期第三四半期連結では海外事業の営業損失は53億5000万円である。特に米国と中国で営業損失を計上しており、米国の営業損失は69億8100万円、中国の営業損失は2億6900万円に終わっている。どちらも営業損失額が縮小されたとはいえ厳しい状況は変わっていない。

海外に活路を見出せという意見を聞くこともあるが、ワコールに関しては米国・中国とも当てにはならない。

 

打開策と言われると男性たる当方には見当もつかないが、

1、サルートのような高額ブランドを強化する。売上高は縮小して利益体質にする

2、低価格で圧倒的な楽さのある商材を開発し拡販して若年層への支持率を高める

3、画期的な高機能性肌着を開発する

のどれかをやるしかないのではないだろうか。

商材に関していえば各年代の女性の意見を最重要視すべきだろう。ただ、「着用者として下着に並々ならぬこだわりを持っている女性」の意見ばかりを取り入れることは避けた方が良いだろう。かならず数寄者向け・愛好家向け・マニア向けの大衆受けしない商材が出来上がるからである。まあ、そういう愛好家向けの企業になりたいのなら話は別だが。

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2024/02/28(水) 11:34 AM

    ワコール(ワコールホールディングス)の役員見てみたら、12人中女性は3人だけでした。
    女性トップはマーケティング関連のようで、商品開発してる部門のトップは男性っぽいすね。
    まぁ現場には女性イッパイいるんでしょうけど、男社会っぽい感じは濃厚ですねw
    でも、215人早期退職したら一人あたりの人件費800万としたら17億円くらいは減るので、
    あとちょっと合理化したら営業利益は確保できるんじゃないすかね?
    ま、微々たるものかもしれませんがw

  • 大阪のオバチャン より: 2024/02/28(水) 9:06 PM

    洋服にすらお金を使わなくなったのに、下着にお金をかけるのは、ごく一部の女性だけですね。
    私は、ハンロというワコールで売られているシンプルで上質な下着が好きですけれど、ユニクロの下着の10倍高い!
    すごく良い商品なのですが。
    別ブランドでお安く作ってくれたら嬉しいですが…

  • でこぽん より: 2024/02/29(木) 9:09 PM

    若いころはがんばってワコールのサルートやパルファージュ買ってましたけど、おばちゃんになったら、だれに見せるわけでもないししまむらで十分ですね。それもノンワイヤーの楽な奴。
    若年人口減ったのも華やかな下着が売れなくなった理由かも。

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