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日登美の新社長にお会いしてきた話

 今日は日記みたいな感じで。

先日、久しぶりに日登美の展示会にお邪魔した。
日登美は百貨店向けのメンズパジャマとシニアメンズカジュアルのメーカーだ。

驚いたのが昨年10月に日登美の図師雅文・前社長が急逝されたことだ。
その半年くらい前に大阪展示会でお会いしていたので、ちょっと驚いたのだが、業界紙の報道によると交通事故とのことだった。

もうかれこれ、20年前から断続的にお付き合いしていただいていたのだが、それは突然終わってしまった。

50歳手前になると人を見送ることが多くなり、自分の番もそう遠いことではないと改めて実感する。

そういえば、図師社長の身内を会社で見かけたことがなかったので後継をどうするのだろうと思っていたら、女性が新社長に就任したという記事を業界紙で見かけた。

メンズのパジャマとカジュアルウェアの会社で、社内も男性社員の方が多いから、女性が新社長になるというのは意外だった。

業界紙を読むと、ご息女ということだが、前社長には実子がいなかったため、姪御さんを後継として養子縁組をしたのだそうだ。
証券会社出身とのことで、ビジネスの仕組みやカネの流れについての理解は明るいのではないかと想像した。

古株の副社長、常務はご健在だから、いきさつをお聞きすると、事業を後継するために前社長の亡くなる何か月か前に養子縁組し、本来ならそこから数年間でアパレル業務を勉強してから後継する予定だったが、前社長の急逝で前倒しとなってしまった。

そんなわけで、いざ、新社長の図師綾さんにお会いしてみると、予想外にお若かった。
初対面の女性に年齢を尋ねるわけにもいかないので、20代後半から30代前半くらいだろうと思う。
50歳手前になると20代後半も30代前半もそんなに違いがわからない。

10代、20代の若者が47歳と52歳を区別できないのと同じである。

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(図師綾新社長)

年配の男性社員ばかりの中に若い女性社長というのはちょっと奇異な印象も受けるが、実際に展示会場で見ていると、それなりに溶け込んでいたようで、文字通り「男くさい(笑)」社風がこれからは少し変わるのではないかとも思った。

新社長とお話した感想をいえば、まだ半年なので業界のことに対しては不慣れな感じがあるが、古株の役員がサポートしておられるので、そんなに手ひどい失敗はないと思われるし、おいおいと業界のことには慣れていくのではないかと思う。

前社長の急逝、新社長の急登板という状況なので、事業内容そのものには大きな変化がない。

需要が急増もしない代わりに急減もない百貨店パジャマを基盤にしつつ、メンズカジュアルを展開する。

この展示会訪問で、以前にもこのブログで紹介した谷野美智雄・副社長のコメントを聞かせてもらった。

そう、「物作りが上手い同業他社が、得意とする物作りに注力して売り場変化に対応できず消え去っていった」という内容のあのコメントだ。

カジュアルのVUMPS(ヴァンプス)では、色落ちしにくいデニム生地を使ったパンツとジャケットが提案されていたのが印象に残った。

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(ヴァンプスの色落ちしにくいデニム製品)

これが提案されたのは、通常のデニム生地を使った商品を着用して白いシートの自動車に乗ると、シートにブルーが移染したというクレームがあったことがきっかけとなった。
まあ、その色落ちこそがデニム生地本来の魅力ではあるのだが、それをデメリットに感じるという人も確実にいるということだ。

ちょうど同じ時期に2017秋冬展示会が開催されたジョンブルでも色落ちしにくいデニム生地を使ったGジャンとジーンズが提案されており、こちらは「濃色が気に入っているのでこれ以上色落ちしてほしくない」というファッション的な要望があったことが製造するきっかけとなっている。

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(ジョンブルの色落ちしにくいデニムブルゾン)

デニム関係者やジーンズ業界人の多くは、「デニムは本来色落ちするもの」「色落ちするからこそデニム」という考え方を多かれ少なかれ持っている。
デニムの本来の定義からするとそれはその通りなのだが、色落ちしないでほしいという需要は確実に存在する。

筆者もそのうちの一人で、リジッド(ノンウォッシュ)やワンウォッシュなどの濃紺ジーンズを買った場合、できるだけ色落ちしてほしくないと思う。
なぜなら、その「濃紺」という色を気に入って買っているからだ。色落ちするのは仕方がないとあきらめてはいるが、可能ならばできるだけ色落ちしてほしくない。

筆者のように「色そのもの」が気に入って買っている人間からすると、3年後か5年後に「色が変わってしまう」とそれは別の商品になってしまうからだ。

濃紺のパンツを買ったのに、5年後には薄ブルーのパンツへと「変色」してしまうのなら、その商品を買う理由、所有し続ける理由がなくなってしまう。
それなら、デニムほど色落ちしない濃紺のパンツを買って所有し続けるという選択をする。

あらかじめ色落ち加工を施されたデニムでも同じで、その色落ち具合が気に入って買ったのに、5年後はさらにブルーが薄くなってしまうのなら、無邪気には喜べない。

色落ちしにくいデニムへの要望が少なからずあるということは、デニムが「特別で独立した」な生地ではなく、数ある色の中での一色に過ぎないと見ている消費者が相当数いるということではないか。

需要を作る、消費者を啓蒙するというのも一つのビジネススタイルだが、需要のある商材を供給するというのも一つのビジネススタイルである。色落ちしにくいデニム生地を欲しいという層があるなら、そこへ商品を供給するのも立派なビジネススタイルだといえる。個人的にはデニム業界はその需要を取り込んだ方が良いと思う。

「本物のジーンズとは」「本物のデニムとは」と、作り手のこだわり・マニアのこだわりばかりを押し付けていても仕方がない。

そうそう、日登美がAmazonへの出品ということでごく少数の型数からネット通販を始めたので、ここにアフィリエイトをいくつか貼っておく。(笑)





製造加工業者は「物作り」と同じ熱量を「販促」にも費やせ

 下請け受注の減少から、自社オリジナル製品の開発を始めた製造加工業者は少なくない。
今では産地企業のブランドも珍しくない。

しかし、その多くはなかなかうまく離陸しない。

その理由は大雑把にいって2つある。

1、商品自体のデザインが良くない
2、商品は良いが売り方・見せ方・伝え方・パッケージが良くない

この2つある。

1が起きる背景には、デザインという「形のない物」に金を払いたくないという製造加工業者特有のメンタリティが働くことがある。
デザイナーへの支払いをケチるあまりに、社内や身内の素人にデザインさせてしまうことがある。
それが成功する場合もあるが、多くの場合は素人は素人であり、売り物のレベルには達していない。

