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南充浩 オフィシャルブログ

ブランドイメージの確立は弱すぎても強すぎてもダメ

2023年7月21日 トレンド 7

ブランドイメージを確立させるべきというのは、よく言われるアドバイスだが、ブランドイメージが確立しすぎるのも悪影響が出る場合が少なくない。まさに過ぎたるは猶及ばざるが如しである。

2015年頃から数年間、大ヒット商品として認知された口金リュックブランド「アネロ」だが、旗艦店の1つだった東京・原久宿店を閉店することになった。

「アネロ」原宿店が8月16日で閉店 口金リュックが爆発的ヒット

キャロットカンパニーが手掛けるユニセックスのバッグブランド「アネロ(ANELLO)」が、8月16日で東京・原宿の神宮前交差点に面した店舗を閉店すると公式サイトやSNSで発表した。同店舗は2019年12月にオープンしていた。国内の直営実店舗は、大阪・南船場の旗艦店とリンクス梅田2階の店舗の2店となる。

とのことである。

2019年12月というと、インバウンド景気が最高潮に達したものの、コロナ禍が始まる直前である。もちろんコロナ禍が突然始まるなどとは2019年12月時点では誰も予想できていない。だから東京店出店したのだろう。そのコロナ禍による売れ行き不振が閉店の直接原因の一つであることは想像に難くない。

しかし、原因はそれだけではないだろう。「アネロ」の口金リュックそのものの売れ行きが厳しくなって行ったのだろうと当方は推測する。キャロットカンパニーは非上場企業なので決算発表も無い。だから推測するほかないのだが、2015~2017年の3年間でアネロの口金リュックを背負っている女性の数は凄まじく多かった。ユニクロの「ユニかぶり」どころではなく、さらに高確率でかぶっていた。

それが、2018年以降になると、かぶり率が低下し始めてきた。2020年代になるとコロナ禍による外出自粛で人出の少ない時期が続いたことはあるだろうが、少なくなった人出でも口金リュックを背負っている女性を見かける確率はかなり減少した。

諸々の自粛が何となくうやむやに解禁された2022年秋以降はその傾向が顕著だ。

東京でも大阪でも構わないが、2023年現在、人通りの多い都心で道行く女性の背負っているリュックを眺めて見てもらいたいが、口金リュックをほとんど見かけなくなっている。

コロナ禍による長期営業自粛や消費自粛の影響は当然あっただろうが、それだけではなく、売れ行きは明らかに減少していると見える。

 

実際、2020年か2021年には、当方が2014年から手伝っている不良在庫処分業者の店舗にアネロの商品が入荷してきたことがある。

不良在庫を格安で引き取ってきて、自店舗で販売するという形態なので、アネロに不良在庫が生じていたことは明白である。本当に好調なら直営店が営業自粛していようがネット通販ででも売れるはずである。しかもリュックという商材は、試着が不要なので洋服よりは基本的に通販で売れやすい。それでも在庫処分店に不良在庫が流れてきたのだから、相当に売れ行きは低迷し始めていたと見るべきだろう。

 

原宿店はオープン後間もなくコロナ禍に見舞われたという不運があったが、口金リュックに続くヒット商品がなかなか見えないという面もある。

 

記事はこのように指摘するが、まさにこの通りだろう。

口金リュックの大ヒット以降のヒット商品が生まれなかった。

 

定期的にアネロの公式通販サイトを見てみると、2017年当時までは想像もしなかったようなシックなデザインの新商品が定期的にアップされている。

恐らくは、キャロットカンパニー側もいろいろと試行錯誤して、スポーツテイストなどの新商品の提案を続けているのだろう。しかし、それらの新提案商品はあまり注目されていない。業界メディアに報じられることもあまりなくなってきている。

 

そこまで新商品に注目されにくい理由は何だろうかと考えてみると、様々な背景はあるのだろうが、当方は「カラフルで可愛い口金リュックのイメージが強すぎた」ことではないかと思えてくる。

口金リュックそのものの形状自体が女性的である。その上、黒・紺などのベーシックな色の商品もあったが、女性が好みそうなファンシーな色彩の商品も随分と売られて、実際に背負われていた。

そうなると、なまじ大ヒットしたためにアネロというと「可愛い口金リュック」という強いイメージが消費者にこびりついてしまったのではないだろうか。

そのため、大人向けのシックなデザインの商品を新発売しても消費者にはあまり注目されないのではないだろうか。そして口金リュックに飽きた消費者は固定イメージによって、他のブランドのリュックを買っているのではないかと思う。

 

個人的には置かれた状況が少しサマンサタバサと似ていると感じる。サマンサタバサも様々なイメージチェンジ戦略を仕掛け続けているがことごとく不発で不振を極めている。

サマンサタバサはエビちゃん時代のあの可愛らしいブランドイメージが強烈にこびりつきすぎたせいだろう。

 

どのブランドにももちろん固定ファンはいる。固定ファンがいるから売上高はゼロにはなっていない。だからその少ない固定ファンに向けた小規模ブランドへの転身もありではないかと思えて来る。

