南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

エドウイン

ロゴTシャツブームで売上高が伸びたブランド

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 閑話休題的な意味も込めて、たまには景気の良い話でも。

今夏は往年の懐かしいブランドのロゴTシャツが売れた。
まあ、いわゆるちょっとしたブームだったといえる。

中でも目に付いたのがチャンピオンとリーだ。
チャンピオンのブランドロゴ入りTシャツなんて、中学・高校の部活の練習着のイメージしかない。
リーのロゴ入りTシャツなんてその昔は珍しい物でもなんでもなく、普通にフロムUSAやら三信やらイズミヤの平場に並んでいて、地元の中高生のユニフォームのようなカジュアルウェアだった。

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(リーの来春夏企画)


だからチャンピオンにしろ、リーにしろロゴ入りTシャツを見かけるたびに地元のちょっとダサめ中学生・高校生と重なって仕方がない。
若い人が着るから「新鮮」に見えるのであって、オッサンが着たなら、まちがいなく「30年前の部活の練習着を保管していたのか?物持ちが良いですね」といわれるだろう。

このブログでも触れたことがあるように、今夏はファッションビル内を歩くとショップはチャンピオンとリーだらけだった。

リーを展開するリー・ジャパンはエドウインの傘下企業である。
で、エドウインの営業マンに質問したところ、リーのロゴTシャツの今夏売上高は驚異的な増え方を見せたという。
ブランドロゴTシャツブームの影響もあり、エドウインロゴ入りTシャツ、アルファインダストリーロゴ入りTシャツも驚異的な増え方だったそうで、その3ブランドのロゴ入りTシャツの売上高は、前年比で何倍増という伸び率だったとのことである。(もちろん、これらのブランドはそれまでトップス売上比率が低かったからという要因もある)

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(エドウイン、アルファインダストリーの来春夏企画)


完全にブームに乗れたといえる。

しかし、このブームが終わると反動は必ずあるだろう。
ブームが続いているうちにそれぞれのブランドのトップスを強化しなくてはならない。
そうでないとブームの終了とともに売上高は激減するからだ。

それでも暗い話がほとんどの衣料品業界においては、ロゴTシャツブームというのは数少ない明るい話といえるだろう。

それにしても、中高生の部活の練習着が一躍人気ブランドになるというのは、オッサン世代からするとなんだか釈然としない。

エドウインの営業マンによると、エドウインブランドやアルファインダストリーのロゴTシャツが伸びたのは、ロゴブームに加えて2000円前後という比較的買いやすい販売価格のおかげもあったとのことで、たしかに半袖Tシャツが1枚5000円もするなら、ちょっと買う気がなくなる。

よほどのセレブか服マニアかだろう。

一般人が奮発して買える半袖Tシャツの値段というと2000~3000円台で、5000円を越えるとちょっと厳しい。
7000円以上はよほどのマニアかセレブかしか買わない、と筆者は思っている。

エドウインやアルファインダストリーの売れ方がそれを証明しているのではないか。

ちなみに筆者の半袖Tシャツはだいたいが値引きセールで500~1000円になったもので、ユニクロ、無印良品、ライトオンの3ブランドで8割以上を占める。
値引き後1500円以上の半袖Tシャツはもう何年間も買っていない。

となると、以前に筆者がブランドスタート時になんだかんだと手伝った国産Tシャツブランド「ナインオクロック」の価格設定はまあ妥当なところだといえる。

ただ、今夏のロゴTシャツブームに反して、このブランドは無地Tシャツでスタートしたので、そのブームの恩恵は被っていない。

そのナインオクロックが今月クラウドファンディングに挑戦している。
目標100万円ということだが、正直なところ目標設定は50万円にしたほうが良かったのではないかと思った。

http://ishiwari.iwate.jp/pj/IswS2701440

1枚3000円のTシャツなので、コースがいろいろとあるとはいえ、客単価は3000円だと考えたほうが良い。
100万円を達成するには300人以上の支持がなくてはならないので、無名の新規ブランドとしてはちょっとハードルが高い。
逆に無名の新規ブランドでも100万円を達成したブランドはいくつもあるが、それらは商品単価が高かった。
最低でも7000~8000円、平均は1万円を越えていた。
となると、100人の支持で達成できる。

まあ、今から言っても始まらないので、残り日数で達成してもらいたいと思う。

とはいえ、現在54万円以上が集まっている。
ラスト、といってもあと5日ほどしかないが46万円弱を集めてもらいたい。
興味のある方は冷やかしも含めて協力してあげてはどうだろうか。