物そのものが良くないのだから、売れなくて当然である。

問題は2の場合だ。
物そのものはそこそこの出来であるのに、売り方・見せ方・伝え方・パッケージが良くないため、期待したほど売れないという状況だ。
最近は、製造加工業のオリジナル企画も向上しているので、こちらの場合の方が多くなっている印象がある。

例えば、ラグジュアリーブランド「〇〇」と同じ素材を使って、それよりも形状も工夫したという商品がある。
しかし、ラグジュアリーブランド「〇〇」ほどは当然売れない。
なぜなら、売り方・見せ方・伝え方・パッケージのレベルが全く異なるからだ。

先日、ある業者から新ブランドについての相談を受けた。
その際、一人の同席者がおられた。

商品自体の出来は及第点を越えていた。
だから「物」だけで勝負できるなら、そこそこの売れ行きが十分に期待できる。

そこで、同席者がこう指摘した。

ハイクラスブランドとの競合を目指すなら、例えばお買い上げいただいたときの「箱」と「ショッパー」は必要ですし、値札や下げ札のデザインにも工夫を凝らす必要があります。ハイクラスブランドはそれらも含めて顧客から支持されているのです。

この指摘は納得である。
同席者は12歳くらい年下と若いが、最先端ブランドで展示会やブランディング、ウェブ、印刷物などのディレクションを行っておられ、その指摘はさすがというほかない。

若くて、いわゆる「クリエイションガー」とだけ無責任に叫んでいるような輩とは一線を画している。

日本人には「ボロは着てても心は錦」を美徳とする部分がある。
小銭にシビアな関西人や地方民はとくにそれをよしとする。

パッケージや見せ方、伝え方などは些末な問題で、「物」そのものの品質やらデザインが良ければ、それでいいじゃないかと考える人は日本人には多い。

「ボロいけど安くて美味い飲食店」が支持されるのもそういう理由がある。

これは一面、たしかにそうなのだが、食品にせよ、ファッション用品にせよ「物」そのものの良し悪しだけで判断できる消費者というのは実際はそれほど多くない。
やっぱり、店構えや箱、ショッパー、ディスプレイ、販売員の態度、ステイタス性などにその判断は大きく左右される。

話は少しそれるが、昨今の店頭の同質化問題の一因は、プロであるバイヤーやマーチャンダイザーまでもが、「物」ではなく、店構えやディスプレイ、ステイタス性で商品を判断してしまっている点にあり、プロの素人化が進んでいるともいえる。

「外装ばかり立派で中身は大したことない」という批判は間違ってはいないが、逆にいえば、「大したこともない商品を高値で売ってそれで消費者を納得させられる」というのは大した手腕だともいえる。
それは単に、小手先のキャッチコピーを付けたり、きれいな外国人モデルを使った広告を出稿するだけでは到底なしえないことである。

しかし、商品自体の出来が良いなら、見せ方・売り方・伝え方・パッケージを工夫すれば売れる可能性が格段に高まる。それをやらないことは非常にもったいない。

しかも昨今は低価格ブランドでも商品自体のデザインやクオリティは水準点に達している。
一昔前のように「安かろう悪かろう」という商品は分野を問わず、かなり減っており、「安かろうそこそこ良かろう」が標準といえる。

そうなると、「物」自体の優劣はそれほどなくなってくるから、見せ方・売り方・パッケージなどの工夫が勝負を左右することになる。

時々、お会いするセメントプロデュースデザインの金谷勉社長から、以前こんな話を聞いた。
大阪の石鹸メーカーをブランディングした際、それまで普通の長方形の石鹸を作っていた地味なメーカーだったが、これを五角形に形状を変更し、パッケージをリニューアルしたところ、かなり売り上げが増え百貨店などからもオファーがあったという。
石鹸の成分そのものは変わっていないにもかかわらずである。

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http://cocoon-soap.com/index.html

製造加工業者はどうしても「作ること」を重視し、それの工夫と改良に邁進する特性があるが、それと同等の熱量を見せ方・売り方・伝え方・パッケージ作りに振り分ける必要がある。
「ボロは着てても心は錦」ではなく、心が錦なら着飾るべきなのである。




入店客数の増減によって売上高を増やす施策は全く異なる

 今日は、基本的なことを復習がてら。
そんなこと言われなくてもわかっている方は時間が無駄なので飛ばしていただきたい。

4月からまた月に何度か専門学校へ講義に行くことになったが、計数管理の授業で、入店客数について説明したとき、ふと、基本的なことを思い出した。

入店客数の減少はその店、ブランドから顧客が離れているという状態であるということを。

だから、売上高の減少に対して、入店客数の減少が伴っている場合と伴っていない場合では対策がまったく別物になるということである。

入店客数が減少して売上高が減少している場合は、ブランドそのものや店が顧客から見放されているので、根本的な施策を変える必要がある。

一方、入店客数は増加ないし維持されているのに、売上高が減少している場合は、店やブランドそのものは支持されているから、比較的小手先の改善で持ち直す可能性が高い。

多くの方々からすれば、「そんな基本的なことは分かっている」内容だろうが、実際の業績推移や決算会見などを見ていると、自社がどちらに属するのかを分析せずに、場当たり的・泥縄的に対応している企業やブランドが少なからずあると感じる。

岡目八目とはよく言ったもので、外野から見ていると冷静にいろいろなことがわかるが、いざ自分がプレイヤーになると冷静さを欠いてしまう。人間だれしもそうだろう。

多くの苦戦店や苦戦企業を見ていると、入店客数の増減を分析せずに、

1、とりあえず商品価格をやみくもに下げる
2、品ぞろえのラインナップを思い付きで変えてみる
3、とりあえず(深い考えや狙いもなしに)広告を出稿する
4、意味もなく販売員に声掛けを増やさせる

ようなやり方が多いように感じる。

入店客数が減少しているならこういうことをやっても効果が出るまでに時間がかかる。

広告や告知を盛んにすることは効果が期待できるが、狙いや考えがなければ、単なる無駄な出費に終わる。
ファッション雑誌にブランド名と外国人モデルだけを掲載した純広告を出稿してもまったく何の効果もないのは、各ブランドが知っている事例だろう。

