月別: 6月 2016 (1ページ / 3ページ)

マッキントッシュの苦戦よりもクレストブリッジの苦戦の方が痛かったのではないか

 三陽商会から250人のリストラと、2016年1~6月期の下方修正が発表されて、それに対する報道、論評が数多く見られる。ファッションやら経営やらの話はそれらに任せて個人的な感想をまとめてみたい。

売上高は期初予想の370億円を335億円へと減額し、営業赤字も同22億円から55億円へと、赤字幅が大幅に増える見通しとなっている。

さらにいうと通期での見通しは立っておらず、通期業績はさらに厳しくなるのではないかと考えられる。

今回の下方修正では、減収よりも赤字幅の大幅な拡大の方が問題である。
原因は、バーバリーの跡地ブランド(後継ではない)「マッキントッシュロンドン」と、バーバリーとの新たなライセンスで開始された「ブルーレーベル・クレストブリッジ」「ブラックレーベル・クレストブリッジ」の不振である。

個人的には、高価格帯の「マッキントッシュロンドン」よりも、若い年代に人気が高かった「バーバリーブルーレーベル」「バーバリーブラックレーベル」の後継ブランド「ブルーレーベル・クレストブリッジ」「ブラックレーベル・クレストブリッジ」の不振の方が三陽商会にとっては痛手だったのではないかと見ている。

なぜなら、コートが10万円を軽く越えるような「マッキントッシュロンドン」の売上高が「バーバリー」に遠く及ばないであろうことは、当初から誰でもが予想できたのではないかと思う。
やっぱり「バーバリー」ブランドだから10万円を越えるような高価格帯のコート類をほしいと思う人がたくさんいた。
それが「マッキントッシュ」という一般的にあまり知名度が高くない屋号に変わってしまえば、買うことに躊躇する人が増えるのは簡単に予想できる。
ましてや同じ価格帯とはいえ、バーバリーとは根本的に商品そのものも違う。買わない人が増えるのは当たり前である。

業界人にとっては「マッキントッシュ」というのはそれなりにバリューのあるブランド名かもしれないが、業界外の人にとってはあまり知名度が高くない。「アップルコンピュータのマッキントッシュとどう違うの?」というレベルではないか。

おそらく三陽商会や百貨店側もマッキントッシュが苦戦することは織り込み済みだったのではないかと思う。

大誤算はむしろクレストブリッジの不振だろう。
これはバーバリーとの新しいライセンス契約から生まれたブランドで、文字通りの後継ブランドである。しかも本体のバーバリーに比べると幾分か価格が安い。

そのため、旧ブルーレーベル、旧ブラックレーベルは長らく若い男女に人気があった。
また、本体のバーバリーは元々はかなり重厚な雰囲気の商品が多かったが、このラインはトレンドに合わせてモダナイズされているからそういう意味でも人気が高かった。

クリーニング店「クリーニングビー」を経営する壁下陽一氏によると、この両ラインは「価格が高いわりに近年は商品クオリティがかなり低下していた」とのことだが、やっぱりネームバリューはあった。

バーバリーとの正式な契約から生まれた後継ブランドで、本体よりも幾分か安いから、三陽商会はおそらく旧ブルーレーベル、旧ブラックレーベルの穴埋めがそれなりにできると考えていたのではないか。
また百貨店を含めた商業施設側もそこそこの売上高を見込んでいたのではないか。

それが崩れたため、目算が大きく狂ったというのが実情ではないかと思う。

原因はなんだろうか?

商品のデザインが云々というのはよくわからない。
人それぞれ好き嫌いがあるからだ。
ただし、あの大振りなブロックチェック柄の洋服は売れにくいと思う。
人目を引きつけるがあれほど大ぶりなチェック柄の洋服はコーディネイトに取り入れるのが難しい。
ましてやそれがスーツになっていれば、さらに難易度が上がる。

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(ブラックレーベル・クレストブリッジのウェブサイトより)

モデルとか芸能人レベルの人間でないと着こなせない。
そしてそういう人が世間一般にどれほどの数で存在するのか。
かなりの少数に向けたニッチな商品である。
果たして三陽商会と三原康裕氏はそれを認識していたのか?

次にブランドとしての露出が極端に少ないことも原因の一つだろう。

いくらバーバリーとの正式契約とはいえ、一般消費者はそこまで知らない。
「バーバリー」と「クレストブリッジ」では一般人にとっては全く別ブランドである。
よくてもせいぜい「バーバリーっぽい」ブランドという認識止まりである。

にも拘わらず、本当に露出が少ない。
ウェブ上にはほとんど出てこないし、何より、三陽商会の公式ウェブサイトにさえも掲載されていない。
これじゃ、消費者の認知が進まないのも当然である。
さらに今回の下方修正報道でもほとんど言及されていない。
メディア側からも認知されていないという証拠ではないか。

旧両(ブルー、ブラック)レーベルくらいに認知を高めたければ、ドンドンと露出させるべきなのである。
「バーバリーがクレストブリッジに変わりました」というくらいベタにわかりやすく打ち出す方が良かっただろう。

「紅白歌合戦で嵐に着用してもらいました」程度の広報活動ではまったく起爆剤にはならない。
もちろん打ち上げ花火程度にはなるだろうが、大爆発は起きない。

バーバリー側の意向もあるのだろうが、これまでの広報活動は完全に裏目に出ており、効果がまったくあらわれていない。

さて、今後の推移を予測すると、三陽商会はさらに厳しくなるのではないか。

バーバリーの跡地に件の3ブランドを比較的あっさりと出店することができた。7割くらいが置き換わったはずだ。
三陽商会側の努力もあっただろうし、それほど多数の店舗を一気に出店できるアパレルがないため、置き換えに賛同した商業施設も多かった。

そしていわば初年度は「お試し期間」だった。

お試し期間で好成績が出れば、さらに出店は加速するだろうが、お試し期間で惨敗してしまえば、退店が加速する。
今回の不振を受けて、次年度以降は3ブランドとも店舗数をかなり減らすのではないかと考えられる。
当然、売上高はさらに低下するし、場合によっては利益額も減るだろう。
三陽商会は厳しい業績が続くと予想される。

ディオールを失って消滅したカネボウ、アディダスを失ったものの16年かけて復活したデサント。
三陽商会がどちらになるのかわからない。できればデサントのように復活してもらいたいと思うが、今後長期間に渡って厳しい局面が確実に続く。果たしてそれを三陽商会が乗り越えられるのかどうか。

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髙い事業計画を掲げる新生イーブスの勝算は?

 会社清算された遊心クリエイションのSPAブランド「イーブス」の商標権をはるやま商事が買い取った。

はるやま商事が「イーブス」を取得
https://www.wwdjapan.com/business/2016/06/28/00020869.html

はるやま商事は7月、新たな子会社を設立し遊心クリエイションが運営していた「イーブス(YEVS)」の商標権を譲り受ける。新たなターゲットは28~45歳の女性。価格帯はトップスが2000~6000円、ボトムが3000~7000円などを予定する。今秋から、年間5~10店の出店を計画し、5年後に売上高100億円を目指す。

とのことである。

それにしてもはるやま商事は、廃止・倒産ブランドの引き取り専門業者になった感がある。
倒産後、ポイント(現アダストリア)に引き取られながらそこでもブランド解散に追い込まれた「トランスコンチネンツ」、倒産したテットオム、ジャヴァで畑違いの異色メンズブランドだった「ストララッジョ」をすでに引き取っている。
このラインナップに今度はイーブスが加わったわけである。

イーブスは今後どのような展開をするのだろう?
個人的な予想を書いてみたい。
遊心のころはメンズ、レディースの複合ブランドだったが、この記事を読む限りにおいては、レディースのみの展開となりそうである。価格帯は遊心のころとほとんど変わっていないので、販路は、ショッピングモールと一部のファッションビルとなるのではないか。だとするとこれも遊心時代と変わらない。

年間5~10店舗を出店して5年後に100億円体制にすると書かれているが、5年後は25~50店舗になっているということである。
1店舗あたりの平均売上高は2~4億円ということになり、これはかなり高いハードルといえる。

最盛期のイーブスは40店舗強あり、売上高が20~30億円だった。
店舗数はほとんど変わらず、3~5倍の売上高を目指すというのだから計画達成はかなり難しそうだ。

商品単価が高ければ達成はまだ容易だが、単価も低価格のままでほとんど変わらない。
なら売れる枚数を3倍増くらいにさせないと計画は達成できない。
かなり厳しいと言わざるを得ない。

