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南充浩 オフィシャルブログ

高気温の期間が毎年長期化してきて防寒アウター類の販売は難しさを増していると感じた話

2023年9月6日 天候・気候 1

お盆明けに猛暑が落ち着いたと思ったら8月末から猛暑が復活した。天気予報によると今日からの雨で猛暑は落ち着くものの、最高気温30度越えの真夏日はまだまだ続く。

9月、10月、11月の3カ月長期予報では、当たり前のことというか、例年通りというか、平均よりも高気温が続くと出ている。

今夏は北海道、東北でも35度越えの日が8月下旬以降も続いており、東北に実家がある業界の先輩も「例年ならお盆をすぎると東北では朝晩はけっこう涼しくなるが今年はまだ朝晩も暑い」とのことで、長引く猛暑はもう東京、名古屋、大阪だけの問題ではなくなってきたといえる。

多くの方が懐古したり指摘したりしておられるが、70年代~90年代前半までは、大阪市内でさえ真夏の最高気温が35度を越える日がほとんどなかった。高くても33~34度までで止まっていた。35度を越える日が年間1日も無い夏というのは珍しくなかった。

少し以前にも書いたが、94年から35度越えの真夏日というのが頻繁に観測されるようになったとのことだったが、この94年というのは当方が働き出して間もない頃である。何なら93年は全国的な冷夏だった。冷夏と言ってもそれなりに暑くて日中の最高気温はだいたい29~31度くらいで推移していた記憶がある。とはいえ、それくらいなら汗は大量にかくものの耐えられないわけではない。

 

この94年頃、まだ新米の販売員だった当方は、入社した店のベテラン女性販売員からいろいろと指導も兼ねたお話を伺ったのだが、「お盆を過ぎたら秋物を売るために長袖を着て出社して店頭に立った」とのことで、実際にその人は8月下旬には長袖を着ておられたと記憶している。

ただ、当方は半袖を着ていたがどうだろうか、9月半ばごろ、遅くとも秋のお彼岸には当方ですら長袖を着ていた記憶がある。

猛暑日が始まったと言っても90年代は10月の上旬にはそこそこ涼しくなっていて長袖を着ていた。少なくとも朝晩は結構涼しくなっていた。

 

しかし、2015年以降、大阪市内では10月10日を過ぎてもまだ暑い。最高気温30度は越えているし、朝晩も24度くらいまでしか下がらない。結局、当方は暑がりなので毎年、早くても10月10日過ぎ、遅ければ10月下旬まで半袖で暮らしている。

東京の気温の推移はこちらに詳しいので興味のある方は参照いただきたい。

 

今年の東京の夏はどのくらい暑かったのか?調べてみた

まだ9月上旬だが中旬以降、実際にはどんな気温推移をするのかわからないが、恐らくは長期予報が的中して10月、11月ともに平均よりも高い気温で推移するのではないかと考えている。

なので、今年も少なくとも10月中旬までは当方の半袖生活は続きそうである。長ければ10月末まで続くだろうか。11月には長袖を着られる気温に下がっていてくれることを祈るのみである。

 

この業界、特に多少なりとも小売店のことをご存知の方なら、真冬向けの防寒アウターの立ち上がりが業界の慣習として毎年10月20日前後ということを知っておられるに違いない。

90年代半ばに店頭に立っていたころ、毎年10月21日になると、大量に分厚い防寒アウターが本部から配送されて、店内の引き出しという引き出しすべてにパンパンに詰め込んだことをよく覚えている。

中綿ブルゾン、ウールメルトンコートなどなどが何十箱も一気に送られてきた。検品と品出しで丸一日かかるくらいである。

 

この業界の商慣行として、10月20日周辺に真冬向けの防寒アウター類が店頭投入され、10月下旬から12月下旬までプロパー(定価)で販売し、94年にはすでに正月バーゲンが始まっていたから、正月には値下げして販売するという形が出来上がっていた。

