百貨店店舗別売上高ランキングを見て思うこと
2023年8月1日 百貨店 6
もう10年近く前のことになるが、東京へ出張することが年に何度かあった。
独立するまで東京への出張はほんの数えるほどしかなかったから、独立してからの出張ではスケジュールに支障のない程度に関係の無い商業施設も見て回った。
特に東京の好景気が取りざたされていた当時だったから、東京の商業施設はどれほど集客が多いのかというのを体感してみたいという思いもあった。
ちょうど新幹線に乗るまでに時間があったので、東京駅の大丸東京店を見て回ろうと思った。1階の食品売り場は確かに平日昼間にもかかわらずすさまじい混雑ぶりである。元来人混みが嫌いなので1階を見てから2階、3階、と上の階に順番に足を伸ばしてみた。
2階、3階はまずまず混雑しない程度に来店客はあったが、4階か5階まで来るとほとんど客はいなくなり、それよりも上の階はすべてガラガラという状態だった。
好調と言われる東京の店舗でも中層階以上はこの有様なのかと驚かされた。
WWDに続いて繊研新聞でも22年度の全国百貨店店舗別売上高ランキングが発表された。繊研新聞は15位まで掲載している。
22年度百貨店店舗別売上高 都心中心にコロナ前水準に回復 | 繊研新聞 (senken.co.jp)
1位伊勢丹新宿、2位阪急うめだ本店という具合に店名と売り場面積が列挙されていくが、正確を期するために記事から表を引用貼り付けしてご紹介させていただく。
という具合である。
売上高1000億円を越える店舗は12位のそごう横浜店までとなっている。店舗所在地で見てみると、ほとんどが東京23区内、大阪市内、名古屋、横浜となっており、それ以外だと京都1店舗、神戸1店舗、福岡1店舗となっている。
東京が強いのはもちろんのこと、大阪市内もそれに次いで強い。そして名古屋2店舗、横浜2店舗となっている。京都と神戸は1店舗ずつランクインしている。横浜も含めた東京圏はやはり強い。大阪、名古屋、京都、神戸以外の他地域だと福岡の1店舗しかランクインしておらず、東京圏、名古屋、大阪を含む関西の強さが際立ち、それ以外は福岡しかない。地域間格差はかなり広がっているといえるだろう。
そして今回のランキングを見て感じたことを思いつくままに書いていくと、まず「大丸が弱くなっている」という点である。15位にギリギリ大丸神戸店がランクインしているが、それ以外の店舗は無い。
一時期は食品売り場を地上1階に設置したことで注目を集めていた大丸東京店の名前すら無い。
ここまで大丸が弱くなったのだから、ジェイフロントリテイリングがパルコやギンザシックスなどのファッションビルに力を入れる理由もわかる。
また、前回も述べたように「髙島屋の強さ」も際立っている。14位にもそれほど面積が大きくない髙島屋京都店がランクインしている。一時期はJR京都駅に隣接していたJR京都伊勢丹が猛追を見せていたが、髙島屋京都店の底力には追い付けなかったということになる。京都一番店は相変わらず髙島屋が死守しているといえる。
髙島屋の強さは三越との日本橋対決にも表れている。5位に髙島屋日本橋店、6位に三越日本橋店がランクインしており、売上高の差は約50億円と近接しているが、店舗面積が圧倒的に違う。髙島屋は47000平方メートルなのに対して三越は62000平方メートルもある。高島屋の方が15000平方メートルも小さいのに売上高は50億円多いわけだから、面積効率は圧倒的に髙島屋の方が上ということになる。
しかもこの47000平方メートルという売り場面積は今回のランキング表の中では、未掲載の岩田屋を除くと最小である。最小面積でありながら、伊勢丹新宿、西武池袋に次いで東京都内3位の売上高の高さを誇っている。
伊勢丹新宿や阪急梅田のような派手さや注目度はないし、西武池袋のような話題性(笑)もないが、髙島屋は堅実で底堅いと感じる。
また阪急百貨店だが、相変わらず「うめだ本店一強」という状態が続いており、うめだ本店の売上高が伸びている分だけ一強状態はさらに強まっていると感じる。同グループで増床改装が完了した阪神梅田本店が今後どこまで伸びるかがカギを握るのではないだろうか。
百貨店の今後について、各メディアで大都市都心店の好調さと地方郊外店の不振の格差がメディアでも隠し切れなくなってきたが、23年度、24年度と今後はその格差はさらに拡大し続けると当方は見ている。
今回の百貨店上位15店舗の店舗数はだいたい広く、47000平方メートルの髙島屋日本橋店と50000平方メートルの大丸神戸店がワースト1・2という状況にある。大丸神戸店は神戸1番店だが、久しぶりに訪れてみるとやはり狭さを感じる。それよりもさらに3000平方メートル小さい髙島屋日本橋店には相当狭いと感じることだろう。
当方は関西在住なので10万平方メートルのあべのハルカス本店や98000平方メートルの阪急うめだ本店の広さに慣れきってしまっている。
