MENU

南充浩 オフィシャルブログ

BtoBの工場間にも「ブランド格差」はあるという話

2022年6月29日 製造加工業 0

原料高、燃料高などによって今夏以降の商品の値上げが発表されている。

洋服という製品だけが値上がりするわけではない。洋服を構成する生地、ひいては糸まで値上がりしているし、染色も値上がりしている。

ただ、原価積み上げ方式だけで値上げしたところで、購入者が認める価値価格を大きく越えてしまうことが多いので売れないから、購入者が「これなら仕方がない」というギリギリのラインを探り当てて値上げをすることが最も賢いやり方といえる。

これはBtoCだけのことではなく、BtoBに関しても同様である。

 

この値上げを通すために国内の各社はBtoC、BtoBにかかわらず「付加価値を高めよう」という姿勢を見せる。先日の繊研新聞にも北陸の合繊産地が値上げしても購入してもらえるように「付加価値を高める」という記事が掲載されていた。

当然といえば、当然の主張なのだが、付加価値とは何だろうか?

製造加工業者や物作り系ブランドの人たちは「付加価値を高めよう」ということになると「機能性」「製造スペック」を上げようとする。

それは決して完全なる間違いというわけではないが、機能性が高ければ高いほど価値が出るのか、製造スペックが高ければ高いほど価値がでるのか?というとそんなことはない。

これまでの国内衣料品業界では、高機能性競争が行き過ぎた結果、誰も消費者が付いてこなくなったことも珍しくないし、超高機能製品だから必ず売れるというわけでもない。

また製造スペックにしても同様で、凝りに凝った織りや編み生地なら必ず高く売れるかというとそうではない。それよりもスペックとしては低い織りや編み生地の方が売れることも珍しくない。

もちろん価格とのバランスもあるだろうが、それだけでもない。

 

業界内の数少ない友人の一人であるマサ佐藤氏は「付加価値とは粗利益高である」と説明する。これはその通りだが、もう少し違う言葉でいうと「ブランド力」「ブランドステイタス」ということではないのかと当方は思う。

ルイ・ヴィトンのダミエが素材的にはそれほど高価なモノではないということは割合に広く知られていると思う。しかし、それを使ったバッグ類は何万円もの価格で売られており、それに対して「ボッタくりだ」と言う人はゼロではないが、そんなに多くはないし、何なら「「ボッタくりだ」と主張する人だってまかり間違って金持ちになったらルイ・ヴィトンのバッグを1つくらい買うのではないかと思う。

安い素材を使って高く売るのだから、ルイ・ヴィトンのバッグの粗利益額は当然高くなる。

ではどうしてそのような売れ方をするのかというと、付加価値があるからで、付加価値は粗利益額となって反映されている。

そしてアンチでさえも金持ちになったら1つくらいは買ってしまうだろうと思われるのは、それだけ「ブランド力」「ブランドステイタス」があるからだというのが当方の見方なので、付加価値=粗利益高=ブランド力なのではないかと思う次第である。

 

実は国内BtoBでも似たようなことがある。これは山本晴邦氏もおっしゃっていたが「〇〇工場だからその工賃(もしくは製品価格)でも仕方がない」という風に認められることもあるとのことである。もちろん国内製造加工業者同士の力関係とか、〇〇工場の背景には国の〇〇というバックが付いているとか、そんな事情がある場合もあるのだが(笑)、そういう背景がある場合だけのことではない。やはり、あの工場ならという「ブランド力」があるといえる。

 

さて、何が言いたいのかというと、前置きが長くなったが、このところ、立て続けにいくつかの工場から「何年か前から新卒で専門学校から採用しているが、ほとんどの場合、2~3年で辞める。実際、この間はほとんど戦力になっていないし、工場全体の作業効率も落ちる。工場としては採用するという投資に見合っていない」との嘆き節を聞いた。

その一方で国内工場でも新卒を含めて20代の若い社員が毎年入社して3年以上定着するところもある。

一律に国内工場がダメだとか、国内工場だから良いとかそういう話しではない。

工場間においても格差があるということである。

もちろん、従事する若者間にも差はある。A君とB君とでは性格も考え方も異なる。それと同様に工場経営者も異なる。

そのため、一概に良い悪いとは言えないし、たまたま相性が悪いということが続いたということも考えられる。

従業員待遇ということであれば、多少の差はあれど工場ということでは大きな差は無いだろう。

 

となると、「従業員にとってのブランド力」がその工場にあるかないかではないかと思う。

世間的には国内繊維関係の工場の知名度は高いとは言えないが、業界内でのブランド力を持っている工場とそうでない工場がある。

あくまでも業界内目線でのブランド力がある工場には、比較的若者が定着しやすいのではないかと思う。大手商社や大手IT企業、大手金融に比べると決して待遇は良いとは言えないだろうが、それにも勝る「ブランド力」「ブランドステイタス」があるから定着率が高いのではないだろうか。

じゃあ、どのようにすれば「ブランド力」が構築できるのか、ということになるが、これは一朝一夕では難しいのではないか。

アパレルでも華々しく登場したものの2~3年で消える短命ブランドが多々ある。どんなに華々しくデビューしようが、有名人が立ち上げようがブランドに対するステイタス性はない。

ブランド力というのは長期間かけて構築するものといえる。

価格を通す力にせよ、若者従業員を定着させる力にせよ、工場側や製造業側はなかなか余裕もないだろうが、今から腰を据えて「ブランド力」の構築に取り組む必要があるのではないかと思う。

まあ、言うは易く行うは難しということは分かっているのだが。

 

仕事のご依頼はこちらからお願いします~↓

SERVICE

この記事をSNSでシェア

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