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(筆者の一番好きなナイクロのディスプレイ)

筆者は草葉の陰から見守りたい。












百貨店・専門店向けブランドの優位性がなくなった

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 久しぶりに今月買ったお買い得品を晒してみる。

ライトオンで買ったエドウインのジャージーズ。
当然今春物ではない型落ち商品である。
定価9500円が3900円に値下がりしていた。

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ジャージのように伸縮性のある素材で作られているジャージデニムには、織物と編み物の二種類が存在する。
本来の「ジャージ」という素材は編み物であり、編み物ゆえに伸縮性がある。
別段ポリウレタン弾性繊維など使わずともウール100%・綿100%のセーターが伸縮することを思い出してもらえれば理解ができるはずである。

編み物の場合は、大概が裏毛と呼ばれる素材を使用している。
一般的にスエットシャツ(別名トレーナー)に使用される素材である。
これをデニム風に染色加工してパンツにしたのが、編み物によるジャージデニムである。

一方、織物でありながら編み物のように伸縮性のある素材を使用した商品もある。
原理としては、ストレッチ繊維を使用し、繊維の密度を低めて織る。
密度が低いと繊維同士に隙間ができるからその分、伸縮性が出る。
それだけでは不十分だからストレッチ素材も織り込む。
これで編み物のような伸縮性が実現できる。

ディーゼルのジョグジーンズやエドウインのジャージーズは織物である。

これが市場に出回って3年以上が経過したと思うのだが、現在は編み物商材よりも織物商材の方が市場に出回っているように見える。
裏毛素材商材が縮小傾向にある理由はなんだろうか。

個人的には二つあると考えている。

1、織物よりも伸びきってしまいやすい
  いわゆる「膝が出る」状態になってしまいやすい。
  織物と違って洗濯しても元の状態に戻りにくい

2、デニムっぽい洗い加工がしにくい
  ジーンズのようなヒゲ加工や激しい色落ち加工をすると糸が切れてしまいやすい。
  織物は何千本・何万本の糸で生地を構成するので1本が切れたところで大きな穴にはなりにくい。
  編み物は生地を構成する糸の本数が少ないため、糸が切れると大きな穴が開きやすい。
  また、織物に比べてヒゲ加工を施してもヒゲが出にくい。

で、早速穿いてみた。
伸縮性は申し分ない。しかし、ウエストのヒモが邪魔である。
筆者はヒモを結ぶイージーパンツ類の着用感が嫌いだ。だからヒモを引き抜いた。
ベルトループがあるので通常のベルトを締める。

かなりテイパードされた裾に比べると太ももはちょっとゆとりがある。
先日に買った無印良品のスキニージーンズよりはよほどゆとりがある。
今まであまり穿いたことのないシルエットだが、何とかなるだろう。

ちなみにこれは「あべのキューズモール」のライトオンで買ったのだが、近隣にあるジーンズメイトでは半額で売られていた。9500円の半額だから4750円である。
ならライトオンで買った方がお得である。同じ商品は安い方で買うのが人間心理だからだ。

もう一つは、ユニクロのバンドカラーシャツである。
定価2490円が990円に値下がりしていた。

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昨年くらいからトレンドに浮上した襟なしトップスの一種である。
エクストラファインコットンのブロード素材で、2490円のままでは買わないが、990円なら十分に上質だといえる。
メンズの洋服は変化が少ないが、この「襟なしトップス」というのは久しぶりの大きなトレンド変化といえる。
ただし、2005年までと異なる点は、「襟なし」一色にはならないことだ。
相変わらず通常の襟のシャツも売られているし購買者も少なくない。着用者も多い。
これからもトレンドはこんな風にそれ一色に染まることはないのだろう。

さて、エドウインのジャージーズはさておき、トレンドの襟なしシャツがユニクロでも買えるのである。
定価で2490~2990円、値引き商品だと990~1990円である。
しかも値段の割には品質は悪くない。

トレンド商品が百貨店・専門店ブランドと量販店・低価格ブランドとほぼ同時に発売されるなんていうことは2000年ごろまでなら考えられなかった。
量販店のプライベートブランドだってトレンド商品を並べている。

例えば、久しぶりに立ち寄った西友。
プライベートブランドで、裏毛デニムのジョガーパンツを販売している。
定価3800円がすでに半額の1900円に下げられている。
試着しなかったのでシルエットまではわからないが、洋服に格別にこだわらない人なら西友のこの商品でも十分ではないか。

