
「匿名○○店」の手法はアパレル製品でも取り入れてみる価値はあるという話
2023年12月14日 企業研究 1
ファッション系ブランドというのは元来、イメージを高値で売っているような側面がある。
それこそが「高付加価値」と呼ばれるものだろうが、イメージが良いからと言って必ずしも製造原価が高いわけでもないし、長持ちするわけでもないというのが現実である。
一方、「物は良いのに売れない」と嘆くブランドもこの世の中には多々ある。ここでいう「物」というのは「品質」である場合もあるし「デザイン」である場合もある。また「機能性」という場合もある。なぜ売れないのかというと「ブランドイメージが高くない」からである。
そういうブランドの逆転策として興味深かったのが4℃の匿名宝飾店だったと感じている。
4℃社長「SNSイメージから離れてジュエリー見て」名前隠した「匿名宝飾店」営業 | Business Insider Japan
9月8日、東京・原宿のキャットストリートに、期間限定のジュエリーショップ「匿名宝飾店」が現れた。あえてブランド名を隠して営業するジュエリーショップ。20日、そのブランド名が「4℃(ヨンドシー)」であることが公表された。なぜ「大手」が名前を隠して販売する必要があったのか。
ご存知の方も多いだろう。
4℃といえば結構著名なアクセサリーブランドだが、SNS上ではマイナスイメージを振りまく人も少なくなかった。当方からすると彼女らは一体何が気に入らないのかさっぱり理解できない。まあ、当方はアクセサリーを送るような女はいないし今後もできないから関係ないのだが(笑)。もらえる物は病気以外は何でもおらっておけばよいのに何を文句を言う必要があるのか理解不明である。
4℃といえば、SNSでは批判的な意見も目立つブランドとしても知られる。プレゼントで4℃を贈られた女性が苦言を呈するような投稿も散見され、ネットでは「4℃ プレゼント」と検索すると「嬉しくない」といった言葉が候補キーワードに並ぶなど、一部ではマイナスイメージがあった。
という状態である。
で、これと同じ手法が他のアパレルブランド製品でも可能ではないだろうかというのが当方の意見である。
先日、某靴下ブランドの担当者と話す機会があったのだが担当者レベルでは「匿名宝飾店の手法は靴下や肌着、その他ファッション雑貨類で取り入れてみるのは効果的ではないかと思っている」とのことだった。
ワニとか馬とかのロゴが入った靴下や肌着、雑貨類は無理だろう。またマリメッコのように特色のある柄物も無理だろう。
しかし、ロゴの無い無地物なら匿名〇〇店というやり方でブランドイメージを抜きにして商品そのものの評価を求めることは有益な取り組みだといえる。
実際、匿名宝飾店の評判はどうだったか。
匿名宝飾店に行った人の感想とみられるSNSの投稿では、「ブランドとか値段に気を取られることなく、自分の感性のままに見ることが出来てなかなかに楽しかった」「気に入ったものを見つけたからクリスマスに買おうかな」「応援したいブランドになった」など、好意的な感想が並んだ。
会場では、最後に来場者に対してブランド名を明かしている。そのうえで実施したアンケートでは、83%が「ブランドイメージが(好意的に)変わった」と回答したという。
とある。
4℃のアクセサリーにそれほど詳しいわけではないが、「4℃」とブランドロゴがデカデカと刻印されているわけでもないし、特徴の無いデザインの品番も多数ある。
販売店の看板を隠してしまって商品だけを一般消費者に見せた場合、嫌悪感を感じる人はほとんどいないだろうし、どこのブランドのアクセサリーかを見分けられる人もほとんどいないだろう。
当方はシャレードのアクセサリーだって見分けられない人がほとんどだと思う。
余談だが、80年代・90年代には「シャレード」というベタで安いアクセサリーチェーン店が関西にはあった。そういえばまだシャレードは潰れていないのだろうか?と思ってググってみると、サイトがあった。現在は梅田店しかないようでそれ以外はネット通販のみである。
ネット通販の商品を見てみると、デザイン的には悪目立ちするような品番は無くて単品で見せられた時に「これはシャレードのアクセサリーだ」と見分けられないだろうと思う。そんな鑑定士みたいな人はこの世に何人もいない。
それにしても「プロポーズリング」が「税込み6800円から」となっており安い。激安である。ブランド名を見せずにこの6800円の指輪を4℃に文句を言う女性に渡してみてはどうだろうか。
大阪 | プロポーズリング・結婚指輪・婚約指輪のシャレード梅田店 (charade.co.jp)
それはさておき。
例えば、グンゼとかワコールなんていうのは「匿名肌着店」とか出店してみてはどうだろうか。
両社ともに品質には自信があるようだが、いかんせん近年のブランドイメージがさほど高くない。ワコールの女性肌着は少々高いが、グンゼのメンズ肌着なんてユニクロのヒートテック、エアリズムとほとんど定価は変わらない(ユニクロが値上げしたから)。定価がさほど変わらないのにユニクロよりもグンゼが評価されにくいのはひとえにイメージの問題が大きいだろう。
パンストとかタイツとか靴下なんていうのもこういう取り組みが可能だろう。アツギとかナイガイとかはやってみてはどうか。
ファッション業界は昔からパクリが多い。また売り上げが稼げる取り組みに対しては右に倣えも多い。なら、イメージを改善することにある程度成功した「匿名〇〇店」という取り組みにも右に倣えしてはどうだろうか。
そんな4℃のアクセサリーをどうぞ~
某自動車評論家氏が言っていてネットでは見つからないんですが、中国の白物家電メーカーで世界トップシェアまでになったハイアールの張瑞敏CEOは以前、「ブランドイメージ意外はすべて負債だ」くらいのことを言っていて、ブランドイメージを上げる戦略で成功したっぽいすね、日本以外では。