
エドウインがビンテージタイプの「505」を復活させるという話
2023年9月4日 ジーンズ 4
業界的にはあんまり大勢に影響が無さそうだが、個人的にちょっと興味を持っているのが、エドウインがビンテージモデルの「505」を復活させたという話題である。
エドウインが1990年代発売のジーンズ「505」をアップデート 3型を展開 (fashionsnap.com)
505は、ヴィンテージデニムがトレンドとなっていた1990年代、「ニューヴィンテージ」をコンセプトに発売。国産のオリジナルセルビッチデニムを使用したクオリティの高さから、若者を中心に大きな人気を集めた。
新作は、来年で505の発売から30周年を迎えることを受け、当時の風合いを現代の技術によってアップデート。ワイドストレートシルエットの「505Z WIDE」(1万5400〜1万7600円)と、ルーズストレートシルエットの「505Z LOOSE」(1万5400〜1万7600円)、レギュラーストレート「505ZXX REGULAR」(1万5400〜1万7600円)の3型を、ワンウォッシュの「100」、ダークユーズドウォッシュの「126」、ミッドユーズドウォッシュの「146」の3色で展開している。
とのことである。
元の505の発売は記事によると94年となっている。
ちょうど当方が働き始めて間もない頃で、ファッションの勉強のために毎月買っていたメンズノンノでもエドウイン505を含むビンテージ系ジーンズは多数取り上げられていた。
ジーンズやデニム生地に対してさほど知識の無かった当方にとって、エドウイン505を含むビンテージ系ジーンズで最も特徴的に映ったのは、セルビッジ部分を見せびらかすかのようにロールアップする穿き方であった。90年代前半はレーヨンジーンズが一世を風靡しており、このレーヨンジーンズは折り返さずにドレープ感を活かして、穿くのが主流だったから、それとは真逆の穿き方である。
さらにいえば、その前の年代のファッション知識はあまりないが、当方の身の周りではジーンズをロールアップして穿く人はほとんどいなかったので、尚更奇異に映った。
裾を数センチロールアップするならまだしも、ファッション雑誌では裾を20センチくらい長めに折り返して、いわば靴下や長靴のように見える穿き方が提案されており、ジーンズ初心者の当方からすると「ハードル高いよ」と恐れおののいたものである。
もう一つ、ビンテージ系ジーンズで驚かされたのはその値段である。
レーヨンジーンズまでは、中心価格帯は7900~9800円だった。当然、同等の値段であれば、一応販売員としては1本くらいは買うつもりがあった。
しかし、ビンテージ系ジーンズはそれよりも値段が高く、記憶によるとリーバイスの復刻モデルですら、一番安い物でも1万円を少し超えていた。
他の当時興ってきたエヴィスやらドゥニームやらは最低でも1万円台半ば以上の価格で、これまでのジーンズの価格を遥かに越えていた。
となると、手取りが少なく、ケチンボな当方からするとリーバイスの復刻版ですら買うことを躊躇する。
そんな中で、異彩を放っていたのがエドウインの505だった。価格は通常のジーンズと同等の7900~8900円。不確かだが9800円の品番すら無かったと記憶している。
そうなると、当方が買うべきはエドウインの505である。ジップフライのワンウォッシュと中古加工を1本ずつ買ってローテーションで穿いて過ごした。
当時は圧倒的な価格訴求力があった。
一方で、ビンテージジーンズファンからエドウイン505は当時それほど評価が高くなかった。理由は蘊蓄が何もないからである。
ビンテージジーンズというのは基本的にリーバイスの古いモデルがベースにある。あとはリーの古いモデルくらいか。時代がぐっと下がって1950年以降になるとそこにラングラーが加わる。
リーバイスは自ブランドの復刻品なので最も説得力がある。リーもこの当時は日本ではエドウインがブランドを所有していたが、リーはあくまでもリーとして企画販売している。
ラングラーはこの当時はラングラージャパンとして別企業として存在している。
となると、エドウインはブランドとしてビンテージとして復刻させる物が無い。
新興のビンテージ系ブランドは、リーバイスやリーのビンテージモデルを参考にした商品を発売しているが、エドウインにそんなことはできない。やってしまえばリーバイス・ジャパンあたりと裁判沙汰になってしまうだろう。
かくして、エドウイン505は、ビンテージ系モデルっぽい何かを合体させたビンテージっぽいジーンズとして企画生産販売せざるを得なかった。