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こうして見ると、これまで「トレンドの早さ」に定評のあった百貨店・専門店向けの中・高級ブランドの優位性がなくなっていることが如実にわかる。
トレンドの早さやデザイン性の良さは、ほぼ拮抗している。
クオリティだって百貨店・専門店向けブランドが下がっているから、そこまで大きな差ではなくなりつつある。

だったら低価格商品でも構わないと考える人が増えても不思議ではない。

百貨店・専門店向けブランドは「トレンドの早さ」や「デザイン性の良さ」に代わる価値を創造する必要がある。それができないなら凋落・縮小はさらに続く。

西友の崩壊―現場からの報告書
荻原 康昭
データハウス
2000-10



西友ストアーの流通支配戦略 (1970年)
高丘 季昭
日本実業出版社
1970





新鮮で割安感のある商品は売れる

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 衣類が売れにくいといわれているが、目新しくて値ごろ感のある商品はやはり売れる。
ただ、筆者も含めた多くの人は「テイスト」だとか「風合い」だとかの目新しさについては理解がしづらい。

「このテイストは斬新」なんて雑誌やテレビで言われたところで、それに大枚をはたいて買わねばならない価値を見出しにくい。
「テイスト」やら「トレンド」しか目新しい物を提供できないから衣類、とくにファッション衣料は売れにくいのではないかと思う。そういう「テイスト」やら「トレンド」やらの目新しさこそがファッション衣料の価値だから、仕方がないことなのではあるが。

目新しさでわかりやすいのが「機能性」だと思う。

ユニクロがかつてヒートテックで大ヒットを飛ばしたのは「機能性」と「価格の割安感」だった。

肌着メーカーを取材していると、一昨年の秋冬くらいから、この保温肌着類の売れ行きが目に見えて鈍ってきたという。2015年の秋冬は暖冬傾向も相まってさらに保温肌着類は苦戦した。

メディアが「苦戦」なんて報じるとまるで一枚も売れていないかのように感じてしまうことがあるが、そんなことはない。実際に保温肌着は一定の枚数は売れる。ただし前年を大幅に越えるような状況ではないということである。
例えば、ユニクロの店頭で見ていても秋冬になると必ず毎日何枚かはヒートテックが売れる。
もうたくさん持っているだろうと思うのに、一人で複数枚を買う人もいる。

保温肌着の売上高が伸びなかった代わりに好調だったと言われるのが、保温ズボンであろう。
ユニクロの防風ジーンズやエドウインの保温ジーンズの類である。

先日、カイタックファミリーの展示会にお邪魔した際にも、量販店向けのレディース保温ジーンズ類が好調で、2016秋冬向けも多数のオーダーが入っているそうだ。

東洋経済オンラインに

しまむら、V字回復の理由は「値上げ」にあった
http://toyokeizai.net/articles/-/112480


という記事が掲載されているが、この「値上げ商品」とは3900円の裏地付の保温ズボンだと報じられている。
先日のカイタックファミリーの量販店向け商材もちょうど同じ価格帯である。

一方、エドウインで尋ねてみると、7900~9000円くらいの専門店向け保温ジーンズは好調だったが、一部チェーン店向けに企画製造している4900円商品は不調だったという。

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(エドウインの専門店向け保温ジーンズ)

4900円商品が不調だった理由はおそらく、その下をくぐる3900円、2900円ラインの他社製品が充実したためではないかと考えられる。

ジーンズ、カジュアルパンツという商品群で見ると、6900円以上が専門店向け商品とされ、それ以下は量販店向け商品とされている。
量販店には1900円、2900円、3900円、4900円、5900円の価格帯があるが、メインとなるのは1900~3900円で、よほどの「何か」がないと4900円、5900円はあまり量は売れない。
なぜならこのくらいの価格帯になるとSPAブランドや一部専門店でも販売されており、そちらの方がブランドステイタスが高いからだ。

今までエドウインの4900円保温ズボンは、「機能性」という「何か」があったわけが、他社からほぼ同じような機能性のある2900円、3900円商品が登場すると、人は同じような物なら安い方で買うから、そちらに流れたと考えられる。

東洋経済の記事は、しまむらの回復を値上げにあると指摘しているわけだが、それは半分正しく、もう半分は保温ズボンという新ヒット商品を見つけたからではないかと思う。
しまむらほどの規模になると販売数量が劇的に伸びることはよほどの事件がない限りはありえない。数量が変わらない状況で売上高を伸ばそうと考えるなら価格を上げるしかない。
3900円に上げたことが正解だったのではなく、「3900円で保温ズボンという新ヒットアイテムを販売した」ことが正解だったといえる。

