南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

ワールド

社名の知名度が低くて、ブランド育成に失敗しているのは三陽商会だけではない

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 はてなブックマーク - 社名の知名度が低くて、ブランド育成に失敗しているのは三陽商会だけではない
 バーバリーを失った三陽商会の危機を伝える報道は数々あるが、歴史の順を追ったこの記事はなかなか資料的価値はあるのではないかと思う。

三陽商会、バーバリー喪失ではない失速の本質
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278209/061400129/?n_cid=nbpnbo_fbbn

どこでも書かれているように、バーバリーの代わりに導入したマッキントッシュフィロソフォーが穴埋めをできなかったというのはその通りだが、三陽商会の凋落はこれだけが原因とはいえない。

記事中では、バーバリーが「中高年向けブランド」になってしまった90年代後半に、三陽商会が独自に「バーバリー・ブルーレーベル」を作って大ヒットを飛ばしたことを触れているが、単なるブルーレーベル礼賛に終わっていない部分が秀逸だと感じる。

 歌手の安室奈美恵さんが97年の結婚記者会見で同ブランドのミニスカートをはいたことで「火に油を注ぐような勢いで売れ出した」(新名宏行・現常勤監査役、社史より)。百貨店にとってもドル箱となった。「女子高校生や若者がこぞって百貨店に訪れた。万引き対策が大変だったほどだ」と大手百貨店幹部は当時を振り返る。

 ただ、世の中が「安室フィーバー」に沸いた頃の、三陽商会の業績をつぶさに見ると、ブルーレーベルが、会社全体の売り上げを底上げするほどではなかったことが分かる。ミニスカートが話題となった97年12月期の売上高は前期から1億7000万円増え1486億6800万円だったが、98年には早くも減収に転じた。2年後の2000年12月期の決算は、26億円の最終赤字となった。


バーバリーブルーレーベルが絶頂期を迎えたときでさえ、わずか1・7億円の増収、ピークは越えたとはいえまだまだ人気を維持していた2000年でさえ、26億円の最終赤字に陥っている。

ブルーレーベルを含んだバーバリーは好調だったのだろうが、それ以外のブランドがまるでダメだったということである。

そもそもバーバリー本社は、ライセンス先が勝手に作った(本来のライセンス契約ではあり得ない奇手)「ブルーレーベル」と、のちに作られる「ブラックレーベル」の存在を嫌っていたといわれている。
嫌ってはいたが好調だったので黙っていたともいわれるが、ライセンス契約が更新されなかったのもこれらを嫌っていた部分があるのかもしれない。

現在は、バーバリーとのライセンス契約を変更し、クレストブリッジとしてこのブルーレーベル、ブラックレーベルは存続しているが、かなりの不調だ。

以前にも書いたが、三陽商会も百貨店もマッキントッシュフィロソフィーが苦戦することはある程度織り込み済みだったと考えられるが、彼らの慌てふためきぶりを見ていると、クレストブリッジの不調は計算外だったのではないかと思えてくる。
しかし、バーバリーの冠ではなく、クレストブリッジなんていう名前に変われば、たとえ商品内容が同一でも売れなくなるのは当たり前だ。

で、90年代から現在に至るまでの三陽商会の失敗の本質は、バーバリー以外のブランドが育っていないことと、バーバリー以外での知名度がまるでないことだ。

ブランドが育っていないことは一目瞭然だからあえては触れない。
問題は、三陽商会という社名もバーバリー以外のブランド名も実は業界人が思っているほど知られていない。

最近はファッション専門学校生ですら「三陽商会」という社名を知らない。
「2年前までバーバリーをやっていた会社」と説明すると、「あー、わかった」と答える程度の知名度の低さである。

ちなみに専門学校生に知名度が低いのは三陽商会だけではなく、オンワード樫山、TSIホールディングス、ファイブフォックス、イトキン、レナウン、フランドルなどかつての百貨店向け大手アパレルは軒並み社名を知られていない。
ワールドは社名だけはかろうじて知られているが、それだけの存在だ。

