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南充浩 オフィシャルブログ

「スニーカーブーム」が終わったのではなく「レア物スニーカーバブル」が崩壊しただけの話ではないのか?

2023年8月22日 トレンド 2

ネクタイ業界の人が怨嗟の声をあげようが、クールビズによってビジネス着のカジュアル化は進んだ。毎年の梅雨明けの猛暑下ではクールビズの浸透のありがたさを噛みしめているサラリーマン男女も数多いだろうと推察する。

クールビズの浸透、コロナ禍での在宅ワークによるビジネス着のカジュアル化によって、コロナ自粛が緩んだ現在、ややカジュアルなビジネスっぽいスーツにノーネクタイでスニーカーを履いている男性が以前より増えたように感じる。黒のパンツスーツ姿の女性でも足元には華美にならないような黒ベースのスニーカーを履いていることが増えたと感じる。

さすがに従来型スーツにタイドアップしていて足元にスニーカーを履いている男性には違和感を感じるがノーネクタイスーツやTシャツジャケットにスニーカーという姿は当たり前になりすぎて違和感がない。女性に関しても同様である。

当方は昔も今もさして女性にはモテないが、仕事柄、街行く女性の服装をざっくりと観察することはしている。女性はあくまでも観察対象でしかない。

以前にも書いたように、当方がピチピチの大学生だった30年くらい前、いわゆる「お嬢様っぽい」ふんわりワンピースを着用しているような若い女性の足元はローファーだとかパンプスがほとんどだった。その手の女性がスニーカーを履くときは野外で何か活動するとか近所に買い物に行くときとかそういうときに限られていた。

最近、お嬢様風(実際に着用者がお嬢様かどうかは不明)ないでたちをした若い女性が足元にハイテクスニーカーを履いていることが増えたと感じる。というか、業務中でもないのにわざわざローファーやパンプスを履いている女性の方が珍しいと感じるほどである。

 

当方もすっかりジジイになっているが、当方よりもさらに上のジジババもスニーカーを履いていることが格段に増えた。年を取ると足腰が弱るので、弱った脚腰には歩きやすいスニーカーが最も適切だといえる。今更弱った脚腰でストレートチップの革靴やらパンプスやらはジジババが履いたところで怪我をするだけだろう。

このように見てみると、統計データはないものの、体感的には圧倒的にスニーカー着用者数は増えていると感じる。

 

2000年代半ばごろまでは、スニーカー着用者はカジュアル好きの若い男性がほとんどで、辛うじてビジカジスタイルとしてローテクスニーカー(コンバースオールスターやアディダススタンスミスなどの伝統的スニーカー)が一部に取り入れられた程度である。

その当時に比べると、女性と老人層に圧倒的にスニーカーは広まり、スニーカーの市場規模は着用者数の増加ととも大きく拡大したと考えられる。

そんな状況を鑑みると、当方には「スニーカーブーム」なる言葉にはかねてから違和感しか感じられなかった。

ブームというには長い期間続いているし、一部の愛好家やミーハー層だけにとどまらず、女性全般はもとより近所の老人会のジジババにすら広まって愛用されている。これはブームというよりは「定着」と言うべきだろうと思っている。

 

で、一部業界人やメディアが使ってきた「スニーカーブーム」とは何を指しているのかというのが、この記事で何となく、小泉進次郎ばりにおぼろげながら見えてきた。

世間のスニーカーブームがいきなり終わってしまったのですが|伊藤聡 (note.com)

 

まあ、「勝手に終わったらええがな」という感想しかないのだが、

 

スニーカーブームは2014年あたりから本格的になり、それ以降はずっと右肩上がりだったと語っている*2。約8年から9年のあいだ、人びとはスニーカーの争奪戦に明け暮れ、寝ても覚めてもスニーカーに夢中であった。レア製品の転売額は、二次流通市場で元値の40倍、50倍に跳ね上がり、ファンはスニーカーに途方もない額を注ぎ込んだ。この熱狂的な祭りはいつまでも続くものと思われた。それが今年になって、線香花火が消えるみたいに急に終わってしまったのである。