まあ、都市伝説の類だろうが、こんなうわさを聞いたことがある。

ユナイテッドアローズの重松理会長は人一倍、入店客数を気にしていたといううわさだ。

入店客数が多いと店の入り口の足拭きマットの傷みが早い。
たくさんの人間に踏まれるからだ。

それとは逆に入店客数が少ないとマットはなかなか傷まない。

足拭きマットは、ダスキンなどの業者からレンタルしている場合が多く、定期的に交換される。
傷みが早いと交換のペースが速くなるし、傷まないと交換のペースは遅くなる。

そこで、うわさによると、重松会長は商業施設内の同業他社の入店客数動向を探るために、出入りのレンタル業者に声をかけ、どの店が傷みが早いかを探っていたといわれる。

あくまでもうわさに過ぎないと思うのだが、それほどに入店客数の増減を重視していたから、そういううわさができたのではないかと考えられる。

入店客数を増やす施策と、買い上げ客数を増やす施策は異なる。
これをプレイヤーであるが故にごっちゃにしてしまっているブランド、企業が多いのではないか。

一度、基本に立ち返ってみることもたまには必要なのかもしれない。


バッタ屋について

 各社の不良在庫を格安で引き取ってきて、安く売る店を俗に「バッタ屋」と呼ぶ。
丁寧にいえば在庫処分屋といえるが、業界ではバッタ屋と呼ばれる。

子供のころから周りでは、ブランドのコピー商品などを「バッタもん(物)」と呼んでいたが、バッタ屋と語源は同じあろうと考えられる。

ところでここでいうバッタとはなんだろう?
昆虫だろうか?

バッタ屋の語源についてググってみると、日本俗語辞書には

バッタ屋とは古道具商の間で「投げ売り」を意味する隠語『ばった』をする店、つまり商品を格安で販売する店のことを意味する。後にバッタ屋は倒産寸前の店舗から商品を買い叩き、安値で販売するなど、正規ルート以外で商品を仕入れ、安売りする店のことを指しても使われるようになる。

http://zokugo-dict.com/26ha/battaya.htm

とある。

このほかにもいくつかの語源が考えられており、昆虫のバッタのようにあちこち移動するからではないかとも考えられているようだが、古道具商の隠語の方が適切なのではないかと個人的には思う。

最近、小島健輔さんがブログで何度かバッタ屋を採り上げておられ、洋服不振で在庫が増えているであろうアパレル各社やSPA各社はバッタ屋を活用してはどうかという提言されている。

面白い構想だし、バッタ屋をいくつか組織化できれば大いにチャンスもあると思うし、廃棄量も減らせるだろう。

しかし、難点が多々あって、実現するには相当に苦労することになる。

まず、バッタ屋を運営する社長やオーナーの多くはアパレル業界出身者ではなく、店作りからファッション感度から何から何までアパレル業界関係者とは見方や考え方が異なる。
正規のアパレル業界関係者の発想とは相いれない部分が多い。

また、ウェブに対する取り組みがほとんど皆無で、ウェブによる恩恵や効力をまるっきり信じていない。
ウェブに対して積極的にシステマティックに取り組んでいるのは、年商10億円を越えた大阪のショーイチくらいだろう。
バッタ屋のほとんどは公式ウェブサイトすら持っておらず、連絡手段は電話かファックスかEメール(携帯電話の)くらいしかない。

正規のアパレル業界も大概がアナログだが、バッタ屋はそれを何倍にも強めたアナログ感である。

あと、全国にどれくらいのバッタ屋が存在するのかもわからない。
正規のアパレル業界のように組合や業界団体はない。
まったくのゲリラで、ふと思いついたド素人が明日から開業することも珍しくない。(成功するかどうかは別)

このような状況なので、正規のアパレル業界関係者やIT業界関係者が彼らをまとめ上げて組織化するのは難度が高く、よほどの手腕と僥倖がなければ成功は難しいと考えられる。

大阪でいうと、バッタ屋が集積しているのは、天神橋筋商店街だろう。
また、本町と心斎橋の間の地域にもバッタ屋は多く集積している。

千林商店街にも多くあると聞く。

じゃあ、実際のバッタ屋というのはどんな感じなのかというと、こんな感じだ。

洒落たPOPなんて存在せず、すべての店が手書きPOPで対応している。
いわゆる、「オシャレな手書きPOP」ではなく、原始的な手書きPOPである。

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商品に関していえば、激安品が多いことは言うまでもないが、先日、自分市場最安値の商品を発見した。
59円で販売されているスカートである。

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靴が1000円なんていうのは当たり前で、500円でもそれほどは驚かない。

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取り扱い商品は各店で見ていると様々で、けっこう有名なブランドの不良在庫品もある。
あと最近不振を極める大手通販各社の不良在庫は各店で出回っている。

また、アパレル各社のサンプル品もある。

洋服の価格はだいたい300~1000円くらいで、2000円を越える商品はほとんどなく、あってもそれはスーツやフォーマル、コート、テイラードジャケット類くらいである。

種々雑多に仕入れられているが、(段ボール箱何箱で何万円という仕入れ方だから)よく探せばたまに掘り出し物が見つかるのがバッタ屋の楽しさでもある。

しかし、最近は、正規店の最終処分値もバッタ屋には負けていないことが増えた。

例えばユニクロとジーユーである。
ともに最終値下げ価格が390円~790円になる。

今年の2月にはジーユーで390円に値下がりしたニットキャップを買ったし、昨年夏は790円に値下がりしたスリッポンを買った。

ユニクロでも今年の2月に790円まで値下がりしたスタンドカラー無地ネルシャツを買ったし、今日から4月27日まで590円に期間限定値下がりする7分袖Tシャツを買おうかどうしようか迷っているところだ。

また、大手総合スーパー(GMS)でも投げ売り品に出くわす。
個人的に愛用するのは西友だが、昨年、4枚1000円のボクサーブリーフを買ったし、先日、10足1000円の靴下も買った。

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このように正規店でも不良在庫の投げ売りは珍しくなくなっており、わざわざバッタ屋に出向かずとも選び方さえ間違えなければかなりの商品を最安値で買うことが可能である。

とくに凄まじいなと感じるのが、ユニクロUの値下げで、今春に発売されたスーピマコットンクルーネックセーターが990円にまで値下がりしている。
ユニクロ×ルメールの時からそうだが、クリストフ・ルメールという有名デザイナーが手掛けた商品が最終的には790円とか990円にまで値下げされるのだから、「名前だけで売ってる」既存のアパレルブランドはたまったものではないだろうと感じる。(自分は最安値のユニクロUを集中的に買うが)

対して「ユニクロガー」と文句を言っていても何も変わらない。
それとは異なる価値観を確立させ、広く伝えることができなければ既存のアパレルブランドは、ユニクロ、ジーユーはおろか、バッタ屋にさえ客を削り取られることになる。
もしかして、難度の高い「バッタ屋の組織化」にチャレンジして成功する者が今後登場するかもしれない。
後の世代には想像を絶するような異才、天才が出現する可能性がある。

まさに「後生畏るべし」である。



レナウンの低価格ブランド計画は「隣の芝生」が青く見えただけでは?