このあたりはまったく同じ病巣があるといえる。
「カネのない若い奴らに知られる必要はない」と、各社の関係者は思うかもしれないが、知られていないのは存在しないのも同然だから、若い人にとっては存在しない会社なのである。
そして、10年後、20年後は今の若い人が中高年になる。
その時に、見ず知らずの会社の製品を選ぶだろうか。
まあ、ほとんどの人間は選ばないだろう。

20年後は、老人層が支持する会社になってしまっているだろう。
でも、これらの会社が20年後も存在しているとは限らないから、そういう心配は不要なのかもしれない。(笑)

閑話休題。

よく書けている記事だが、異説も紹介したい。

ライセンスの契約更新が上手く行かなくなりそうだとは、業界では早い時期から噂されていた。
記事中に三井物産出身の田中和夫社長が登場するが、その田中社長もバーバリーの契約更新には危機感を持っていたと、中の人に聞いたことがある。
丸っきり楽観していたわけではなかったようだ。
しかし、目に見えた対応策を掲げなかったので、結果としては同じことだったともいえるのだが。

また百貨店の再編は2000年後半に起きたが、きっかけは2000年のそごうの経営破綻だろう。
そごうの経営破綻以降、各百貨店の経営は極めて悪化し、経営統合が進んだ。
そごうも西武も経営破綻した者同士がくっついたし、経営が悪化した三越は伊勢丹に助けを求めた。

阪急と阪神は某モノ言う株主の企業買収を予防するためだったといわれる。


で、戻ると、三陽商会が金看板の「バーバリー」以外のブランド育成に失敗したということは、実は先ほど挙げた「若者に知られていない大手アパレル各社」に共通する問題だといえる。


ワールドは黒字回復と盛んに報道されているが、この2年で新たに話題になった新ブランド、復調ブランドは耳にしたことがない。黒字回復の要因は、経費削減によるものでしかない。
一説には、大規模な人員削減をやった結果、残すべきはずの人たちまでが自発的に辞めたために、逆に予想以上の黒字になったとまで言われている。

あとの各社も似たような状況で、話題ブランドをいくつか傘下に持つTSIは除外して、オンワード、レナウン、フランドル、ファイブフォックス、イトキンで、新たに伸びてきたブランド名を耳にしたことがない。

人件費を含む経費削減で当分の間は延命し続けるだろうが、それはいつまで続けることができるのか。

記事で三陽商会に指摘された事実は、旧大手各社に共通した課題だといえる。



インスタグラム始めました~♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro/



誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25





ワールドの持株会社の新社名を見て感じること

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 はてなブックマーク - ワールドの持株会社の新社名を見て感じること
 かねてより4月1日から持ち株会社に移行すると発表されていたワールドだが、その各社の新社名が発表された。

数が多すぎて覚えきれないので以下を参照してもらいたい。

http://www.senken.co.jp/news/corporation/world-170214/

さて、一覧表でみてもらってもわかるように「ワールド」の冠が付く会社と、そうでない会社がある。

ここからは個人的な意見になるが、「ワールド」の冠が付かない会社は基本的に今後売却される方向になるのではないかと見ている。

そもそも「持ち株会社」にするメリットとは一般的に

企業買収や事業売却などがスムーズに行いやすい事です。

他の会社を買収する際、吸収合併するには時間も手間もかかります。買収される側の企業には、クライアントや顧客への社名変更の告知、あるいは看板やら社員の名刺やら、色んなものを変更する必要があり、膨大なコストが掛かります。社名変更に伴い、手違いなど大小様々なトラブルも起こるでしょう。

ところが、持株会社を設けていて、その傘下に入る形式にすれば、買収される企業はそのままの社名で事業を継続でき、コストやトラブルはほとんど発生しません。同様に、事業の一部を売却する場合も、持株会社にしていれば様々な手間やコストを省略できます。

http://www.777money.com/tameru/column/motikabu_riyuu.html

と説明されている。

だから、ワールドが持ち株会社制にするのは、企業買収もさることながら、不振ブランドの売却が目的ではないかと個人的には見ている。

そして「ワールド」の冠が付かない新会社はその対象ではないかと思う。

先程の繊研プラスの一覧表を見ると、ワールドの冠が付く会社はいわゆる管理、開発会社がほとんどで、それ以外のメンズ、レディース、セレクトなどの業態はすべてワールドの冠が付かないので、今後ワールドは管理・開発関係の会社のみ残して、メンズやレディースなどは条件次第で売却することがあり得るのではないかと思う。