 

とある。

多分この文節に一部の業界人が言っていたところの「スニーカーブーム」への認識が詰まっているのではないかと思う。

要するに、一部の愛好家と転売ヤーが日夜限定レア物をネット通販と実店舗で奪い合ってプレミア価格がどんどんと高まっていた状況を指していたのではないだろうか。

しかし「人びとは」とあるが、スニーカーをほぼ毎日履いて過ごしていて、自宅の下駄箱にはスニーカーが20足くらい格納されている当方はそんな争奪戦など一度も参加したこともないし、プレミア価格の限定レア物スニーカーを欲しいと思ったことも一度も無い。

たしかに当方にも、限定レア物の購入に毎回必ず応募し続けている知人が何人かいる。しかし、それはあくまでも愛好家とか数寄者の世界だと思って眺めている。それはちょうど彼らが、ガンプラ発売日には必ずジョーシンに並んでいる当方を「そんなもんなんやな」と思いながら眺めていたのと同じだろう。

当方からすると、限定レア物(おもにナイキが多かった)スニーカーの何がそんなに良いのかさっぱりわからない。例えば黒いアッパーに白いソールのハイテクスニーカーが欲しかったとして、ナイキの限定レア物以外にもいくらでも似たようなモデルは市場に転がっている。何ならABCマートに行けば類似のナイキエアなんたらが4900~5900円に値下げ販売されているし、銘柄が変わっても良いならリーボックの公式通販サイトには3000円くらいで転がっている。アディダスしかり、プーマしかりだろう。

そして、一部の愛好家とマニアと数寄者以外は、その黒いアッパーで白いソールのハイテクスニーカーが限定レア物なのか、ナイキの4900円に値下がりしたエアなんたらなのかは区別できないだろう。当方も区別できない。コーディネイトとして色合い、ボリューム、シルエットが服装とマッチしていれば関係ない。当方レベルの人間からすると何にこだわっているのかさっぱり理解不能である。

 

なぜスニーカーブームは終わってしまったのだろうか。

  • 供給が過多で、リリースを追いきれない

  • 転売のうまみがなくなってきた

  • 物価高で生活が厳しく、靴を買うどころではない

  • 円安で製品の値段が跳ね上がり、手を出しにくくなった

  • セールの乱発で、定価で買う意味がない

  • 特定モデルに人気が集中し、それ以外の製品の価値がなくなった

  • 靴というより投機商材に近くなっていた

  • 古いモデルの焼きまわしに終始していた

 

 

と原因を考察しておられるが、そのすべてが原因だろう。そして、これは「ブーム」というより「バブル」だったのではないかということだ。スニーカーブームではなく「レア物スニーカーバブル」と呼ぶのが正しいのではないかと思う。

逆に現在、スニーカーを広く愛用している人々からすると、こんな「バブル」には全く興味は無かっただろう。業界人やメディアが過剰に「ブームが終わった」と嘆いているのは要するに自分のカネ儲けの手段が一つ無くなってしまったことへの嘆きに過ぎないだろう。

かつて、オランダで珍しいチューリップの品種に対して投機熱が加わり価格高騰した「チューリップバブル」があったというのは有名な話だが、現在のわれわれからするといくら珍しいチューリップの品種とはいえ、投機するほどの物かと訝しく思うが、2000年代後半からの「レア物スニーカーバブル」も後世からすると同様に見えるのではないかと思う。

何せ、米ナイキの副社長の息子までが不正転売に参加し、それによって副社長の首すら飛んでしまったほどの愚かしさである。

転売過熱ナイキ副社長辞任 息子がスニーカーで荒稼ぎ – 産経ニュース (sankei.com)

 