スーツの「はるやま」内部でも売るのじゃないかという指摘があるが、これはちょっとピントがズレているのではないか。過去に引き取ったブランドでそのような展開をしているブランドはない。
別店舗として運営されている。ストララッジョもテットオムも相変わらずファッションビルに単体店舗として継続されている。

トランスコンチネンツはほとんど鳴かず飛ばずで見かける機会もほとんどないままに何年も過ぎているが、これはさすがに再生不可能なのではないか。

末期の遊心は卸売りブランドをすべて廃止し、SPA型の3ブランドを展開していた。
雑貨のASOKO、このイーブス、レディースのグランデベーネである。
ASOKOは早々にパルが引き取ることを決定した。スリーコインズを社内最大のブランドとして展開しているパルにとっては親和性が高いからである。

残り2つのブランドの引き取り先がなかなか決まらなかったが、イーブスが今回決定した。
残念ながら規模が小さく、もっとも話題性に欠けたグランデベーネはこのまま廃止になるだろう。

イーブスが今まで引き取り先が決まらなかった原因は、「鶏肋」だったからではないかと見ている。
鶏肋とは三国志からの逸話である。

曹操と劉備は漢中という土地を巡って激突するのだが、戦下手の劉備が珍しく優勢に軍を進め、曹操軍は苦境に立たされた。
どのようにすべきかと考えたときに、曹操は「鶏肋」と言ったのである。

鶏の肋(あばらぼね)は食べようとすると肉はないが、かといってしゃぶれば旨味があるので捨てるのは惜しい。漢中はそういう土地だというのである。
それを踏まえて曹操は漢中を放棄して撤退した。鶏肋を捨てて損切をしたといえる。

個人的にはイーブスはこの鶏肋だったと感じている。
すごく美味しくはないが、捨てるには惜しい。そんな立ち位置だと思う。
40店舗・30億円という規模のSPAブランドは捨てるには惜しいが、すごく美味しいというわけではない。

その鶏肋をはるやま商事が拾った。

かつての遊心のメンバーはとうの昔に散り散りになっているので、運営メンバーは一新される。

ただ、ブランドとしての立ち位置は新生イーブスは難しいのではないかと感じる。

遊心がイーブスを開始したのは2008年。これはフォーエバー21やH&Mなどの低価格グローバルSPAが上陸した年で、低価格高トレンドという部分が日本の消費者に大いに受け入れられた。イーブスはここの取り込みを狙って立ち上げられており、それはある程度は成功した。

しかし、それから8年が経過している。

低価格高トレンドというブランドは国内にも多数現れている。
それぞれテイストは異なるが、ジーユー、ウィゴーなどである。
タイムセールの鬼、アースミュージック&エコロジーもその範疇だろう。
アダストリアの各ブランドもそうだ。
また急成長中のアーバンリサーチのセンスオブプレイスもある。

中でもジーユー、ウィゴーの成長ぶりは目覚ましく、ジーユーは近々売上高2000億円に手が届くだろう。
ウィゴーも200億円を突破している。

イーブスが開始された当時のように真空状態の市場ではなく、かなりの強豪がひしめき合うサバイバル市場といえる。後発となる新生イーブスがその中に割って入って、売上高を稼ぐのは容易なことではなさそうだ。
はるやま商事と新生イーブススタッフの健闘を祈るほかない。

さて少し横道にそれるが、紳士服チェーン店各社の方向性がこれであらかた出そろったように思う。

青山商事
AOKI
はるやま商事
コナカ
オンリー

である。

メンズのスーツは今後需要が増える要素がない。

1、団塊の世代の定年退職で需要人口が激減する
2、オフィスのカジュアル化によってスーツ需要が減る

この2点が理由である。

そこでこの5社はそろってレディーススーツを強化した。
男がだめなら女も取り込もうという判断である。
人口の半分は女性なのだから、男性需要が減った分を上手く取り込めればカバーできる。
そしてその女性客狙いはそれなりに効果を出した。

レディースのオフィススタイルはメンズほどドレスコードが明確ではないから、かなりあやふやである。
メンズ並みのスーツスタイルもありだし、極めてカジュアルな服装も受け入れられる。
それゆえに、今までレディースのスーツ販売店というのはかなり少なかった。
この5社が販売してくれて助かっているという女性客は意外に多い。

しかし、その市場も開拓しつくした。
次はどうすべきか。

青山商事とはるやま商事はカジュアルの強化を選んだ。
残り3社はカジュアルには乗り出していない。

AOKIはウエディングなどの異業種に乗り出した。
一度カジュアル強化を開始し始めたのだが、失敗した。
マルフルという地域カジュアルチェーン店を子会社化したが、店舗は閉鎖され、実質的に活動は中止となっている。

コナカとオンリーに新しい動きは見えない。
コナカが何年か前に東南アジアに「スーツセレクト」を出店したくらいだろうか。

青山商事は、リーバイスストアのフランチャイズ展開とアメリカンイーグルアウトフィッターズの国内展開を手掛けている。
なぜかあまり話題とならないが、アメリカンイーグルを日本で運営しているのは青山商事と日鉄住金物産の合弁会社なのである。

はるやま商事は先にも書いたように廃止・倒産ブランドを引き取っている。

両社に共通しているのは、すでにある程度のネームバリューのあるブランドを導入するという点である。
これは畑違いの両社にはカジュアルブランドを開発するノウハウがないため極めて当然の選択だろう。

正確にいうと青山商事にはオリジナルのブランドがある。
キャラジャとユニバーサルランゲージである。
しかし、キャラジャは拡大し損ねたままで鳴かず飛ばずだし、ユニバーサルランゲージも成長しているとは言いにくい。この両ブランドを見ていると、オリジナルでのカジュアルブランド開発はやはり不得手なのだと感じる。

なにはともあれ、紳士服チェーン店各社の熾烈なサバイバルゲームの行く末がどうなるのか見守りたいと思う。




タケオキクチよりもコクミンドラッグを選ぶ商業施設

 今日はちょっとした雑感にすぎないのだけど。

先日、久しぶりに難波の「なんばシティ」に寄ってみた。
大阪ではバブル期ごろに人気を集めた商業施設だが、人気のピークはバブル期で終わったという印象は強い。
ただし、南海電鉄難波駅から直結しているし、高島屋ともつながっているから今でも人通りは多い。
大阪の有力商業施設の一つであることには変わりない。

これまでの売り場構成だと地下2階がメンズだったのだが、久しぶりに足を踏み入れた地下2階は以前とは様変わりしていた。
そういえば、昨年後半くらいから改装工事をしていた。

以前だと、タケオキクチ、ポールスミス、メンズビギ、メンズメルローズなど、DCブームのころに人気だったメンズブランドが一堂に会する売り場だった。
ゴルチエの店舗があった時期もある。

改装後初めて足を踏み入れたのだが、あまりの変貌ぶりに驚いてしまった。

まず、タケオキクチとポールスミスの店が隣り合って並んでいたのだが、その場所はコクミンドラッグと手芸店のユザワヤに変わっていた。そこから通路を挟んで向かいには、靴屋があってメンズブランドの店が数店舗ならんでいたのだが、それらはすべてぶっこ抜きでユニクロに変わっていた。

ユニクロの通路を挟んだ対面の店は以前はメンズビギだったが、これも和雑貨店とシルバニアファミリーの店に変わっている。



地下2階にメンズブランド店はほんの3~4店舗ほどしか残っていない。
オンリーの「スーパースーツストア」は残っていた。

メンズの洋服ブランドはここまで削られるのかと本当に驚いた。
タケオキクチよりもコクミンドラッグのほうが消費者ニーズがあると、少なくとも商業施設側は思っているということである。
まあ、冷静に考えればその通りで、消耗品を販売しているコクミンドラッグの方がタケオキクチよりも買い物頻度は高い。

ポールスミスよりもユザワヤなのである。
メンズビギよりも和雑貨店、シルバニアファミリーなのである。
たしかにメンズビギの服よりもシルバニアファミリーのウサギちゃんの方がかわいくて心が癒される。

今回の改装プランがどういうコンセプトだったのかは取材していないので知らない。
コンセプトありきでそういうテナントを誘致したのかどうかもわからないが、少なくとも施設側は、メンズブランドを集積するよりもこちらのほうが売り上げ効率が高くて集客力があると判断したということだろう。

売上高にすごくこだわっているわけではなかったとしても、そういう判断がどこかにあったことは間違いない。

ファッション全般に対する興味は明らかにバブル期やDCブーム期、90年代半ばよりも低下している。
その中でもメンズファッションへの興味はさらに低下していると感じる。

