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南充浩 オフィシャルブログ

パルグループがレイ・カズンの一部店舗とEC事業を譲渡されたという話

2024年1月12日 企業研究 7

昨年10月に民事再生法を申請して経営破綻したレイ・カズンの一部店舗とEC事業をパルグループホールディングスに事業譲渡されることが決まった。

レイ・カズンが一部店舗事業をパルグループHDに譲渡 昨年10月に民事再生法申請 (fashionsnap.com)

パルグループホールディングスが、アパレルブランド「レイ・カズン(RayCassin)」などを運営するレイ・カズンの一部店舗とEC事業等の資産を譲り受けることを発表した。民事再生法第42条第1項に基づく裁判所の許可を受け、1月10日開催の取締役会で事業譲渡契約を締結したという。

とのことである。

これ以外でも同様の報道があるが、具体的な内容は現時点では不明である。

一部店舗というのはどの店舗のことなのかもわからないし、ECに関していえば、まだレイ・カズンが小なりといえど存続しているのにパルがレイ・カズンのECを運営するというのもおかしな話である。第一にそのECで販売する商品はどこが企画製造するのだろうか。現時点では何の資本関係も無いパルがレイ・カズンの商品を企画製造するのであると仮定すると随分と異常事態である。

この記事では

昨年10月末に東京地裁に民事再生法の適用を申請し、保全・監督命令を受けた。同社は「2024年から店舗を順次閉店する」とし、レイ・カズン ルミネエスト新宿店、ルミネ立川店、ルミネ大宮店、横浜ジョイナス店、ダブルネーム ルミネエスト新宿店、横浜ジョイナス店、大阪HEPFIVE店の7店舗以外は、自社の公式オンラインストアを含めて全店舗の閉店を告知していた。

とある。

仮にレイ・カズンが新スポンサーを見つけて会社が存続した場合、この直営7店舗があるにもかかわらず一部他店舗とECはパルが運営するという構図が出来上がってしまうが、業界ではこれまでに例を見ない。そしてさらに言えば先述した通りに商品の企画製造&仕入れはどうするのかという問題もある。

この辺りは続報を待たねばならない。今回の報道だけでは意味の分からない部分が多すぎる。

 

それにしてもパルグループHDは弱った会社や弱ったブランドを買うことが得意だと改めて感じる。

パルグループHDはそれによって存在感を増し、決算も好調を維持しているのだが、買われた会社やブランドは反対にあまりパッとしない存在になってしまうという傾向があると感じられる。

 

まず、その代表はナイスクラップだろう。

若い人はご存知ないだろうが、かつては「平成ブランド」として平成元年ごろにはファッション性で若い女性からの人気を博していた企業だった。

ちなみに、当方の元妻も大学生時代はナイスクラップの服を愛用していたと言っていて、90年代半ばにはまだ何枚も洋服を所持していた。

その後、経営が悪化し、2002年にパルと資本業務提携し、さらにその後、2015年に完全子会社化され今に至っている。逆にパルはナイスクラップを傘下に収めたことで一気に業界内の知名度を高めたといえる。

この2002年当時、元妻に話すと「え?あのナイスクラップが?」と驚きを見せたとともに「パルグループって何?」という反応で、これがこの当時の普通の人の反応だったわけである。

現時点に至るまでナイスクラップという企業と展開ブランドの存在感は薄まったままである。

 

次に買収したのが、遊心クリエイションの清算に伴っての雑貨ショップ「ASOKO」である。これが2016年である。

パルが低価格雑貨店「アソコ」事業を買収 原宿店など3店舗は営業継続 (fashionsnap.com)

現在ではASOKOは1店舗も残っておらず、完全に消滅してしまった。

この買収当時は雑貨店「スリーコインズ」をパルグループが展開していることから、親和性があると考えられた。たしか、パルグループの人もそのように話していたと記憶している。

低価格雑貨というのは、洋服以上に生産数量が仕入れ・製造コストを大きく左右する。要は仕入れ量・生産量が多ければ多いほど安くなるわけである。そのため、スリーコインズとASOKOをまとめることで仕入れ・製造コストの引き下げが期待できたわけだが、スリーコインズは成長したもののASOKOは消えてしまった。

その原因についてはいろいろとあるのだろうが、外部から眺めていると、画一チェーン化したスリーコインズに対して、ファンシーさと言おうかびっくり箱感と言おうか、そういう面白さが基調となったASOKOでは価格帯はほぼ同一であるものの、テイストが合わずにまとめにくかったのではないかと感じられる。

 

そして、オリーブ・デ・オリーブの買収である。

パルが瀧定大阪から「オリーブ・デ・オリーブ」を取得

パルグループホールディングス(以下、パルグループHD)は11日、繊維商社の瀧定大阪の子会社であるオリーブ・デ・オリーブ(東京、熊澤隆・社長)の事業を譲受すると発表した。取得金額などは明らかにされていない。