ところが地方郊外店というのは、ほとんどが髙島屋日本橋店よりも売り場面積が小さい。そして90年代までならいざしらず、現在の各百貨店の財務内容で地方郊外店を増床改装できるほどの余裕は全くない。だから近隣の大型ショッピングセンターはもちろんのこと、同じ百貨店の大都市都心店にも大きく見劣りしてしまうし、品揃えもままならない。島根の一畑百貨店が「テナントが集まらない」という理由で閉店を決めたようなことが今後は他の地方郊外百貨店にも頻発するだろう。
となると、大都市都心百貨店と地方郊外百貨店の売上高格差は今後も広がるばかりだ。
近い将来、これが10年後なのか20年後なのかはわからないが、百貨店というのは全社ともに大都市都心店だけが残り、地方郊外店というのは無くなってしまうと見ている。
以前だと、地方郊外店にも中元歳暮需要があると考えていたが、ありきたりの中元歳暮で良ければ今は百貨店のネット通販でポチって先方へ送れば良いから、地方郊外店の中元歳暮需要も今後は減り続けることになるだろう。
国内百貨店は、フランスやイタリアのように大都市都心店だけが残るという状態になって落ち着くのではないだろうか。
comment
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BOCONON より: 2023/08/01(火) 6:10 PM
揚げ足を取るようですが,高島屋新宿店はそれこそいつ行ってもあんまり客がいませんね。実際今回の15位までにも入っていない。
まぁ20位までには入るかも知れませんが。
どうも1枚2万円なんてワイシャツをフツーに並べて売っているようなところはあまり百貨店という感じがしない。「西部池袋も新宿高島屋も高級店化路線に走ったせいで見て歩いてもつまらない百貨店になった」「池袋や新宿でごくわかりやすいハイブランドなんて見たくもないね」と思っているのは僕だけだなのだろうか? -
大阪のオバチャン より: 2023/08/01(火) 10:17 PM
梅田の阪急に行きますが、食料品も化粧品売り場も本当に混んでいる。
それで大丸に移動すると、そんなに人も多くないので買い物しやすいですし、店員さんも優しいようなきがします -
読者 より: 2023/08/01(火) 11:05 PM
プロの注目点は高島屋なんね。なるほど坪高でいえばダントツだし
名古屋除けば狭い館で健闘してる感ある。東京に関して言えば丸の内の人はわからんけど霞ヶ関の人は東京駅行かないと言っていた。
結局東京駅で買い物するのは出張前の買い物と遠距離からの上京客なので常連客が少ない。
大丸はテコ入れかなり頑張ってかつてはベイクルーズ等のセレクトショップとも交渉持ったりしてたけど、
所詮百貨店スピード感がないとセレクト側から言われてました。
店頭環境等でつまらない内規が多く店舗の雰囲気が作れず論外とか言ってた。
その点同じ百貨店で新宿伊勢丹はなんなんだwとか笑ってたなぁ。あべのハルカスが伸び率高くて意外。前年がイマイチなのかインバウンドで健闘してるのか
しらんけど嬉しいね、東京は電鉄系は不振やから。
阪急も電鉄系だけど他社とは格がちがうかんね。伊勢丹阪急はメジャーリーグ級な感じ。
近鉄はちっさい組織だろうからエラい思う。無駄も多いんだろうけど。 -
南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/08/02(水) 9:10 AM
3ちょうめのイセタンの売上がすごいのは、
定期的にガイシャを買い替える感覚で
服を買いまくる層がワンストップで済むのは
あそこしかないからですただ、あそこも特定フロア以外の売上はナム~です
イケセイもメインは今や化粧品と小物とブランドで
3F~はからきしダメだと思いますデパートの売上を作っているのは「百貨」じゃないんですよ
世間がさわぐデパートであればあるほど
実態としては1ジャンルの専門店の集合体だと思います全フロア・当たりはずれ無く先鋭的だと
それこそ86年頃までのイケセイになれるんでしょうが・・・イケセイ改装後の実態は、
・B1~2Fが従来のイケセイ型スペシャリティストア
・3F~を家電IT系のスペシャリティストアになるのでは?スマホは20万以上、ドライヤーは3万以上
みたいな世界なのでしょうきっとただ、下層階は女性向け、上層階は男性向けに
ならざる得ないのがね・・・ -
BOCONON より: 2023/08/03(木) 1:07 AM
先日「近くまで来たから,久しぶりに東京駅の大丸覗いてみようかな」と入ってみたら,紳士服売り場は確かに「何があったんだ・・・?」とびっくりするくらい活気がなくなっていましたな。
いやに薄暗くって,諦めムードのようなものが漂っていて,陰鬱な “紳士服の墓場” みたいだった。上野松坂屋とか松屋銀座とか,こういう雰囲気の店が増えてきたなぁ ...。
髙島屋って 百貨店らしい百貨店で
安心するんですよね
(私は関西在住です)
奇をてらっていない
百貨店はこういう年代の人が使うってのを
理解しているような気がします
それでいて 古くさいわけでもない
オーセンティックって感じがします
文化の発信なんて事を言わなさそうな感じもいいのではないでしょうか?