いわゆるかっこいいコーディネイトに興味がないかというとそんなことはない。
多くの人がそこそこにお洒落な、そこそこにトレンドに沿った服装をしている。
まったく興味がなくなっているわけではないが、昔ほどの気合は入っていないと思う。
逆に気合を入れなくても、そこそこに小奇麗に見える洋服が、安価で手に入るようになったからだと思う。

以前から何度も書いているが、90年代後半くらいまでは、DCブランド店に並んでいる洋服と、イズミヤやジャスコの平場に並んでいる低価格の洋服は見るからに異なっていた。
もちろん同じようなトレンドソースを用いて、売れ筋をコピーしながら作っていたが、DCブランドに並んでいるような洋服はイズミヤやジャスコの平場では並んでいなかった。
シルエットや色・柄、ディテールが異なっていた。正確に言うとコピーしきれていなかった。

だからそういう物がほしければブランド店で高い商品を買うほかなかった。

このケチな筆者ですら、黒いスーツをDC系の店で5万円も払って(バーゲン時に)購入しているのである。
今ならせいぜい高くても28000円くらいだし、安ければ1万円くらいで買える。

なぜ、低価格品とブランド品の見た目が変わらなくなったかというと、以前にも書いたことがあるが、デザインノウハウが大手アパレルから流出しているからである。
大手アパレル各社の度重なるリストラによって多くのデザイナーやらパタンナーが野に放たれた。
彼らも生きていかねばならないから、さまざまな働き口を見つける。

OEM/ODM会社を興す人もいたし、低価格ブランドに入社・契約した人もいる。
商社の製品事業部に入った人もいる。

この結果、かつてのDCブランドのような商品がどこでも作れるようになった。
カネさえ適正に支払えばだれでもそれなりの見栄えの商品が作れてしまうのが今のこの業界である。

見た目が変わらなくなれば多くの人は安い方の商品を買う。
これは不道徳でもなんでもなくて当たり前の行動である。

だからそこそこに見栄えの良い服をそこそこの安値で多くの人はそろえている。

ファッションに興味がなくなったわけではないが、以前ほど気張る必要がなくなったということではないか。
その象徴がこのなんばシティの地下2階ではないか。

ユニクロが中心で、コクミンドラッグやユザワヤ、和雑貨、シルバニアファミリーが周りを固める。
奥にはパラっとメンズブランドが残って、ユニクロで扱っていないスーツ、ネクタイは、スーパースーツストアで補完する。

パルで最大の売上高を誇るブランドはチャオパニックでもガランテでもルイスでもなく、スリーコインズなのである。

ファッションはもはやサブカルか?
http://www.senken.co.jp/report/fashion_museum_tokyo/


このコラムに対して自分なりの答えを返すとするなら、ファッションはサブカルにすぎない、である。

ファッション展覧会(展示会ではなく)と特撮展覧会の混み具合の差に衝撃を受けたそうなのだが、そもそもファッションブランドがアニメや特撮キャラのプリントを施したTシャツやら洋服を堂々と販売しているご時世だ。20年ほど前はそんなものはアニメイトくらいでしか手に入らなかったが、今は著名なブランドがアニメや特撮、漫画とコラボしている。そしてそのほうが集客力が高いのである。

記事は後半で、ラグジュアリーブランドの展覧会が盛況なことを伝えているが、それを持ってファッションの人気があるとは言えないのではないかと思う。

1つは、ラグジュアリーブランドの知名度が高いこと

ルイ・ヴィトン展ならファッションをあまり知らない人でも見てみたいと思うが、メンズビギ展やファイブフォックス展なら見てみたいと思う人はかなり少なくなるだろう。

2つ目は展覧会はあくまでも展覧会であるということ

どういうことかというと展覧会では「見て」終わりである。
じゃあ、展覧会で陳列されていた商品を「買う」かというとまた別である。
価格が高くて買えない人もいるだろうし、保管場所に困るから買わない人もいるだろうし、普段の自分のコーディネイトと合わないから買わない人もいるだろう。
「買う」となるとおそらく、極端に人数は減るだろう。

「見る」だけの展覧会だから多くの人が集まったと考えたほうが適切ではないか。

今後こういう傾向はますます強まると思っている。
30万円するカリスマブランドの革ジャンを着ていたら「スゲー、カッコイイ」と尊敬されるようなマヌケな時代は90年代で終わっており、そんな時代はもう二度と来ない。

そろそろ業界人は考え方を変えたほうが良い。
なんばシティの地下2階はその象徴ではないか。



百貨店がいう「委託販売」とはどんなシステムか?

 一般的には、百貨店によるアパレル商品の「委託販売」が弊害だとされている。
先ごろの経産省からの提言でも弊害だとされている。

ではどのあたりが弊害なのだろうか?
業界内では広くこういうことが言われている。

「委託販売」があるから小資本のアパレルは百貨店との取引を行うと経営が苦しくなる

と。

そもそも委託販売というのは、商品を借りてきて店頭に並べて、売れた分だけの代金をメーカーに支払って売れ残った商品は返品するというやり方である。
残った商品が返されたところで、適正量の生産であるなら、それほど経営は圧迫しないはずである。

業界にお詳しい方は置いておいて、まだ業界にお詳しくない方はここの点を疑問に感じたことはないだろうか?

結論からいうと、百貨店のいう「委託販売」とは通常指す委託販売とは少し意味合いが異なるのである。
それをわかりやすく説明した記事があるのでご紹介したい。

百貨店とアパレル「不合理な商慣習」の正体

委託販売はなぜ重宝されてきたのか
http://toyokeizai.net/articles/-/123731

事前にある一定の期間、メーカー側から商品を預かり、販売を委託される仕入れのシステム=「派遣店員付委託取引」です。文字どおり、実際の販売は、メーカー側から販売スタッフとなる派遣店員を手配し、店頭に送り込むかたちをとることになります。

百貨店側では納品されたすべての商品を一旦買い取り、メーカー側への支払いも一旦発生させます。その後、メーカーへ返品をする時に、返品分の返金を受け取る代わりに、新たな納品商品を受け取り、そこで相殺処理をします。このような複雑な商品のやり取りを繰り返しながら売り場を構成していきます。

つまり、日本の百貨店のバイヤーは商品を買い付けると言っても、欧米のバイヤーのように完全買い取りで最終的な処分までするというような責任は無いことが多く、結果的にはメーカー側への返品ができてしまうというシステムです。

これだけでは、メーカー側にとってすこぶる不利な取引形態のように思えてしまいますが、当初は、メーカー側もこの取引形態をうまく利用していたのは否めません。期末が近づけば営業マンが一時的に売り上げを上げるために、商品を大量に百貨店に送り付け、期を過ぎたら返品処理で対応するといった具合です。

古くは、その返品コストを小売価格にあらかじめ上乗せして納品するということも見られたほどです。また、POSの無かったころに手配した派遣店員からは、生の顧客情報を入手し、自社の企画生産に反映できていたという点に大きなメリットがありました。

とのことである。
通常でいうところの委託販売とは大きく異なっていることがわかる。

「返品分の返金を受け取る代わりに新たな商品を納品してそれで相殺処理をする」という点が大きく異なるのである。

これを繰り返していくと、どうなるかというと、卸売りメーカー側は返品による返金を支払わないで済む代わりに、常に新製品を納入し続けないといけなくなる。メーカー側がいわゆる「自転車操業」状態に陥る。
こうなると、小資本のアパレルメーカーはたちどころに倒産してしまい、百貨店のこのシステムに乗っかれるのは大手資本のみということになってしまう。

小資本のアパレルが百貨店への卸売りを躊躇するのはこういう仕組みがあるからである。
じゃあ、小資本アパレルは「委託販売」ではなく、買い取りしてもらってはどうか?
という疑問が頭をもたげる。

それこそ昔はどうだったかしらないが、今の百貨店は斜陽産業にありがちな「前例主義」に凝り固まっている。
小資本アパレルの商品を買い取りで仕入れるなんてそんな「前例」のないことはやりたがらない。
経営トップが大号令をかければ話は別だが、それ以外の場合、担当者が失敗の責任を負わなければならない事柄は往々にして見送られる。
なぜなら担当者の今後の出世に響くからだ。