これが2017年のことである。

 

オリーブ・デ・オリーブは元々は2009年に経営破綻した「もくもく」というアパレル企業のオリジナルブランドだった。経営破綻後にブランドが独立したという形だったが、2013年に瀧定大阪に買収された。この当時の瀧定大阪は何故か製品ブランドを買い漁って製品ブランドビジネスを構築しようとしていたのだが、どれも上手く行かずに終わった。2017年にパルが買収したのだが、その後、オリーブ・デ・オリーブというブランドの存在感は業界内ではほとんど皆無になっており、恐らく消費者間でも同様ではないかと感じられる。オリーブ・デ・オリーブというブランド名自体は知っている人も多いのだろうが、「オリーブ・デ・オリーブの服が欲しい」とわざわざ思う消費者は数少ないだろう。

ちなみにオリーブ・デ・オリーブはパルの子会社となったナイスクラップに吸収合併されて企業としては消滅した。

ナイスクラップがオリーブ・デ・オリーブを吸収合併、ブランドは継続 (fashionsnap.com)

2019年のことである。

 

ナイスクラップも2012年ごろにはかなり経営が悪化していたという記事が掲載されているし、オリーブ・デ・オリーブは言うまでもないだろう。

パル、ナイスクラップを完全子会社化 6月に株式交換で – 日本経済新聞 (nikkei.com)

ナイスクラップは販売不振などが響き、12年1月期から最終赤字が続いていたが、不採算店の閉鎖などの合理化で、15年1月期は営業黒字に転じた。

 

ASOKOもすでに消滅してしまっている。

以上のような流れから見てくると、今回のレイ・カズンもどのような形態での事業譲渡になるのか現時点では詳細はわからないものの、当方は先行ブランド同様に存在感を極度に低下させたり、消滅したりしてしまうのではないかと見ている。

 

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 comment
  • キムゴンウ より: 2024/01/12(金) 12:46 PM

    例えばバカな専門学校の広報担当は
    競合校の入学者が減少すると
    「やった。俺が相談にのったあの子もうちを選んでくれたからな。」
    とほくそ笑む。そのうち競合校が閉校になりその学校の学生を
    サルベージするために自学に編入できるようになると
    「やっぱり、うちは良い学校だな。」
    と考えるようになる。
    しかし、本質的にはその専門学校が輩出する人材の受入業界がシュリンクしていて
    志望者が減少していることを、バカな広報担当は理解できていない。
    バカな経営者が「ライバルは○○。その前に△△を潰そう。」というのを真に受けるわけだ。
    バカな広報担当は。業界がシュリンクすれば早晩自校にも影響が出てくることがわからない。残存価値とか以前の問題だが。
    ファッション業界とそれに付随する業界はシュリンク業界のひとつじゃないだろうか。
    余りに世間でファッション関連の企業の倒産が言われると、人材の確保が難しい。
    パルとかいう会社は知らないが、知らないということは若者向けの会社なのだろう。
    そういう会社は販売が楽しいと思える人間が必要だろうが、あまりに倒産していては人材確保も難しいだろう。だから人気のあった企業をサルベージする事で自社の体力があるアピールと倒産しませんでしたよアピールをしたいだけなんじゃないかなと思う。
    ナイスクラップなんてその昔はポパイかホットドックプレスで「彼女が喜ぶ人気ブランド」なんかで取り上げられていて、白のなんの特長もないカットソーをタグで喜ばせようと、カミさんにあげたような古いとこだし、オリーブでなんとかは、新京極で修学旅行の女子高生が土産に買っていたような記憶がある。これも古い記憶。藤四郎なんでここまで考えて先は浮かびませんけどもね。

  • あわあわ より: 2024/01/12(金) 2:33 PM

    パルグループすら知らない人が業界のことにいちいち口出さないでほしいんですが、、、
    少し検索すればわかることすら調べないでいちゃもんつけてる時点でどちらがバカなのかとおもっちゃいます
    知らないことに口出すのは何故なのか理解不能だわ
    おじさんはどこの業界なの笑 
    論評してあげるから言ってみて

    あと何がいいたいのか全然わからないんだけど
    文章にうるさいくせに自分の文章は支離滅裂って笑っちゃいますね

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2024/01/12(金) 4:52 PM

    >人気のあった企業をサルベージする事で自社の体力があるアピールと
    >倒産しませんでしたよアピールをしたいだけ

    サラッと書いているが、実は恐ろしい事をいってますね・・・
    (もっともそれ故ついてこれないモード学園へんさち30君も出没w)