ただ、90年代半ば以降の正月バーゲンというと、人気の高そうなアウター類は値引き無し、もしくは低割引率で正月バーゲンがスタートし、1月半ば、1月下旬、2月という形で徐々に値引き率が拡大して行って、2月下旬までに売り切ろうとする形態がほとんどだった。

このころ、真冬向け防寒アウターはたっぷり2か月間プロパーで売ることができたし、正月バーゲンが始まってからもまだプロパーかそれに近い値段で売ることができた。

 

ところが2010年代以降はどうだろうか。10月はまだ高気温で、何なら12月でもまだあまり寒くない。22年12月下旬はクリスマス寒波以降は暖かく、年末大掃除が捗るとともに、昼間は汗ばんだ記憶がある。

そして、正月バーゲンではいきなり30%オフから50%で始まり、成人の日を越えて残っている商品はどれほど値下げしてもほとんど売れないという状況になっている。またプレセールは12月に始まってしまう。

真冬向け防寒アウターを定価で販売できる期間は10月下旬から11月末に短縮されており、さらに10月・11月ともに真冬向け防寒アウターを必要としないほどの高気温である。当方レベルの暑がりになると春・秋向けの軽いアウターで過ごせてしまう。

昨年は12月22日から24日まで3日間続いたクリスマス寒波が襲来していなかったら防寒アウターの売れ行きはもっと無残な結果に終わったブランドが多かっただろう。

 

現在、すでにユニクロ、ジーユ―には防寒向けアウターが何型か入荷しているが、正直この暑さでは買う気にならない。昨年のようにクリスマス寒波があればその時期前後には売れるだろうが、なければ正月バーゲンまであまり動かないだろう。

もちろん、人気ブランドでは8月に防寒アウターが完売したりもするが生産数量はそれほど多くないし、そんな売れ方は何年間も続かない。再スタートでイキっていたカナダグースだって、2~3年間くらいしかお盆にダウンは完売していないし、今年のお盆にはもうそんな話題も出てこないほどである。

理由は簡単で高額な防寒アウターを毎年必ず買い足すような物好きの人数はそんなに多くないからだ。そして物好き以外の「買える収入のある人」は1枚か2枚手に入ればそれを何年間か着て過ごす。3年目以降、わざわざ真夏に並んでまで3枚目・4枚目を買うなんていう行動はとらない。

 

もちろん、もっと劇的に年間MDを変えろというつもりもないし、各ブランドはそれなりに努力していることも承知しているが、防寒アウターに限らず冬物商品のMDで従来型を何とか保つことは気温推移的にはもう不可能に近くなっているのではないかと思う。

何年かに一度寒波が来るからそれに備えて機会損失の無いようにせざるを得ないことが、冬物MDの問題の背景にはあるが、当方ならブランドのコンセプトやターゲット設定にもよるが、可能性が低い寒波襲来は捨てて、確立の高い高気温に備えた方が傷は浅くて済むのではないかと思ってしまう。

 

MD変更云々は置いておいて、本当に防寒アウター類と冬物衣料を売るのは年々難しさを増していると感じられてならない。

 

 

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 comment
  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/09/06(水) 12:04 PM

    >防寒アウター類と冬物衣料を売るのは年々難しさを増している

    南サン、恐ろしいことをサラッといいますね

    単価が高い商品が売れない状況が定着する=安定的な売上減確定

    そして原因が季節要因である以上、この売上減を補う事は不可能です

    しかも化繊の高耐久化により耐用年数が長くなっている

    売上を着数でカウントすると、今後は
    30年前の半分以下になるんじゃないですか?

    着丈80以上の外套もしくは中綿入りJKTが必要なのは
    12月半ば~2月半ばのわずか2ヶ月!!

    ということは着用回数が少ないので、当然長持ちします
    したがって、買い替える必要がありません

    「30代で買ったコートを死ぬまで使う」

    となっても、全く不思議ではありません
    しかもゆとりが多いコート類。体形が変わってもOK

    恐ろしい時代になったものです

    気候変動が、かくも売上に影響するとは・・・

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