かくして小資本アパレルからの買い取り仕入れというのは、一部の例外を除いて、百貨店が積極的に推進するような事態は生まれないのである。

逆に、その結果、百貨店に卸売りするのは、「委託販売」システムに慣れたアパレルに限られることになり、百貨店各店の品ぞろえが同質化することになった。

一般にこの独特の「委託販売システム」を考案したのはオンワード樫山だとされており、オンワード樫山はこれによって百貨店との取引を拡大し続けてきたというのが、今日までの歴史だとされている。

話は少しそれるが、オンワード樫山の広報力が弱いのは、百貨店売り場を多く獲得し続けられているからではないかと考えている。
そんな広報やらプレスやらせずとも、売り場は多く獲得できたままである。
必然的に一定の売上高は稼げる。何も金を使って広報やらプレスを強化せずとも良いというわけだ。
これまでファッション雑誌にはそれなりの露出をしてきたが、2005年以降急速に普及したウェブというメディアではほとんど露出がないに等しい。

あるPR業者によると、10代~30代前半までの若い世代において、オンワード樫山の知名度は圧倒的に低いらしい。
これはSNSはおろかウェブでの露出がほとんどないためである。
今は売り場を多数獲得していて、30代後半以上の顧客がいるからそれでも大丈夫だろうが、10年~20年後は手痛いしっぺ返しがあるのではないかと個人的には見ている。

なぜならそのころ、今の10代~30代前半は、10年後なら20代~40代前半に、20年後なら30代~50代前半になっている。
今のオンワード樫山が得意とする年齢となる。
そうすると、今親しみのない彼女らが、そのころになってオンワード樫山の商品を選ぶ可能性は低いだろう。
若いころから親しんでいないブランドを、年を取ってからわざわざ買うことはほとんどない。

彼女らが買うのはユニクロや、今の低価格SPAブランドが立ち上げたミセス向けブランドということになるだろう。なぜなら、今親しんでいるから。

何事も物事は長所と短所は同じなのだと思い知らされる。

閑話休題

百貨店側に聞くと、今さらこの「委託販売」システムを変更することはかなり難しいそうだ。
一部では変更しようという意思はあるようだが、当たり前だが急激に変更することは不可能だ。
一部以外では変更しようという気すら持ち合わせていない。

したがって、今後も百貨店同士の同質化は続くし、斬新な新業態や新ブランドが導入されることは稀だろう。
そして同質化したまま緩やかに百貨店全体の売上高は減少し続けるだろう。




問題点の指摘は的確だが、具体策に欠ける経産省からの提言

 先日、経産省からアパレル業界に苦言が呈されたという記事が掲載された。

アパレル業界の不合理な商慣習、改善を…経産省
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20160617-OYT1T50027.html

多くのアパレル企業が無難な「流行」の衣料品を出して供給過剰となっており、「バーゲンで価格を下げて販売されることが常態」となっていると指摘。コスト削減のしわ寄せが設備投資や人材育成の停滞につながり、商品の陳腐化と消費者離れという「悪循環」に陥っていると分析する。

百貨店とアパレル企業の間で一般的に行われている委託販売を「小売り側が売れ残りのリスクを負わず、過剰な注文・在庫が生じやすい」要因とし、アパレル企業の直接販売などへの見直しも促す。縫製などを行う製造業者に発注した商品を引き取らない商慣習が一部残っていることも問題視し、製造業者の経営を衰弱させているとして是正を求める。

とのことであり、この指摘は業界関係者なら誰しもが感じていた不合理さを指摘したといえる。

この記事の元になったレポートはこれである。

http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/seizou/apparel_supply/report_001.html

・アパレル・サプライチェーン研究会報告書

・将来に向けた意欲的なチャレンジの事例

この2つのレポートである。両方とも20ページを優に超えるボリュームがある。
興味のある方はぜひ全文をお読みいただきたい。

一応、筆者も二つとも全文を読んだ。
問題点の指摘についてはその通りだと思う。
じゃあ改善策はどうするのか?という点がちょっと精神論・抽象論に終始しており、具体的ではないという印象を受けた。

アパレル業界が「無難」なトレンド品を打ち出し、供給過剰になって値崩れしていることに対して、その解決策を「クリエイティブな商品を強化する」とか「クリエイターを育成する」という内容を提言している。
このレポートを作成するにあたっては業界の識者と呼ばれる人たちを集めてなされており、そのメンバーは全文を読んだ後に列記されている。

で、彼らに問いたいのだが、「クリエイティブな商品」というのはどういう商品を指しているのだろうか?
他方で、「消費者ニーズを捕まえられていない」という指摘もあったが、「消費者ニーズを捕まえ」たのなら、トレンド商品が多く出てくるのは当たり前ではないか?

「クリエイティブな商品」という単語は一見すると、この業界の人間ならなんとなく言わんとすることは理解できるが、じゃあ、明確な定義とは何か?
100人いたら100通りの「クリエイティブな商品」に対するイメージがある。

パリコレのステージに登場するようなオブジェまがい・コスプレまがいの作品を「クリエイティブ」と考える人もいるし、古着をリメイクすることを「クリエイティブ」と考える人もいる。
また変質者一歩手前みたいなコーディネイトを「クリエイティブ」だと考える人もいるし、ベーシック・トラッドな装いに一味加えることを「クリエイティブ」だと考える人もいる。

この業界はこれまでさんざん「クリエイティブ」を重視してきているはずだ。
ファッション専門学校ではステージショー用に到底日常生活では着られないような「クリエイティブ」なデザインワークを生徒に教えてきている。

業界人の中には変質者一歩手前の「クリエイティブ」な着こなしを好む人が大勢いる。

それをいまさら「クリエイティブな商品の提案が必要」なんて言われても、これ以上変態を増やせということだろうか?

例えば、「バレンシアガ」というブランドの2017春夏コレクションの一つの画像だが、これを見てどう思われるか?

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筆者の感想は、ダボダボのコートがダサい(ビッグシルエットの表現だと知っているが)し、生足にロングブーツが変態っぽいし、モデルの顔つき・表情がちょっとアホっぽいと思う。なんかコートの前をガバっと開けて喜ぶ露出狂みたいに見える。

しかし、顔見知りの専門学校講師は「モデル選びも含めた素晴らしいルックだと思う」と感想を述べている。

「クリエイティブ」だとは思う。少なくとも「無難」ではない。
でもセンスが良いかどうかといわれると全くそうは思わない。しかしこれを「センスが良い」と感じる人もいる。
人間というのはここまで意見が異なるのである。
この意見が統一されることは絶対にない。

また「消費者ニーズを的確に捕まえよう」という提言も「その通りですね」としか返答のしようがない。
消費者ニーズの多くは「トレンド」の商品がほしいわけで、だからトレンド商品が盛り上がるのである。
価格帯は別としてガウチョパンツがジーユーで100万枚売れるのはそれがトレンド商品であり、多くの人がそれをほしいと感じたからだ。
1人が平均3枚買ったとして、少なくとも30万人はガウチョパンツがほしいと思ったということである。

30万人のガウチョパンツ市場があって、消費者ニーズを的確に捕まえたら、当然そこにガウチョパンツを投入する。「無難な」とあるが、無難ではない「変なアレンジ」を加えれば逆にまったく売れない可能性が高い。

ひざ下10センチくらいの丈が売れ筋だったとして、無難さを嫌って超ミニ丈(膝上15センチくらい)のガウチョパンツを作ったところでそんなものはほとんど売れない。

ファッションは個性で自由だという人がいるが、「あの人はオシャレ」「あの人はセンスが良い」と言われる人は多くの人からその着こなしが支持されている。
もちろん全員一致ではないが、まあ、少なくとも半数以上の人から支持される。
ということは、50%以上の人はほぼ同じ物を評価しているということになる。
じゃあ、その50%に向けて商品を投入するのは工業製品としては当たり前だろう。

物販をしていれば売れ残りが生じるのが当たり前で、値下げして販売するのはアパレル業界だけではない。
食料品だって家電だって売れ残りは値下げして販売される。
食料品は一部の特殊な製品を除いて腐敗するから、消費期限は短くなる。
スーパーマーケットでは毎日値下げ処分品が販売されている。

家電はもう少しスパンが長いが、多ければ年に何度か、少なければ何年かに一度モデルチェンジするから、その際、前の品番は値下げ処分販売される。

値下げ処分を避けたければ多品種小ロットで、売り切れ御免の企画製造販売体制を確立するしかない。
アパレル業界でいうとZARAやしまむらということになる。もしくはオーダーメイドかオートクチュールかである。
じゃあ、ZARAやしまむらが「個性的」で「クリエイティブな商品」を販売しているかというとそんなことはない。
「無難」なトレンド商品を売っている。
逆に「個性的」で「クリエイティブな商品」を販売していたとしたら、ニーズが少なすぎてそれこそ値下げ処分の投げ売り販売が増えただろう。

