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南充浩 オフィシャルブログ

高機能であるがゆえに天候・気温要因で売れ行きが大きく左右されるワークマン

2024年1月15日 月次速報 1

世の中に弱点のない完璧な存在など無い。

必ず長所があり、長所こそは局面によっては短所になる。人であろうが企業であろうが同じである。

近年急成長を果たしたワークマンとて例外ではない。

年が明けて15日間が経過したが、暖冬傾向とは言いながらもさすがに寒い日もある。こうなると冬物衣料品の売れ行きは活発化しやすいが、昨年12月はクリスマス前の3日間を除いてはかなり暖かった。

暖冬になると、特に防寒アウター類の売れ行きが鈍るが、ワークマンも例外ではなかった。

2023年の12月のワークマンの月次速報が発表されたが、

既存店売上高 前年同月比15・4%減

既存店客数 同15・5%減

既存店客単価 同0・1%増

という実績となった。

客単価は昨年とほぼ同じで、客数が大幅に減った分そのまま売上高も大幅に減少した形となっている。

 

当月は、前年と比べ気温が高く、防寒衣料や手袋、ブーツなど冬物商品が全般的に伸び悩む中、防寒女性衣料は堅調に推移しました。そのほか、太平洋側の降雨量が少なく、レインウエア等の雨関連商品も低調に推移しました。その結果、チェーン全店売上高は前年同月比88.2%(既存店売上高前年同月比84.6%)となりました。

 

とワークマンの公式サイトが説明している。

要するに暖冬で防寒衣料、手袋、ブーツなどの動きが鈍く、雨・雪が少なかったのでレインウェアなども不調だったということになる。女性防寒衣料は堅調だったとしているが、これは女性は男性に比べて寒さに弱い人が多いことと、防寒衣料と言ってもアウターだけではなく肌着やインナーに着る中肉フリースやセーター類なども含むことから、そちらの肌着類・インナー類が動いたのではないかと当方は推測する。

ワークマンが近年急速に伸びた理由としては、巧みなマスコミ戦略は除外するとして、商品面においては

1、低価格・高機能

2、デザイン性がマシになった

この2点だと考えられる。

定価で比較するとジーユーよりも安いくらいで、ユニクロのほぼ半額くらいに設定されている。その上、機能性が最優先される作業服業界で培った機能性の高さがある。

このブログでも以前に書いたが、防水スニーカーは本当に防水性に優れていて、ファッションブランドの防水スニーカーと比べると機能性が高い上に価格は何分の1かという安さである。

さらに商品デザインも年々マシになっている。

こうなるとファッションに過剰な興味のある人以外はワークマンの服で構わないという考えになることも当然である。

 

しかし、低価格はさておき、この高機能性は天候要因に大きく左右されてしまうところが、ワークマンの弱点といえるだろう。それこそ高機能という長所が天候要因では短所に変わってしまうと考えた方がよいだろう。

以前から書いているように当方は暑がりだから、いくらイケているブランドでも暑くて着られないような服を我慢して着ようとは思わないし、そもそも買おうとも思わない。

世間的にも体感温度に則した買い方が主流となっており、特に大衆の実需要素が高い低価格衣料品は体感温度で売れ行きが大きく左右される。

通常の冬物衣料ですらそうなのだからら、高機能な保温や発熱機能が備わった衣料品は暖冬だと売れ行きが鈍る。それはそうだろう。ただでさえ暖冬でそれほど防寒着を必要としていないのに、その上の高機能な保温・発熱衣料なんて無用の長物となってしまう。

そして、ワークマンは低価格衣料品の中でも群を抜いて機能性が支持されているため、天候・気温によって売れ行きは大きく左右されてしまっても不思議はない。

2023年4月以降はワークマンの既存店売上高が前年割れした月が多かったが、前年超えをした月は7月・8月・11月となっている。この3カ月が伸びた理由は明らかに天候気温要因だったと考えられる。

7月・8月は言うまでもなく猛暑である。11月は5日以降やっと気温が低下して秋らしくなった月である。

7月・8月は猛暑対応の衣料品や雑貨類、11月は急に涼しくなったため秋物と一部冬物が活発に動いたと考えられる。

逆に残暑が厳しかった10月は既存店売上高が前年同月比12・2%と大きく落ち込んでいる。厳しい残暑で秋物・冬物が売れなかったと考えられる。

 

それともう一つ考えられることは、ワークマンが急成長期を終えたという点である。

月次速報は過去にもさかのぼって見ることができるが、天候不順な過去の月でも大きく売上高を伸ばしている月が多い。これまでの分母が小さかったためと、急成長期が続いていたと考えられ、現在は売り上げ規模が大きくなって急成長期が終わったと考えられる。いつまでも倍々ゲームは続かない。

ワークマンの衣料品は機能性が高いがゆえに、機能が発揮できないような天候・気温では売れ行きが鈍るということが今後は顕著に表れるだろう。

これを脱するには、機能性ではなくファッション性を消費者に支持してもらう必要性が高まるわけだが、そうなると市場規模は小さくなるし、今度はファッショントレンドでの当たり外れが大きくなるばかりでなく、曖昧模糊としたファッション性というものに売れ行きが大きく左右されてしまうようになり、ハイリスクハイリターンな企業経営となってしまう。ワークマンのように作業服をルーツとして高機能性を売りにしてきたブランドからすると最ものめり込んではいけない分野だといえる。かなり危険性が高い。

今後は、高機能性という特色は維持しつつも、天候・気温要因に左右されることが少ないような商品開発や商品供給量の検討が求められることになるだろう。そしてそれはかなり難しい作業になるだろう。

 

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 comment
  • 偽ずんだもん より: 2024/01/16(火) 10:56 PM

    やっと我が街の近隣にワークマン出店なので頑張って欲しいです。

    最近はワークマン女子の出店を増やしているようですが、女性向けおしゃれアイテムに注力しすぎるととても危険な気がします。

    普段着にも使えるちょっとおしゃれ低価格作業服屋を手堅く経営していって欲しいです。

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