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南充浩 オフィシャルブログ

「バーゲンがなくなる日」が来るのは百貨店と有力セレクトショップの実店舗だけだろう

2024年1月16日 お買い得品 0

百貨店や一部のセレクトショップが夏冬のバーゲンセールを重視しなくなり、それでも売上高が稼げているという記事を目にする。

これはこれで事実なのだろうが、では世の中から値下げ品や低価格衣料品が無くなるのかというとそれはあり得ないだろう。

バーゲンがなくなる日 セールの比率は4年で半減 – 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

例えばこの記事。

例示されているのは百貨店各社とロンハーマンなどの高額セレクトショップだけである。たしかにこの販路ではバーゲン品や値下げ品は減らしているのだろう。

しかし、見出しの表現はちょっと過剰ではないだろうか。

正確な見出しは「バーゲンがなくなる日(百貨店とセレクトショップの店頭では)」というものになるだろう。

 

低価格衣料品チェーンでは不振商品の値下げは恒常的に行われている。ユニクロ、ジーユ―、無印良品などは常に値下げ品が売り場にあるし、定期的に夏冬のバーゲン時期とは関係なく年がら年中値下げされる。

またアダストリアの各ブランドも同様だ。公式通販サイトのドットエスティでは常に値下げ品があるし、不振品番は定期的に値下げされ続けている。当方はそれを毎月買っているのでよくわかる。

大手セレクトショップチェーン各社もたしかに実店舗での夏冬のバーゲン品は減らしているのだろうが、ネット通販では恒常的に値下げ品が売られている。

当方が定期的に観察し、たまに値下げ品を買っているネット通販のベイクルーズストアもアーバンリサーチストアも常に値下げ品が存在しているし、定期的に不振品番を値下げして消化を図っている。

百貨店だって、催事売り場での各社ブランドの投げ売りポップアップを廃止したわけではない。むしろ、開催頻度は高まっているのではないかと感じる。

さらにいえば、大型総合スーパーやショッピングセンターなどでも定期的に投げ売りポップアップは開催されている。特にこの手の大型ショッピングセンターでは出店テナントが埋まらないスペースが恒常的に発生しており、そのスペースを利用して様々なブランドが投げ売りポップアップを定期的に行っている。

 

百貨店の店頭、大手セレクトショップの店頭で買うことに価値と喜びを見出す人は現在のバーゲンセール抑制策を支持し続けてくれるだろうが、その人数は少数派だろう。

多くのマス層は常に値下げ品が店内に存在しているユニクロ、ジーユ―、無印良品などの大手低価格衣料品チェーン店を利用するだろうし、ネット通販に抵抗がない人はドットエスティ、ベイクルーズストア、アーバンリサーチストアなどで投げ売り値下げ品を買うだろう。

当方とて手持ちの服がユニクロ、ジーユ―ばかりでは飽きてしまうから、ドットエスティ、ベイクルーズストア、アーバンリサーチストアなどで投げ売り品をアクセント的に買っている。

 

アパレル業界では「商品の鮮度」「ファッションの鮮度」「賞味期限」と言われることがよくある。確かにトレンド最先端の物には「鮮度」がある。また定番品でも定期的にブラッシュアップしていれば「鮮度」はある。21年モデルと23年モデルが異なっていれば、21年モデルは賞味期限切れということになる。

鮮度の落ちた物、賞味期限切れの物を安く売るのは食品スーパーと同じである。

ただ、メンズ衣料品を見ていると、近年そこまで「鮮度」「賞味期限切れ」が明確ではなくなっているように感じる。特にスキニーブームが終わった2015年以降は鮮度、賞味期限切れはわかりにくいと感じる。

衣料品のマストレンド変化はあまりないように見える。去年も今年もオーバーサイズが主流で、サイズ感、シルエット、丈感も全く変化していないように見える。

しいて挙げれば、昨年秋からハイテクスニーカーがトレンドでは無くなり、レザー(合皮含む)のワークブーツ類の着用者が増えたことくらいだろうか。

 

レディースはメンズと異なり、トレンドサイクルが短く鮮度が重要であるとされている。それについては当方もその通りだとは思うが、2010年代後半以降、レディースにほとんど興味を持てない当方レベルの人間からすると、メンズとほぼ同様にあまりマストレンドが変化していないように見える。

ヘソ出しルックなんていうのもあるが、あれとて若い人の一部と、スタイルに自身のある人の一部くらいしかしていないので、マスに広がることはないだろう。そしてあの手の「不便な」トレンドが長期間に渡ってマス層に支持されるということは過去の歴史から見てもほとんど考えにくい。レディースも合皮を含むレザーブーツ類が復活したことが特筆すべき点くらいである。

 

またメンズ、レディースを問わずメルカリで中古品を買う人もいるし、古着を買う人もいる。またゲオの「ラックラック」などのオフプライスストアで型落ち商品を買う人もいる。

そしてその人数は多数派とは言えないが、決してマイノリティでもない。

これらの商品はいずれも「鮮度」としては落ちているし確実に「賞味期限」も切れている。

このように考えると、確実に値下げ品は無くならないし、低価格品も無くならないと断言できる。また国内外問わず「安い」衣料品は相当に消費者に支持されている(積極的支持か消極的支持かは置いておいて)のが実態だろう。そうでなければ、シーインやTemuなどの激安衣料品雑貨が国際的に何兆円という売上高を稼ぐはずがない。逆にシーイン、Temuが何兆円という売上高を稼げるということは、全世界的に激安衣料品雑貨の支持がそれほど高いということを示している。

国内市場では一部の消費者は重複しながらも、今後は百貨店やセレクトショップの店頭で値下げしない商品を買うことを選ぶ層と、低価格チェーン店やネット通販で投げ売り品を買うマス層に大きく分かれることになるだろう。どちらの層をターゲットに設定しようが、そこには無数の競合他社がひしめき合う厳しい商売が待っている。

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