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南充浩 オフィシャルブログ

全国合計で6000人を割り込んだファッション専門学校への入学者数

2023年8月31日 ファッション専門学校 4

今年3月末で、2016年後期から週1で非常勤講師を務めていた専門学校のファッションビジネス課が閉鎖になった。

自分が携わった6年半の期間、この学校の大阪校ファッションビジネス課の入学者数は多くて10数人、少なければ5~6人という推移で、閉鎖になるのも当然といえた。

関西圏でもこの10年間で何校もファッション専門学校が閉校になっている。京都のディーズファッション専門学校、大阪ファッションデザイン専門学校、エスモードジャポン京都校などなどである。

いずれも根本的な原因は入学者数の減少である。

少子化による18歳人口の減少が何年間も継続していることから、ファッション系にかぎらず4年生大学、短大、各種専門学校は入学者数の奪い合いという状況にある。

そんな状況下で、最も入学者数を集めているのが有名4年生大学である。

国公立・私立を問わず、偏差値上位にランキングされている大学の入学試験の倍率は団塊ジュニア世代の入学時とあまり変わらない。大学によってはそれよりも競争率が高まっている場合すらある。

 

もう10年くらい前に「全国のファッション専門学校入学者数が1万人未満になった」と某ファッション専門学校の理理事長からお聞きした。現在の毎年の出生者数がだいたい80万~100万人くらいだが、その中で100分の1から80分の1しか全国でファッション専門学校に進まないという状況は凄まじいといえる。

しかし、ファッション系専門学校への進学者数の減少はこの10年間でさらに進んでいるようで、先日、繊研新聞にこんな記事が掲載された。

全国服飾系専門学校調査 半数の学校で今春入学者が減少 | 繊研新聞 (senken.co.jp)

 

繊研新聞社が全国の服飾系専門学校に行ったアンケート調査(有効回答36校)によると、23年4月の入学者数が前年より「減った」学校は53%で、前年比で25ポイント上昇して過半数に達した。「増えた」と答えた学校は22%で11ポイント減、「変わらない」との回答は25%で14ポイント減少。「コロナ下でのアパレル業界の業績悪化を見て、志望者が減少した」など、都心の大規模校を中心に苦戦した学校が目立つ。コロナ禍の影響もあり、厳しい状況が続いている。

 

とあり、23年4月の入学者数が「前年よりも減った」と答えた専門学校は過半数越えの53%あったということである。

そしてその実数の推移はというと、

 

文部科学省によると、全国の服飾家政分野(料理を除く)の専門学校の入学者は、16~20年度には18歳人口減少の鈍化、大学定員厳格化の影響などで、15年度までの6000人台から8000人台に回復。しかし21年度からは、再び18歳人口の減少と大学の定員厳格化の緩和などにより減少傾向に転じ、22年度は5860人となっている。

 

とのことである。

2015年度(2015年4月入学者)までは全国で1万人どころか、全国で6000人台しか入学者がなかったが、2016年度から20年度は8000人台にまで微増していた。ということになる。

しかし、コロナ禍が深刻となった21年度からは再び減少傾向に転じ、22年度(22年4月入学)はついに6000人台を割り込んで5860人にまで減少している。

23年度は入学者数が前年よりも減ったと答えた学校が53%もあったということは、22年度の5860人よりもさらに入学者数が減る可能性が高いということになる。

 

このような現状を鑑みると、入学者数が50~100人くらいで推移しているファッション専門学校は勝ち組だといえ、入学者数が20~30人というファッション専門学校はそこそこ健闘しているといえるだろう。

 

少子化という原因を除外してもファッション専門学校の入学者数が減少し続けているのは、入学者の志向と実際のアパレル業界の求める人材に乖離が大きいためだろうと考えられる。

やはりファッション専門学校への進学を志す学生は、デザイナーやパタンナーなどの「作り手」を志望することが多いと体感的に感じる。一方、2000年代以降のアパレル各社が望む人材は第1に「販売員」である。

 

「アパレル求人の9割は販売員募集」ですよ!|幸せを呼ぶ、ファッション教育 Vol.2

実際に卒業生たちの就職先を見ても、90%前後はまずは販売員になっている。そして、販売員には何もファッション専門学校を卒業せずとも採用されてしまう場合がかなり多い。

スーパーマーケットの子会社チェーン店に販売員として就職した当方も専門学校には進学していないし、このブログに月に1度寄稿してくれているUS君も4年制大学を卒業後に、大手チェーン店で販売員として就職した経歴がある。

となると、学生もその親御さんも「販売員になるなら何も専門学校に進学する必要性が低い」と判断してしまうのも当然だろう。

そして、今は若いうちに転職や方向転換をすることも当たり前の時代だから、仮に新卒から数年間販売員を務めた後、他業種に転職するのであれば専門学校よりも4年制大学の方が有利なのではないかと考えてしまうのも無理からぬことだろう。

 

また、最近では「作り手」以外にもアパレル企業において、プレス・広報やマーケティング、ウェブ関係などの仕事に就きたいと考える学生も少なくないが、こちらも新卒からいきなりその職に就くのは難しく、やはり何年間かは販売員を経験することが求められる。

へなちょこ販売員を経験した当方からすると、販売員を経験させてもらったのは非常に有意義だったと今にして思うが、当時その有意義さを実感していたかというとそうではなかった。

