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南充浩 オフィシャルブログ

マックハウスの厳しい決算内容

2019年4月16日 企業研究 0

メディアというのは単なる営利団体だから、視聴率なり発行部数なりを稼ごうとする。それが広告出稿の売上高に直結するからだ。
ウェブメディアだとPV(ページビュー)数やアクセス数を稼ごうとする。
PV数やアクセス数が稼げなさそうな話題はウェブでは報道されにくい。
そういう意味でいうと、未だに売上高が600億円を越える大手でありながらレナウンの赤字転落は業界系のウェブメディアでは報道されなかった。
すなわち、PV数やアクセス数が稼げなさそうだからである。
同じ理由で、ジーンズカジュアルチェーン店の大手マックハウスの決算も業界系ウェブメディアでは報道されていない。
 
マックハウスというと都心ではあまり見かけないが、ジーンズカジュアルチェーン店では業界2位の規模を持つ。ユニクロやアダストリアなどのSPA型ではなく、ライトオンと同じく、仕入れ商品の構成比が高いジーンズカジュアルチェーン店である。
そのマックハウスの2019年2月期単体決算はレナウンと同じく赤字転落だった。
 
売上高280億900万円(前年比9・2%減)
営業損失12億3800万円
経常損失11億4700万円
当期損失28億3100万円
 
で、赤字転落とともに売上高もついに300億円を割り込んでしまった。
 
ちなみに2018年2月期決算は
 
売上高308億5200万円(同8・5%減)
営業利益2億1600万円(同64・9%減)
経常利益2億6400万円(同61・3%減)
当期損失2億2400万円
 
となっており、凄まじい速度で減収減益が進んでいる。
 
これによって、仕入れ型ジーンズカジュアルチェーン店で売上高300億円を越えているのはライトオンだけとなってしまった。
今回の赤字転落の理由を決算短信から以下に引用する。
 
一方で中・低価格帯のカジュアルウェア市場におきましては、低価格化による競争激化に加え、生活必需品の値 上げ等に伴う衣料品に対する消費者の節約志向は依然として高く、経営環境は厳しい状況で推移しております。
 
かかる状況におきまして、当社は、「お客様の暮らしに役立つお店」をスローガンにジーンズカジュアルショッ プからジーンズを中心としたファミリーカジュアルショップへの脱皮を図ってまいりました。
 
低価格PB(プライ ベートブランド)ジーンズの販売、多くのお客様にご利用いただけるように低価格雑貨の充実、インナーレッグウ ェアやホームウェアなどの低価格実需衣料の強化、当社独自のロゴやキャラクター商品販売による他社との差別化 などに取り組んでまいりました。
 
しかしながら、当事業年度の売上高は、前年を大きく下回りました。要因としましては、お客様ニーズに合った 商品の展開が不十分であったこと、新聞広告を主な販促媒体とし、折込チラシを大幅に削減した事による客数の減 少、低価格化による一品単価の下落に加え、一人当たり買い上げ点数の下落による客単価の低下などが挙げられま す。更に記録的な天候不順も影響しました。
 
とのことだが、読者の方々はこれを読んでどう思われるだろうか。
当方は、この分析では全然ダメだし、今後好転する可能性は極めて低いと感じる。順に見て行こう。
まず、値上げによる節約志向を書いているが、それはその通りだが、後段で述べている低価格PBがそれでも売れてないことと矛盾をしているのではないか。
要するに消費者の節約志向はあるが、低価格だからといってなんでも買うワケではないということである。
この失敗はかつてのユニクロブームの時に散々に各アパレルが経験したはずだが、マックハウスは何もそこから学んでいなかったといえる。
 
また安易に低価格品を増やすと客単価は落ちて、その結果売上高は減る。
低価格商品が呼び水になって客数が激増すること、買い上げ点数が増えることは今のご時世では考えにくい。
理由はさまざまあるが、
 
1、低価格商品が珍しくなくなったからインパクトが弱い
2、マックハウスの知名度・存在感が薄れている
 
というところが主な理由になるだろう。
 
そして、売上高減少や客数の伸び悩みにもかかわらず、折込チラシを大幅に削減という広告費・販促費の削減は悪手でしかない。
知名度が高いブランドならいざ知らず、マックハウスの知名度は薄れつつあるのだから、そこで広告費・販促費を安易に削減することは自傷行為でしかない。
また、ジーンズというアイテムが40代オーバーの中高年層に支持されやすいという特性を考えると、中高年が愛用している新聞という媒体を利用しないというのは、ミスマッチでしかない。
順番が前後するが、景気分析にしたって「節約志向が強まり」と書いているが、他の好調ブランドは「緩やかに消費は改善に向かっている」と書いているから、マックハウスの店頭がいかに不景気なのかが如実に表現されているといえる。
 
「単なる低価格化」を追求した商品政策もダメだし、自社の顧客層を見誤った広告・宣伝活動もダメだから、売れなくなるのは当然だろう。
 
ユニクロ、しまむら、ジーユー、ワークマンプラス、などたしかに低価格商品の競争は激化しているが、これらがどうして支持されているのかを真面目にマックハウスは分析したことがあるのだろうか。
これらは「単に低価格だけ」で支持されているのではない。例えば、「低価格+高機能」だとか「低価格+最先端トレンド」だとか、「低価格+高品質素材」だとか低価格以外にもう一つか二つのセールスポイントがある。
「単なる低価格品」で売れるなら、今頃、トップバリュあたりは笑いが止まらなくなっているだろう。ところが、大手総合スーパー各社の衣料品PBが売れていないのは、低価格だけでは支持されないからである。
 
今日のマサ佐藤氏のブログは
局面を変えるのは商品でしかない?
http://msmd.jp/archives/1843
である。
結局、コト販売だとかおもてなしだとか言ったところで、服屋が売っているのは「服」という「物」であり「商品」である。
不振店を回復させるのは、最終的には「商品」でしかない。
 
マックハウスはもう一度自社の全施策を見直すべきだろう。それができないと、マックハウスというかつての大手はさらに縮小し続けることになる。
 
 
 
そんなマックハウスのエヴァンゲリオンTシャツをどうぞ~

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