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南充浩 オフィシャルブログ

見た目は似ていても便利さが異なるジーンズのダメージ加工とリペア加工

2023年8月25日 トレンド 1

ジーンズの話をすると、70年代後半以降は、ひたすらに生産効率を追求することになり、紡績機や織機も効率化して、それまでの凸凹したデニム生地ではなく、広幅でフラットな表面感のデニム生地に代わって行った。

フラットな表面感のデニム生地なので穿き古した際の色落ちは全体的にのっぺり落ちることになる。

これが80年代~90年代前半のジーンズの特徴である。

この傾向を一変させたのが、95年以降のビンテージジーンズブームで、70年代までの凹凸感のあるデニム生地が再度好まれるようになった。

穿きジワを正確に再現、またはコピーしたようなヒゲ加工が持て囃されるようになったのもビンテージジーンズブームがきっかけだった。

さて、このビンテージジーンズブームは2000年ごろに完全に終わってしまったが、ビンテージ調の凹凸感のあるデニム生地やヒゲ加工というのはそれ以降も概ね好まれ、2008年以降のスキニージーンズブームまでその風潮は残った。

 

2015年ごろにスキニージーンズブームがピークアウトした以降、若者はジーンズをあまり穿かなくなった。スキニージーンズは引き続きマイルドヤンキー層には愛用されていたが。

長らく封印されていたビッグシルエットが復活すると、80年代調ののっぺりとした色落ちのジーンズが若者を中心に注目を集めるようになった。(ジーンズ着用者の総数の体感は少ないままだったが)

当方世代の人間からすると、たのきんトリオやチェッカーズあたりがテレビの画面内で穿いていたジーンズのリバイバルに見えて仕方がなかった。

 

しかし、人間は飽きる動物だから、その「のっぺり80年代ジーンズ」もそろそろ若者たちに飽きられてきたようで、以前にもこのブログで書いたが、ジョンブルあたりではそれほど激しくはないヒゲ加工のジーンズへの要望が高まってきているという。

 

また、ブログのコメントでも教えていただいたように、ジーユーも今秋物からはウォッシュジーンズに薄っすらとしたヒゲ加工を施すようになっている。

 

 

2000年代に入ると、ヒゲ加工も行き過ぎて、ヒゲを真っ白に漂白したような加工が提案され、穿きジワがまるでトラかシマウマの模様のようにハッキリ刻まれた物が相当数市場に出回っていたのだが、つい数日前、天王寺でこのジーンズを穿いた人を見かけた。今年の新製品なのか20年前の商品を引っ張り出してきたのかはわからなかったが、ちょっと驚いてしまった。

 

で、このジーンズだが、ビンテージ調ジーンズへの回帰というのはたしかに市場全体として高まっているようで、繊維ニュースブログにはこんなコラムが掲載されている。

ダメージ加工再び | 情報 | 繊維ニュース 編集部ブログ | アパログ | ファッション、アパレル業界のブログポータルサイト (apparel-web.com)

1990年代後半から2000年ごろに隆盛したダメージ加工のジーンズが復活している。軽いダメージというよりも、激しいダメージ加工という印象だ。今春夏シーズンに投入したブランドも多く、意外にも女性の支持率が高いと言う。写真は「エドウイン」で展開するダメージ加工のジーンズ。こちらも激しい加工だ。この難しいダメージの風合いは、日本の工場でしか出せないテクニック。エドウインの担当者は「ジーンズのトレンドはビンテージ調に振れているが、ダメージ加工にも期待」話している。

 

とのことで、画像で掲載されているのは激しく破れたジーンズである。

一口に「ダメージ加工」と言っても、ダメージの強弱はさまざまあり、少し破れかけたような物からこのコラムの画像のように激しく破れた物まで千差万別あり、ブランドの企画次第という感じである。画像くらい大きな穴が開きまくった加工をクラッシュ加工と呼ぶこともある。

 

これまでもダメージ加工(クラッシュ加工も含めて)の商品は細々と続いてはいた。またダメージ加工と似たような加工として「リペア加工」という物もあった。

ダメージ加工はダメージを与えて最終的には破るわけだが、リペア加工はその破った箇所を縫い合わせたり、当て布を当てて穴を塞いだりする。文字通りリペア(修理)なのである。

このリペア加工ジーンズはユニクロでも定期的に販売されているので、恐らくはそれなりの需要量はあったのだろうと考えられる。当方もユニクロのリペア加工スリムストレートジーンズを2本持っている。

ダメージによる破れにせよ、リペアによる当て布にせよ、どちらもデザイン性を付与することとなり、広い意味での色柄の1種という捉え方が適切ではないかと考えられる。

 

ただ、個人的にはダメージ加工よりもリペア加工の方が当方も含めたマス層の着用には適していると見ている。もちろんダメージ加工ジーンズが嫌いなわけではない。見ている分には楽しいと感じるが、そこまでファッション性にこだわらない当方レベルの人間からするとひどく不便なのである。

 

1、デカイ穴が開いているので真冬は風が通って寒い

2、穿くときに爪先が引っかかって穴をさらに広げてしまって最終的にもっとビリビリになる

 

この2点が大きく不便だと感じる。

リペア加工ジーンズの見た目はダメージ加工ジーンズとさほど変わらない印象を与えるが、穴が塞がれているため、この2点の不便さがない。

あと、もしかすると、ダメージ加工ジーンズは洗濯の際にも気を使わないと穴がさらに広がってしまう可能性もあるのではないかと思うが、リペア加工にはその心配はあまり無い。

 

ユニクロがリペア加工ジーンズを企画販売しているシーズンは過去に何度かあったが、ダメージ加工ジーンズを企画販売していたシーズンがほとんど無かったのは、このあたりが理由なのではないかと思う。

当方も含めたマス層にとってはダメージ加工ジーンズは、「カッコ良くても不便な物」と映る可能性が高いという判断ではないかと思う。

 

ダメージ加工はファッション性にこだわる人向け、マス層はリペア加工。今秋以降もそんな住み分けは続きそうで、その住み分けをキッチリと考えられて数量コントロールできたブランドは営業利益を稼げるのではないかと思って眺めている。

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 comment
  • 大阪のオバチャン より: 2023/08/25(金) 11:34 PM

    私の兄はユニクロの、スウェット風デニムを愛用している。
    ドケチで、何年もはいているため、膝が薄くなってきたので、私にミシンで縫って強化してと頼んできた。
    後から当て布をして、前後左右にステッチを沢山かけ、両膝で結構時間がかかった。
    テキトウにやったので、オシャレ感はゼロ。
    ユニクロの安いズボンをこんな風にまでして長く使用されたら、イヤでしょうね~

    関係ない内容のコメントでした~

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