マルキューブランドと称されたセシルマクビーが何をやっても業績が回復しなかったため、ブランドを一時廃止して、再スタートさせた。再スタートしたセシルマクビーが絶好調だという話は全く聞かないが、ブランド規模を縮小して少数の固定ファンに向けた商売を展開できているのなら、アネロもサマンサタバサもそういう強制リセットもありなのではないかと思う。

ブランドイメージの確立は重要だが、強すぎるブランドイメージも悪影響を及ぼすことがある。ブランドビジネスの匙加減はまことに難しい。

 

そんな口金リュックをどうぞ~

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2023/07/21(金) 11:51 AM

    もう、日本の人口はあと20~30年は減り続けるのが少子化で確定なんで、昭和のイケイケドンドン拡大路線は全く通用しなくなるでしょうね。「いきなりステーキ」なんかも、無茶な店舗拡大をしなければ、普通に儲かってたっぽいですし。アパレルもブランドいっぱい作るのはやめた方が良いかと思われ。

  • キム ゴンウ より: 2023/07/21(金) 12:42 PM

    50才後半のクソジジイである当方が生意気にもイキって 
    似合いもしないのにオロビアンコのショルダーを買いました
    母親が無くなって小銭が入ったので
    でも似合わないんですよね やっぱり
    使用するのに躊躇します なんのために買ったのやら…
    で 今回話題のブランドショップ心斎橋に行きました ふらりと
    5000円くらいでショルダー買ったんですが これ非常にいい
    汚れても良いし 医者にいって大量に薬をもらってもどんどん入れられます
    2泊3日の旅でも スーツケースと別にコマゴマしたものを持つのに非常にいい
    そしてわかったのです 
    こんなクソジジイがいいというようになっちゃ ブランドとしておしまいかもねと

  • 123 より: 2023/07/21(金) 11:27 PM

    サマンサタバサ・アネロ・カーディガン肩掛け・シュプリーム・カナダグース・nikeベナッシ・・・

    陳腐化というヤシですね

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/07/24(月) 11:00 AM

    う~む、考察の前提がズレているような気がします

    「そもそもアネロはブランドなのか??」
    「ネームで付加価値価格を取ろうとしていたのか?」

    というのも、展開当初から終了間際まで
    GMSが販路の商品だったからです

    単一ネームで出店できる程の商品ではないし
    もちろん百貨店は厳しいでしょう。つまるところ、
    スーパーの実用衣料品の棚埋め商品が大ヒットしただけです

    過去を振りかえると、モールやGMS発祥の売れ筋
    アパレル・売れ筋ネームは少なからず存在します

    ただし、そのすべてが実用衣料で
    耐用期間2~3年程度の商品のみです

    アネロはその中の1つというだけです

    そして、5年もすれば忘れ去られる
    GMSやモール由来のアパレルヒット商品は
    すべてこういった経路をたどります

    似たような商品でロンシャンがありましたが、
    婦人もの古来の手提げスタイルのみでした

    リュックを前面に押し出したのは
    大きな功績といえるでしょう

  • BOCONON より: 2023/07/27(木) 10:18 PM

    anello というのは僕は知らなかったけれど,先日電車乗ってたら,いましたな,anello のリュックサック or デイパック持った女子(と言うには少し塔の立った年齢でしたが)。
    可愛いと言えば確かに可愛いデザインだったけれど,生地がペラくて安っぽいので僕はびっくらしてしまった。
    むかし大流行した PRADA のリュックだってまあ似たようなもんだけれど,全体に黒っぽいから安っぽさがさほど目立たなかった。小さいし,非実用的なのは見ればわかるしw それに何と言ってもあの輝く PRADA の三角ロゴプレート!

    高級品のイメージがなくあまり実用的でもないとなると,一時は流行っても,出自が(”…主義者” 氏の言葉を借りれば)「スーパーの実用衣料品の棚埋め商品」ではどうにもなりませんね。
    いつもデイパックしょって歩いている僕の経験では,リュック/デイパックのたぐいなら無印良品のこれが比較的安価で実用的な気がします。気に入った色があれば,ですが。
             ↓
    https://www.muji.com/jp/ja/store/cmdty/detail/4550583074944

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/07/28(金) 12:18 PM

    熊谷の人>プラダや無印の同等品も似たようなもんだ

    その界わいの微妙なさじ加減が極めてむつかしいのです

    プラダだと売値が高杉(イオンは子会社でブランド品のみを扱うw
    業態も実はある)無印デザインだとネーム付加価値が無さ杉

    その点アネロはうまい

    ネームではなく、棒屋根という
    デザインとみせかけつつ実は実用性で
    付加価値を乗っけましたからね

    ・オープンしやすい棒屋根かつ軽量な止め金具
    ・3年間はへたり・寄れ感が出ないやや厚手な生地
    ・シンプルなデザインなので従来のリュックより軽量

    レスポと同じく一定のユーザーを確保できると思います

    ただ、レスポやプラダのように素材や色柄に付加価値が
    ないので、ポーチも何でも展開ができません

    その点が痛いところです

  • BOCONON より: 2023/07/29(土) 11:06 AM

    見ただけじゃわかりませんね。あれが案外実用的で便利だとは知りませなんだ。
    でもマァ仰言る通りで,anello ブランドでリュック以外の,たとえば財布など商品にしても “イバリが効く” ようなものにはならなくて,どちらかというとその反対でしょうが。

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