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南充浩 オフィシャルブログ

「ブランド」は高く売れるときに売るのが正解だと思った話

2023年12月13日 企業研究 6

ファッション関係のブランドというのは、人気の上下動が激しいから好調なうちに売却するのが正解ではないかと最近強くそう思うようになった。

売却後に持ち直すブランドもあれば、売却後も低迷し続けるブランドもあるが、売った後のことなど心配する必要は無い。

またブランドを売却してもその後、売った創業者は必ずしも順風満帆とも限らない。面識のある某創業者は会社を売却後いくつかの新規事業を立ち上げたがことごとく失敗している。今年は何をなさっているのか皆目わからない。何事にも「運」「タイミング」というものがあるから、それに恵まれなければいくら売却資金を持っていようがこのざまである。

 

さて、サマンサタバサの業績がさらに厳しさを増しており、下方修正で赤字が確実となった。ついでに冬のボーナス支給もなくなった。

 

サマンサタバサ「冬季賞与」不支給に 業績予想で赤字に転落

 

サマンサタバサジャパンリミテッドは12日、2024年2月期連結業績予想を下方修正した。修正後は売上高が236億円(修正前は261億円)、営業損益が10億円の赤字(同4億3000万円の黒字)、純損益が11億円の赤字(同3億2600万円の黒字)とする。

業績不振を受け、同日付で従業員への冬季賞与を不支給にすると発表した。「これまで冬季賞与の取り扱いについて議論を重ねてきたが、改めて手元流動性の確保を経営の優先課題と認識」したとコメントしている。同社の従業員数(連結)は23年2月期末で1851人。

 

とのことである。

営業損益が4億3000万円の黒字から10億円の赤字転落なのだから、すさまじい。その差額は14億3000万円である。

売上高も下方修正しているので、売れ行き不振が続いていると考えられる。23年に入ってコロナ自粛が全面的に解除され、業績が持ち直した物販が多い中でそれでも売れ行き不振が続いているのだからその不振ぶりが容易に想像できる。

ちなみに、今回の発表記事において不振の原因について

暖冬によって来店数が計画に対して8割程度にとどまる見通しで、主力のバッグやジュエリーの販売が低迷した。(WWD)

暖冬の影響等で見込んでいた客数が大きく下回り、売上高は今年10月に発表した通期業績予想の計画値の約8割程度にとどまる見通しなった。(ファッションスナップドットコム)

とどの記事でも説明されているのだが、「暖冬で客数が下回った」ということが理解できない。たしかに防寒着類をメイン商材にしているなら暖冬は売れ行きが鈍る。しかし、サマンサタバサのメイン商材は一部にアパレル衣料もあるものの、基本的にはバッグ類やアクセサリー類のはずである。暖冬だからバッグやアクセサリーは買いたくないなんていう人がどれだけいるのだろう?ちょっと考えられない。

サマンサタバサの不調の原因は、恐らくはメイン商材として一般的に認識されているハンドバッグという製品への需要が低下し続けていることにあるというのは何度も書いて来たとおりである。

ちなみに、東洋経済の過去記事でも同様の指摘がある。

サマンサタバサ、創業社長が「突如交代」の理由 5月には保有株の半分をコナカ社長に売却へ | 専門店・ブランド・消費財 | 東洋経済オンライン (toyokeizai.net)

サマンサが得意とする高単価でかっちりとしたハンドバッグは以前と比べ需要が薄れ、スポーティーなリュックサックやショルダーバッグが好まれる傾向にある。

とのことでこれは2019年4月の記事であり、状況はこの時から何も変わっていないのではないかと推察される。

 

この2019年4月には創業者がサマンサタバサをコナカに売却している。

たしかに業績は2016年をピークに下がり続けていた時期だが、下降線をたどり始めてまだ3年なのでこの当時は「持ち直しは可能」と好意的に見る向きも多かった。当方はそう思っていなかったが。

しかし、売却からさらに4年が経過し、7年連続で業績は低迷しているから「持ち直しは可能」なんて見る向きは相当減ったのではないかと思う。

そして、冒頭の問題に戻るのだが、まだ好意的な見方が多かった2019年の時点で創業者が売却したことは創業者にとっては大正解だったと当方は思う。

ブランドには好不調の波があるし、自力での立て直しは不可能に陥る場合も多いから、売れる時に売ってしまうというのは創業者や創業経営陣にとっては極めて正しいといえる。

製品ブランドではないが、ZOZOの売却も創業者にとっては正解だったといえる。あれはサマンサタバサ以上に高く売れる時に売ったという成功事例の1つだろう。

ただ、サマンサ創業者は自己資金で新会社を立ち上げているが成功するかどうかは不明である。

サマンサタバサ創業者の寺田氏が新会社設立 海外事業に本腰

この記事は2020年のものだが、そこから3年以上が経過しており、続報も噂も聞かない。好調なら噂は聞くだろうからそういう状態なのではないかと推測している。

 