そんなわけで「クリエイティブな商品の強化」とか「ニーズを捕まえて」程度の提言では衣料品の値崩れはまったく止められないのではないかと思う。

後半部分の百貨店の「委託販売」、アパレルの製造・加工業者に対する商品未引き取り、不当返品、買い叩きが問題であるというのはその通りである。

百貨店は通常、商品を仕入れる際に買い取らずに、「委託販売」と呼ばれる消化仕入れの一種を行っている。これによって資本力のないブランドは百貨店に納品することができなくなっている。これについてはまた後日書いてみたい。

またアパレルによる、製造・加工業者への不当な扱いは今でも続いている。
その中身は、商品の未引き取り、不当返品、加工賃の買い叩き、不当な歩引き依頼などである。
アパレル企業だけではなく、SPA化した小売店も同様の仕打ちを製造・加工業者に行っている。
SPA化した小売店は正義の味方では決してない。

例えば、2008年とか2009年ごろに倒産したカジュアルメーカーの何社かは、SPA化した小売チェーン店による不当返品・商品の未引き取りが原因だったといわれている。

バブル期ごろまでは、アパレルメーカーが商品を企画・製造し、小売店へと卸ていたが、バブル崩壊後、アパレルメーカーも小売店もSPA化が進んだ。
今では有力ブランドのほとんどがSPAであるといっても言い過ぎではない。

そして、その商品の未引き取り、不当返品、買い叩き、不当歩引きはSPA化した今も平然と行われており、多くの製造・加工業者を苦しめている。
聞き知った範囲でいうと、これらをまったく行わないのは国内業者でいうと、ユニクロとしまむら、ジーンズメイト、イトーヨーカドーくらいである。

この部分を改善しないと、いくら「メイドインジャパン」だ「クールジャパン」だといってもまったく説得力はないし、国内の製造・加工業者を復活・育成するなんて掛け声だけで終わってしまう。

ところで先のレポートでは過剰に国内の製造・加工業者に対して「高品質」とか「高い技術力」と分析しているように感じられたが、その分析は現状とは異なるのではないかと思う。むしろ、高品質とか高い技術力で「メイドインジャパン」や「クールジャパン」を海外に売り込む姿勢は、もしかしたら却って日本製の衣料品の販売を妨げるかもしれないと思うが、これもまた後日に考えてみたい。




「コト」販売の成功で復活できたメガネスーパー

 物販において「物」は重要である。
「物」の良し悪しが売れ行きを決めることが多い。

「物」の良し悪しに差がなくなったり、明確な差が分かりにくかったりしたらどうなるか?
価格が安い方が選ばれるのである。
これは自動車も家電も食料品も衣料品もすべて同じである。

リーバイスの501というジーンズが3900円に値引きされてウェブストアで販売されていたら、知っている人は誰でもそこで買う。

先日発売されたスペルガの防水スニーカーがほしくてウェブ通販をあちこち見ていたら、6300円くらいで売られているサイトを発見した。定価よりも1500円くらい安い。
残念ながらまだ買っていないのだが、買うとしたらこのサイトで買う。

商品が同じで、価格が異なるだけだからだ。そして一番安い価格のサイトで買うのがもっとも効率的である。

「物」が同じ、もしくは差がなくなると究極的にはこういう買い方になる。
モノヅクリガーとかイシキタカイ系の人がいくら泣こうが喚こうがどうしようもない。自然の摂理だからだ。

「物」を売っている限りは価格競争に巻き込まれるわけだが、そうではないという売り方も中には存在する。
先日、掲載されたメガネスーパー復活の記事だが、「物」以外を販売した好例だといえるのではないか。
ご紹介したい。

瀕死の「メガネスーパー」が上場廃止目前に起こした奇跡の黒字化
http://news.livedoor.com/article/detail/11651557/

メガネスーパーは株式売買でときどき触っていた。
60円とか80円くらいの株価で、ときどき100円を超える高騰を見せる。
100株で売買して小銭を稼ぐにはちょうど良い銘柄なのである。

それはさておき。

メガネスーパーは14日、2016年4月期決算を発表しました。売上高は157億700万円、本業の儲けを示す営業利益は5億2,300万円、当期利益は2億6,000万円となりました。増収増益と黒字転換を実現しました。

同社の業績は長らく低迷していました。通期(非連結)の業績で見てみると、07年の売上高は346億円、営業利益は22億円、当期利益は11億円となっていました。しかし、08年には営業利益と当期利益が赤字に転落してしまいました。その後、赤字の業績が続くことになります。

直近10年の業績(通期・非連結)を見てみます。売上高は07年から15年まで一貫して減少していましたが、16年になって前年同期比9.9%増となり、減収から増収に転じました。営業利益と当期利益は08年から15年まで全ての期で赤字となっていましたが、16年でようやく黒字に転換することができました。

同社は債務超過に陥り上場廃止の猶予期間入り銘柄となっていましたが、継続的な資本増強策により16年4月期末の純資産は1億9,600万円となり、債務超過の状況を解消するに至りました。

同社は長期的な低迷からようやく脱出することができました。来期も増収増益を見込んでいます。

とある。
債務超過を乗り越えることに成功したのである。

その要因はなにか?

特に、不採算店舗の閉鎖、DMやLINE、顧客紹介施策、ポスティングといった費用対効果の高い広告販促に選択と集中を行ったこと、地域密着型の出店戦略として住宅街や小商圏の商業地に出店し低家賃を実現したことが販管費を下げることに大きく貢献しました。

そして、業績改善の要因において見逃すことができないポイントがあります。それは、同社は「モノ」を提供するというよりも「コト」を提供することに注力してきたということです。

同社は「目から元気に!」をコンセプトに、眼の健康寿命に配慮したアドバイスや、視力検査やフィッティングといった「アイケア」を重視したサービスの提供に注力してきました。

近年に広がりを見せていた低価格専門店の台頭による販売単価の下落やコンタクトレンズの普及によりメガネ市場は縮小傾向にありましたが、一方で、高齢化の進展による老眼鏡市場の拡大や、マルチメディアの普及に伴う近視用メガネ需要の拡大という市場機会が顕在化していました。同社はこの市場機会に焦点を絞るために、「アイケア」を重要視するようになったのです。

「アイケア」はコンサルティング技術や丁寧な接客が不可欠です。問診スキルの向上やメガネに起因する眼の負担を軽減させるアドバイスの提供、加齢対応型の検査の拡充といったことが必要です。また、専門的な知識を顧客に的確に分かりやすく伝えることも必要です。同社はそのための従業員研修などには積極的に投資を行ってきました。

「アイケア」を強化するために、2014年10月に「アイケア研究所」を立ち上げました。有識者や企業と提携し、眼の健康寿命を延ばすための解決策の研究や商品・サービスの開発を行っています。

15年3月には「アイケア」を重視した新業態店舗「DOCK」をオープンしました。店舗レイアウトやコンサルティング等の接客を徹底的に見直しています。

とある。

メガネは単なるファッションアイテムではなく、元来は医療器具である。
衰えた視力を補完する器具である。
そのため、スペックが重視される側面がある。

ここが洋服とは異なる部分である。
洋服でスペックが重視されるのはユニフォーム系くらいだろう。
それ以外のデイリーユースの洋服なんてそんなに高スペックは必要ない。

メガネの場合はスペックはやはり重要だ。
そこでその機能に対するコンサルティングを行うという「コト」販売は理に適っている。

百貨店からギフトショップ、場末のスーパーマーケットまで昨今では「コト」販売を呪文のように唱えている。
その結果できた売り場が、ベンチが多めに置かれていただけとか、休憩スペースが広くなっただけとか、わけのわからんモニュメントが設置されただけとか、そんな程度である。
ベンチが多めに置かれたら「コト」販売なのか?まったく意味がわからない。

そんなあまたある「コト」販売の失敗例だが、メガネスーパーの取り組みは数少ない成功事例といえる。

洋服にはメガネほどのスペックは求められないから一概に同列には論ぜられない。
それでもコンサルティング販売のエッセンスを導入できるのではないか?

