ストライキ決行でも百貨店事業の売却は止められないだろうという話
2023年8月30日 百貨店 2
明日、そごう・西武の労組が西武百貨店池袋本店でストライキを決行するのかどうかが話題となっている。
日本国内でストライキが起きるのは実に久しぶりのことで、働き始めて30年になるが、30年間でほとんど聞いたことがない。60年代・70年代にはけっこうストライキがあったと聞いているが、80年代半ば以降はほとんど起きた記憶がない。
仮に明日、ストライキが決行されたとしても、セブンアイの百貨店売却は止まらないだろうと見ている。
この産経新聞の記事がまとめ方が的確ではないかと思う。
そごう・西武、ストでも止められない百貨店売却 「伝家の宝刀」威力に限界 – 産経ニュース (sankei.com)
親会社のセブン&アイ・ホールディングスが今月末にそごう・西武の売却決議を強行した場合、制止するのは難しい情勢だ。消費者や取引先への影響を考慮すれば売却が決定した後のスト継続は困難なためで、〝伝家の宝刀〟の威力には限界がある。
百貨店そごう・西武の労働組合は主力の西武池袋本店(東京都豊島区)で31日にストライキを実施すると予告通知したが、親会社のセブン&アイ・ホールディングスが今月末にそごう・西武の売却決議を強行した場合、制止するのは難しい情勢だ。消費者や取引先への影響を考慮すれば売却が決定した後のスト継続は困難なためで、〝伝家の宝刀〟の威力には限界がある。
「ストは売却が正式に決まる前だから意味がある」
労組関係者はこう話す。スト自体が目的ではなく、セブン&アイに百貨店事業の継続や従業員の雇用維持を保証させるため交渉時間を稼ぐのが目的だからだ。
とある。
今回の労組側のストの目的は「百貨店事業の継続や従業員の雇用維持」とあるが、ストライキを決行して労組の話し合いが進んだと仮定すると「従業員の雇用維持」は勝ち取れる可能性は低くはないと思うが、百貨店事業の継続がかなえられる可能性はほとんどゼロに近いだろうと思う。
なぜなら、株主側にとってもセブンアイにとっても百貨店事業は不要と見なされているからである。不要な物を継続し続ける企業はない。スーパーのイトーヨーカドーも見方によっては不要と捉えられているが、セブンアイにとっては「祖業」であるため、簡単に手放さない理由はわかる。
しかし、そごう・西武はセブンアイにとっては祖業でも何でもない上に、稼ぎ頭・儲け頭でもないのだから、売れるうちに売っておこうということになる。
元々、コロナ禍以前のインバウンド景気に沸いた時期でも、そごう西武という企業の営業利益額は低かった。三越伊勢丹、髙島屋、H2Oという他の大手3社に比べると歴然としていた。
とはいえ、西武池袋本店、横浜そごうの2店舗は年間売上高が大きかった。22年後半のコロナ明けでも売上高の回復が目覚ましく、22年度の百貨店店舗売上高ランキングでは西武池袋が3位で1768億円、そごう横浜が1063億円で12位にランクインしている。そごう横浜の次の13位以降は売上高が1000億円未満となる。
この2店舗の売上高の大きさは魅力である。
このほか、15位までにランクインしていないが、千葉そごうもそれなりに評価が高いと業界内では言われているが、その他のそごう・西武の店舗は評価が低い。
となると、西武池袋、そごう横浜が活況なうちにまとめて全店舗を売却してしまう方が、高く売れやすい。株主とセブンアイはそう考えているだろう。当方が経営者でもそう考える。
で、この産経新聞の記事によると、ストを決行した場合でも労組にとって状況は好転しにくいとしている。
逆にセブン&アイがストを覚悟で31日決議、9月1日の株式譲渡という手続きを強行した場合、労組が打てる手は限られる。西武池袋本店でそごう・西武が直接運営する売り場は一部だが、ストを実施すれば全館休業するとの見方は強い。消費者や取引先に大きな迷惑がかかるため、売却決定で交渉の先延ばしができないなら、9月1日以降もストを継続するのは困難だ。
消費者への迷惑云々は考慮する必要は、この際ないと思うが、ストライキを続けたところで、従業員の雇用確保は勝ち得ても売却は止められないだろうということになる。
ただ、個人的には労働組合がストライキ権を行使することは理解もするしある意味で評価もする。繰り返すが、ただ百貨店事業の売却は止めようがないということである。
個人的には、そもそもセブンアイがそごう・西武を買収したこと自体が悪手だったと思っている。種々の報道によると退任されたカリスマ前社長の一存だったとされているが、スーパーとコンビニのカリスマ経営者がなぜ百貨店なんて買収しようと思ったのか当方には理解ができない。もしかすると「俺なら百貨店の経営も立て直せる」という自信があったのだろうか?