 また今年も月に何度かのファッション専門学校での講義が始まったのだが、若い人たちとの業界認識の差に驚かされる。

何かの話の拍子にレナウンという企業を取り上げたのだが、10人くらいの新1年生は全員、レナウンという社名を知らなかった。また2年生もレナウンという企業名を知らなかった。
身の回りの少人数に対する調査なので「若者全体」に敷衍することは難しいが、レナウンという企業は、年配層やレナウン社員が思っている以上に、若者への認知度は低い。

今回も「若者は不勉強」という老害の批判は相手にしない。
なぜなら、業界人でもない若い人が勉強するのは興味を持つ事柄に限られていて当たり前だからだ。

少なくとも彼らの生活においてレナウンはこれまで、まったくかかわりがなかったということだし、下手をすると彼らの親もレナウンの製品とはかかわりのない生活を送っているということになる。

昨日でめでたく?47歳になった筆者でもレナウンの製品を買うことなんてほとんどない。
昨年に4枚1000円のレナウン製のボクサーブリーフを西友で買ったくらいしかない。それ以外のレナウン商品は10年間買ったことがない。

その昔、Jクルーをライセンス生産していたことがあり、その時にバーゲンで1枚か2枚くらいを買ったことがあったかもしれないが、愛用するには至らなかった。
当時、GAPやユニクロが台頭していたので、比較対象すると割高感があった。
またチノパンやらジーンズも製造販売されていたが、リーバイスやエドウインの7900円、8900円ラインに比べても割高感があった。

次に、サイズ感が異様にデカかったことも愛用しなかった理由である。
アイビー調のカジュアルテイストは好きだったが、他ブランドに比べるとサイズが異様に大きかった。
メタボのオッサンをターゲットにしていたのかと疑問を持ったほどだ。

余談だが、レナウンとの契約を解消したJクルーはアメリカで人気ブランドとなったが、現在は巨額の赤字に苦しんでいる。3年くらい前に突然巨額の赤字転落をしたので、それまでの好調は不良在庫を計上していなかっただけなのではないかと疑っている。

現在、レナウンのブランドラインナップは10年前同様にパッとしない。

ステイタス性があって、「憧れ」対象になるのはアクアスキュータムくらいだろう。
シンプルライフもエンスイートもシルバー向けブランドという認識しかない。バッタ屋で投げ売られても買わない。
アーノルドパーマー、プレイボーイは微妙な印象だ。

合併されたダーバンのスーツはそれなりに評価が高いが、それ以外は完全に存在感がない。

業界人ならレナウンという社名はご存知だろうが、注目しているブランドがあるだろうか?
おそらく業界人と言えどもほとんどないのではないか。

そんなレナウンが、SC(ショッピングセンター)向け・ECサイト向けの低価格ブランドを開発すると発表した。

レナウンが低価格ブランド 18年春発売
https://www.wwdjapan.com/411021

薄ら笑いを浮かべながら「へぇ~」と生返事をするほかないのだが、よほどの「仕掛け」が無い限り失敗に終わると予測する。

SC向け・EC向けの低価格ブランドはレッドオーシャンの血の海状態である。

ユニクロ、ジーユー、ウィゴー、H&M、グローバルワーク、センスオブプレイス、ストライプインターの各ブランドなどなど強豪が犇めきあっている。

これらの強豪(競合ではない。レナウンとは比べ物にならないからだ)各社は、良し悪しは別としてローコストオペレーションを確立している。今まで百貨店を主体にしながらそれでも売れなかったレナウンが付け焼刃で参戦して太刀打ちできるはずがない。

格闘技でいえば、これらの強豪は段位や達人クラスで、新参者のレナウンは白帯の入門者だといえ、まともな勝負にはなりえない。

売上高は早期に50億円を目指すと伝えられているが、そこまでたどり着けずに終わるのではないかと見ている。

今回のレナウンの発表を読むと、「百貨店で売れないからSC・EC」という安易な発想が背景にあると感じられる。そんな安易な発想でやれるほど、SC向けの低価格ブランドは甘くない。

強豪はすでにスケールメリットで収益体制を確立できている中で、今からスケールメリットを目指して構築していくレナウンがどれほど不利なのかは、ビジネス経験者なら容易に予測できるのではないか。

また、ECサイトへの言及も今更ジローであろう。
すでにレナウンもECサイトで各ブランドの販売を行っているが、売上高は7億円とか8億円規模にとどまっている。
赤字とはいえ、650億円もの売上高があるにもかかわらずである。

これまでどれほど、ECサイトでの販売に力を入れてなかったか、どれだけ下手くそだったかが明らかである。
それが新ブランドを発売するとはいえ、急にECサイトでの売上高が増えるようにはならない。
ECこそ、よほどの仕掛けが必要で、レナウンという会社の知名度は自社が思っているほど高くないから、知名度で多くの人がウェブ検索をして流入してくれることを期待はできない。

百貨店でも売上高が回復せず赤字転落し、新ブランド開発も成功しなかったため、これまで自社では手つかずだったSC/EC向けの低価格ブランド開発という結論に達したのだろうが、これは単に「隣の芝生は青かった」というだけに過ぎないのではないかと思う。

自らの会社を有名だと過信しているならそれはすぐさま捨て去るべきで、そうでなければ、今回のSC/EC向けの低価格ブランドが成功することはかなり難しいだろう。





カネもアイデアも知名度もない企業はEコマースでも売れない

 実店舗での洋服販売不振を受けて、猫も杓子も「EC強化」を打ち出しており、あんまり詳しくなさそうなコンサルと称する人は安易に「EC強化」「ネットショップ」を勧めてくる。