そのためには販売員がファッショントレンドやコーディネイトだけではなく、素材や原料のことまで広く知識を網羅しておく必要があるのではないか。
筆者がもっとも苦手とする縫製やパターンについての知識も必要になる。

長年販売に携わってきた人たちでも素材や原料のことは驚くほど知らないことが多い。
それほどに素材や原料と販売員は距離が隔たっており、同業界のメンバーでありながら、ほとんどお互いのことを知らないのが現状である。
ここの距離感を縮めることはできないだろうか。それができれば、販売方法も変化すると思うのだが。

流通業界やアパレル業界には「なんちゃってコト」販売が掃いて捨てるほどある。
いや、ほとんどの「コト」販売は「なんちゃって」レベルである。

メガネと異なり、それほどのスペックは求められない衣料品だが、何とかメガネスーパーのような成功する「コト」販売を企画立案し、実行してもらいたい。
それだけが価格競争から抜け出せる唯一の道だからだ。





洋服に特化した百貨店という業態が衰退したのは当然

 このところ、仕事の関係で百貨店の記事ばかり読んでいる。
正直なところちょっと食傷気味なのだ。「ファッション」「おもてなし」ほとんどこれしかない。
まあ、それが百貨店の基本、原点かもしれないから仕方がないことは分かっている。

よく、10数年前に10兆円あった百貨店全体の売上高が今は6兆円だといわれる。
売上高が4割減少していることになる。

ファーストリテイリング全体の売上高が1兆6800億円(2015年8月期)だから、その3倍強程度しかないということになる。

若者や小さい子供がいる若いパパママ世代が百貨店に行かなくなったといわれる。
理由は様々あるだろう。

1、商品価格が高い
2、レジャー性、アミューズメント性がない
3、駐車場があまり充実していない(とくに都心店は)
4、彼ら世代に人気のあるブランドがあまりそろっていない

というところだろうか。

まあ、そういう顧客層を百貨店がほしいと思っているのかどうかはわからない。
しかし、人間は絶対に確実に死ぬ。
今、百貨店をごひいきにしている富裕な年配層は長くても30年後にはほとんど死に絶える。
30年後には今の20代は50代に、30代は60代になっている。
今の10代ですら40代だ。

そうなったときに彼らが「ワシらも年を取ったから百貨店で買い物しようか」となるだろうか。
筆者はならないと思う。
今、親しみがない商業施設には、年を取ってからも行くことはない。
もちろん、彼らも幾分か世慣れてくるだろうから、贈答品は有名百貨店で買うくらいのことはするかもしれないが、その程度の使い方で終わりではないか。

今の若い世代、子連れ世代は郊外型ショッピングセンターや家電量販店へ行く。
昨今はショッピングセンターは都心にもできているから、郊外型と限定できなくなりつつある。
ただ、大型ショッピングセンターや家電量販店も店舗過剰になっており、優劣は出始めているが。

商品の値段が安いとか駐車場が広いとかいう理由がある。
それ以外に、レジャー性・アミューズメント性があるという点が強いのではないかと思う。
特に子連れ世代には。

子供が色気づくのは何歳ぐらいからだろうか?
個人差はあるが女児は早くて男児は遅いという印象がある。
女児だと早い子は小学校中学年か高学年からファッションが好きだったりする。
そのころにファッションに興味がある男児はかなり少数だろう。

男児がファッションに興味を持ち始めるのは早くて中学校2,3年くらいではないか。

となると、その年代になるまでの子供を連れて、両親は百貨店に行きづらいということになる。
品ぞろえがファッションに偏り過ぎていて子供達には退屈すぎるからだ。

筆者も小学校3年くらいまでは、母親の買い物に付き合わされていた。
ジャスコとかイズミヤの洋服売り場が多かったが、たまには百貨店もあった。
量販店だろうが百貨店だろうが、男児にとって洋服売り場というのは退屈極まりない。
よくダダをこねていたし、それが無駄だとわかるとひたすらどこかに座り込んでいた。

4年生くらいになると、時間を決めて待ち合わせて、本屋とかおもちゃ屋で時間をつぶすようになった。
洋服売り場に比べると退屈度が格段に緩和される。

ショッピングセンターにはゲームセンターがあったり、子供が遊べるスペースがある。
大型書店も入店している。
玩具売り場もある。
ペット売り場がある場合もあるから、そこで犬や猫や熱帯魚を見ていたほうが、洋服を見ているよりは随分と楽しい。

百貨店には洋服しかない。それ以外だと地下の食品と、呉服、美術、一部インテリアくらいで、子供が楽しめる売り場は皆無だ。

大型家電量販店はゲームセンターなどはないが、玩具売り場がある。
また各種家電をいろいろと触って試せる。
百貨店よりは子供にとって退屈しにくい場所である。

となると、子連れ世代は大型ショッピングセンターか大型家電量販店に行く回数が増えるのは当然だろう。
子連れで百貨店で長時間過ごすことはかなり難しい。

おまけに可処分所得は減ってるから、髙いブランドがそろっている百貨店で、頻繁には服を買えない。

ショッピングセンターならそれが可能だ。
大型家電量販店でも百貨店よりはファミリーで長時間すごせるだろう。

若者世代、子連れ世代が百貨店にあまり行かなくなるのは当然の結果といえる。

そういえば幼いころの記憶だと百貨店にも玩具売り場、家電売り場があった。
屋上には遊園地もどきや子供たちが遊べるスペースがあった。

筆者より年配の人たちだと「子供のころは百貨店の屋上遊園地で遊んでから、その下のレストラン街で昼食を食べさせてもらうのが楽しみだった」と語る人は多い。

ちょうど今の子連れ世代が大型ショッピングセンターで過ごすやり方と同じだったといえる。
だから、子連れ世代があの時代は百貨店に通っていたのである。

以前、誰かの記事で、「百貨店は効率を求めて洋服に特化してきた。その結果が今である」と書かれていたが、その通りなのではないか。
効率性・利益性を追求した結果、百貨店は洋服専門店になったのではないか。

高度経済成長期やバブル期のように、洋服がほしくてほしくてたまらないという人は今どれほどいるだろう?
ほとんどいないのではないか。
また、当時のようにブランド物と安物の見た目が歴然としていたなら、無理をしてでも高いブランド物を買う人も一定数いただろうが、今のようにブランド物と安物の見た目がほとんど同じになれば、安物で良いと考える人が増えても不思議ではない。

そして子連れ世代が利用しにくいということになれば、百貨店を利用するのは年配の富裕な女性客のみということになる。利用客数が少なくなるのだから売上高が減少するのは当然である。

今後も百貨店がなくなることはないだろう。
都心の有名店は確実に何店舗か残るだろう。

しかし、閉鎖される百貨店は確実に増える。
どこか特定の百貨店の売上高が増えることはあっても、百貨店全体の売上高がかつての10兆円規模に回復することは、今の売り場構成を続けている限り絶対にない。

このままファッション特化を続けて、すごく少ない富裕なファッション好きという顧客層を奪い合うのか、それとも違う方向性を探るのか、経営判断が問われるということになるだろう。
ただ、保守的な人が多い百貨店社員で、違う方向性を探れる人は限りなく少ないだろう。


三越伊勢丹の最新 儀式110番: こんなときどうする? 冠婚葬祭
三越伊勢丹ホールディングス
誠文堂新光社
2016-05-25



名ばかりブランドは今後ますます存続できなくなる

 2週間前に活動が始まったブランド「ナインオクロック」だが、これの立ち上げに際して、生地問屋を紹介したり、ディスカッションに応じたりと様々なサポートを行ってきた。
そうそう、プレスリリースも作成した。

http://9oclock.co.jp/

完成した製品サンプルも送ってもらった。

好き嫌いはあるだろうが、Tシャツ単品として見た場合、完成度はそれなりに高い。
ブランド主が掲げていた「細身でスタイリッシュなシルエット」もパッと見た感じでは実現できている。
もちろん、過不足を言い出せばきりがないが、大枠では平均点以上は獲得できているのではないかと思う。

top_black01

今回は「ナインオクロック」を論評したいのではなく、アパレル勤務経験がゼロのオニイチャンが企画しても一定水準以上の商品を製造できる、アパレル業界の製造インフラのすごさを改めて感じているのである。

香取正博さん本人はデザイン画が描けるわけでもないし、パターン(型紙)を作れるわけでもない。
こんな商品が作りたいというイメージしか持っていなかったわけである。

生地の手当ては、生地問屋とか生地工場に交渉すれば何とかなる。
縫製も縫製工場と交渉すれば何とかなる。

いくら生地が良くて、縫製も良くてもデザインやシルエットがダサければそんな衣料品は売れない。
産地企業が自社製品を企画製造した際に失敗するのはこの点を理解していないからである。
頭では理解しているのかもしれないが、いざ自分が企画製造してみるとその視点を見失うのが人間である。