一つだけ奇異に感じるのは、卸売り事業だけが「ワールド」の冠を付けた社名を与えられており、ここは手放すつもりはないようだ。

アパレル業界は90年代後半から狂ったようにSPA化を推進してきたが、近年、そのSPA事業が行き詰まる企業が増えた。
ワールドしかりイトキンしかり三陽商会しかりである。

逆にここ2~3年は卸売り事業が見直される会社も出てきた。
ワールドもその一つである。
売上高は大きく伸びないものの、ある程度の利益率は確保できるからだ。

ワールドは寺井秀蔵社長のもと、97年から猛烈な勢いで卸売り事業を毎年縮小し続けてきた。
2003年ごろまで筆者は決算会見に出席していたが、「今年は卸売り事業を〇〇%縮小しました」とむしろ誇らしげに発表されていたことを覚えている。

しかし、猛烈なSPA化は近年の業界を見ていれば諸刃の剣だったことがわかる。

SPAはたしかに成功すれば高収益が見込めるが、売り上げ不振に陥れば立て直すことが難しい。
なぜなら、企画から販売までを一貫で手掛けているため、店頭の売れ行きを修正しにくいからだ。
売れないということはその店自体、ブランド自体が支持されにくくなっているため、店舗内装も含めてよほど大幅な軌道修正でもしない限りは、消費者に振り向いてもらうことができない。

極端な話、ブランド名は同じでも丸っきりすべてを変えてしまうくらいのことが要求される。

一方、卸売りは、売り上げ規模を大きくするのは難しいが、売り先を変えることができる。
なぜなら、売り先は自社店舗ではなく他社店舗だからだ。

A店から売り先をC店に変える。

そんなことが可能になる。

結果的に、C店に変えたおかげでブランド自体の消費者イメージが変わることもある。

だから卸売り業態が見直されつつあり、ワールドもその例外ではないといわれており、卸売り事業だけがワールドの冠を残すようになったと業界ではみられている。

ワールドに限らず、業界には売りに出されているブランドが数多くあるが、不振SPAブランドは総じて評価が低く買い手がつかない状況にある。

さて、今後は、ワールドも含めて様々なかつての著名ブランドが売却や廃止の憂き目を見ると考えられており、ブランド勢力図は大きく変化することになるだろう。

5年後、10年後はどのようになっているのか、なかなか想像もできない。






コスト削減だけでは縮小し続けることになる

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 はてなブックマーク - コスト削減だけでは縮小し続けることになる
 経営が悪化した企業はコスト削減を行う。
これは定石だが、削減した後に新たな方策を打ち出さないと、そのまま業績は縮小し続けることになる。

先日、ワールドの2016年3月期の決算が発表された。
利益は大幅に改善されたが、これはブランド閉鎖、店舗閉鎖、首切りを含めたリストラによって生じた利益で、
本体事業が好転したわけではない。
要するに服が売れて業績が回復したのではないということである。

ワールド、営業利益2.2倍  13ブランド・479店舗閉鎖で販管費圧縮
https://www.wwdjapan.com/business/2016/05/17/00020547.html

ワールドの2016年3月期決算(国際会計基準)は、売上高に相当する売上収益が前期比93.2%の2782億円、営業利益が同221.7%の116億円、純利益が16.5%の7億4300万円だった。抜本的構造改革で推進したブランド閉鎖と不採算店舗退店によって減収したものの、販管費を約180億円圧縮したことで営業利益は倍増した。上山健二・社長が昨年の就任時に宣言した「17年3月期に営業利益100億円突破」の目標を1年前倒しで達成した。