ユニクロは今春から再び値下げ傾向になっているが、昨年12月・今年1月の苦戦?(他のアパレルに比べると苦戦ではないと思うが)の原因が値上げだと考えられることから、価格政策を批判する記事が相次いだが、ユニクロがさらに売上高を伸ばそうと考えるなら値上げがもっとも正しい選択肢の一つであることは間違いがない。
それが消費者に受け入れられるかどうかが問題ではあるが、「値上げ=悪」ではない。

それはさておき。

ヒートテックをはじめ、各社の保温肌着を腐るほど持っている消費者は、今後、保温肌着をまとめ買いすることは考えられない。せいぜい2,3枚を毎シーズン買い替えるだけだろう。最早、現在の低価格保温肌着は買い替え需要しか存在しない。
今後、画期的な新機能やら新素材が出てくれば別だが、従来品のアップデート版では爆発的に売れることは考えられない。

そういう消費者がいまだに所有していなかったのが、保温ズボンであろう。
この商品は2016秋冬も売れるだろうし、2017秋冬も売れるのではないか。とくに量販店価格帯の商品は。
量販店価格なら3900円が主戦場となり、4900円で売るためにはあっと驚くような「何か」が必要となる。

しまむら、カイタックファミリーの商品が売れたのは、手持ちが少ない新鮮な商品だった上に、価格帯に割安感があったからだ。

しかも各社の保温ズボンの見た目は向上している。
通常のジーンズ、カジュアルパンツ類とほとんど見分けがつかない。
シルエットも通常のスキニーと変わらず細身を実現できている。

やはり、「新鮮で割安感のある商品」は売れるのである。
ただ、業界人の考える「新鮮さ」と一般消費者が求める「新鮮さ」が乖離しているのが、昨今の状況であり、これが衣料品不振の原因の一つではないかと思う。









エドウインが503をリニューアル

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 今回は展示会レポートを。

エドウインが定番ジーンズの「503」を今秋冬からリニューアルする。

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最大のリニューアル点はデニム生地。
強撚糸で織って、そこに液体アンモニア加工を施すことで、綿100%でありながら緩やかなナチュラルストレッチ性と光沢感、ソフト感が出た。
個人的には、そのソフト感が印象に残っている。
14オンスデニムなので市場に出回っているデニム生地より重く感じる。
手にしたときのソフト感を言葉で表現するのは難しいが、しいていうなら、超ヘビーオンスのレーヨン混デニム生地に近いとでも言えば分かりやすいだろうか。

ターゲット層は30代半ばから上のベーシックを好む層。
あくまでもファッション好みではない層と言った方が伝わり易いのではないか。

以前に発表した「Eスタンダード」もベーシック路線だが、こちらはトレンド層を意識しており、非トレンド層の「503」との棲み分けを図る。

さて、この「液体アンモニア加工」だが、日清紡の技術である。
かつてジーンズ業界で一世を風靡したことがある。

90年代半ばにビンテージジーンズが登場するまで、ジーンズというアイテムは「きれい目」路線を進んでいた。
その理由はさまざま考えられる。

作業着として誕生したジーンズがファッションアイテムとなった。
ファッションアイテムにはなったものの、「ドレス」「フォーマル」ジャンルからは阻害されていた。
90年代前半に筆者自身も経験したことがあるのだが、ヨーロッパではジーンズ穿きでは入店すら拒むレストランがあった。
この扱いは日本でも同様である、というより日本は欧米のやり口をコピーしていたに過ぎない。
90年代後半に盛り上がった?カジュアルフライデーでもジーンズは除外されていた。

オッサン世代は当時を思い返してもらいたい。
ゴルフスラックスやチノパンはOKだったが、多くの会社でジーンズは除外されていたはずだ。

それほどにジーンズは「フォーマル」ではないと位置づけられていた。
出自がワーク、カジュアルのジーンズとしては通常の衣服と同等になるためには、きれい目に進むという方向性は当たり前だったといえる。

生地に光沢感があってソフト感があるという「液体アンモニア加工」が各ナショナルブランドで重宝されたのは当然の成り行きだといえる。
この「ジーンズきれい目化路線」の最終形態が、90年代前半に登場したレーヨン、テンセルのソフトジーンズだったのではないかと個人的には見ている。

しかし、その反動から90年代半ばから粗野でワークテイストに溢れたビンテージジーンズがブームとなる。
そのブームを誰が仕掛けたとか仕掛けられたとかそういうことはここでは除外する。