敵を知り、己を知れば百戦危うからずといわれるが、真に難しいのは敵を知るよりも己を知ることである。
人並みの知能があって論理的思考ができれば、敵を知ることはさほど難しくない。
しかし、自分の置かれている立場、自分自身の癖などを明確に認識するのはかなり難しい。

それはさておき。

デザイン、パターンについても簡単に外注が可能な状況だということである。
これは今に始まったことではなく、もう10~15年前くらいからそういう外注機能はあったが、近年はさらにそれが手軽に依頼できるようになっている。
そういう外注業者が増えたからだ。
フリーランスのデザイナーやパタンナーも一定数存在する。

ちゃんと代金さえ支払えば、ブランド物とそん色のないTシャツがズブの素人が企画しても作れてしまう。

これは何もTシャツに限ったことではなく、衣料品の全アイテムで可能なのである。

2年ほど前、筆者に「ジーンズを作りたい」という相談があった。
それも一個人みたいな人だった。
早速、友人のジーンズOEM業者に見積もりを取ってみた。

筆者の依頼ということで幾分か割り引いてくれたのだが、

国内生地・国内縫製、ワンウォッシュでロットは100本(サイズ込)で、1本あたり3000円

だった。
縫製工賃や洗い加工賃は変動するので、今依頼して同じ見積もりが出てくるかどうかはわからない。
が、当時はその見積もりが出てきた。

結局この話は流れて製造には至らなかったのだが、30万円(3000円×100本)を支払えば、ド素人でもオリジナルの国産ジーンズが製造できるということである。
デザインやパターンならこの業者自身が幾通りも自社内にストックがある。
素人発注者がその中から選べば、デザインやシルエットに関してもいわゆるブランド物とそん色ないジーンズを企画製造することが可能になる。

こういう状況下で、逆にこれまでのブランドが漫然とブランドを名乗り続けるということは、かなり難しくなってきたのではないかと感じる。

もちろん、ブランドは単品ではない。
月ごと・年間の商品計画が必要である。
「Tシャツだけ、ジーンズだけ、しかもデザインは1型しかありません」なんていうのは到底まともな衣料品ブランドとは呼べない。

今年だけの期間限定販売ならそれでも良いかもしれないが、これから何年間も一定の売上高を稼いでいこうと考えるなら、単品ブランドでも型数や色柄のバリエーションはある程度は必要になる。

それが商品計画というものである。

それでもド素人がそれなりの品質、見た目の商品を単品とはいえ、簡単に作れて、独自のブランド名を付けることができる現在の環境下で、これまでのブランドはさらにその独自性とか立ち位置が問われるのではないかと感じる。

品質においても、デザインや見た目のシルエットに関してもド素人の思い付き商品と変わらない。

価格はもちろん、現在のブランド品のほうが高い。
商品自体はあまり変わらないのに値段が高いのはなぜか?
理由は当然さまざまあるだろう。販促・広告費が含まれているとか、アフターサービスが良いとか、著名なデザイナーと契約しているとか。

そういうことが明確に説明できないブランドは、今後ますます、ポッと出のリーズナブルなブランドに負けてしまうだろう。

ナインオクロックは3500円であるし、流れたジーンズは個人で販売するなら6000円くらい(卸売りビジネスなら店頭販売価格はもっと高くなる)での販売が可能だっただろう。

同じような国産生地・国内縫製で1万円とか2万円する商品はどう違うのだろう?
消費者の多くがそう考えだしても不思議ではない。

そこに説得力がないブランドはこれからますます淘汰されてしまうのではないか。
アパレル特有のノリとか雰囲気とかムードとかで「ブランド」を名乗って高価格商品を打ち出すというやり方は今後ますます厳しくなるのではないか。



「爆買い」というボーナスタイムはそろそろ終わる

 たまには数字でも紹介してみたい。
先日発表された各百貨店の5月度売上高は軒並み前年よりも減少しており、中国人観光客による爆買いは完全にピークアウトしたといえる。

流通ニュースからピックアップしてみる

三越伊勢丹ホールディングス(2016年3月期売上高:1兆2872億円)が発表した5月の売上確報によると、三越伊勢丹の全店合計売上高は前年同月比8.7%減の497億3660万円となった。

基幹3店では、伊勢丹新宿本店が202億4812万円(7.7%減)、三越日本橋店が121億9372万円(7.8%減)、三越銀座店が61億8131万円(13.0%減)だった。
http://ryutsuu.biz/sales/i061514.html

また

イトーヨーカ堂/5月の売上高は2.7%減、そごう・西武5.6%減
http://ryutsuu.biz/sales/i061522.html

J.フロントリテイリング/5月の連結売上は4.5%減
http://ryutsuu.biz/sales/i061518.html

セグメント別では、百貨店事業は7.1%減、パルコ事業は1.6%減、卸売事業は26.9%減、クレジット事業は3.2%増、その他事業は25.5%増だった。

とある。一方、高島屋グループだけは堅調だったようで、

高島屋グループ/5月の総計1.1%減
http://ryutsuu.biz/sales/i061516.html

百貨店は、土曜日が前年より1日減だったこともあり、前年実績に届かなかった。免税販売額は、消耗品が好調に推移し、5.2%増となった。

とあるが、6月は厳しいようで、

6月の店頭売上は14日までの累計が、4.1%減となっている。

ともある。
堅調な高島屋グループでも6月は爆買い効果が薄れているということだろうか。

さらに爆買いの象徴でもあったラオックスの凋落はさらに顕著で、

ラオックス/5月は、客減少と高額品の消費鈍化で売上高44%減
http://ryutsuu.biz/sales/i061707.html

レジ通過数は19万6335人(前年20万526人)、平均客単価は2万1295円(3万7353円)だった。
高額品の消費鈍化による単価の下落が顕著となった。

とあり、半減近い。

先日、訪問した三越伊勢丹ホールディングスの部長も「外国人観光客の消費は東低西高の傾向にあるといわれており、東京ではピークアウトした印象が強い。一方、大阪に外国人買い物客が増えているという傾向にある」と指摘されたのだが、そう、大阪の心斎橋筋商店街だけは、過去にも増して中国人を主力とする外国人観光客が集結しているように見える。

実際、筆者は心斎橋筋商店街によく行くが、何年か前よりも外国人買い物客がさらに増えていると感じる。
もうほとんど外国の商店街のようになっており、ここだけを見ていると爆買いがピークアウトを迎えたとは到底思えないほどである。

なんだかおもしろい現象だなあと思っていたら、同様に思った人がいたらしく、こんな記事が掲載された。

「心斎橋は魔界だ!」中国人が最も用心する理由とは
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46689

心斎橋が中国人を含めた外国人観光客に人気の理由をこう指摘している。

「いいか、東京は銀座、秋葉原、渋谷、浅草、新宿、池袋、表参道と回る場所が分散しているから、移動するたびに一旦頭がリセットされて、無駄な買い物をしないで済む。だけど、大阪の心斎橋だけは気をつけろ、あれは魔界だ。1つのストリートで中国人が欲しいと思うモノを全部買えるから、その熱にうなされて、いらないものまで勢いで買って後悔する。気をしっかりと持って冷静に買い物するのがコツだ」

と。

その通りで、心斎橋筋商店街は、南海なんば駅の手前まで含めても片道20分ほどしかない。
往復40分ほどである。
その両端には、家電量販店、ファストファッション、低価格SPAブランド、ドラッグストア、有名セレクトショップ、百貨店とオールジャンルで店が並んでいる。
もし、ラグジュアリーブランドがほしければ、一本西の御堂筋に出れば、その両脇にはラグジュアリーブランドが軒を連ねている。

買い物をするにはものすごく効率的である。
低価格品から高級品までなんでもそろう。
ファッションだけでなく、家電製品やら薬品、雑貨となんでもそろう。

一方、東京も含めて、大阪の他の地域は、店舗が分散している。
梅田も店舗が集積しているが、それでも一本のストリートにすべてが集積しているわけではないから、何度もグルグル回らなければならない。
グランフロント大阪とヨドバシカメラと阪急百貨店うめだ本店を買いまわるのは結構めんどくさい。
ただまっすぐなストリートを行き来するのとは疲労度も異なる。

