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南充浩 オフィシャルブログ

マス層に売るには快適性と機能性が必要不可欠になりつつある

2024年2月29日 トレンド 2

毎日、電車や都心でそれとなく人々の服装を観察しているが、より鮮明になったのが、ハイテクスニーカーの着用者数が大幅に減ってきている点である。

もちろん、地域属性なんかも大いに関係するだろうから、大阪市内での観察が全て正しいわけではない。

他の地域でも観察してみてはどうだろうか。

伝統的なローテクスニーカーの着用者数があまり変わらない。ハイテク全盛期も今もそんなに変わらない。低値安定推移というところだろうか。

 

圧倒的に若い男女に増えたのはワークブーツ系、革靴系(デザインアレンジ物も含む)だろう。

そんなわけで当方も昨年12月にジーユーで1990円に値下がりしていた本革トレッキングシューズを黒とベージュの2足を買って、結構な頻度で履いている。

 

 

ただ、買った後で990円に値下がりしたのでもう少し待てば良かったと後悔している。待っていれば2000円を節約することができた。2000円もあればハイグレードのガンプラが1個買えてしまう。それほどに2000円は貴重である。

 

この手のレザーワークブーツ系を履くのは久しぶりで、ほぼ20年ぶりくらいではないかと思う。20年前のワークブーツはカッコイイかもしれないが、お世辞にも「ラク」とは言い難かった。終日立ち仕事をすると足裏が痛い。要はクッション性が悪かった。もちろん、当時としてはそれなりに考慮して製造されていたことは理解しているが、その後のスニーカー生活と比べると雲泥の差だった。

そんなわけで、年甲斐もなく流行っぽく過ごそうとジーユーで買ったわけである。高額な本格物を買ってもまた足が痛くなって履かなくなるなら無駄金である。その金でパーフェクトグレードのガンプラでも買った方がマシだ。

だからこそ、最悪捨てても惜しくないジーユーの値下がり品を買った。で、履き始めたわけだが、意外とクッション性は悪くない。インソールのクッション性が高い方だとそういう触れ込みだが、少なくとも当方にはそれは事実だと感じられた。

なので愛用できているというわけである。

もし、20年前のような履き心地だったら、間違いなく不燃物ゴミとして即座に捨てていた。

 

加齢による老化も手伝っているのかもしれないが、いくらカッコよくてもそれほどに「しんどい物」は服も靴も着用したくなくなっている。

この心理は現在の多くの人が共有しているのではないかと感じている。

ワコールの女性肌着よりもユニクロのブラトップの方が所有比率が高くなっているのもその例ではないか。もちろん価格差はあるが、しんどい従来型のブラジャーよりも「ラク」なユニクロのブラトップの方を支持する人が増えているということになる。

今後、恐らく、衣料品や服飾雑貨の全分野でマス層に売るためには「ラク」さが必要になるだろうと当方は見ている。

そんなことを考えていたらこんな記事が掲載されていた。

ドンキ、ほとんど「革靴」なスニーカーが大ヒット 軽くて疲れにくいビジネスシューズが誕生した背景(1/3 ページ) – ITmedia ビジネスオンライン

 

ドン・キホーテが2023年11月に発売した「スニーカー心地のラクすぎビジネスシューズ」(4389円)が好調だ。23年12月~24年2月の売り上げは予算比1.8倍で、現在も右肩上がりの状況だという。当初は130店舗だけで販売していたが、取り扱い店舗数は220店舗まで拡大(2月中旬時点)。ドンキにおける靴カテゴリーでは「大成功」といえる状況だ。

 

とのことだ。この記事が掲載されていたのが2月26日のことなので、取材はもう少し前に行われている。要するに2月末までの商況はまだ不明な状況で3か月間の売れ行きが予算比1・8倍で推移しているということになる。

予算をいくらで設定していたのかは不明だが、2月末に達していない時点で予算の2倍近く売れているのなら、ドンキにとっては「ヒット商品」と言える。恐らく2月末で〆れば予算比2倍に達するのではないだろうか。

正直、靴の画像はちょっと撮影アングルが良くないと感じる。革靴(ドレスシューズという意味)っぽい外観がわかりにくい。もう少し真上から撮影すべきだったのではないか。

 