不採算事業の整理では、上期の「アニマ」「ジンジャーエール」に続き、下期に「コキュ」「ミニマム」「フリーピープル」「ボイコット」「ラギッドファクトリー」「ブラウンバニー」「アナザーサイドスクエア」「メディテラス」「フォブコープエンテーゼ」「ラフマ」「ブールアネージュ」の13事業を閉鎖した。国内連結退店数は479店舗。終了事業の赤字総額は10億円だった。

とのことである。

ワールドが今期何か効果的な新しい取り組みがあるかというと筆者の目には皆無に見える。
ネット通販の強化を昨年に発表したが、正直なところ今のワールドのやり方でネット通販が大幅に伸びるとは思えない。
ワールドだけではない。オンワード樫山もファイブフォックスもTSIもイトキンも今のやり方ではネット通販が大きく伸びる可能性は限りなくゼロに近い。

そもそもこれらの旧大手各社はウェブ上での露出があまりにも少ない。
投稿があったとしても職務を遂行したレベルの面白みのない投稿しかない。
これではウェブでのファンは増えない。

インスタグラマーを積極的に使っている(もちろん有料で)ユニクロやジーユーの後塵をここでも拝しているわけである。

上にワールドの廃止ブランドが列挙されているが、例えばアニマとかジンジャーエールみたいな泡沫ブランドはともかくとして、ボイコットなんていうかつての著名ブランドが廃止になっているが、ウェブ上ではほとんど話題にはならなかった。
それほどまでに旧大手の各ブランドの注目度は低下しているといえる。

コスト削減だけを続けているなら、このまま縮小し続けていくことになるだろう。

大手ばかりではなく、中小零細企業でもそういう企業がアパレル業界には多い。

先日、某カジュアルアパレルに勤務する知人から連絡があった。
コンサルタントの進言を入れて、コスト削減に取り組むそうである。
まあ、他人の会社なのでどうなろうとまったく構わないのだが、聞いていると基幹ブランドだけ残して、新規ブランドはすべて廃止するそうである。

こういう企業は身の回りでけっこうある。

コスト削減に取り組むことは当然として、そもそもその基幹ブランドが凋落してきたから新規ブランドを開始したという経緯がある。
ブランドというものはいずれ勢いがなくなるので、その時に備えて複数のブランドを展開しておくほうがリスクが少ない。
新規ブランドを廃止して、凋落した基幹ブランドに特化したところでこれまでのやり方を改めることができなければこのまま縮小し続けることになる。

おそらくこのまま基幹ブランドにしがみついて縮小スパイラルに陥っていくと見ている。

基幹ブランドを大胆にリニューアルすることもできなければ、これまでのやり方を墨守して、あと10年持つかどうかではないかと思う。

コスト削減、不採算ブランドの廃止は経営回復には必要不可欠だが、次の成長戦略も同時に必要とされる。
アパレル業界は閉塞感が長らく漂っているがゆえに、新たなことに積極的に取り組める体質ではなくなりつつある。
失敗ができるほど余裕がない。もっと正確にいうと経営者に余裕がない。

今回挙げた旧大手や某カジュアルアパレルのように縮小スパイラルに突入して、遠からずなくなる企業、ブランドがまだまだ現れることだけは間違いないだろう。









ファッション雑誌掲載とタレントとの契約は必ずしも効力を発揮しなくなった

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 はてなブックマーク - ファッション雑誌掲載とタレントとの契約は必ずしも効力を発揮しなくなった
 衣料品ブランドの販促について考えさせられることがあった。

まったく無力化しているわけではなく、それなりに効力がある場合もあるのだが、ファッション雑誌への掲載・広告出稿とタレントとの契約は格段に影響力が小さくなっている。

ファッション雑誌への掲載・広告出稿と人気タレントとの契約という手法は2000年代半ばでピークアウトした手法だと感じる。

70年代・80年代にこの手法がどれくらい有効だったのかは、筆者が学生だったのでわからないが、90年代はこの手法がもっとも有効だった。
2016年現在も多少の効力は残っており、ときどきこれが当たるブランドもある。
しかし、90年代から2000年半ばまではこの手法を採れば8割くらいのブランドがなんらかの効果を得ていた。