カネ儲けの一手段が立たれてお嘆きの業界人のことはさておき、純粋なレア物スニーカーファンにとってはスニーカーバブル崩壊は朗報ではないだろうか。何せクソ転売ヤーの撤退によって人数的な競争率も低くなるし、価格もこれまでほどには高騰しにくくなる。コアなファンやマニアは世の中のブームやバブルなんて関係なく欲しい商品が欲しい値段で手に入ればそれでいいのだから。今、市場が沈静化しつつあるガンプラも同様だ。

 

アホなスニーカーバブルは崩壊したが、老若男女へのスニーカーそのものへの需要は減らないだろう。ここ10何年間かの定着化によってスニーカー無しの生活は最早考えにくくなっている。ファッションとしての側面はありつつも、足腰に楽で快適なスニーカーという靴は必要不可欠な生活必需品となってしまった。当方とてスニーカー無しでは最早生活は成り立たない。

 

そんなわけで、手持ちのスニーカーがくたびれたら、今後もリーボックの公式通販サイトで値下がりした型落ちスニーカーを2000円台後半~4000円台で購入したいと思っている。

 

Amazonで値下がりしたリーボックフューリーライト95をどうぞ~

 

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 comment
  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/08/28(月) 10:15 AM

    ここ5,6年のスニーカーが大きく騒がれたのは

    ・レアモデルを中心とした投機ブーム/3%
    ・メジャーブランドを主体としたブーム/37%
    ・ズックが全年齢全ジャンルに広がったブーム/60%

    といった状況だったからです。ヲタから金持ち利殖
    ふだん着・しごと着、老若男女の全ジャンルを
    横断していたからです

    投機が収束するのは自然の理。というのもしょせん
    工業製品だから増産につぐ増産で付加価値ゼロ

    この悪影響を受けたのがメジャーブランド

    値上げにつぐ値上げとムリに話題を取り過ぎて
    ふつーの人たちに飽きられつつあります

    そらそうですわな。コンバースが8千円、
    コルティッツやスタンスミスが7千円ではね・・・

    とはいえ、実用性を鑑みると
    スニーカーが使いやすいアイテムなのは間違いない

    そこで、

    ・女子はハニーズかせいぜいワークマンオリジナル
    ・おっさんはリーボックやスポルディング
    ・私は現業系用の安全ぐつスニーカーw

    となるわけです。単価は高くて4000円でしょう

    そーいや25年前は997を1まんえんとか
    574のフットロッカー別注品を1.4まんえん
    とかで買ってたよな・・・

    時代も変わるし人間の中味も変わるもんです

  • スニカス より: 2023/09/28(木) 5:34 PM

    1−2年前からスニーカーブームは終わったと騒がれていましたが、なんだかんだでコラボじゃなくても人気モデルはプレ値(定価より二次流通価格が高い)が付いていました。
    その正体は、円相場の影響です。そしてプレ値は日本人だけの錯覚でした。
    1−2年前に円安に突入しましたが、日本のNIKEはなかなか値上げには踏み切りませんでした。
    その結果、外国人にとって日本で格安でスニーカーを買うことができたのです。
    例えば、日本で値上げ前のダンクは12100円でした。
    当時アメリカだとダンクの定価は110ドルなので日本円にすると16500でした。
    つまり、アメリカだと二次流通では定価付近で取引されてプレ値が付いていないダンクは、日本だと定価+4400円のプレ値なのです。
    アメリカ人が日本から定価より安い16000円で二次流通価格で購入した際、日本人は定価より高く売れているのでプレ値が付いているスニーカーだと思い込むのです。
    日本でのリセール価格はアメリカや海外の影響をモロに受けます。
    人口の少ない日本はアメリカや中国の影響を受けやすいのです。
    海外で高く取引されているものは日本でも高い。安いものは海外でも安いです。
    しかし、NIKEが値上げをした結果、国内流通品の海外流出が減り、スニーカーが余る事態に陥っているのです。

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