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南充浩 オフィシャルブログ

連続営業赤字企業同士のコナカとサマンサタバサの経営統合

2024年2月26日 決算 0

サマンサタバサも親会社のコナカと経営統合することで上場廃止となる。

業績不振のサマンサタバサ、コナカと経営統合へ 合併はしない方針 (fashionsnap.com)

サマンサタバサは、2020年2月期から2023年2月期まで4期連続で営業損失、経常損失を計上し、2017年2月期から2023年2月期まで7期連続で当期純損失を計上。2022年下半期以降は、固定資産の売却や、コナカを引受先とする18億円のA種種類株式の発行と減資、また同社への度重なる運転資金の追加借入や、従業員への冬季賞与の不支給など、構造改革を行ってきた。

しかし、不採算店舗の撤退に伴う店舗数の減少により、顧客の来店数が前年を大きく下回ったことから、2024年2月期の売上高は前期から6.3%減少の236億4000万円に留まり、5期連続の営業損失と経常損失、そして8期連続の当期純損失を計上する見込みだという。また、同社は合併などの実質的存続性喪失に係る猶予期間に入っており、2月29日までに新規上場審査の基準に満たない場合、上場廃止となる恐れがあることから、コナカとの経営統合の検討に至ったという。

とのことである。

これを受けてサマンサタバサの株価は一瞬だけ上昇しその後90円台で推移している。

かつて2000年代半ばごろまで勢いがあったサマンサタバサが低迷に転じた理由についての個人的な考えは何度も書いてきた。

最大の問題は、女性のハンドバッグ需要の減少によるものだろうと当方は思う。実際に大阪市内の電車の中でハンドバッグをぶら下げている女性の数は少ない。その状況に対して「ハンドバッグブランドのイメージが強い」のだからサマンサタバサの利用者数が減るのは当然ではないかと思う。

電車や都心道路での観察でいうと、

 

1、ハンドバッグを日常使用する女性の数は減った

2、女性がハンドバッグを持つときはフォーマルか準フォーマルの時

 

 

という女性の生活スタイルだと感じられる。最大公約数的な意味で。

そうなると、購買先からハンドバッグブランド(実際はそれ以外の商品もあるが)が外されるのは当たり前である。

さらに観察すると、フォーマルか準フォーマルでハンドバッグを持っている女性はもう少し高いブランドを持っている。もしくはもっと安いノーブランドに近い物か。

当方が目にしたのは、コーチとかマイケルコースである。これらは10万円くらいの価格である。サマンサタバサはだいたい3万円台くらいが相場なので、1万円未満の低価格ノーブランドと比べると中間価格帯ということになる。

持つなら高い物か安い物かという二極化が進んでおり中間価格帯のサマンサタバサは選択肢に入れてもらえなくなっているのではないか。

TOPページ | DIGIDAY[日本版]

という海外情報サイトでも使用ブランドの二極化はたびたび伝えられており、マイケルコースとコーチですら「中間価格帯で選ばれなくなっている」という記事も以前に掲載された。もっと高いかもっと安いブランドのどちらかが選ばれるケースが増えているのだということである。この消費傾向は日本でも年々強まっていると感じる。もちろん例外はあるが。

 

今回は親会社に経営統合ということだが、サマンサタバサの業績の低迷ぶりを見ていると仕方のないことではないかと思う。

長い年月をかけて徐々にブランドイメージを変えるしか手は無いのではないだろうか。

 

先のファッションスナップドットコムの記事では

サマンサタバサは、経営統合後、これまで以上に情報や人的資源の共有を進め、相互の経営資源を有効活用する方針を発表。同社の主要販路である百貨店をはじめ、都市型商業施設やモール型商業施設、ECで培ってきた事業ノウハウ、ウィメンズのファッション領域に関する知見を活かしたコナカグループ全体の事業促進に加え、コナカが持つ知見を活かした新商品の開発と新規顧客の獲得していく狙い。なお、両社それぞれの強みを活かした事業展開を目的とした経営統合としていることから、合併の予定はないという。

とのことだが、個人的にはコナカとサマンサタバサのシナジー効果がまるで見えない。コナカとサマンサではほとんど客層が異なるし、ブランドイメージも全く異なる。恐らく、記事で書かれているようなシナジー効果は生まれにくいだろうと自分は見ている。

そしてちなみにコナカも23年9月期連結決算までは6期連続の営業赤字に終わっている。

 

連続営業赤字企業同士の統合なのでメリットはほとんど見られないというのが実態ではないだろうか。

 

コナカの新年度である24年9月期の第1四半期連結決算を見てみよう。

売上高 165億7400万円(対前期比3・3%減)

営業損失 1300万円

経常利益 2億8100万円(同64・9%増)

当期利益 8000万円(同85・5%減)

となっている。

24年9月期第1四半期というと、23年10~12月という3カ月間に当たる。23年5月からコロナ自粛が全面解禁となったため、昨年10~12月は人流はインバウンドも含めて完全回復している。もちろん暖冬だった影響はあるとはいえ、恐らくは22年10月~12月よりも各地の人出は増えたと考えられる。

それにもかかわらず減収・営業赤字に終わっている。売上高が減るのは仕方が無いにしても営業赤字はまずい。

いかにコナカの昨年末までの商況が厳しかったか、である。

何度も繰り返すが本業の儲けを示しているのが営業利益で、営業赤字ということは本業が儲かっていないのである。これはサマンサタバサのみならず親会社であるコナカもいかに商品やサービスが支持されていないかである。

コナカはサマンサタバサを立て直すどころか、自社の本業を立て直す必要性に迫られている。外野からの推論に過ぎないがコナカに傘下ブランドの立て直しにリソースを裂けるほどの余裕はないだろうし、サマンサタバサというブランドに適合できるようなノウハウも持ち合わせていないだろうと考えられる。

中長期的に徐々に両ブランドが回復する可能性はゼロではないだろうが、短期的に見ると、しばらくは両ブランドにとって厳しい局面が続くと考えて臨んだ方が良いだろう。

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