ついでにこのカリスマ氏は、高級セレクトショップのバーニーズニューヨークも買収しているが、結局バーニーズはラオックスに売却された。
衣料品比率が高い百貨店事業と、衣料品しかない高級セレクトショップ、という2つの事業をどうして買収したいと考えたのか謎である。
個人的には、スーパーやコンビニと百貨店や衣料品専門店はビジネスのノウハウが全く異なると思っている。スーパーやコンビニは極度に効率化が必要で、それはもちろん、高額衣料品ビジネスにも必要とされることは間違いないが、効率化だけでは立ち行かないのが高額衣料品ビジネスでもある。
コンビニビジネスの達人であればあるほど百貨店・高級セレクトショップの経営には向いていなかったのだろうと思う。
シナジー効果を期待してという文言もあったが、現在に至るまで一体どんなシナジー効果があったのか当方には全く知覚できないままである。
スーパー、コンビニの2業態を成長させたから、今度は百貨店と高級セレクトショップを再建して、ボクシングの4階級制覇よろしく、流通の4業態制覇をやり遂げたかったのだろうか?蜀を得て隴を望むと言ったところか。
なかなか万能の人というのはいないものである。
comment
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とおりすがりのオッサン より: 2023/08/30(水) 12:54 PM
31日のスト、やることに決まったそうっすね。大手デパートでは61年ぶりだとか。
でも、デパートがストしても特に誰も困らないだろうから、あんまり交渉の手段にはならなそうwうちのダメ金属加工工場を安値で買収した某上場企業の二代目社長氏は他にも中小企業を買収しまくってて、投資家向けのIRでは「買収企業とのシナジー効果が~」とか言ってましたが、社内報では「悲願であった連結売上高〇〇◯億円を達成!」とか言ってて、シナジー効果とか関係なしにテキトーに買いまくって売上高を多くしたいだけだった疑惑が出てました。
上場企業の経営者とか言っても、あんまり信用ならないっすねw
ヨーカドー神話が崩壊する良いきっかけになりました
今のヨーカドーは販売業ではなく投資業であって
お金もうけだけを考える、よくある企業集団です
主な稼ぎ先は、日本からはみえづらいですが
海外の低所得者対象の販売業です
日本国内は、30年ちかく係争案件になっている
例の委託か労働契約かで揉めてるセクタです
そして祖業のイメージを保つためのセクタは
「なに1つ儲かっていない」・・・
最後にシナジーだなんだと抜かした買収も
「なんの相乗効果も生み出していない」・・・
今となっては、大した会社じゃないと思いますよ
ただ、60年代70年代に基礎を作った方々は
それはそれは偉大な人たちでした
例の服売り場問題、品質表示はヨーカドーネームでも
販管用タグにはいとちゅ~様の文字が・・・
丸投げ&低コストな売場でも儲からない 構図ですから
いったいどれだけ売れてなかったのか・・・
なお最後の投売りで今ならシャツ1枚1150円也です