本当に最近の猫と杓子は「EC強化」か「大草直子」かである。

アメリカでは大量の実店舗閉鎖、商業施設閉鎖が相次ぎ、その要因はECの拡大だとされており、日本でも何年か後にはそれに類した(完全に同じではない)動きが見られるようになると考えられる。

業界のおじさんたちもすっかりその気で「EC強化」とか「ネットで売ったら何とかなる」なんて極めてイージーに考えている人が増えた。
もちろん、中には「今のご時世でネットの売上高がポンポン増えるとは思えないが、とりあえずやるだけやる」という、まともなおじさんも相当数いるのだが、ネットに親しんでいないおじさんは本当に極めてイージーに捉えていて、アホらしくてこちらも諫める気にもならない。

失敗して金をドブに捨てるのは筆者ではなくて、イージーなおじさんなので、勝手にどうぞである。

筆者が見るところ、Eコマースはブランドや企業にとっては不可欠だが、そこで成功するにはよほどの「何か」がないと不可能な状況になっていると考えられる。
2005年ごろのように、Eコマースのプレイヤー自体が少なくて、立ち上げればすぐさまある程度の売上高が見込めるという市場ではすでになくなっている。

それを数値を挙げながら永江一石さんが説明しておられるので、イージーなおじさんは熟読してもらいたい。

楽天をやめてどこに行くというんだ、ジョー・・・・
https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=32386

発端は、楽天市場の凋落についての日経MJの報道である。
これは事実だ。出店者数も4万店台で足踏みが続いている。

ちなみにYahoo!ショッピングは出店者数が40万店ですでに楽天の10倍となっている。
楽天は抜本的な改革がなされない限り、このまま沈んでしまうだろう。

またAmazonの台頭も著しいし、ファッションならZOZOTOWNの一人勝ちともいえる。
これらに伍して支持されるだけの魅力が楽天市場には皆無である。

で、日経MJの記事は、「自社直営サイトかBASEでがんばる」と結論付けているのだが、これがおかしいと永江さんはご指摘されていて、その通りなのである。

まず、楽天の欠点について

○楽天は制限が多すぎる。しかもダサイ
○インスタなどの外部リンクが貼れない
※インスタ貼ったところで売り上げかわんないですけどね
○使いづらい
※そりゃ基本設計が20年くらい前のものですから・・・
○上納金高すぎ

とのことで、ここに異論のある人はいないだろう。

問題はその次なのだが、現在のEC市場はどうなっているかというところで、

これは講演とかがあるといつも言ってることなんですが、15年前はネットショップとか始めるとすぐに月数十万から数百万くらいの売り上げが上がりました。

商材によっては数ヶ月たったら月商500万とかいう事例もありました。嘘のような本当の話。

しかし現在では、よほど名前の通ったブランドやリアルの店舗が多数あるようなもの、大量の広告投資を行ったケースを除いてはこんな美味しい話はございません。逆に15年前から比較する99%のネットショップはアクセス数、売り上げともに落としているはずです。

とのことで、これも体感的にはその通りではないか。
イージーなおじさんはここに目をつむっているか、そもそもネットを触らないのでまったく知らないかのどちらかなのだろう。

で、ここからが今回の秀逸な部分なのだが、

なかなか年度が古いものがないのだが、日本のB to CのECマーケットは2005年に3.1兆。2015年に13.8兆だから、10年で4.5倍になったわけ。

でね。どうググっても「マーケットは拡大した」というのばかりで、ECサイトの数自体はどうなったかの調査がない。

まあ、数えるだけでも大変だし、調査のしようもないというのもありますが、3年前に講演したときに人力で数えてもらったら、ざっくり見ただけで数十倍以上になってました。細かいのまでみたら数百倍でしょう。

いまでは小洒落た小売店ならたいていサイトがあってネット販売もしている。ほとんど売れてはいないと思うがBASEみたいな無料のCMSもある。BASEみたらこれで30万店がオープンしたとあります。

市場が5倍になっても店舗が数百倍ですよ

とのことで、競争率は格段に高まっている。

イージーなおじさんやイージーなコンサルがECを「魔法の杖」みたいに考えている理由の一つに、EC市場規模の拡大ということが挙げられるが、彼らはECサイトの数がどれだけ増えているかにはまったく気が付いていないのである。

下手をすると、ECサイト数が増えたからEC市場規模が拡大したと考えられないこともない。

確率論だけでいくと、売上規模が5倍になっても、店舗数が数百倍になっていたら、これはかなり競争が激しくなっている。ここを考慮せずにECを「魔法の杖」みたいに考えている人らはちょっとおかしいんじゃないかと思う。

日経MJの記事では、ユナイテッドアローズやメガネのオンデーズが自社ECで好調な一例として挙げられているが、それ、どっちも大手企業だから!
無名の零細企業が参考にできるモデルケースではない。

無名の零細企業が、「ただ単に」ECサイトを立ち上げたところで、埋没してしまってだれからも注目されない。

イージーな人たちはネットに対して「ネットは世界と直結しているから売れるはず」というが、いくら世界と直結してようが、そのネット空間に店は何百万店・何千万店もある。
何百万店もある中から、どうして無名の店に「わざわざ」客が来るのだろうか。
ちょっと考えればわかりそうなものだが。

永江さんの提示する解決策は

○エッジの効いたオリジナルの商品
○良質なコンテンツSEO
○正しいソーシャルの運用

であり、それを実施てきている企業は極めて少ない。

話は逸れるが、「ユニクロのEC化比率は5%程度と低いのが弱点だ」なんて言ってるちょっとアレな人たちがいるが、ユニクロは自社直営ECだけで売っていて、売上高が400億円以上もある。
シップスやフランドルよりもユニクロのECだけの売上高の方がはるかに大きい。
%だけを見て絶対額を考慮していない「%バカ」の典型といえる。

EC市場が広がる可能性はまだあるが、それ以上に店舗数は増え、競合は激化する。
無策で無名の零細企業が売上高を拡大できる要素はすでにゼロである。EC市場で競争を勝ち抜けるのは、それなりの大手企業か、無名の零細でも「無策ではない」企業に限られる。

カネもアイデアも知名度もない企業が一発逆転できるなんていう甘い市場ではすでになくなっている。



過剰な「モノづくり神話」を創作することは、かえって製造加工業者をミスリードする

 国内の繊維製造加工業者を鼓舞したいと考えるなら、それはすれば良いと思う。
しかし、その鼓舞の材料に「根拠に基づかない願望」「現実に立脚しない理想」を据えることは、却って製造加工業者をミスリードするだけで有害である。