ここからデニム生地にも一気に反動が押し寄せる。
表面に凹凸感があって固くて色落ちのしやすいデニム生地が好まれるようになる。
液体アンモニア加工とは正反対である。
デニム生地を織る糸も、ストレートで滑らかな糸に代わって、節くれだった不均一なスラブ糸が好まれるようになる。

この流れはほんの2,3年前まで続く。
厳密にいうと今でも続いているといえる。

ただし、2008年にスキニージーンズが登場してから、ストレッチ混デニム生地が標準となった。
その影響もあり、デニム生地は全体的に12オンス前後にまで軽量化したが、デニム生地そのものの表情は相変わらずビンテージ感が好まれていた。
この傾向は今でも残っている。しかし、現在は、それと反対の潮流が勢力を盛り返しつつあり、併存している状態だといえる。

エドウインの503に液体アンモニア加工が大々的に採用されるということは、きれい目なジーンズ、きれい目なデニム生地の需要が大々的に復活したと考えられる。

粗野なデニムときれいなデニム、この両方が現在は並立しており、それぞれにファンがいるといえる。
もしかすると購入者は同じで、その日の気分やコーディネイトによって使い分けているだけなのかもしれない。

実は業界紙記者になったころ、液体アンモニア加工の特徴をレクチャーしてもらったが、それほどの違いがあまりわからなかった。
しかし、今回の展示ではそのソフト感がはっきりとわかった。
当時は経験不足でその差異がわからなかったが、20年近くが経過してようやくその違いが分かるようになったということだろうか。

ジーンズファンからするとエドウインのジーンズはきれいすぎると言われる。
縫製などのクオリティの高さは折り紙つきだが、いわゆる粗野感は微塵もない。
今回の503なんてその典型ではないかと思う。

しかし、個人的にはそれで良いのではないかとも思う。
なぜなら、粗野感のあるジーンズを欲しがっている日本人が一体どれほど存在するのか。
それに粗野感あふれるジーンズを企画製造しているブランドは一体いくつ存在するのか。

ならマスメーカーとしてエドウインはマス層に向けた商品を提供すれば良いのではないかと思う。
粗野感あふれるジーンズが欲しい人は多数存在するその手のブランドの商品をチョイスすれば良いのではないか。

ちなみに、エドウインは単一ブランドでありながら、多くのテイストの商品を企画製造している。
けっこう先端層に向けた提案もあるのだが、ブランド名が同じなので、先端層からは敬遠されることもある。
これはもしかしたら、以前の「ボブソン」が踏んだのと同じ轍なのかもしれない。

非トレンド向けの「503」、トレンド層向けの「Eスタンダード」のほか、地方や都心下町に根強く残る元ヤンキー層に向けたこんなコテコテ商品も作り続けている。

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元ヤンキー層のファッションの嗜好にはまったく興味も共感も持てないが、この手の商品が非トレンドアイテムになってから久しく、この手の有力ブランドの存在感がほぼなくなっている。
トゥルーレリジョンはジャパン社を解散しているし、韓国ブランドのレッドペッパーやロリータジーンズもほとんど存在感がない。

オズファーストのクックジーンズが根強い固定ファンを集めているが、東京都心では存在感があまりない。
関西や地方都市限定という印象が強い。

そんな中、エドウインのこの手の商品はそれなりに収益を上げている。
これは残存者メリットといえるだろう。
資金的にゆとりがある大手ならではの戦略ともいえる。

注意深く見ていてもらいたいのだが、日曜日のショッピングセンターにはこれを穿いた元ヤンキー層が多数闊歩していることに気が付くはずである。
都心でもあべのキューズモールでは多数見かける。

そこに市場が残っているから取りに行くというのもまた一つの立派な営業方針といえる。












エドウインに対する懸念と期待

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 エドウインの2016年春夏展示会にお邪魔した。

今回の業界新聞的な目玉は、今秋冬からスタートしたEスタンダードの拡充と、ラングラーの高額商品復活だろう。

まず、Eスタンダード。
Eスタンダードは海外輸出も視野に入れた日本製ラインで、価格は8000~16000円くらいというリーズナブルな設定である。
16000円というのは相当に手の込んだ洗い加工を施した物に限られ、通常の加工商品品だと8000~1万円未満である。これなら欧米に輸出しても200ドル未満の販売価格を付けられ価格競争力がある。

