
「しない経営」が「やる経営」に変貌しているように感じるという話
2024年3月8日 企業研究 2
2期連続の営業減益が確実視されるワークマンだが、矢継ぎ早にリカバリー策を発表した。
主な物は4つある。
1、子供服専門業態の立ち上げ
2、ワークマン女子の積極的出店
3、シニア向け腰痛サポート商品の新投入
4、新開発の肌着を投入
という具合である。
当方はこの中では職人向けに販売される「シニア向け腰痛サポート商品」が最もヒットする可能性が高いのではないかと見ている。
残り3つは関係者やメディアが期待するほどには大ヒットとはならないのではないかと見ている。
さて、この4つに次いでまた2つ新たな取り組みが発表された。
1つはバイク向け客を目的に東京モーターサイクルショーに出展することだ。ちなみに東京モーターショーにはエドウインも出展するとのことである。
ワークマン|出展情報|第51回 東京モーターサイクルショー (motorcycleshow.org)
もう1つはランドセルの新発売である。
ワークマン初のランドセルは税込8800円、「低価格・高機能・軽い」バランス重視の開発の裏側 (fashionsnap.com)
どちらの取り組みも当方は極めて懐疑的に眺めている。
まず、バイク客だが、もともと防水透湿商品の「イージス」シリーズはバイク客から支持されていた。恐らくはその延長線上でバイク業界での拡販を狙っているのだろうと考えられる。
当方もイージスではないがワークマンの防水透湿ジャケットを買って持っている。汗っかきなので透湿効果はイマイチ感じないが、防水効果が十分にあることは体験している。
ただ、バイク市場というのは非常に小さい。いわばニッチ市場である。
バイク専門衣料ブランドはいくつかあるらしい(聞きかじり)のだが、一般的に知られているブランドはほとんどない。一方で、分厚い革ジャンと分厚いジーンズを着用して(いわゆるバイク服ではなく)乗るハーレーというジャンルも存在している。
ゴルフブーム・キャンプブームよりは目立たないがコロナ禍でバイクも恩恵を少し被り、それまで減り続けていたバイク人口が増加に転じた。ただ、自動車に乗っている人に比べるとバイク人口は増えたとはいえ、それでも少ない。
恐らく、ワークマンがバイク市場を制圧したとしても売上高はそれほど増えないだろう。
もちろん「イメージ戦略」の一環としてバイク市場を抑える程度なら理解の範疇だが、収益に大きく貢献させるつもりであるなら、それは大いに見込み違いだと言わねばならない。
次にランドセルである。
これは明らかに子供服業態立ち上げに連動させた企画だろう。
耐久性に優れたコーデュラ社製の「バリスティックナイロン」を素材に採用することで、小学生でも楽に背負えるような軽さを備えつつ、税込8800円と本革のランドセルと比較して大幅のプライスダウンを実現した。1年に1回買い替えたと仮定しても、本革の一般的なランドセル1つ購入するのと総額は変わらないという。
とのことだ。
コーデュラにせよソロテックスにせよ「ブランド合繊」の出口戦略が、ある程度数量が見込めるワークマンになってしまうというのは、いかにも今の繊維業界を象徴していると思いながらいつも眺めている。
先の引用部分で「年1回買い替えても」とあるが、通常の合皮のランドセルは6年間買い替える必要がない場合が多い。当方の息子2人も6年間ランドセルを買い替えずに済んだ。なら、通常のランドセルでいいんじゃないかと思う。
あと蛇足だが、引用部分に「本革の一般的なランドセル」とあるが、本革は一般的ではない。ランドセルは軽量化と丈夫さ、メンテナンスフリーを目的にクラリーノを始めとする耐久性の高い合皮が使われていることが一般的である。
当方が懸念するのは新開発ランドセルというのはすでにモンベルなどの先行者がそれなりに増えているという点である。もちろん価格競争力はあるのだろうが、ランドセルを買い与えるのは親や祖父母なので安ければたくさん売れやすいというものでもないだろう。
こちらも「イメージ戦略」にはなり得るものの、さほど大きな売上高は見込めないのではないかと思う。しかも年々子供の数は減っている。
矢継ぎ早に以上の6つの新施策を発表したワークマンだが、個人的には懸念を大いに感じるものが多い。いきなり手を広げすぎではないかと感じられてならない。
戦線をむやみに広げすぎているのではないか。
そしてバイクにせよ、ランドセルにせよ、すでにある程度強い先行業者が複数いるにもかかわらず飛び込んでいる。吸水速乾肌着や子供服専門業態も同様だ。
わざわざ、レッドオーシャンの各分野に飛び込んでいるように見えてしまう。
ワークマンは「しない経営」が成長につながったとされているが、今の状態は「いろいろする」「あれもこれもやる」という「する経営」「やる経営」に見えて仕方が無い。
チェーン店全店売上高が1700億円にも上る大企業になってしまえば、これまでとは商品内容も売り方も変わらざるを得ないことはよくわかる。しかし、成長の原動力となっていた点をほぼ捨ててしまって、その上で複数の新規方面に手を伸ばしている現状をかなり危なっかしく感じている。
外野たる当方からは何かに焦っているようにも見える。
イケイケドンドンでは乗り切れないのではないだろうか。
comment
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南ミツヒロ的合理主義者 より: 2024/03/12(火) 4:04 PM
IR対策ですよ、しょせん
モノがらみでカネ儲けをするためにはうりもんの企画
売り場づくり
物流
IRといろいろ必要要素がありますが、
軽工業の世界では上3つはどこも一緒です差をつけるならIR。しかし口だけの世界
ですから、ウソがまかり通ります実は数年計画で身売り先を探していて
株餅役員上級社員はそれを見越して動いていた
な~んちゃってw今回のネタは、どうでもいいネタですが
むしろ気になるのはネームの価値が
壊滅的に落ちている点でしょうノースフェイスのロゴつきの服は
なんとか中の中~の層。世帯年収700万~ワークマンがらみのロゴつきの服は
委託系肉体労働者など。世帯年収~400万
もしくは昔スーパーで服を買っていた層wというのが完全に定着しつつあります
こういうネームに付加価値ありの価格を
つけてもムダですしたがって、女子物とランドセルは
やる前から失敗するのが確定済です元商社マンが絡んでいても
当初の購買層外へ波及したゴールドウィン
口先商売で終わったワークマンどこが分岐点だったのか
数年してからしっかり検証してみたいですねセンケン対策とかニッケイ対策の違いだけかな・・・
メディアでよく取材を受けている専務さんの今回の施策についてのTVインタビューを見ました。
なんか顔の表情がこわばった印象で、背水の陣で後がないみたいに見えて、新施策もあんまり自信無いんじゃないかと感じました。