海外一流ブランドがセールを一切しない理由
日本アパレルが疲弊した「構造的な原因」とは
http://toyokeizai.net/articles/-/167344

この記事は、いわば「理想郷」が語られており、それが現実に立脚していない点が問題である。

そもそも「海外一流ブランドがセールを一切しない」という前提自体が現実ではない。
コメント欄に「エルメスも本国では年2回セールをしている」とある。

それを裏付けるようなこんなブログもある。

1788話 パリSOLDES!これがHERMESエルメスのソルド!♪パリ ブログ
https://ameblo.jp/wanwancocococo/entry-12177105347.html

正規店舗では行わず、別会場で行われているようで、そこに出向いたレポートである。
別会場といえどバーゲンセールはバーゲンセールである。

東洋経済オンラインの記事で説かれているように、ルイ・ヴィトンが一流ブランドになったのは、単に「愚直に物作りに励んだ」とか「職人を大事にした」だけではない。
それは一要素であり、じゃあ、国内の繊維製造加工業者が「愚直に物作りに励んで」「職人を大事にした」のなら、その中からルイ・ヴィトンが生まれるのかというと、その可能性は極めて少ない。
個人的には可能性はゼロだと思う。

ミスリードを引き起こすと感じるのはそういう部分である。

LVMHが世界的ブランドになったのは、そもそもMHと合併し、不動産業も取り込んで、「ディオール」やらなんやらさまざまな高級ブランドを買収に次ぐ買収で巨大資本となったからだ。
巨大資本があるからこそ、販促、広報宣伝に潤沢な資金が投入でき、それゆえにブランドステイタスを向上させることができた。

今の国内の繊維製品の製造加工業者にそういう巨大資本が存在するのか。
ほんの一握りを除いては小規模零細企業ばかりである。
料金が数万円の業界紙へのお付き合い広告ですら出稿できないような財務内容である。

これでどうやってラグジュアリーブランドになれるのだろうか。

また、ルイ・ヴィトンというブランドは香水はそれほど有名ではないが、LVMH傘下の各ラグジュアリーブランドは香水が人気である。
香水は、ラグジュアリーブランドといえども価格がそれほど高くなく(2000~3000円で手に入る)、庶民でも買いやすい。おまけに洋服やバッグ類、皮革製品に比べて利益率がべらぼうに高い。
広くマス層に販売して高利益を得る、そういうビジネスモデルを確立している。

単に「愚直に物作りに励んだ」だけではない。

本当に製造加工業者を何とかしたいのなら、そういう「儲け方」もレクチャーすべきではないか。

マラソンでも水泳でも熱心に練習をすればほとんどの人がそれなりの距離を走れたり泳げたりするようになる。
4時間とか6時間で42・195キロを走れるようになるだろう。

しかし、2時間6分台で走れるようにはならない。そこには天性の才能が必要になるからだ。

今の国内の製造加工場に「物作りに励めばルイ・ヴィトンになれる」とサジェスチョンするのは、47歳のオッサンに対して「毎日、練習すれば必ず2時間6分台でフルマラソンを走れるようになりますよ」と励ますのと同じようなものである。

それに欧州の一流ブランドが本当に職人や工場を大切にしているのかどうかも怪しい。
ないがしろにしているとまでは思わないが、例えば、イタリアにだって工賃が安くて苦しい経営を強いられている工場がたくさんある。
だから、不法移民を含めた外国人労働者を使っているし、欧州のブランドは人件費と工賃が安いアフリカや東欧、中近東の工場を使っている。

もし、国内の製造加工業者の競争力を高め、自立化させたいのであるなら、「フィクションまみれの神話」を作ることではなく、自ら能動的に営業活動を行うようにさせるべきではないか。

これまで、提携ブランドの下請けに甘んじていた国内工場の多くは、今も下請け根性が染みついており、発注を待っている姿勢が強い。これを受注を獲得するために自ら営業するようにすべきではないか。

そして、自社オリジナル製品開発はその次の段階で、製品開発にはマーケティングやデザインの専門家が介在する必要がある。(専門家もピンキリだから選定は容易ではないが)

製品を作っただけではビジネスは完成しない。

最後は売り場を探す、もしくは売り場を作る必要がある。

ここまでできて初めて「製造加工業者の自立化ができた」ということになる。

そして昨日も書いたように、一流ブランドを作りたいのなら、販促、広報宣伝にも目を向けさせなくてはならない。

誰がどんな屁理屈をこねようと、感情的に反発を覚えようと、商売とは、

安く仕入れて(作って)、できるだけ高く売る

ことが絶対のルールであり、「高く売る」ためには「ブランド化(ブランディング)」「付加価値づくり」が必要不可欠となる。

消費者がその説明に納得できれば、提示した値段で売れるだろうし、納得できなければ、いくら「職人が精魂込めて」作ろうが、「伝統の技が云々」「希少な素材が云々」と叫んだところで、提示した値段では売れない。

提示した値段で売れないのは、「ブランディング」「付加価値づくり」に失敗しているからだ。

マクドナルドが一時期、原価をさらされて批判されたが、それは「ブランディング」「付加価値づくり」に失敗したということに他ならない。

こういうことをまるっと抜きにして「モノづくりに専念した」「職人を大切にした」と吹聴するのは、ファクトリエという会社が自社のビジネスを有利に進めるためのポジショントークでしかない。



安く仕入れて高く売るのが商売の基本

 商売の基本的ルールは「安く仕入れて高く売る」である。
これは全世界・全業種共通のルールである。

出来るだけ安く仕入れて(作って)、出来るだけ高く売ることが利益を最大化するコツであることも常識といえる。

ブックオフが買い取り価格と売価の差で批判されているが、基本ルールに則っているだけである。
しかし、ブックオフが「価値なし」と判断して0円で引き取った商品を、安値で販売していることが周知されてしまっているため、心情的に消費者が納得できないのである。

消費者の論理でいうと、「価値無しと判断した商品を販売するということはどうなんだ?価値のない物を売るのか?」ということになる。

このあたりは、今後、ブックオフが自社のルールを修正して対応すべきだろうが、「10円で引き取った物を500円で売るのはけしからん」という意見は的外れであるとしか言いようがない。