当時の当方は、実際に勤務してみて40代以降60代まで販売員を務めることは肉体的にも賃金的にも難しいと感じていた。じゃあ、次のキャリアアップには何をすればよいのか?どういう道筋があるのか?と言ったことは皆目見当がつかずに鬱々とした部分があった。そして思い余って辞めてみて今に至るわけだが、販売員からのキャリアアップや本部勤務への道筋や手順が見えずに暗鬱さを感じている人は今も相当数存在するのではないかと思う。また、退職後当方も経験したが、販売員経験があっても、他業種の営業マンに採用される率はそんなに高くない。理由は「営業と販売は似て非なる物」というのが企業側の基本的なスタンスだからだ。

そして、20年のコロナ禍による、アパレルの大量閉店のニュースである。

今回のコロナ禍は予期せぬ出来事だったとはいえ、大手ブランドとはいえアパレル店というのはいとも簡単に閉店されてしまうということが共通認識を得てしまった。閉鎖店舗の販売員の雇用の継続も危ういブランドもいくつもあった。

となると、学生やその親御さんは「こんな不安定な業種はちょっと・・・」と感じてしまったのではないかと思う。

 

アパレル販売の転職 現在進行形

ただ、現在は業界的に緩やかにではあるが、販売員から他業種への転職、異業種の未経験者募集というのも徐々に増えつつあるというのが現場の声だから、今後はまた少しずつ情勢も変わるのだろう。

それに以前にも書いたが、コロナ禍が開けた今、再び実店舗の有用性が再認識され始めており、ネット通販も実店舗との連動性がこれまでよりも重要視されている。

となると、販売経験のないIT担当・EC担当よりも販売員経験のある人が今後は求められる可能性が高いので、販売員経験のあるネット通販担当者と言うのも業界的には求められるケースが増えるのではないかとも思う。

そのあたりを上手くシラバスに取り入れ、周知させることができれば、入学者数が下げ止まるファッション専門学校も中には出てくるかもしれない。しかし、ファッション専門学校業界全体が入学者増に転じるという可能性は極めて低いだろう。

 

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 comment
  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/08/31(木) 12:20 PM

    販売員は非正規の仕事です(セールスマンは違うよ)
    マネージャーは常勤の仕事です

    非正規の仕事をいくらやっても常勤の仕事に必要な
    能力はつかないと思います

    したがって、販売員は高校を出てわざわざ「専門」を冠する
    学校にいく必要なぞ全くない職種じゃないでしょうか?

    店長や地域統括、マネージャーになりたいなら
    服の勉強なぞほとんど必要ないと思います
    計数管理と人事労務の法律知識が必要です

    この業界で長生きしたいなら
    社労士とIT系の資格を2,3年かけて揃えれば
    完ぺきですよ

    服好きな人たちが想像するアパレル会社は
    中小企業がですから

  • とり より: 2023/09/01(金) 5:47 AM

    どの業界でも小売りはやめた方がいいですね。
    長く勤められない。
    どうせどこかでジョブチェンジをせざるを得ないので、やめたほうがいい。
    とはいえ、わかりやすい事務職の求人も狭き門で、中低階層の技術系辺りがスペックの低い人の受け皿として機能しているように見えます。

  • キム ゴンウ より: 2023/09/01(金) 9:51 AM

    先日セイヨウトチノキを校名にした専門学校の方と会合でお話する機会がありました。
    あけすけに在校生数をおしえてくれましたが、案外学生数少ないものなのですね。
    私はファッションには疎くて、もっぱら人材教育のフィールドの人間なので
    ファッションビルでの若者の活躍を見ていると、こういう関連の学校って人気あるのとばかり思っていました。
    一方で高校では大学への進学が、担当教員の評価ポイントになるらしく、先日も閉校が決まった大阪の府立工科高校も就職よりも進学を勧めいており、本来の存在意義を失い進学数が減少しているのかもしれません。かくいう大学も年内に推薦という形で進学を決定する学生が私立大学の場合60%を越えるとかですから、少子化で子どもに金を少しでもかけられる家庭なら、勉強できなくも大学に進学を勧めるかもしれませんね。

  • 通りすがりの人事 より: 2023/09/01(金) 11:49 AM

    アパレル系メーカーで人事をやっていましたが、基本的に販売職で採用された場合のキャリアは販売系で限定されたり、非正規から正規へ切り替えが無いなどの会社が多いですよね。
    販売スタッフの皆さんはそれがいやで退職される方が多いですが、人件費の問題もありますが、若年層向けブランドはそのブランドがターゲットにする年齢層の販売員を置きたいので年を取った販売スタッフの退職を引き留める施策を打つことはあまりしなかったんですよね。

    販売職でのキャリアが限定される(本部スタッフへの異動が限定的)以上、やはり4年制大学を出ておくことは将来のリスクヘッジになります。
    なぜなら転職する場合、本社業務職は4年制大学卒以上が応募条件となっていることが多いし、同じようなキャリア経験をもった人が応募されてきた場合やはり専門卒より大卒を選ぶことが多いと感じます(個人的な感想です)。
    そう思うと失礼ながらアパレルメーカーへの就職を希望する学生がアパレル系の専門学校へ進学するのってあまり意味が無いのではと感じてしまいます。
    (パタンナーやデザイナー以外)

    ちなみに販売職はもっと評価されるべき職種だと個人的には思っています。
    高いコミュニケーション力/ストレス耐性、商品知識も単なるカタログスペックだけでなくベネフィットを語れる知識をも求められるわけで、誰でも出来る仕事はではありません。

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