    「ボロ業界のボロ漁り」なんて意味がないケースが大半です

    ただ、ボロだからボロ価格で買えれば
    シロウトさん向けのアピールにはなりますわな

    特に今回のように30代後半~50代に知れ渡っていたネームなら

    黒字倒産じゃあるまいし、今どきボロ買いやって
    大当たりなんてありえないでしょう

    ましてや簿外の腐れ必須でしょうし

    そうだ、ボロ買いで何かを繕いたいなら、
    ボロ買いするほうも実は相応に傷んでたりしてwww

  • あわあわ より: 2024/01/12(金) 7:29 PM

    WWWW

    サルベージの件をよくもそんなたいそうに書けるね
    大阪の経営者が自社の体力をアピールするだけに買う訳ないだろうがwwwww

    プライドより金なのにwwww

    散々終わってるブランド買って再生する訳でもないけど、また買ってるんだから何かしら勝算あるから買ってるに決まってるだろ
    視点がズレすぎ

    視点がずれすぎて寂しい老後を過ごしてるんだろうけど

    なんで買うのか、何が魅力なのかを考察するブログにしてほしいわ

  • キムゴンウ より: 2024/01/15(月) 9:44 AM

    南ミツヒロ的合理主義者様
    いつも藤四郎の戯れ言に対応いただきありがとうございます
    そうなんです!
    例えば小泉アパレルのように会社はそこそこの規模があるが
    ブランド力が無い企業の場合
    「oggi」「アクアスキュータム」「ダーバン」「ゴールデンベア」など
    中年以上認知度が高いブランドを引き取り
    自社で継続させることはある意味分かりますし
    また
    GFグループのように多角化経営の中の1ピースとして
    シティヒルやジャヴァを引き取るのも意味がありますが
    ナイスクラップ、遊心、オリーブデオリーブを引き取ることは
    PALグループにとってさしてメリットは無いように思いますよね

    「拝啓社長様」制度で風通しよく、また社員のやる気を引き出す制度が
    社員Y氏提案の「ギャラルダギャランテ」などの新ブランド展開に寄与しているのは
    同社の良さだと思いますし
    また専門学校の学科とコラボしたコンセプトショップの企画・運営など
    SPA以降のアパレルのあり方を、自社内のとどめずに進めてきたこと
    販売職を対象にした接客コンテストを大々的に開催することで
    販売員の意識向上や社会的認知の向上を目指すなど
    ともすれば色眼鏡で見られがちな販売員を応援する姿勢は
    素晴らしい企業だとおもいました
    一方でインターンシップでは開店前の清掃や閉店後の商品の整理などをさせず
    販売だけを経験させ「販売の楽しさを学生に知ってもらいたい」との考えは
    販売職の実情を知らせず 思っていた仕事と違うというような
    誤解やミスマッチを生じさせる可能性があるのは改善されても良いのではないかと思います
    紳士服を扱っていたI社長「レディースがこんなに儲かるのか」と以降はレディースに方向転換し現在まで同社を伸長させたのはまさに名社長ですね
    以上藤四郎の戯れ言です

  • とおりすがりのオッサン より: 2024/01/15(月) 11:06 AM

    私が勤める金属加工工場は、コロナ禍でクッソ大赤字になって、それまでの累積赤字もあってニッチもサッチも行かなくなり、某上場企業に安値で買収されて存続しました。その上場企業は創業者の息子が二代目社長やってて結構売上高は大きいんですが、毎年のようにあんまり関係ないような企業を買収し続けてます。うちの工場もそんなにシナジー効果出そうもない業種で大赤字なので、私は「なんで買ったんだろう?」と訝ってました。そしたら、その買収した社長が「ついに当社の売上高が○○○億円を突破しました。」なんて社内報でコメントしていて、「えっ、もしかして利益とか関係なく、売上高の目標を達成させたいだけで買収してたの?」と思っちゃいましたw

    ま、その親会社はまあまあ利益出てるので、うちみたいな弱小工場を買い取っても屁でもないんでしょうけど、世の中には訳分からない買収をするシャッチョさんもいるんだよねぇ~という話ですw

  • あわあわ より: 2024/01/15(月) 1:03 PM

    藤四郎さん、シュリンクしていく業界を色々調べていただきありがとうございます。
    なぜそこまで興味を持っているのかは不思議であり、疑問でありますがありがたいことです。

    調べてわかったと思うのですが、そこまで若い会社でもなく社歴もある企業なんですよね。
    それとPALグループのみがロープレ大会をやっているのでもないのであまり褒めるところでもないことを指摘しておきます。

    大阪発祥のアパレル関連企業というのは今やかなり厳しい状況にあり、みなさんが知っている?ような企業も破綻するかもと噂が出ています。
    なのでパルグループが今回の買収をただ単に自社のメンツや、虚構を作るために買収するとかはありえないですよ

    訳のわからない上から目線のコメントよりこういう話の方がよっぽどいいコメント欄ですね

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