現在だとこの手法で効果を得られるブランドは2~3割ではないかと思う。
決して今でもバカにはできない手法だが、必ず効果のある手法ではなくなったといえる。


【 実践 】雑誌の編集方法から学ぶ、売れる販促・プロモーション術 <前編>
https://armador.co.jp/blog/promotion2/

まずファッション誌に掲載するという選択肢は、予算があったとしても即刻選択肢から外します。理由としては、営業担当者が持ってきた好きでもないブランドが編集担当者にぞんざいに扱われ、フォーマット通りのタイアップページしか出来上がってこないことを知っているから。

あ、すいません!いきなり核心ついてしまいましたか?じゃ濁します。そういうところが中にはあるから(笑)。

雑誌に何百万もかけて掲載するなら、美容師さんのように一着売ったら何%バックという感じで店舗スタッフの方に還元した方がよっぽど売上が上がると思います。つか上がります。

じゃ、どうするかというと自社のシーズンカタログ、ニュースレター、メルマガ、SNS、通販ページのランディングページといった自社が持つメディアを使っていきます。


と書かれており、一部の例外を除いて大部分はここで指摘されている通りである。

これが2016年現在の販促のセオリーではないか。

先日、久しぶりに某大手アパレルの人と話す機会があった。
そのアパレルはショッピングセンターへのテナント出店用の低価格ブランドを展開しているのだが、そのブランド名を存じ上げなかった。
しかしよく聴いてみると売上高が80億円内外あるそうである。

いくら量販店内のテナントとはいえ、80億円というとそれなりの規模であり、1月末で全店閉鎖になるイーブスや、先日民事再生法を申請したWOMBよりもよほど大規模である。

それでもブランドの知名度が低いということは、販促、広報活動が効果的ではないということになる。

さらにいろいろと尋ねてみると、かつては佐々木希さんや優香さんをキャラクター起用したこともあるとのことだが、それすらも筆者の記憶にはまったく残っていない。
ついでにいうとそういうタレントは2,3年おきにいろいろなブランドと契約するので、どのブランドと契約していたかなんてすべて把握するのはよほどタレント自体に興味を持っている人以外は不可能である。

そして筆者はタレントにこれっぽっちも興味を持っていない。

すでにタレントとの契約にそれほど効果がないということはこの80億円規模のブランドが証明しているではないか。
もちろん例外もあるが、最早「人気タレントと契約していれば確実」という時代ではなくなっている。


ドラマへの衣装提供は効力を発揮する場合があるといわれているが、これとても90年代後半から2000年代半ばまでの比ではない。
効力を発揮する場合もあるが、まるで無反応な場合も多い。


雑誌、タレントとの契約、ドラマへの衣装提供、この3つにこだわる広報、プレスは現在も数多く残っているが、2000年代半ばまでの成功体験に固執しているだけだといえる。


また別のメンズブランドは2010年以降、超人気俳優を起用して3カ月連続で6ページごとのタイアップ記事をファッション雑誌に掲載したが、あえなくブランドは休止である。
その人気俳優は松本潤さんとか小栗旬さんとか松田翔太さんクラスの人気俳優であるが、結果的にはまったく効力がなかったといえる。


オムニチャネル化が叫ばれている現在では、先のブログが指摘する通り、雑誌への掲載はもっとも後回しにしてSNSを活用してECを強化することが最重要課題ではないかと思う。

しかし、以前にも書いたように、すでに大手ECモールと直営サイトがひしめき合っている状況下において、「単に出店」すれば良いというものではない。
それでは確実に埋没してしまう。

昨年、ワールドの新社長に就任した上山健二氏はインタビューでこう答えている。

https://www.wwdjapan.com/focus/interview/president/2015-05-07/6913

上山:カギを握るのはウェブだ。出店だけがお客さまへのアプローチではない。もっとウェブでバズを起こして、お客さまに商品やブランドを訴求する方法があるはず。リアル店舗を否定するわけではないが、まず出店ありきという発想は変えないといけない。ワールドが持つ魅力的なブランドや多様な店舗網とウェブを効果的に連動させたO2Oを構築する。eコマースにも注力する。当社のデジタルプラットフォーム本部は「WWW.300(ワールドワイドウェブ300) 」という目標を掲げた。現在、eコマースの売上高は130億円内外。これを中期的に300 億円規模に育てる。

