製造・加工業への支援だけではファッション産業は活性化しない
2014年11月5日 未分類 0
日本製品の優位性を筆者は信じる立場にあるが、一概にすべての日本製品が優れているとは言えないということを昨日書いた。
筆者には、ジーンズ・カジュアルパンツ、カジュアルシャツなどのOEM製造を手掛ける事務所を経営する友人がいる。彼は元々、中国工場でそれらの製品を製造していたのだが、4年ほど前から国内工場でも手掛けるようになっており、最近では円安の影響からほとんど国内工場のみでの運営となっている。
そんな彼だが、国内工場のやり方に慣れるまではけっこう大変だったという。
例えば、ジーンズを例に採ると、中国工場ではボタン、リベット、レザーパッチ、ファスナーなどの副資材は品番と必要な個数を指定しておけば、工場側がすべて集めてくれて、自動的に取り付けてくれるという。
しかし、国内工場だとそれら副資材はすべて彼が集めて工場へ送らねばならない。
また縫製も極度に分業化しているため、ボタンホールの回りをまつるためには別の工場を手配してそちらに送らねばならない。
中国工場との取り組みになれた身にとっては非常にめんどくさいらしい。
これは単に商習慣の違いなのだが、最近、彼がこんなことをこぼしたことがある。
「日本の縫製工場は仕事に取り掛かってから『この仕様は難しい』とか『これはこの値段では合わない』とか、『納期が厳しい』と言ってくることがある。自分が長年取り組んでいた中国工場は、一旦受けたらその条件でやって、次の注文から条件の見直しを求めてくる」
とのことだ。
当然、すべての国内工場がそうではないことは言うまでもないが、そういう気質の国内工場が存在するのも事実である。
そういう意味ではこの中国工場の方がフェアな取引姿勢だと言えるのではないか。
これも蛇足ながら、そういう「フェア」な中国工場ばかりでないのも言うまでもない。
昨日のエントリーとも重複するのだが、「日本製」だからといってすべてをひとくくりにして、行政が補助金・助成金を与えることは却ってモラルハザードを起こす。
現にモラルハザードを起こしかけている生地メーカー、染色・加工場、縫製工場もあるではないか。
何事に挑戦するのでも補助金・助成金ありきという姿勢の製造加工業は多い。
それが何十万円、何百万円もの費用が必要というならわからないではないが、わずか数万円、わずか2万円の案件にも補助金でないと対応しないという企業も存在する。
彼らが日々質素に暮らしているなら、それもわかるのだが、意外に羽振り良く暮らしている。
一晩で数万円以上酒食に費やすことも珍しくない。それも1か月間に何度もだ。
それを1日ないし2日止めればたちどころに費用は捻出できると考えるのだが、彼らはそうは考えないらしい。
こういう風潮はモラルハザードといえるのではないか。
ところで、日本の文化輸出の一つとしてファッションが挙げられている。
それゆえに繊維の製造加工業を保護・支援するという考え方がある。
この考え方はわからないではないが、手落ちがあるのではないか。
いくら、生地メーカー、縫製業、染色・加工業だけを保護したところで、衣料品そのものは完成しない。
また、もし完成したとしても売り場が無ければ作っただけでお終いであり、それなら専門学校生の実習作品とほとんど同じである。
国内のファッション産業を強化しようというのであれば、小規模アパレル、独立系のデザイナー、小規模小売店、小規模OEM/ODM企業にも補助や支援が必要なのではないか。
彼らは独立当初から行政からの補助や支援などほとんど受けていない。
同じ規模の繊維製造加工業が支援を受けられるならどうして自分たちは支援を受けられないのかと考えても不思議ではない。
しかも最近はアパレルも小売店もOEM企業も大資本しか生き残れなくなりつつある。
現在、新規で開店する商業施設に入店するショップがほとんど同じであることを見てもわかるだろう。
ファッションの多様性を維持するためには、もしくは次世代の成長企業を育成するためには小資本のアパレル、小売店などへの支援も必要ではないだろうか。
知り合いの独立系デザイナーが「製造・加工業ばかりじゃなくぼくらも支援してもらいたい」とつぶやいたことがある。
今後は、その部分も考慮すべきではないか。