しかし、そのおかげで他のビンテージ系ジーンズに比べて約半額という圧倒的な価格訴求力を実現することができ、当方もその恩恵にあずかることができたといえる。
さて、ここに来て、エドウインが505を復活させるということは、先日のクラッシュ加工ジーンズの打ち出しと合わせて、相当にビンテージ系ジーンズ人気が回復するとエドウイン、ひいては伊藤忠あたりが見ているといえる。
ジーユーにヒゲ加工ジーンズが多数入荷しているのもその傾向を表しているのではないかと思う。
ただ、今回のニュースで驚いたのは505がおよそ2倍に値上がりしているという点である。もちろん、原材料や燃料も値上がりしており、為替の影響も大きいとは思うが、当方を含めた往年の505ファンからするとちょっと異質さを感じてしまう。
果たしてこの15400~17600円を支払って「505」を買いたいという人がどれほどいるのだろうか、ちょっと危惧を覚える。
その一方で、ユニクロやグローバルワークなどの低価格ブランドでは少し本格派っぽいジーンズがだいたい毎シーズン6900~9800円くらいの価格帯で販売されており、往年の505を含めたジーンズNB各社の需要を完全に奪い取ってしまった状況にある。
エドウイン505の復活にはなつかしさはあるものの、価格戦略的に他のブランドジーンズに伍して戦えるのだろうか?本来であれば、エドウインは505を新定番として扱い、ブームが去ろうとも細々と在庫負担にならない程度に継続し続ける方が良いのではないだろうかと思う。
2000年代にあれだけ馬鹿にされていたリーバイスの501だが、細々とでもやり続けた結果、定番としての知名度は若者にも認知されるようになっている。3年後くらいにまた505がひっそりと消えてしまえば、結局は時々発売されるなんちゃってビンテージ品番というイメージから脱却できないままになるのではないかと思うがいかがだろうか。
comment
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neko より: 2023/09/04(月) 2:27 PM
エヴィスの社長が、「最近のリーヴァイスはたいしたことない。501の商標を買い取りたい」って
雑誌インタビューでほざいてリーヴァイス激怒。それまで目をつぶってきたレプリカブランドに強硬
姿勢に。ウエアハウスなどに警告。お尻のカモメステッチや赤タブをおいそれと出来なくなった。
本人リップサービスのつもりだったのだろうが、大阪人の悪い癖だなと思った。
あれは怒るよ。本家本元に対してもう少しリスペクトしなくちゃ・・ -
南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/09/04(月) 5:55 PM
南サンは単語造りと言葉まわしが本当にうまい
「時々発売される、なんちゃってビンテージ品番」
「少し本格派っぽいジーンズ」おもうに、急速な化繊化の過程で
実用性はもちろんファッション性も向上したけれど、
ファッションを求めると
まだまだ天然繊維に需要はある?のかな??ご本尊は、505以外に振り屋業務で
たんとGパンを企画・生産中のはずときどき販売されるなんちゃってデニム服は
急速な化繊化に対する反動なのかもしれません天然繊維の中で、安いがファッション性に富むのは
やはり厚く織った綿だと思います30年前40年前のような、さしあたり今でいう
スニーカークラスのブームにはならないでしょうが
デニムは、ほそぼそとファッションとして
生き残るんじゃないでしょうか?ただ、35歳以上となると、そもそも厚い綿布で
できた服を着るのがファッションとしても
しんどいです -
南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/09/07(木) 7:06 PM
「ビンテージ系モデルっぽい何かを合体させた
ビンテージっぽい(廉価な)ジーンズ」この言葉回しもうまいなぁ・・・
これが今のウニクロとほぼ重なると思います
ただ、裏を返すと505の復刻が
大ヒットになるわけがないと思いますそれ以前にご本尊様も大きく売れるとは
到底思っていないでしょう20代30代でリアル505を知らない世代は
まず購買層に入らないでしょうしね・・・したがって、ご本尊様はデニム製品に
大きなマーケットがあるとは思っていないのでは?ただ、普遍性のある一定量のニーズがある
素材ではある。それは間違いなさそうです
その昔 エドウィンでの商品カタログ用に
NYまで古いポジを仕入れに行きました
懐かしいねぇ
買うことは無いだろうけどね
久々に口ずさもうか
♪503