質屋や古着屋だって安く引き取った商品に利益を乗せて売っているし、商社や問屋もそうであり、ブックオフがけしからんというなら世の中の商売はすべてけしからんということになる。

洋服の新品在庫を安く買ってきて売る「バッタ屋」という業種がある。
バッタ屋で売られている洋服はだいたいが1000円を上限とするほど安い。コート類や有名ブランド物はその限りではないが。

300円とか500円の洋服、ファッション用品なんてざらにある。

だからお客はみんな「安いわ~」と口にして喜んで買っていくのだが、バッタ屋自体はもっと安くで商品を仕入れている。
「段ボール箱何箱で何万円」とかそういう仕入れ方をしているが、その中に詰まっている洋服や雑貨1点あたりの仕入れ値に換算すると、おそらく1点10円~100円程度だろう。

10円で仕入れた洋服を500円で販売するなんてことは普通であり、バッタ屋でそれが問題になることはない。

一時期、マクドナルドが原価をさらされて「けしからん」という声が多数上がっていたが、あれだって、商売としては普通である。要は売価が消費者のマクドナルドに対するイメージに見合っておらず、不当に高いと感じられたからだけのことだ。

安く仕入れた物をどれだけ高く売ることができるかで、利益が決まる。

そのため、各社はできるだけ高く売れるように消費者への説得材料をせっせと構築している。
それが「ブランディング」「付加価値づくり」と呼ばれる作業である。

消費者はその「ブランディング」「付加価値」に納得すれば、提示された売価で購入するのであり、批判されているブックオフは、その「ブランディング」「付加価値づくり」に消費者を納得させられるだけの説得力がないというのが現在の問題点だということができる。

これは一時期のマクドナルドにも同じ問題点があった。
マクドナルドがもっとステイタス性を確立できていれば(その完成図は想像できないが)、バーガーセット1000円でも文句を言う人は少なかっただろう。

欧米のラグジュアリーブランドを称賛する人は多いが、「安く仕入れて(作って)、できるだけ高く売る」という基本を忠実に実践したのが欧米のラグジュアリーブランドである。

例えば、実際に携わっている方が書いた記事がある。

「強いブランドほど原価率は低い」という意外?な事実
http://diamond.jp/articles/-/19282

守秘義務があるので、具体的な数字を出して語ってはおられないが、有名ブランドは一般ブランドの何倍もの売価を設定して販売しているということを説明している。

引用するとこんな感じである。

100円で仕入れた商品でも「ブランド品」として売ると、300円で売れます。同じ製品を「名前だけの商品」として売ると、150円ぐらいでしか売れないのです(数字は例えですが)。

一般的にラグジュアリーブランドの原価率は30%程度だといわれている。
4万円の財布だとだいたい工賃を含んだ原価は13000円程度だということになる。

13000円の原価というのも十分に高いが、ラグジュアリーブランドはそれ以上に高く売るために、「ブランディング」「付加価値づくり」を行ったということである。
そのための手段が、販促であり、広報宣伝ということになる。

そして消費者は、販促、広報宣伝で作られた「ブランド力」「ステイタス性」に満足して財布を4万円で購入しているに過ぎない。

ラグジュアリーブランドが売れたのは、愚直に物作りをし続けただけのことではない。
彼らは莫大な資金を販促、広報宣伝に投入している。
まさにそこには大資本の論理しかない。

また後日に別途書いてみるが、日本の物作りブランドや職人が商品を高く売りたいのなら、品質や原価率の向上にだけこだわるのではなく、見た目のデザイン性と販促・広報宣伝戦略こそ強化すべきなのである。

欧米ラグジュアリーブランドを見習う点があるとするならそこであり、それを論じないままで「職人の技」や「物作りの魂」だけを強調するのは、製造加工業者をミスリードすることになり、有害極まりない。


よくできた炎上マーケティングか?

 昨日話題となった記事をご紹介したい。
メディア関係者や広報・プレス関係者はよくこの手の過ちを犯す。

それにしてもBuzzFeedは平均的に良い仕事をする。感服するほかない。

藤原ヒロシ先生のホテルに関する対談が噛み合ってなさすぎて冷や汗が出るレベル
https://www.buzzfeed.com/narumi/sugoi-taidan?utm_term=.auMx04Gw2#.plvgeLKWy

全文は元記事で読んでいただきたいのだが、とにかく質問と回答者である藤原ヒロシさんの答えがまったくかみ合っていない。
読んでいて思わず笑ってしまうほどだ。

秀逸なやりとりをいくつか抜粋して引用する。

2. 「変化は感じて…?」 → 「ありませんね」

3. 「エースホテルがトレンドを変え…」 → 「一番苦手ですね」

4. 「オープンな良さも…」 → 「一人にしてほしいですね」

5. 「食の健康にフォーカスして…」 → 「全然興味がありません」

7. 「ホテルラウンジを開放して…」 → 「僕は苦手ですね」

という具合だ。

この対談の失敗の理由をいくつか推測してみよう。

1、「藤原ヒロシ」を使っておけばそれなりに格好がつくだろうと安易に考えた
  (藤原ヒロシさんの嗜好をまったく考慮せずに依頼した)

2、対談者同士の事前の打ち合わせがなかった・または少なかった

3、ホテル側の質問内容がありきたりで陳腐すぎた

だと個人的には考える。

そもそも、「食の健康志向」や「オープンなホテル」を売りにするホテルであるなら、そういうことに賛同する回答者か、もしくは場の空気を読んでそれなりにヨイショできる回答者を選ぶべきだった。
それをせずにネームバリューだけで「藤原ヒロシ」を選んだことがすべての失敗の根本的原因といえるだろう。

メディアや広報・プレス担当者はこういう過ちをよく犯す。

とりあえず「有名な〇〇さんのコメントを入れておけば大丈夫」とか「〇〇さんのコメントさえあれば(内容は問わない)箔が付く」とかそういうふうに考える。
だから、サッカー日本代表の試合の感想をキムタクにインタビューしに行くという間抜けなことが起きる。

まあ、しかし、これだけ話題となったのだからホテルのPRとしてはそれなりに効果があったというべきだろう。
いわゆる炎上マーケティングだが、もしこれを狙ってやったのならすごいと思うが、この手の「イシキタカイ系」の人たちはそこまでの深謀遠慮はあまりないから、これはおそらく怪我の功名だろう。