とのことである。
目標設定としては過不足ない。
しかし、どうやって売上高を2倍以上に高めるつもりだろうか?
またぞろ、ファッション雑誌、タレント契約という過去の遺物の手法に頼るつもりだろうか?
それがまったく効果がなくなったことはワールド自身が一番感じていると思うのだが。

続けて

当社のeコマースは今 のところ自社ブランドを巨大モールのようにそろえる「ワールド オンライン ストア」で行っている。だが、ブランドのコアなファンのお客さまの心に響くようにするために、ブランドごとに個性的なeコマースサイトを作 る必要がある。店舗の内装を磨くように、各ブランドのサイトを光らせたい。

とも述べておられるが、内装を光らせるだけではウェブの場合、集客力は上昇しない。

例えば、雑誌的コーディネイトを数多く掲載している携帯通販の夢展望が赤字を続けている。
陳列手法から言えばピーク時から変わっていないし、ピーク時から年月が経過した分、洗練されているはずであるが、厳しい業績が続いている。

単に「陳列手法」だけでは効果がないという実例ではないか。

SNSで注目を集めるためには、「広告」「宣伝」的な書き込みよりも、「読み物」的な書き込みを強化する必要がある。
「読み物」的書き込みを強化すれば、当然好き嫌いが生じ、ファンも獲得できるがアンチも相当数生んでしまう。

全方位を狙った優等生的書き込みを続けているワールドを含めた大手アパレル各社がそこに踏み込むことができるだろうか。
筆者はできないと見ている。
なぜできないかというと上層部と現場スタッフがアンチを生じさせることを過度に恐れているからだ。

ユニクロのように全世代に売ることを目指しているならそういう姿勢でも良いが、大手アパレル各社は最早そんな悠長なことを言っていられる状況ではない。
どうせ数十億円規模の各ブランドを強化するほかないのだから、ブランドが顧客を絞り込まねばならない。
そのためには万人に過不足のない書き込みよりも、アンチが生じようとも、ターゲット層に響く書き込みをする必要がある。

その覚悟が持てないうちは、EC強化なんて絶対に実現できないだろうし、ファッション雑誌・タレント契約に固執している間はブランドの業績は絶対に上向くことはない。







海外進出が成功に結びつくとは限らない

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 はてなブックマーク - 海外進出が成功に結びつくとは限らない
 先日、こんな記事を拝読した。

タイトルに興味を持った。

アパレルの常識を変えたワールドとZARA、
なぜ明暗が分かれたのか
http://diamond.jp/articles/-/81941


である。

随分と興味深い比較論のようだ。
これまでファストファッションとよばれるグローバルSPAブランドとの比較対象となった国内ブランドはユニクロだった。

「ユニクロ帝国の光と影」でもその著者はZARAとの比較を行っている。

そのグローバルSPAと国内アパレルの大手、ワールドとの比較はなかなか興味深い。
そう思って記事を読み始めた。

が、期待外れも良いところだった。

3ページ目にこんな結論が出されている。引用しよう。

ザラとワールド、
明暗が分かれた最大の要因

佐藤 近年、ワールドの業績は低迷し、現在、リストラを推進しています。ザラとワールドはともにオペレーションに優れた会社でありながら、業績に差が出た理由は何だと思いますか。

ラマン 海外戦略だと思います。今、成功しているアパレルメーカーは海外進出によって成長しています。ザラがスペインの国内市場だけでビジネスをしていたら、これほど成長していなかったでしょう。



とのことであるが、アホらしくて話にならない。
海外進出をしていないからワールドがダメになったということらしいが、ワールドはすでに90年代後半に海外進出をしている。
ワールドだけじゃない。イトキンもオンワード樫山も大手は90年代後半に海外進出している。