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ここに新型のレギュラーテイパードという形を投入する。
また、ストレッチ性を強化した「ジャージーズ」と中空糸「ミラクルエア」を使った軽量速乾「クール」も投入する。
ちなみにここでいう「ジャージーズ」は以前から展開しているジャージーズとは別で、Eスタンダードのジャージーズラインである。
ちょっとややこしい。

このジャージーズのストレッチデニム生地はすごく伸縮性がある。
以前にカイタックファミリーの「360°ストレッチ」を紹介したことがあるが、それに匹敵する伸縮性である。

しかし、このEスタンダードには懸念がある。
品番数が多すぎるのではないかという懸念だ。
シルエットが細身から太めまで今回のスリムテイパードも含めて合計6型もある。
そこにジャージーズとクール、そして膝丈とクロップド丈。
合計で10品番あり、それぞれの品番に加工による濃淡の色番号がいくつかある。

これはちょっと選択肢が多すぎるのではないかと感じられる。

例えば、スリムテイパードとレギュラーテイパードとレギュラーストレートがある。
それぞれの太さの差異はほんの微細なもので、そこまでの微細な細分化が必要なのかと思うし、反対に消費者からしてもその区別はつきにくいのではないかと思う。

よほど気を付けて販売しないと選択肢の多さがかえってこの商品をスポイルすることになりかねない。
企画としては評価しているので、そうならないことを願うばかりだ。


一方のラングラーである。
10代後半~30代前半の若い消費者にとって、ラングラーは4900~5900円のどちらかというと低価格帯に属するブランドだと認識されているのではないか。

筆者のようなオッサン世代だとラングラーというのはリーバイスやリーと並ぶナショナルブランドだったという認識だが、それもあくまでも過去形である。

このラングラーで1万円前後の商品を復活させる。
こちらも日本製だ。

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ラングラーブランドの日本における変遷をまとめると、かつてはラングラージャパンとして独立した企業だった。
それがVFジャパンへと名称変更し、その1年後にあっけなく解散してしまった。
99年とか2000年ごろのことだったと記憶している。
そして、エドウインの子会社であるリージャパンがラングラーブランドを管理することになって今に至る。

20年ほど前のことだが、筆者は当時のラングラーが好きで4本くらい所有していた。
13MWZという品番である。
ラングラージャパンの製品だった。

来春夏のラングラーの1万円前後の商品は、日本製で非常に手の込んだ洗い加工が施されている。
通常ならもう少し高額な価格設定になるが、エドウインでは「価格戦略商品」と位置付けている。
自社縫製工場ならではといえるだろう。

往年のラングラー好きとしてはぜひとも復活してもらいたい。

ところで、ラングラーの中にはもっと価格戦略商品がある。
日本製で5700円くらいのカラーパンツ類である。
これこそ自社縫製工場を所有するエドウインならではといえるのではないか。

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(税抜5700円の日本製カラーパンツ)


「国内工場の維持」という命題になると、高額化という解答を導き出す企業やブランドが多い。
工賃を上昇させるためにはこれは正解の一つである。
しかし、個人的には日本製ブランドの方向性が「高額化一辺倒」になることに疑問を感じている。
高額化以外のモデルケースも必要ではないかと思う。

着物ほどではないにしろ、「日本製だからン万円」「日本製だからン十万円」という価格の商品ばかりになると、よほどのコアなマニア層しか日本製品を欲しがらなくなる。
それこそ着物のように「別世界」の商品という意識を持ってしまう。

そしてそのコアなマニア層だけで、すべてのブランドの経営が成り立つわけではない。
また富裕層を取り込むためには欧米のラグジュアリーブランドとの競合に晒される。
ステイタス性で比べてみても、宣伝販促の巧みさから見ても、国内ブランドではなかなか太刀打ちできない。
結果的に、日本製ブランドも少数の勝ち組と大多数の負け組に分かれるだろう。

だったら、特別な富裕層とマニア以外でも手の出しやすい価格帯の日本製品も必要ではないか。
その成功事例の一つは鎌倉シャツだろう。

エドウインのEスタンダード、ラングラーの価格戦略商品はそれに近い。

奇しくも価格破壊者として認識されているユニクロのジーンズがついに4990円まで値上がりした。
エドウインの日本製品との価格差が縮まっている。

90年代後半~2010年ごろまでのような圧倒的な価格差ではなくなっている。
長い年月を経て、再びジーンズは5000~8000円くらいの価格帯に集束されつつある。

エドウインには自家工場の利点を最大限に生かした「買いやすい価格帯の日本製品」という分野をぜひとも確立してもらいたい。









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