先日、1年半ぶりくらいにお会いした小規模ブランド経営者がおられる。

お会いしていなかった期間でかなり事業規模を縮小されたようで、自身も地元に戻ってきて事業を継続しておられるとのことである。そして「数年前に好調だったときにブランド売却をしていればなあ」と仰っていたが今から思えば高く売れる時に売るべきだったのだろうと思う。

昔、自分が若い頃は「創業したブランドは末永く自分で舵取りすべきではないか」と思っていたが、50代になって老いぼれてくると「高く売れる時に売るのが正解ではないか」と強く思うようになっているのだが、サマンサタバサの低迷を見るにつけてもその思いを強くしている次第である。

 

そんなサマンサタバサのハンドバッグをどうぞ~

 

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 comment
  • 細野 より: 2023/12/13(水) 1:23 PM

    サマンサタバサのバッグ、ショルダーバッグだけ見たのですが、価格が高いのもそうなんですが、どれもロゴ付き、ふた付きとか、硬くて重そう、マチが薄い、もともとのサイズが小さすぎるとか使いづらいバッグの条件が揃ってる気がします。

    的外れな意見かもですが、私が見た感じはそう思いました。

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/12/13(水) 3:21 PM

    パパ活やたちんぼ系の若者が20年前ならサマンサになったと
    思うのですが、今その階層は深刻にカネありませんから・・・

    先日みかけたパパ活女子はハニーズのワゴンセール品だったな
    そして貢いでもらったヴィトンは即メルカリ行きなんでしょう

    ・パパ活時にコスプレするカバンは、2せんえん
    ・ふだん使いの布トートはせいぜい800えん

    恐ろしい時代が来たもんです

    自腹でハイブランド買うのはいつの時代でもほんのちょっとですが
    その下がのきなみダメになっている印象があります

  • キム ゴンウ より: 2023/12/14(木) 12:26 PM

    娘の誕生日祝いにてっちりを食べにいったんですが、その時に持っていたのが素っ気のない麻でできたようなカバン。「お前それどこのカバンだ!?」と聞くと無印と答える。で、あとでネットでしらべると¥399というのがわかりました。え~お父さんとのお出かけに¥399のバッグで!お父さん哀しい…。29才にもなってこの安物買い。サマンサなんてとてもじゃないけど買えませんね。ボーナス何に使っているのか…。若い女性の可処分所得が減少しているのか、昔みたくデートでおごられ自分の金は節約できた分カバンなんかに回せなくなったからか(割り勘らしいからね)。そういう自社の購入対象のライフスタイルの変化がわからないと、サマンサも売れなくなりますよね。エビちゃんがサマンサ持っててそれがインフルエンサーとなって流行したなら、あのちゃんはコンビニのビニール袋をカバン代わりにしているらしいからそんなインフルエンサーから次の流行を考えてもらわないとね…www

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/12/15(金) 12:27 PM

    知人のむすこの青学男子は、渋谷キャンパスで
    手付きポリ袋をカバン代わりにしていたら
    ネット上で人気者になったそうなw

    もっとも、これは10年前の話です
    今ではお買い物用折りたたみエコバックで
    通学する青学生がふつうにいるのだとか

    学生のときに少々がんばった経験はあって
    でも、社会人になってユルくなったのが今の30代

    学生のときからあらゆる事にがんばらないのが
    今どきの学生さん・20代それも中の上以上の層の特徴なのかも

    キム氏のお子さんレポートを読むたびにそう感じます

    マァ自分もいいトシになって、若いときの浪費がなかったら
    と思わなくもないけど、当時はカネかけて楽しくなる
    服がいっぱいあったから、それはそれで良かったのかも

    単価がデカかった物・毎日使う物ほどライフスタイルが
    反映されやすいから、こうした変化にモロに影響を
    受けるという事でしょうな

  • とおりすがりのオッサン より: 2023/12/15(金) 1:16 PM

    >キム ゴンウさま

    あの無印の麻バッグ、芸能人とかも使ってて結構流行ってるらしいです。
    なんかネットニュースでながれてましたw

  • キム ゴンウ より: 2023/12/18(月) 11:57 AM

    とおるすがりのオッサン様

    なななんと!芸能人も使用とのこと!教えていただきありがとうございます。
    芸能人がもっちゃだめ!夢がない!というのはお父さんが芸能人に夢をもっているからでしょうね
    娘には一笑に付されるでしょう

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