進出先は中国だった。

結果をいうと2005年くらいまでで全社失敗している。
オンワード樫山のICBというブランドはこれはアジア進出のためのブランドだったが、2005年以降はどうだ?
ICBなんていうブランド名は業界ではほとんど耳にしない。






近隣国への進出は海外進出と言わないなんて詭弁を弄されそうだが、たとえば、日本に上陸して話題を集めた北欧の雑貨ブランド「フライングタイガー」だが、ふれこみとしてはグローバル雑貨ブランドだったが、日本以外のほとんどの直営店はヨーロッパにしかなかった。
近隣諸国にしか進出していないのに、グローバルブランドを名乗っていたわけである。
自発的に名乗ったのか、また例のごとくメディアがピントのズレた冠をかぶせたのかは知らないが。

フライングタイガーが近隣国にしか出店していないのにグローバルブランドを名乗れるのなら、ワールドらの中国進出も立派にグローバルブランドを目指した海外進出といえるだろう。
彼らは結果的には失敗したが。
失敗した理由は彼らが現地にローカライズできなかったからだ。

ローカライズできなくて撤退したグローバル企業なんて掃いて捨てるほどある。
カルフールとテスコはその典型だろう。
ウォルマートも鳴かず飛ばずだ。
別にローカライズが下手くそなのは日本アパレルだけではない。米国企業も英国企業も仏国企業も下手くそな企業はとことん下手くそなのである。

ワールドとZARAを分けたのは海外進出ではない。

ワールドはPOSレジとそれに連動したQRシステムでどんどんと売れ筋商品を深追いするシステムを確立した。
POSで読み取ったデータをQR対応で生産して10日後とか2週間後くらいにはまた店頭に並べる。
売れ筋をとことん追求するのはビジネスの基本ともいえるが、ファッション衣料ではとことん補充することが逆にマイナスに作用することもある。

10日後にはまた店頭に補充されるとわかっていたら、消費者は「今すぐに」買わなくなる。
どうせ後日来ても商品は残っているのだ。
今、わざわざ買う必要はない。
夏冬のバーゲン時期まで待ってもおそらく残っているだろう。
だったらバーゲンまで待った方がお得である。



ZARAの商品は売り切れ御免である。
店頭で売り切れた商品を追加補充することはめったにない。
だから今買わないといけないという危機感を覚える。

ZARAの店頭を見ると、メンズはけっこう投げ売り価格まで値下がりしていることが多いが、ZARAのメインはレディースである。レディースではメンズほど投げ売り商品がない。
ある商社関係者によると、ZARAの全世界売上高の男女構成比は圧倒的にレディースが多いそうである。
その人によると、売上高の8割~9割がレディースだそうだ。

各店舗にはおそらく1型あたり30枚とか50枚くらいを配布しているのだろう。

個人経営の専門店から見れば、多いと感じる枚数だが、ZARAからするとそんなに多くない。
通常、30枚とか50枚なんて小ロットを縫製したら、縫製工賃は割高になるのだが、ZARAは世界中に店舗があるから、たとえ1店舗50枚ずつ配布しても生産数量からいうと何万枚という枚数になる。

だから縫製工賃を安く抑え、店頭販売価格も安くできる。

ZARAとワールドを比べたいのであれば、売り切れ御免とPOSとQRで売れ筋をとことんまで追求した体制とを比較すべきである。
その上で、ファッション衣料にはどちらの方法が適切なのかということを考えなくてはならない。

そうでなくて、「海外進出」にその答えを見出すのなら、それは業界をミスリードするだけに終わる。
今回の記事なんて素直に読めば「成功するには海外進出すべき」としか読めない。

海外進出が成功のカギなら、なぜ2000年代前半に中国へ進出したワールドがこれほどまでにボロボロになっているのか。

過去にどれだけの企業がこういう無責任な海外進出論に踊らされたことか。


ユニクロ対ZARA
齊藤 孝浩
日本経済新聞出版社
2014-11-20







PR





記事検索
livedoor プロフィール
タグクラウド
QRコード
QRコード