軽量かつ伸縮性の高い合成皮革をアッパー(靴の底を除いた上の部分)に使用。靴底は軽くて弾力のあるEVA素材としている。EVA素材は樹脂素材の一種で、サンダルや長靴などによく使われている。こうした工夫で、一般的なビジネスシューズより軽い261グラムを実現した(Mサイズ、片足の重量)。月足氏は「一般的なビジネスシューズは400~500グラム、一般的なスニーカーは300~350グラムです。履いた瞬間に『軽い』と感じてもらえるように、スニーカーより軽くしました」と説明する。

 

とのことで、当方はここまで軽くする必要性は無かったと考えるがストレッチ性のあるアッパーとクッション性の高いEVA素材のソールはかなりラクさを感じさせられるだろう。また履き口がゴム製で伸縮するため、紐をほどかずに着脱できそうである。これも非常に便利でラクである。

これはある程度売れるだろうと思えてくる。

本格的なビジネスシューズを敬遠してそうな20~30代前半のユーザー向けに開発した商品だった。しかし、販売してみると40代が最も購入しており、次に多いのが30代と50代という結果に。30代以降の男性は「革靴をしっかり履こう」という意識が強いと考えていたが、その逆の結果となった。月足氏は「革靴のわずらわしさを取り去りたいと考えている人が実は多かったのではないか」と分析している。

という。

ビジネスドレスシューズの着用に慣れている40代、50代の購買客が多いということは、普段ビジネス時に履いている革靴にいかに苦痛を感じていたかということである。

スーツやそれに類するジャケスラにコーディネイトするために仕方なく履いていたが、見た目があまり変わらなくて(完全に一緒ではないが)圧倒的に着用感がラクな靴が登場すれば、そちらを選ぶという人が増えるのは当たり前で、それは40代・50代のビジネスマンにとっても当然の購買行動である。

当方なんて最早、冠婚葬祭の時にしかスーツも着ないし、ドレスシューズも履かない。しかし、そのスーツやドレスシューズですら、機能性品を買うようになりつつある。冠婚葬祭用のドレスシューズとして機能性革靴のテクシーリュクスを買いそろえようと思っているほどである。

アッパーが本革であることにこだわる人でなければ、このドンキの靴も選択肢に入るだろう。

本格的な高級素材を使用した衣料品・靴の存在を否定する気は毛頭ないが、今後、マス層に売りたいのなら機能性が不可欠とされることになるだろう。衣料品・靴・服飾雑貨類のマス層向け大ヒット商品は機能性商品がほとんどを占めるようになると当方は考えている。

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2024/02/29(木) 11:53 AM

    ドンキの靴を見ましたが、コレを「革靴」と言い張ってスーツに合わせるのは、さすがに無いかとw
    ティクシーリュクスとかは、見た目からちゃんとした革靴にも見えますが、ドンキのは靴底ヘンテコだし、
    靴紐通す穴は外ハトメでカジュアルだし、全体的な形も変だしで普通のビジネススーツにコレではヤバい人にしか見えないです。
    あと、ストレートチップとかウィングチップにわざわざしているのもイタいかと。

    40~50代でコレを選んで買うってどういう人なのか全然分からないっすね。
    10代20代で金なくて、靴の仕様を一切知らない人が仕方なく買うとかなら少しは分かりますが、
    スーツで仕事するような職種で50代の人がコレを履いてる人が居たら、かなりドン引きされるのでは?
    いっそ、ローテクスニーカーのほうがマシなのではないかと。うーん、謎w

  • 読者 より: 2024/03/01(金) 12:38 AM

    これは流石にITmediaの記事の趣旨がおかしいと自分も写真観て思いました。
    たとえばドンキでスーツ買う人はいないというかたぶんかなりの低所得層だと思う。
    そういう層向けに企画したシューズなのかなと思った。
    普通のリーマンはテクシーやABCマートの安い靴買っていて、
    そういう層はドンキで靴は買わないしそもそも顧客対象ではないのでしょう。
    かつては餃子靴と呼ばれる謎にダサいローファーがあったが、あれを買う層は確実に存在していた。
    そういう層を対象とした現代版がこのスニーカーなのかなと思った。

    今は本格革靴は価格が高騰し修理代金も非常に高額となって完全に嗜好品となった。
    おそらくはスニーカーでスーツが定着するとは思うけど、その形態はまだ定まっていない。
    あと20年くらいしたら式典とか公式行事だけで革靴が履かれるようになるんでしょうな。
    そして靴の修理技術はロストテクノロジーになるのではないかと思う。
    もっと言えば気候変動でもっと薄着になっているかもしれないし先のことはホントわからない。

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