また大阪の堀江や南船場になると小型店があちこちに点在しており、これをいちいち訪ね歩くのはとてつもなくめんどくさい。

東京はそういう分散化傾向がさらに顕著だ。

そうなると、もっとも効率的な心斎橋筋商店街に集まるというのも当然といえる。

実はこの傾向は「爆買い」が話題になる前の日本人消費者も同様で、大阪だと南船場、堀江、アメリカ村の凋落が顕著で、心斎橋筋商店街と大型商業施設に買い物客が集まる傾向が強まっていた。
東京でも同様で代官山が低迷し始め、駅前の商業施設が集客を増やしていた。

その理由として南船場、堀江、アメリカ村、代官山は小型店がエリア内に分散しており、買いまわるのが非常に不便で非効率だからだ。
今の40代、50代が若いころには、「そういうエリア性が面白い」とされていたが、そういう風潮はすっかり過去の遺物となり果ててしまった。

かつて、堀江、南船場が注目されていた99年か2000年ごろ、心斎橋筋商店街の組合に取材をしたことがあるが、かなり危機感を持っておられた。
当時は有名店は商店街に出店せず、堀江や南船場に旗艦店を作ることが主流だったからだ。
今となっては笑い話だが「このままではパチンコ屋ばかりになってしまうかも」なんて危惧も飛び出したほどだ。

2000年代後半になって南船場、堀江が凋落し、再び心斎橋筋商店街に店が集積するとはあの当時だれも予想できなかった。また5~6年前、梅田に大型商業施設が相次いでオープンしたとき、「このままでは心斎橋は沈むかもしれない」と危機感を煽った識者もいたが、その見込みも外れた。

人間の予想なんてこれほどあてにならないものはない。

とはいえ、今は無類の集客を誇る心斎橋筋商店街だが、外国人観光客、とくに中国人の消費がいつまでも堅調だと考えるのは危険ではないか。
高額品を大量に買うという消費スタイルはピークアウトしている。
体験型の「コト」消費が増えているといわれるが実際のところはそれが本当かどうかはわからない。

中国政府の締め付けも厳しくなっている。

しかし、個人的には中国経済の失速が大きいのではないかと考えている。
まだ消費意欲は旺盛かもしれないが、倍々ゲームで発表上のGDPを伸ばしていたころの勢いはないし、そういう神がかり的な景気は中国には戻らないと見ている。

外国人、とくに中国人の消費なんて所詮水物。香港、韓国も中国人観光客の消費に頼ったが、両地域ともそれが離れた今、苦戦している。

爆買いが中長期的に続くと考えていた人はあまりにも安直だったと思うし、アホじゃなかろうかとも思う。
ボーナス程度に考えておくほうが賢明である。
そして、そのボーナスタイムはまもなく終わろうとしている。




「Tシャツ1900円」としか書かれていないPOPを付けている店は絶対に売れない

 6月3日にあべのキューズモールにジーユーがオープンした。
オープン当日から現在に至るまで連日、店内は満員である。
平日の昼間でも満員だからその人気ぶりに驚かされる。

通路の対面にある某大手アパレルブランドの店内が閑散としているのとは対照的である。

例えば百貨店内に出店するようなブランドやいわゆる高級専門店と言われるようなブランドは、自らを「ファッションブランド」と自称し、ジーユーを含めた低価格ブランドを「日用品」と勝手に区別している。
その割にはその「日用品」ゾーンが売れるとなると、百貨店ブランドは低価格ブランドを作ってGMSへテナント出店しているから、そのダブルスタンダードぶりには驚くほかない。

彼らは「この日用品風情がッ」と見下しながら、そのゾーンに向かって商品を企画製造しているのだろうか?
だから百貨店アパレルの低価格ブランドは売れていないのではないか。
逆にしまむらの野中社長の発言に見られるように、低価格ブランドが百貨店ブランドのシェアを奪おうと虎視眈々と狙っており、その積極的な「的を射た」仕掛けは百貨店アパレルなど遠く及ぶところではない。

それはさておき。

低価格ブランドの商品が安い理由は、さまざまあるがここでは繰り返さない。
1週間で100万~200万円をコンスタントに売る某腕利き販売員はこう指摘する。

http://ameblo.jp/ryohei-yotsumoto/entry-12167129531.html

そう、商品を極力安くお客さんに提供する為に

販売員が接客をするサービス代を排除しているからです。

とのことだが、これは一理ある。

セルフのガソリンスタンドやセルフ形式のうどん屋が安いのと同じ理屈である。

某ラグジュアリーブランドみたいにドアマンが立っているわけでもないし、入店しても「いらっしゃませ」「こんにちは」程度の声掛けはあるが、それ以上は付きまとわない。
ただし、商品について質問をすると、割合に的確に答えてくれる。
ユニクロやらジーユーやら無印良品やらGAPやらで販売員の答えに対して、イラっとしたことはほとんどない。

逆に「ファッション面」したセレクトショップやSPAブランドの販売員のほうが質が低くてイラっとすることが多い。

昔、某有名セレクトショップでジーンズの値段を見ていた。
筆者は必ず値段から入る。
このセレクトショップの自主企画ジーンズは定価でもあまり高くない。
だいたい6000~8000円程度なので、バーゲンで半額になったらいつも買おうかどうしようか迷うのだが、最終的にはエドウインとかユニクロの値下がり品を買うというのが筆者の消費行動である。

そうしたら販売員がおもむろに背後から声をかけてきた。
「それデニム生地でできているんですよ」と。
30歳前後の男性だったと記憶している。

いや、見たらわかるからそれ。

そのデニム生地がウンチク満載ならともかく、どう見ても定番で1メートルあたり700円くらいのデニム生地である。

あいまいな返事をしてそそくさと店を出た。

また別のSPAブランド店では、値下がりしたズボンの値札を見ていた。
常に値札から見るのである。

すると背後から
「サイズはおいくつですか?」と、これは20代の若い女性販売員だった。

いや、値札を見ただけの人間にいきなりサイズを尋ねてどうするのか?
この声掛けではほとんど成果は上がらないだろうと思う。

いきなりサイズを尋ねられてもねえ。

こういうイライラがユニクロやジーユー、GAPにはない。
筆者は別に人間と無駄話がしたくて店に行くのではない。
頓珍漢な声掛けならやめてもらいたい。

だから「ファッション面」したセレクトショップやSPAブランド店は嫌いなのである。
買い物を極力しないようにしている。

20代の販売員がこの手の接客をするなら経験不足だから納得できるが、30代以降でこんな販売員は本当に将来性を感じられない。彼らの代わりに自動販売機を設置したほうが店の売上高は上がる。

前置きが長くなったが、ジーユーの連日の満員にあきれ果てたのだが、それでも対面の大手アパレルの低価格ブランドと比べると人気が高い理由も理解できる。

価格が圧倒的に安いというところが大きい。
ユニクロの投げ売り品くらいの定価設定となっている。
それでいて、トレンドが反映されている。

あまり指摘されていないが、商品説明のPOPがつけられているところも大きいのではないか。

低価格ブランドが接客をしないのは経営母体を問わず共通している。
いささか逆説的だが、洋服は説明なしではなかなか売りづらい商品である。
ユニクロもそうだが、ジーユーもPOPでそこを補っている。というより、ユニクロの手法を取り入れている。

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そういうものが何もなく、「Tシャツ1900円」「ジーンズ3900円」という商品名と価格だけのPOPが付けられている低価格ブランドと比べれば効力は一目瞭然だろう。

アパレルブランドはいまだにこういう「商品名と価格だけ」のPOPでヨシとしているところが多くて遅れている。
遅れているから売上高が下がって苦戦しているのである。

「Tシャツ1900円」なんていうPOPを見て、「欲しい」と思ったり「なるほど」と思う客がどれほどいるのか。
仮に商品名と価格だけのPOPで効果があるとするなら、その価格が驚くほど安い場合だけである。
「Tシャツ100円」みたいな。

販売員にくどくどしい接客をさせないがPOPで「説明しよう」という意思を見せるユニクロ、ジーユーと、「Tシャツ1900円」という謎のPOPだけを掲げて、「百貨店ブランドのエッセンスを少し垂らしてやったぜ、かっこいいだろ?」みたいな売り場作りをしているブランドのどちらを客は評価するだろうか。
圧倒的に前者だろう。それが業績にも反映されているのではないか。

低価格ブランドだから接客はできないというのはその通りだが、それでも「説明しよう」とするユニクロ、ジーユーの姿勢を、売れ行き不振で苦しんでいる「ファッション面」したアパレルはもっと見習うべきではないか。



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