MENU

南充浩 オフィシャルブログ

今後大幅な新規参入者数は期待できないキャンプ市場は細く長く続く市場を目指すべき

2023年7月25日 トレンド 1

昨日から大阪では天神祭が始まり、今日は終了後に大花火大会がある。4年ぶりなので恐らくはすさまじい人出になるだろう。

コロナ禍前までは、毎年天神祭の花火大会終了後はそのすさまじい人出からJR環状線が遅延に遅延を繰り返していた。午後10時を過ぎてもまだ20分以上電車が遅延しているというのが常態だった。そんなわけで今日は極力早く帰宅するつもりである。

祇園祭にせよ、地元の神社の夏祭りにせよ、人出が完全にコロナ禍以前にほぼ戻っている。幾分は少ないのだろうが、20年、21年、22年の3年間の少なさとは比べ物にならないほど増えている。

 

夏祭りの人出だけではなく、例えばプロ野球の観客数もかなり回復してきている。(楽天を除いて)

となると、夏以降の今年の様々なライブやコンサートなどのイベントもコロナ禍以前に匹敵する人出が期待できる。そうなると、コロナ禍によって集客を伸ばしていた代替イベント各種は伸び悩むこととなるのは間違いないだろう。

キャンプもその一つである。

縮小が始まったと見られるキャンプ市場において業界関係者は集客に工夫を凝らした始めたという興味深い記事がある。

キャンプメーカーが〝場〟作りを強化 22年の参加人口は100万人減、市場も縮小 | 繊研新聞 (senken.co.jp)

日本オートキャンプ協会(JAC、明瀬一裕会長)が7月に発表した「オートキャンプ白書」によると、22年のキャンプ参加人口は前年の750万人から650万人に減ったことが分かった。人口減に伴い、キャンプ用品市場も948億円となり、前年の998億円から5%縮小したが、コロナ禍前は上回った。メーカーは、アウトドアに触れる機会を増やすため、キャンプ場やバーベキュー(BBQ)ができる〝場〟作りを強化する。

とある。

そして、キャンプ市場の減少については

キャンプ人口減少の要因は、コロナ規制の緩和によるレジャーの分散化や、新たにキャンプを始める人の減少などが影響した。JACでは「キャンプ場の予約が取りづらいことなどから、新規キャンパーの参入が阻害された面もある」と見る。

と分析しており、この分析については当方は概ね正しいと思っている。特に「コロナ規制の緩和によるレジャーの分散化や、新たにキャンプを始める人の減少などが影響下」というのはまさにその通りで、祇園祭・天神祭の人出の多さが示すように、コロナ禍によって大型イベントが自粛されていたため、ある意味仕方なくキャンプに参加していた人がキャンプを離れて従来型イベントの参加に戻ったという可能性が極めて高いのではないだろうか。

個人的にちょっと違うのではないかと思う点は「キャンプ場の予約が取りづらいから新規キャンパーの参入が阻害された」という点だが、今キャンプをやっていない人は当方も含めてキャンプに全く興味の無い人なので、今後新規参入する可能性は限りなくゼロに近い。

幾分かでもキャンプに興味のある人はコロナ禍だった3年間にキャンプに参入してしまっているだろう。

 

興味深いのは記事中にある参加者人数と用品売上高のグラフの推移である。折れ線グラフが参加者人数、棒グラフが売上高の推移である。

参加者人数は2019年までは緩やかな右肩上がりを続けており、2019年には900万人くらいにまで増えている。しかし、20年に大激減して600万人そこそこになっており、21年には急増して750万人まで回復したが、22年は650万人へとまた減っている。

一方で、用品売上高はコロナ禍の2020年でもさらに増えており、21年も増加して998億円になった。22年は5%減少して948億円になったが、2020年よりも多いだけではなく2019年をまだ上回っている。

 

2020年のコロナ禍開始によって、キャンプも多くの人が自粛したが、21年には再開する人が少し増えたのと代替レジャーとして新規参入する人があったのだろうと考えられる。22年の減少は年後半の自粛解禁による従来型イベントの再開でそちらに流れた人が多かったということだろう。

参加人数の減少にもかかわらず、21年まで用品売上高は伸び続けたわけだが、その理由は記事が書く通り

人口減にもかかわらず、市場規模が900億円台を維持したのは、既存キャンパーの買い足し需要が依然旺盛な上、インフレの進行で用品単価の上昇もあったからだ。事実、テントの輸入金額は材料費の高騰などで60.2%増えたという。

ということだろう。

ヘビーユーザーが用品をガンガン買い足し・買い替えたことの裏にはコロナ給付金で懐が一時的に潤ったということが大きいのではないかと思う。そして、コロナ禍と同時に始まった物価上昇によって各用品の値段が上がったため、売上高としての金額は増えたということになる。実際にスノーピークを始めとする各キャンプメーカーも値上げし続けている。

 

メーカー各社は市場規模を維持することを目的に

アウトドアに触れる機会を増やすため、キャンプ場やバーベキュー(BBQ)ができる〝場〟作りを強化する。

としているが、当方のようなボッチ人間からするとこれは大幅な新規参入者を作ることは難しいのではないかと感じられてならない。なぜならBBQをするとなると、用具や食材が必要なことはもちろんだが、友人が必要となる。一人でBBQをやっても構わないがそんなめんどうなことをする人が大勢いるとは考えにくい。チェーン店の一人焼肉で十分だろう。その方が用具や食材を準備する手間も要らないし。

仕事と仕事関係者との飲み会以外は完全に1人で過ごす当方のような人間にとっては、いくらBBQがしやすい場が作られても絶対に参加しない。当方同様のボッチな人は少なからず存在すると考えられるのでその人たちが新規参入者となることは考えづらい。

ゴルフもそうだが、1人ではやりにくいスポーツやレジャーは万人にまでは広がりにくい。おまけにゴルフもキャンプも用具が多数必要だし、けっこう値段が高い。

カネを持っていて友達や伴侶がいるというリア充が参加のための前提条件となるのがキャンプとゴルフだと当方は捉えている。そしてそんなリア充は世の中には少ない。

 

ただ、「場」を増やすという取り組みによって現在のキャンプ参加者の子供世代にその趣味は引き継がれる可能性が高いので市場に継続性を持たせることは可能になりやすい。

キャンプもゴルフも今後は大幅な新規参入者の獲得よりも、細く長く継続性を持たせられるような市場作りを目標にすることが賢明ではないかと思う。

 

細く長い素麺をどうぞ~

この記事をSNSでシェア
 comment
  • BOCONON より: 2023/07/27(木) 9:55 PM

    もともとキャンプが好きで前からずっとやっていた人たちにとっては,すでに飽きたニワカ君たちがネットでキャンプ用品叩き売り始めているので「いろいろと安く手に入るので助かる」のだとか。新しくキャンプ始めようとしている人たち(いるのか?)も安く始められて良いかも知れないが,これでは「キャンプ用品業界進出して儲けよう!」どころじゃありませんね。
    僕もヘミングウェイのニック・アダムスもののように荒れ地でハードボイルドにソロキャンプ,なんてのには憧れるけれど,何しろ今は基本キャンプにはクルマで行くものらしいから,自転車しか乗れない僕には絵にかいた餅であります。

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