個人的にはこういうホテルがどう必要なのかよくわからない。
仕事で出張する際は6000円くらいのビジネスホテルで十分で、まったく不自由を感じない。
どうせ、毎晩遅くに帰ってきて寝るだけだから、健康志向の食とか地元民が遊びにくるスペースとかそんなものは必要ない。

旅行で利用する際も別にあちこち観光したりするだけだから、平均的なホテルで十分である。
ホテルの中で健康志向の食を楽しんだり、地元民と交流したりしたいともまったく思わない。
できれば、仕事以外ではあまり他人と交流したくない。

だから、自分では仕事でも旅行でもこの手のホテルは絶対に利用しない。

ところで、このインタビューで自分の中の藤原ヒロシさんへの好感度はかなり上がった。

23年くらい前にファッション雑誌でその存在を知ったが、イマイチいまだに何をしている人なのかよくわからない。
今のロン毛よりも昔の短髪の方がまだ似合っているのになあと思う程度である。

ファッション業界人には、変なイシキタカイ系の人が多いから、てっきり藤原ヒロシさんもその手の人だと思っていたが、そうではなかったので好感度が上がったという次第だ。

とくに共感するのは、「食の健康志向に興味がない」という点と、「人とはあまり交流したくない」という点である。

自分も毎日コンビニ弁当やスーパーの総菜でも苦にならないから、やたらと手料理や食材にこだわる人はめんとくさいし、やりとりしたくもない。
毎日、松屋の牛めしでも当方は構わない。
人生80年の時代に何をそれ以上長生きする必要があるのかとも思う。

ただ、食中毒になるのはまっぴらごめんなので、韓国産や中国産の刺身は絶対に買わないようにはしているが、こだわりはその程度である。

また、仕事や仕事上で知り合った人とはそれなりに交流するが、プライベートでは別に新しい人と交流したいとは思わない。
できれば一人で過ごしたいし、人混みは嫌いなので、混雑するような場所にはできるだけ出かけたくない。
長蛇の列ができるような有名店に行くのも嫌だ。
20分くらいなら待っても良いが、それ以上、行列に並ばされるような店の料理は一生食べなくても構わない。

ファッション業界人には真逆の「イシキタカイ系の人」が多いから、そういう人と長時間交流すると疲れる。
逆に一般人の嗜好と乖離した「イシキタカイ系の人」が多いから、一般人に売れる服やブランドが生み出せないのではないかとも思う。

個人的な好き嫌いをいえば、「イシキタカイ系の人」は嫌いである。

まあ、それでもパーフェクトに演出されたPRのための対談記事だとまったく記憶にも残らないが、こういう半ば失敗した記事は逆に記憶に残りやすい。
久しぶりに本当に面白い記事が読めたと感じる。

皿の上の宝物
藤原ヒロシ
FLY出版
2014-05-01


Selector (e-MOOK)
宝島社
2014-08-28


生徒数の減少が続くファッション専門学校

 先日、あるファッション専門学校の校長と話す機会があった。
その校長によると、今年4月に大阪市内のファッション専門学校に入学した生徒総数は1000人を割り込んで900人台だったという。

この数字が正確かどうかは分からないが、全国のファッション専門学校に通う生徒総数が12000人くらいといわれているから、大きくは間違っていないと考えられる。

大阪市内の学校法人のファッション専門学校は上田安子服飾専門学校、大阪文化服装学院が2強で、大阪モード学園がそれに続き、その次にマロニエファッションデザイン専門学校が続く。

この校長によると、この4校でおよそ800人くらいの入学者があったというから、のこり150人強をその他の学校で分け合ったということになる。

当然、その他の学校の入学者数は少ない。
各校5人~50人くらいの入学者数だろう。

ついでに言っておくと、4校の入学者数もピーク時と比べると一様に減っている。
4校が安泰というわけではなく、生徒数の減少傾向は他校よりは緩やかだが、本質的には変わらない。

そしてこれは大阪市内だけのことではなく、全国的に共通したファッション専門学校の現状である。

ファッション専門学校の生徒数・入学者数の減少にはさまざまな理由がある。
何度か書いてきたので繰り返さないが、

1、少子化でFランク大学を含めれば大学全入時代になった
2、ファッション業界が斜陽産業だと思われている
3、ファッション専門学校卒業後の主な就職先は販売員だが、ファッション専門学校を卒業せずとも販売員になれる

4、販売員を辞めて異業種へ転身する際、4年制大学や短大の方が「潰しが効く」と考えられている

だいたい大きくはこの4点が原因だろう。

そんな中、入学者数を前年よりも増やした、前年維持できた学校もあるが、それらの要因を聞くと、「中・四国地方の進学希望者を多く誘致した」「アジア人留学生を飛躍的に増やした」ことが挙げられる。

どちらも根本的解決には至らない対処療法でしかないことは言うまでもない。

他地方の進学希望者を多く誘致することは、その学校にとっては良いことだが、その地方の学校にとってはさらに厳しい状況となる。
結局、人口の分捕り合戦でしかなく、これが行きつくと、最終的に5つくらいの超強力な学校がすべての生徒を獲得することになる。

そこらへんのアパレルショップの安売りどころではなく、ファッション専門学校の生徒獲得はまさに弱肉強食の状態である。

アパレルショップなら安売りをすることで顧客をシェアすることも可能だが、専門学校の顧客(生徒)を分け合うことはできない。

アパレルショップなら、500円に値下がりして安いから隣の店でも1枚買うということは可能だが、専門学校の生徒が月水金は上田安子で、火木土は大阪文化に通うなんてことはありえない。

ファッション専門学校業界こそ、少ないパイの分捕り合戦を行っている状態といえる。

また、外国人留学生を多数誘致するというのも今の専門学校の受け入れ態勢ではなかなか難しいし、単に日本滞在だけが目的で、卒業せずに退学してしまう外国人留学生も相当数いる。

根本的解決を目指すなら、ファッション専門学校への進学希望者数自体を少しずつ増やすしかないが、企業と協力しなくてはそれもなかなか難しいし、企業の積極的な協力もそれほど期待できない。

ファッション専門学校は、このまま少しずつ減って、最終的に少数の学校が残るという結末に落ち着くのではないか。

それはそれで時代の趨勢だから、何か抜本的な改革を学校自身がしないことには、淘汰されるのも仕方がない。

全国専門各種学校案内 2017-18年度版
専門・各種学校研究会
一ツ橋書店
2017-03-01



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